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読んだ本の感想あれこれ。
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41GSCX03FYL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2003年2月


「文革が始まってから、私はいつも独りぼっちだった。」
 文化大革命のさ中に多感な少女時代を過ごした中国人作家が、
瑞々しい日本語で綴る自伝的長編。



                    (幻戯書房HPより)



図書館の棚を見て廻って、なとなくピン!と来た本。
大抵こういう本は当たりなのです。

著者の名前から「中国の人の話?」と想像出来ました。
そして表題の「父の帽子」の意味は、文化大革命により、右派のレッテルを貼られたことを意味する言葉でした。

著者は、北京で幼少期を過ごす。
近所の子達と遊ぶ和やかな様子や両親に愛され育つ著者の様子が微笑ましい場面が先ずは描かれている。しかし、その背景にある文化大革命が、著者の暮らしのなかに少しずつ暗い影が広がっていく。

著者の両親は、知識人で
父親は、大学で教えていたり、仏中辞書の編集に関わったりしていた。
母親も女学校の教師。
そして、父親は、母親がいうところの出しゃばりであったため、帽子を被せられることになったと。

文化大革命は1966年~1976年。
著者の父親は、共産主義を信じ共産党に入党し、毛沢東を信じていたのに、裏切られることになった。
そして、母親の同僚たちも革命の犠牲になった。
父親の従兄弟は、小心者ゆえ、自分の過去も問題にされるのでは?と不安に耐え切れず自ら命を絶った。

そんな状況が日常のなかに起きているのに、著者は周りの空気に感化されず、母親の言うところの犯罪分子の頭とされた女リ-ダ-・大洋馬(ダ-ヤンマ-)を慕ったりしていた。
そのために学校や周囲から忌み嫌われる存在になってもいつも平常心でいられるところが凄い!
強い女性なんだな・・・。

学校の革命教育の一環として、死刑公開判決大会に参加するよう先生に言われてクラス長と一緒に見学に行った先でも、家から離れようと辿り着いた駅で眠ってしまい、警察の事情聴取を受けたときにも、恐れを知らない行動にはビックリ!

ひとつ間違えば命も落とすことになったのでは?と思われる出来事も実に淡々と書いている。

日本語も上手。
只者じゃないな・・・・この人!

1977年、文革で廃止されていた大学入試試験が再開されると同時に試験を受けて大学生となり、その後、日本に渡り日本人と結婚し日本に住んでいるそうです。

名誉を回復した父親は教授として勤務する大学の宿舎で母親と暮らしているとか。


1997年、再びかつて住んでいた地をたずねたときのことが最後に書かれていたけれど、その辺をもう少し詳しく書かれたものもあるようなので、また読んでみたいと思う。

読み応え十分の書でした!!


                                      ★★★★★
 
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416wissq44L__SX230_.jpg   発行年月:2012年1月


   この世はすべて幻影?
   震災後の生と死を鋭く問う問題作

   郷里を離れ東京で酒造メ-カ-に勤める熊沢武夫。
   震災後に起きた不思議な出来事をきっかけに、
   ある女性の顔が浮かぶ・・・・


                                         (文藝春秋HPより)



予備知識なしで読んだので・・・^^;
冒頭に、起きた不思議な現象を読んで、パラレルワ-ルド的なはなし?と思ってしまった。

郷里の母から電話で、「こっちに帰って来てたのなら、知らせなさい」と言われ「?」と思う主人公・武夫。
バス停付近にあったネ-ム入りのレインコ-トを駐在さんが届けてくれたという。
そして、ポケットには子どもの頃からの好物m&mが入っていた。

郷里に帰った覚えは全くない武夫は混乱する。
そして、そのコ-トを送ってくれるように母親に頼む。
届いたコ-トは、自分が少し前に百貨店で購入したものと同一で、自宅にちゃんとそれはあった。
そして、m&mのほかに、内ポケットから、SDカ-ドも出てきた。
そして、そのなかに入っていたデ-タは、武夫が仕事用に使っているSDカ-ドと全く同じであった。
ただ、知らない女性の写真など、自分で撮った記憶がない画像もあった。

不思議なことが次々起きながら、その真相ははっきりとはわからない。
でも、そんなことがあっても別に不思議じゃないのかも・・・・なんて物語を読んでいくうちに思ってしまった。

物語のなかには、3.11の震災も出てくる。
武夫の祖父が話してくれた過去の大水害の悲惨な状況も。

人が死ぬことについて書かれていた。

死だけが誰にも訪れる平等なこと。
そのほかのことは幻影のようなものなのかも。
そんな風に考えると、どんな辛く哀しいことが目の前に起きても少し受け入れられるかも。

読みながら、「死」とか「時間」について、考えさせられた。

なかなか深い話でした。


                                         ★★★


 
14961a47.jpg発行年月:2011年7月


どうするかなー、今後の人生

珠子とかおりは大学の、夏美とかおりは高校の同級生。かつての仲良し、アラサー3人が各々の人生を選択していく様を、移りゆく季節を背景に色鮮やかに描く感動作。

                      (筑摩書房HPより)


