忍者ブログ
読んだ本の感想あれこれ。
[1]  [2


発行年月:2019年10月


私の初恋は微笑ましいものなんかじゃなかった
母を喪くし高見澤家で暮らすことになっ たひとりの少年に
三姉妹は心を奪われていく。
プリズムのように輝き、胸を焼く記憶の 欠片たち。

                    (文芸春秋HPより)



三部作。
最初は、三姉妹の真ん中の咲也。
少年に最初からきつく目の態度。
彼が自分たちの暮らしのなかでいい気にならないだろうか?と監視する。
母親の趣味である温室のなかの草花のなかで二人がいる場面を盗み見したり・・・

母が少年に夫と少年の母のことを詰問する様子は、まるで拷問のようだとも感じ
少し、少年に同情的になったり・・・


第二部は、長女の麗子が中心。
麗子は、優雅さをもって少年を下僕のように扱う。
が、少年はそれを楽しんでいるかのよう。
そして、今までの報酬だと急に口づけされる麗子だが、嫌悪感はなかった。


第三部は、末っ子の薫子の語り。
高見澤家の女性たち(母、姉2人、お手伝いさん)がなんだかんだ言いながらも
少年に惹かれていく様を観ながら成長していく。
ある意味、一番、冷静にみなを観ていたのかも。

その後の高見澤家の様子も語られ、姉妹たちは、それぞれ結婚し、自分だけが
独身で、自分だけが今も変わらず力のことを想っている。


最後は、薫子の願いが叶いそうなラストで良かった!
ほかの姉妹も力が、これからも高見澤家から離れずいてくれたら
嬉しいだろうから、この結末はハッピーエンドかな?


もっと、ドロドロな関係になっていくかと思っていたので、案外、ほんわかした
家族の物語だったなぁ~と感じたけれど、こういう話も読後感が良いから好き。


                       ★★★★
PR


発行年月:2019年5月


灼熱の夏、彼女はなぜ幼な子二人を置き去りにしたのか。
追い詰められた母親、痛ましいネグレクト死。
小説でしか描けない〈現実〉がある――虐げられる者たちの心理に深く分け入る迫真の衝撃作。

                     (中央公論新社HPより)


大阪で実際にあった事件を基に書かれた物語だそうです。
ああ、そんな事件あったな~。
子どもを置いたまま帰らず暑い部屋に閉じ込め、衰弱死させるなんて考えられない!
と怒りが沸いたことを思い出す。


物語は、子ども二人を死なせてしまった母親・蓮音とその母親・琴音の語りで進む。
蓮音の起こした事件だけど、そこに至るまでの育った環境、母親・琴音の同じく育った
経緯を読んでいくうちに、哀しい事件が起きる背景にあったものが少しわかってくる。

ただただ、つらい。

人が育っていく過程で、どんな大人たちに関わって、どんな風に自分の存在を
受け入れっらえていたかってその後の人格とかをつくるうえでやっぱり凄く
大切なことなんだなぁ~と改めて感じた。

子どもを死なせ、世間では鬼のように思われている母親・蓮音だけど
子どもたちには、愛情を感じていて、子どもたちも母親が大好きだった。
そのことが唯一の救い。
ただ、子どもを守る知恵というか、自覚が欠落していた。
自分が守られて来なかったし、その母親・琴音も同様。
自分の力でなんとか生き抜いて来たから。

哀しい負の連鎖。

蓮音が結婚したときは、相手の男性も学歴もまあまあ、優しそうだし
幸せになれそうだったのに、結婚してからはただの頼りないマザコン男だとわかり
がっかり。
小学生のころ、母親が出奔し、幼い弟と妹の面倒を見てきた経験があったから
多少放置しても子どもたちで何とかするだろうという気持ちもあったのか?
がんばりやさんと言われて一人で頑張ってきた蓮音が、なんだか哀れで仕方ない。

子どもを死なせてしまった母親でも、鬼だと責めることが何だかできなくなった。

実際の事件の母親は、どうだったんだろう。
どうしたら子どもたちは死なずに済んだんだろう?

いろんなことをグルグルと考えてしまった。


この類の事件が再び、起きることがないといいなと思うけど、
もしまたニュースで知ったら、今までとは違う見方で母親のことを考えるだろうな。



                      ★★★★



発行年月:2007年1月


大人になりそこねた男と女は、
名作に導かれて、世にも真摯な三文小説を織り上げる。

いつか死ぬのは知っていた。けれど、死ぬまで生きているのだ。
ささやかな日々の積み重ねが、こすりあわされて灯りをともし、
その人の生涯を照らす。
そして、照り返しで死を確認した時、満ち足りた気持ちで、
生に飽きることが出来る。
私は、死を思いながら、死ぬまで生きて行く、今わの際に、
御馳走さま、とひと言、呟くために

                  (本の帯文より/幻冬舎)



42歳の栄と慈雨。

栄は離婚歴有、子ども離れているがいる。
予備校の国語教師。

慈雨は、両親と暮らし同じ家の下には兄家族(姪が二人)。
花屋を営む。


42歳で知り合い3年が過ぎた二人。
でも、二人の会話は、なんだか可愛い。

この年齢で、こんな会話が出来る男女って素敵だな~と思ってしまった。


能天気な二人だけど、栄には、結構、重たい過去があった。
でもちゃんと社会に関わって自立した生活をしているし
慈雨と出会って、その生活もなんだか明るいものになったかんじ。

