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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2025年1月


村山由佳が描く、業界震撼の〝作家〟小説!
「どうしても、直木賞が欲しい」
賞(prize)という栄誉を獰猛に追い求める作家・天羽カインの破壊的な情熱が迸る衝撃作!
♦あらすじ
天羽カインは憤怒の炎に燃えていた。本を出せばベストセラー、映像化作品多数、本屋大賞にも輝いた。それなのに、直木賞が獲れない。文壇から正当に評価されない。私の、何が駄目なの?
……何としてでも認めさせてやる。全身全霊を注ぎ込んで、絶対に。


                   (文藝春秋HPより)



本屋大賞も受賞し、本を出せば売れる作家・天羽カイン(天野佳代子)。
何度か直木賞候補に選ばれるが、未だに受賞はなく絶対に次こそ!と
思っている。
そんなカインの担当編集者のひとり緒沢千紘は、カインの気持ちに寄り添い
時には厳しいダメ出しをし、時には褒めてカインの相棒として
カインにとっては最も信頼する編集者になっていく。


作家と担当編集者の様子がわかり興味深かった。
相性が大事なのかもなぁ~。

気難しい作家という認識のカインが千紘には本音を出して語り弱音も吐き
心の拠り所になっている。
そんな作家と編集者の関係はいいな。理想的だなと思いながら読んでいたので
物語の結末は驚いた!


でも千紘のやってしまったことも、少しは理解できる。
絶対ダメなことなんだけど・・・

カインも許さないと言いながら(紙に書いたものだったけど)
そこには千紘の喜ぶものも添えてあり、それは今まで寄り添ってくれた感謝の
気持ちもあったんじゃないかな?

それが少し救いだった。
面白い物語でした!
直木賞受賞経験のある村山さんだから、書けるんだろうな。



                        ★★★★
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発行年月:2024年1月


その女は愛する男を殺し、陰部を切り取り逃亡した──
脚本家の吉弥は、少年時代に昭和の猟奇殺人として知られる「阿部定事件」に遭遇。
以来、ゆえあって定の関係者を探し出し、証言を集め続けてきた。
定の幼なじみ、初恋の人、初めての男、芸妓屋に売った女衒、更生を促した学校長、被害者の妻、そして、事件から30年が経ち、小料理屋の女将となっていた阿部定自身……。
それぞれの証言が交錯する果てに、定の胸に宿る“真実”が溢れだす。
性愛の極致を、人間の業を、圧倒的な筆力で描き出す比類なき評伝小説。
作家デビュー30周年記念大作!

                (集英社HPより)



事件の背景にあるものが、よくわかる小説で猟奇的事件には違いはないけれど
阿部定という人が、どんな人なのかが少し分かったような気がする。


物語は、事件の被害者・石田吉蔵の妾の子・波多野吉弥(42歳)が
30年前の事件の真相を知ろうと、関係者に取材した記録を元に進む。

吉弥は、事件の起きる数日前、偶然にも母親と一緒にいて、定と吉蔵が
一緒に居るのを目撃している。
吉弥と定は、目が合い左目が義眼だということを覚えていて再会したときに
すぐに吉弥のことを思い出す。


阿部定は、結構、裕福な家庭の子だったというのに驚いた。
身体を売るような芸奴をしていたと知っていたので貧しい家庭で育ち
売られたのか?と思っていた。
が・・・・結構、性悪で親が半分、捨てるような仕打ちをしていた?
それも酷い話だけど・・・・


殺した吉蔵とは、吉蔵が婿養子の形で働いていた料亭「吉田屋」に定が
女中として働き始め知り合い、それから事件が起きるまで約3か月というのも
驚き。
そんな短時間で、深い仲になって、あんなことになるとは・・・・。

吉弥の取材を受けるという形で、事件前から事件後のことを淡々と語る定。
その話は、凄い濃厚。
信じられないのは途中で宿賃などを工面するため、お互いがお金を借りに行っている
こと。
定は、嘘をつき自分のことを大事に思ってくれている人から金を借り
吉蔵は、吉田屋に戻り妻から・・・

