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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2021年7月


行方不明の父、未完の『銀河鉄道の夜』、書きかけの小説。三つの未完の物語の中に「私」は何を見い出すのか? 人生の岐路に立つ女子大学院生を通して描く、魂の彷徨の物語。
執筆に先立って著者は、以下のようなエッセイを寄せています。
=================
(前略)
 もうひとつ分からないのは、宮沢賢治のことだ。
 幼い頃、私はたぶん明確に宮沢賢治作品が嫌いだった。理不尽と唐突な怒りと自己犠牲に溢れ、常に死の気配がして、それでいて、熱くどろりとした生命力も感じる。正直、気味が悪かった。
 ただ、アニメ版の『銀河鉄道の夜』のビデオだけは繰り返し見ていた記憶がある。ますむらひろしさんのファンだったこともあるが、なにより、アニメーションと呼ぶにはあまりに深い銀河の闇に引き込まれた。
 私が一九八三年生まれで、映画が公開されたのは一九八五年なので、おそらく私が六、七歳の頃に失踪して、それ以来、行方不明の実父がまだいた頃に見ていたことも、関係しているように思う。
 だから、大人になり、宗教的な関心から賢治の作品を読み返すようになって、その面白さにようやく目覚めてからも、『銀河鉄道の夜』だけは自分の中でぽっかり浮いている作品だった。
(中略)
 私の手元には、消えた父の残した手紙が一通だけある。その文体からは、私が身内から聞いていた父の人物像とは、かなり異なる印象を受ける。
 この連載長編は、主人公の「私」と、消えた父親と、『銀河鉄道の夜』という三つの未完の物語をとおして、銀河の闇のむこうに消えたものを見つけたくて書き始めた。
 じつは数週間前まで、自分がこんな小説を書くとすら思っていなかった。ほんとうの意味で消えた父親について書こうと考えたことがなかったのだ。そしていきなり始まったということは、たぶん、そういう時期やタイミングが来たのではないかと思う。
==============
「私」をめぐる大いなる冒険の一つの答えが提示される物語をご期待ください。

                     (文芸春秋HPより)



複雑な家庭環境で育った主人公・原 春。
大学院の日本文学研究科で学び、修士論文で宮沢賢治とキリスト教の関係に
ついて書く。
小学生のときに父親は失踪。
父親と母親の関係もなんだかふつうの家庭とは違う。
特殊な家庭環境で育つって、やっぱり色々と心の中に重たいものを抱えて
成長することになるんだろうな。

主人公の春を恋人として見守る社会人の亜紀君は、春のことを一生懸命
理解して自分がそばにいてくれる。
良い恋人だと思う。

それから大学院の友人たち。
篠田くんや売野さんもいい。

修士論文を書くために小説家の元でアルバイトすることになったのも友人の篠田くんが
出版社に就職が決まっていたため助けた。
そしてそのアルバイト先の小説家・吉沢も、春のことを理解し、アドバイス
してくれた。


春の周りにいる人たちは、素晴らしい。


自分のそばにいた人が突然、居なくなってしまうって、ショックなことだけど
自分の力ではどうしようもないことがその人に起きた結果だとしたら
仕方ない、その人にとってはそれがベストだったのだからと思うしかないな。


銀河鉄道の夜や宮沢賢治の作品って大人になってからは読んでない。
時間が出来たら作品集を読んでみたいな。


                     ★★★
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発行年月:2020年11月


ワインバーを営んでいた母が、突然の事故死。落ち着く間もなく、店を引き継ぐかどうか、前原葵は選択を迫られる。同棲しているのに会話がない恋人の港、母の店の常連客だった幸村、店を手伝ってもらうことになった松尾、試飲会で知り合った瀬名、そして……。楽しいときもあった。助けられたことも。だけどもう、いらない。めまぐるしく変化する日常と関係性のなかで、葵が選んだものと選ばなかったもの――。直木賞受賞後長篇第一作。

                     (中央公論新社HPより



なんとも奔放な女性だったなという主人公・葵の印象。
近づく男性とすぐに親しくなって、別れるの繰り返し。

最初に同棲していた港が引きこもり、別れを一方的に告げて家から出て行くのを
なんでだろ?何があった?と疑問だったけれど、
後半に経緯が語られ・・・唖然。
そりゃ、葵が悪いよ。


母親が遺したワインバーを一緒に始める松尾君とは、お互いよき理解者という
間柄で始終、通していたけれど、今後、変わることはあるのかな?
と思ったら・・・葵には新たな男性が現れておしまいという
「えぇ~!?」と心のなかで叫んじゃった(^^ゞ

こういう人、東京には多くいそう・・・偏見か?(笑)


   

                    ★★★


発行年月:2019年10月

島本さんの小説はいつも、自分は傷ついているのだと気づかせてくれる。――藤崎彩織

深い闇の果てに光を掴もうとする女性たちの、闘いと解放。直木賞作家の真骨頂!