30代女性3人の日常を描いている。

かおりは、4つ年下の役者志望のフリ-タ-と同棲中。
自身は大学の学生課に勤める。

珠子はイラストレ-タ-。
独身で母親と二人暮らし。すぐそばには祖母が住んでいる。

夏美は最近、雑貨屋を開いた。
夫と二人の子どもと暮らしている。

3人のそれぞれの出来事が交互に語られ、時には3人が集まる。
全く違う生活環境で、ばらばらの性格で、でも昔からの馴染みの友って大人になっても、ずっと年を取っても変わらない雰囲気なんだろうなぁ~なんて自分に置き換えて考えてみたりして・・・

大した事件も起きず、普通に過ぎる日常を描いているけど、なんとなくいいな。

どんな日常のなかにも、怒れたり、悲しかったり、ちょっと嬉しいことはあるわけで・・・
そんななかで、あれこれ悩んで決断したり


こういう小説の感想を書くのは難しいな・・・笑

でも最初から最後まで楽しく読めました♪
★★★
 
 

51kJQIkpSPL__SX230_.jpg   発行年月:2011年6月


   世代も場所も超えて通じ合う、それって、なんかすごくない?

   急死した母の葬式に来た3人組のおばさんから、
   昔4人で作ったという同人誌を渡されて……。
   4人の過去と想いが今に繋がる連作短篇集

                             (文藝春秋HPより)



最初は、お調子者の高校3年生の男子3人のやりとりから明るくスタ-ト。
いまどきの高校生の会話っぽく、バカっぽくて笑える。

でも、そんなム-ドが一挙に変わる。
なんと朝は普通に送り出してくれた男子の一人、セイヤの母が急死してしまう。

通夜・葬儀と慌しく行われるなかで、母親の小学校時代からの友人だというおばさん3人がやってきて、以前4人で作っていた同人誌を渡される。

セイヤにとっては、地味な母親だったけど、母親にも輝いていた青春時代があったんだ!と気づかされる。

そして、物語はセイヤの母・ショ-コの小学校時代へと移る。
セイヤに同人誌を手渡しに来た、3人との出会いの時期である。

樹村ショ-コ(セイヤの母)、陣ノ内アキ(女王様っぽい)、森川(ギャグ要員)、吉野(学級委員)の青春物語が、語り部を変えて次々進んでいく。
4人の共通は、漫画を描くのが好きなこと。


4人の成長したその後の事も追いながら、ショ-コの結婚に至る経緯やら、実際にプロの漫画になるという夢を叶えた者も居て、時代を超えて物語が上手く進んでいく。

そして、ラストには、また新たな出会いもあって、なんだか楽しい気分になった。

心温まる連作短編集でした♪

★★★★★
 
1ee89316.jpg発行年月:2011年4月


鳩レースに導かれた、少年少女の成長物語
1980年代。家庭でも学校でも居場所のない小学校5年生のみなと。同級生の悟とつかまえたレース鳩がきっかけで、オランダ人の父を持つ女の子・ユリカに出会う。彼女は「町を出たい」と打ち明け…。


                       (集英社HPより)


小学5年生のみなと、悟、ユリカが「鳩」を通じて友情を育む物語。
それぞれが胸に仕舞っている悩み。

みなとは、若い継母に馴染めない。
継母と連れ子の3歳の浩太が加わった家族のなかに居場所がない。

悟は、厳しい父親との暮らし。
母親は父と離婚後、離れて行った。

ユリカは、オランダ人の父と日本人の母を持つ。
日本人と外見が違うことで、いろいろな辛い目に遇ってしまう。


3人とも今の自分の状況から、ちょっと逃れたいと思っていて、そんな時、「鳩」を通じて知り合い、「鳩レ-ス」の存在が更に3人を結びつける。

鳩レ-ス・・・こどもの頃、近所でやってる人が居たような・・・
今は殆ど、やってる人を知らないけど。


後半は、35歳になった、みなとたちの話。
それぞれが、社会に出て、生きている姿が描かれる。

みなとと悟は、それぞれが鳩を所有し、レ-スに参加していて、大人になった現在までの経緯が簡単に語られる。
ユリカの悩みは、その後、良い方向に解決したこともわかってホッとした。
みなとと悟の抱えていたものも時が経って自然に解決した様子。


前半は児童向けの青春小説のようだけど、最後まで読むと、これは大人向けの物語だと思う。
スラスラと読めて面白かった。

★★★

 
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