吉蔵を殺すことになって経緯も詳細に語る定。

理解できないけれど、二人の間では、自然な流れだったのかなぁ~?
吉蔵も定を恨んではいないような気がする。


逮捕された写真で微笑んでいるのは、何故か、前から気になっていた。
周りの警察関係者らしき人たちのにこやかな表情で、こんな事件で逮捕した
容疑者を囲んでいるのに・・・・


恩赦があり5年で刑期を終え、出所後は、普通に生活(結婚もして)いたのは
またまた驚き。
事件のことが取り上げられ本になったりで夫に阿部定だとばれて離縁することに
なったらしいけれど。

阿部定の没年は不明らしい。
けれど、この物語のように、命日には吉蔵のことを偲び墓参りし
静かに生活していたのかな?


阿部定事件の深いところを知れて、なかなか面白かった。



                      ★★★★★




発行年月:2023年1月

村山由佳 デビュー30年記念作品

原点回帰にして到達点。
猫、犬、馬、人形など、異質な存在との交歓によって導かれるカタルシス、
圧倒的な熱量をはらんだ作品集です。


                  (文藝春秋HPより)


<晴れた空の下>
記憶が長続きしなくなり、人の顔なども忘れてしまい初対面の人に会う感覚。

イギリスで知り合った4つ年下の美大生と結婚した。
自分の分身のように大事にしていたカエルのぬいぐるみエルと
彼も自分と同様に最初から接してくれた。


大好きだった彼の顔は忘れてもエルとの彼を含めた思い出は
鮮明に覚えている。素敵な思い出があれば幸せに生きられると思う。


<同じ夢>
ベーシストの年下の彼が音楽仲間の死後、引き取った犬・ジョン。
彼の元に週1~2回行っているが、ジョンに会うのを目的とするようになり
ジョンと過ごす時間に喜びを感じる。
心がお互いに通じあっていると実感できる存在が出来た喜び。

動物の方が素直だし、愛情表現もストレートだもんね。


<世界を取り戻す>
動物病院に置き去りにされた死期が迫っている猫を自宅に連れ帰る。
小学生の頃、飼っていた猫の最期に間に合わなかった後悔が
ずっとあって。
1週間後、猫は亡くなる。
猫は一生に一度、人間の言葉を話すと動物学者の父が言っていた。
その猫は最期の時「じゃあ、いってくらぁ」と。

なんだか、いいな。
そんな風な別れなら哀しみも半減するでしょう。


<グレイ・レディ>
アメリカの東海岸から更に南の沖合に浮かぶナンタケットは人口1万チョットの
小さな島。そこで作られるナンタケットバスケットは
かご界のエルメスと言われるほど希少。
そのかごが、盗まれ、かごの価値を知らないものが安く値を付け売っていた。
その価値を知る者が手に入れずっと大切に手元に置くはなし。

知らなかったなぁ~、ナンタケットバスケット。
覚えておこう!


<乗る女>
幼い頃、乗馬を習っていた。
北海道にある会社に就職し、先輩に連れられ行った牧場で
人を信じだれなくなっていた馬・レラに出会う。
調教師の黒澤から、もう一度人を信じることを思い出させてくれないかと
頼まれレラとの付き合いが始まり、お互いに信頼関係が芽生えた。
が、乗馬中、レラは脳溢血により亡くなり、レラの下敷きになった
自分も骨盤の骨が砕ける大怪我を追い、東京に戻る。
父は黒澤と会うことも禁じ、やがて結婚。
二十数年ぶりに再び北海道を訪ね、黒澤とも再会。

この後、どうなるのかなぁ~?


<訪れ>
自分史を作る手伝いをしている。
今回の依頼者は90代半ばの男性を父に持つ娘から父の自分史を書いてほしいと
いう依頼。
戦争が始まり、ソ連と満州の境にある地で過ごす。
ケガをして横たわり苦痛と闘う日々のなか、看護してくれたマリアのことが
印象的な思い出。

最期の時に思い出のマリアが訪ねて来てくれたのなら、よかった。
娘としても、それは嬉しいことだと思う。



色々な愛のお話、どれも素敵だったなぁ~



                    ★★★★



発行年月:2003年2月

禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末娘、居場所を探す団塊の兄、
そして父は戦争の傷を抱いて……心震える家族の物語