性とお金と嘘と愛に塗れたこの世界を、私たちは生きている。
ミスコンで無遠慮に価値をつけられる私。お金のために愛人業をする私。夫とはセックスしたくない私。本当に愛する人とは結ばれない私――。
秘密を抱える神父・金井のもとを訪れる四人の女性。逃げ道のない女という性を抉るように描く、島本理生の到達点。

                    (講談社HPより)



登場する女性たちそれぞれが生きづらそう。
このままでいいのか?と思いながら生きているってしんどいだろうな。

女性たちが共通して接する、司祭の金井先生。

女性たちの悩みに、助言したりしているけれど、彼にも大きな胸に抱えた痛みが
あったとわかる。
司祭になぜなったのか?
妹を救いたくて、神学を学んだのに、それが妹を自殺に追いやることになって
しまったということ。
なんだか、一番思いたい過去!

誰かを慰めたり、勇気づけたり、することで、自分自身も救われることに
なるのかな?


<雪ト逃ゲル>に出てきた女性が、息子とスペインで新しい
生活をスタートさせている後日談は、明るい未来が見える気がしてホッとした。
彼女の夜はおしまい。

他の女性と金井先生も、夜がおしまいになるといいな。



                          ★★★



発行年月:2018年12月


直木賞受賞第一作!
すれ違う大人の恋愛を繊細に描く、全六篇の作品集。

「あなたは知らない」……私を「きちんと」愛してくれる婚約者が帰ってくる前に、浅野さんと無理やり身体を離して自宅までタクシーでとばす夜明け。ただひたすらに「この人」が欲しいなんて、これまでの人生で経験したことがない。

「俺だけが知らない」……月に一、二回会う関係の瞳さんは、家に男の人がいる。絶対に俺を傷つけない、優しく笑うだけの彼女を前にすると、女の人はどれくらい浮気相手に優しいものなのか、思考がとまる。

同じ部屋で同じ時を過ごしていながら、絶望的なまでに違う二人の心をそれぞれの視点から描いた1対の作品。他の収録作品に「足跡」「蛇猫奇譚」「氷の夜に」「あなたの愛人の名前は」など。

                   (集英社HPより)




短編集だけど、連作になっているものもあり、面白かった。


最初の話<足跡>は、大好きな人と結婚しているのに興味本位で友達が
紹介してくれた治療院を訪れ、その後も通う妻に嫌悪感を抱く。
ま、正しい判断で引き返したのは良かったけど・・・

次ぎの話は飼い猫であるチータ目線の物語<蛇猫奇譚>。
怖いことになるのか?と思ったら、穏便に終わってホッとする。

次ぎの<あなたはしらない>と<僕だけが知らない>は
婚約者がいる女性とバーで知り合った男性との危い関係。
知り合ったのが結婚前で良かった!


<氷の夜に>と<あなたの愛人の名前は>も連作。
幼いときのトラウマから男性(特に手)が怖い絵未。
雨の日、時間潰して入るバーのマスター・黒田と出会って男性に対する
恐怖が消える。
最後の話は絵未の親友が語るものだけど、そこで絵未と黒田の付き合いは
進展していっているんだとわかり微笑ましく思う。


全体的に、ああ、良かったねと思えるラストばかりで読後感がいい。
面白かった!



                        ★★★



発行年月:2018年5月

夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは? 「家族」という名の迷宮を描く傑作長篇。

                     (文藝春秋HPより)



女子大生・聖山環菜が父親を刺殺。
父親は画家で、多くの美大生を指導。
デッサンのモデルに環菜は小学生のころからされていた。
母親も元は美大生で、父親のことを尊敬し、一切逆らうことない。

なぜ父親を刺殺したのか?
大きな謎だけど、読んでいくうちに環菜に同情する。
本当に憎んで刺したわけではないのか?本当に単なる事故だったのか?
真相はよくわからないままだけど、
こんな風に殺人者となってしまったことに一番戸惑っているのが本人というのが
なんとも哀しい。

環菜の国選弁護士・庵野迦葉(かしょう)と臨床心理士の真壁由紀が
環菜の事件背景を追っていく。

この二人の関係もちょっと訳ありな感じで気になったけど、
由紀の夫・我聞が良い人で救われた。
由紀もきっと我聞によって色々救われているんだと思う。

問題のなぜ、父親を刺殺の背景にあった家庭環境がわかってくると
両親から愛情を感じることなく成長したみたいで、孤独だったのかなと思う。

しかし、もう少し頑張れば、自立できる兆しがあったのに・・・・。


刑期を終えた環菜のその後の生き方が心配。
出来たら、社会復帰して、ちゃんと恋愛して幸せになってほしい。


読み応えはあったし、内容も濃かったけれど、直木賞貰える作品かな?と
個人的には思った。



                           ★★★
 

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