二人はお似合いだし、このままの雰囲気で関係が続いたらいいなぁ~。


姪っ子の衣久子と栄の息子・久助の関係もちょっと良い。


色々な小説の1節が時々、書かれているけれど、どれも分からなくて
巻末の解説を観て、ああ、どれも作品名と作者は知っているのになぁ~と
思った。
名作と言われている作品をあまり読んでいないんだな・・・と反省^^;



                         ★★★★



発行年月:2015年1月


 幼い頃から想いを寄せていた諒一を奪った親友・百合。二人の息子に「直巳」と名付けた日から、真由子の復讐が始まった。22歳年下の直巳を手塩に掛けて〝調教〟し――。谷崎潤一郎作家の山田詠美が、名作『痴人の愛』に挑む、絢爛豪華な愛憎劇!

                    (中央公論社HPより)





前からこの著者の文章が好きでしたが、これは秀逸!!

谷崎潤一郎の『痴人の愛』が文中にも出てきて、主人公の真由子が親友の息子・直巳を
幼い時からずっと見守り、自分好みにつくりあげていく過程が描かれる。
それに伴い、直巳の母・百合と真由子の幼いときからの関係が描かれ
表面上はお互いが親友として付き合うけれど、心の奥に秘めるものが
成長するにしたがって大きくなっていく。


真由子の父の死の真相は衝撃的だったなぁ~。
大好きな父親の死の真相を知ったショックは相当なものだったでしょう。


そして息子の直巳と真由子の関係を知った百合もショックだと思うのだけど・・・・

真由子も百合も衝撃を受けたであろうのに、その気持ちをあまり表さず
変わらぬ親友の付き合いを続けているところが、怖かった。


ドロドロの愛憎劇が中身なのに、表面上は綺麗な文章でサラサラと過ぎていく。


谷崎の『痴人の愛』をまた読んでみたくなった。


                         ★★★★★



発行年月:2013年2月

誰もが、誰かの、かけがえのない大切な人。 失ったものは、家族の一員であると同時に、幸福を留めるための重要なねじだった――。 突飛で、愉快で、愚かで、たまらなく温かい家族が語りだす、愛惜のモノローグ。感涙の傑作長篇小説! 「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」 ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。二人の兄妹に父側の弟が加わり、さらにその後、次女が生まれる。それは、幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた長男の死をきっかけに、一家の姿は激変する。母がアルコール依存症になり、家族は散り散りに行き場を失ってしまう。やがて、それぞれは自分に似合った悲しみを選択し、自身と家族の再生を目差すのだが……。 かつて誰も言葉にしてくれなかった「人生のアイディア」がちりばめられた、著者渾身の新たなる代表作。

                  (幻冬舎HPより)



妻に先立たれた男・澄川誠と夫の女性関係が元で離婚した女・美加。
誠は4歳の創太を連れて、美加は長男・澄生と長女・真澄を連れての再婚。
そして、再婚後生まれた千恵。

物語は第一章から第四章まで、主に子どもたちが、それぞれ語る。

<第一章 私>
30歳を過ぎた真澄の語り。
両親が離婚して母親が親権を持ち、兄と3人で暮らしていたが、新しい父親が
できた時のこと。
兄の澄生は17歳のとき落雷に打たれて亡くなったこと。
それ以後、母がアルコ-ル依存症になり入退院を繰り返すことになったことなどを
家族の歴史を大まかに語る。


<第二章 おれ>
社会人になった創太の語り。
大学時代の食堂で働いていた50歳過ぎの女性・真知子と付き合っている。
自分の本当の母親は病死しているが、新しい母親に自分の存在を認めて欲しくて
必死だった子ども時代のことを語る。


<第三章 あたし>
澄川家になかで唯一、みなと血がつながっている千絵の語り。
家族のことを冷静な目でみている。


<第四章 皆>
現在の澄川家の話。
真澄は恋人のロバ-トと付き合っていて、かれには病気の妻がいたが・・・・
アルコ-ル依存症の美加をなんとか立ち直らせたいと思う子どもたちの気持ちが
美加に通じたようなラストは胸がジ~ンとした。


澄川家の家族は、澄生の死を抱えて、長く苦しい時期を過ごしたけれど、最後は
皆で良い方向に向かっていけそう。

澄生と真澄の曾祖母が遺したことば
「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」が冒頭に出てきたけれど
生きていれば、いろいろあるのは皆同じ。
だけど、最後にそんな風に思えるのって理想だな。


明日死ぬかもしれない・・・・こんな時代だからこそ、
このことばを胸に留めながら日々の暮らしを大切に送りたい。
なんて思った。


                            ★★★★
カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 6 7 9
10 12 15
17 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
メ-タ-
kyokoさんの読書メーター
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[09/20 kyoko]
[05/23 のぶ]
[09/15 kyoko]
[09/14 ひろ]
[03/06 kyoko]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
kyoko
HP:
性別:
女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
フリーエリア

Copyright (c)本を片手に・・・ All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  image by Night on the Planet  Template by tsukika

忍者ブログ [PR]