                   (文藝春秋HPより)



複雑な事情を抱えた家族の物語。


工務店経営の水島重之は、妻が病死し、家事手伝いをしていた女性・志津子と
再婚した。

重之と先妻との子ども・・・貢(当時大学生)と暁(当時2歳)
志津子の連れ子・・・沙恵(暁と同年くらい?)
重之と志津子の子・・・美希


5人家族はふつうの家族として暮らしていたけれど、暁と沙恵は互いに好意を持ち
男女の関係になってから、沙恵は重之と志津子の子どもだとわかり
家族がバラバラに。

暁は家を出て、実家には15年間帰らず、志津子が亡くなり、葬儀に出席するため
に実家へ。
結婚し、子どもも生まれているが、なんとなく家庭は破綻しているかんじ。


沙恵も家を出たが、こちらはずっと独身で、幼馴染が好意を寄せてくれて
プロポーズもされるが断る。

長男の貢は市役所勤務で平凡なりに幸せかと思いきや同じ職場の若い女性と
浮気していて、他人からは十分、幸せじゃない?と思えるのに心が満たされて
いないかんじ。

末っ子の美希も妻子ある男性と不倫していて、その関係も終わりにしようと
思案中。

そしてもっと重たいのが、貢の娘・聡美(高校3年生)が受けている虐め。
こんな執着されたら、どうしたらいいんだろ?
ただただ辛い。

それからこの家族の発端、重之自身の過去が壮絶。
戦争体験の話は、本当に胸が痛む。
こんな体験したら人格も壊されそうで同情する気持ちもある。
けれど、志津子を妻にする前に、何かしていたら、この家族のこの不の連鎖
みたいなものは起こらなかったかもしれないのに・・・・


辛く重たい物語だったけれど、惹き込まれて読んだ。



                   ★★★★



発行年月:2020年12月


つらいことから
どうして逃げちゃいけないの?
【著者からのコメント】
「自分探し」の記憶はあまりありませんが、
「居場所探し」はつい最近まで
くり返してきた気がします。
 心安らげる居場所がないのは不安なことです。
つい、間違ったものに
しがみつきたくなってしまう。
 ここにいていいのだと信じられる場所、
ほんとうの自分を受け容れてもらえる場所さえ
見つかったなら、誰もがもっと生きやすくなるし、
自信を持てるし、
ひとに優しくなれるんじゃないか。
そうした場所を見つけようとして
今までいた場所に別れを告げるのは、
決して〈逃げ〉ではないんじゃないか──。
 今作『雪のなまえ』は、
そんな思いをこめてつづりました。
 時にすれ違っても、みんながお互いのことを
思い合う物語です。
 若い人にも、かつて若かった人にも、ぜひ。
「夢の田舎暮らし」を求めて父が突然会社を辞めた。
いじめにあい登校できなくなった
小学五年生の雪乃は、
父とともに曾祖父母が住む長野で暮らしを始める。
仕事を諦めたくない母は東京に残ることになった。
胸いっぱいに苦しさを抱えていても、
雪乃は思いを吐き出すことができない。
そんな雪乃の凍った心を溶かしてくれたのは、
長野の大自然、地元の人々、
同級生大輝との出会いだった――。
ほんとうの自分を受け容れてくれる場所。
そこを見つけるため、
今いる場所に別れを告げるのは、
決して逃げではない。

                  (徳間書店HPより)



雪乃は、いじめによって不登校に。
胸が痛む。何ら落ち度のない子どもがいじめの標的にされてしまうなんて。


でも、両親、田舎の父親の祖父母や村の人たちが皆、優しい人たちで
雪乃は救われる。
学校に行きたくても行けない子を無理に行かせず、勉強は家で。
そして段々と村の同年の子どもたちと関わり、自然と学校に行けるまでを
描いている。


ああ、よかったと思った。


でも、実際、こういうふうにうまく逃げられない子もいるんだろうなと
ふと考えてしまった。
子どもは親に心配をかけたくなくて、最初は、虐められていることを
話さない。
子どものSOSを見逃さないようにしていないとね。



                      ★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

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