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読んだ本の感想あれこれ。
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383342d4.jpeg発行年月:1971年12月(単行本初刊)
       1982年5月(文庫本)



太平洋上に張られた哨戒線で捕虜となり、
アメリカ本土で転々と抑留生活を送った海の兵士の知られざる生。
小説太平洋戦争裏面史


                     (新潮社HPより)



次女が夏休みの読書感想文の課題図書のなかから選んで読んでいたので、
わたしも読んでみました。

太平洋戦争初期の昭和17年4月に太平洋上で敵艦を見つける使命で、漁船に乗り込みその任務中、捕らえられ捕虜生活を送ることになった中村末吉氏。
4年半に及んだ捕虜生活の全貌を著者が取材し、物語にしたという本書。

アメリカ艦隊を見つけるために乗り込み敵艦を探す中村氏たちは、敵艦をみつけ、無線で知らせるのですが、それは敵にも容易に傍受され、直ちに中村氏の船は攻撃により撃沈。
そうなることは予測済みであり、死を覚悟の上の任務でありそれで死ねるのなら名誉なことという考えが当時の最前線で戦うものたちには共通した考え方であった。

が、中村氏の予想に反し、捕らえられてしまった。
命のあることを喜ばす、死ねなかったことを悔やむ。

捕らえた側のアメリカ兵たちにはその考え方は理解不能だったというけれど、読んでいるわたし自身もアメリカ兵の考えと同じ。
当時の日本人の考え方が特異なものだった。

捕らえられてからも、なんとかして自決しようと食事を断ったり抵抗を示す。
捕虜に出される食事は栄養がありそうな豊かなもの。
そして、次第に考え方を変えていく。
必ず、助けが来る。そのとき、弱っていたはダメだ。体力はつけておこうと。


捕虜として背中にPW(prisoner of war)と記された服を着せられている。
アメリカ兵たちは、捕虜になったことは恥じるものではなく、懸命に戦った証であるから誇れるものだと中村たちに言う。
そのときは、アメリカ兵の言葉に共感できるはずもない中村たちだっただろうけど、
人間らしく敵国の日本人を扱い、本土に帰してくれた。

歳月が経ち、振り返ったときに、その言葉に共感出来る物があったのかな?
本書の表題の意味をあれこれ自分なりに考えてみた。


敵国アメリカ。鬼畜米兵。
最前線で懸命に戦う兵たちに捕虜になったら恥だ。自決せよとまでの教育をしていた軍の上層部。
日本の国全体が恐ろしい考え方で洗脳されていたことに驚く。


戦争の物語は沢山、読んできたけれど、淡々と描く捕虜生活のなかで
生活していた日本人の精神的苦悩がよくわかる本。
文章も分かりやすく、物語に没頭して読めた。
ほかの書も読んでみたくなった。


★★★★★
 




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51QYhBoRxdL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2012年2月
 


女は素知らぬ振りをして、いつも抜かりなくすべてを整えている──。

50歳を目前に大企業からリストラされたバツイチの岳夫は、恋人にも振られ、全てを失って一人きりで軽井沢のボロ家での田舎暮らしを始めた。しかし彼の周りには、料理屋の優しい女将とその娘、艶やかな人妻、知的な獣医などなぜか女性が現れて……。思いがけなく展開する人生に立ち向かう男と女たち。大人のための長篇小説

                                            (新潮社HPより)


50歳目前の男性が主人公。
珍しいな・・・男の人が主人公なんて・・・・と先ずは思いました。
それも離婚して8年で経営不振の航空会社をリストラされてという状況。
建築家だった父、自らが建てた軽井沢の放置状態だった古い別荘を新しい住処に決め、そこでの生活を描く。

でも、どんどん広がる人間関係は楽しい。
先ずは、ホ-ムセンタ-で買い物していて会話した店員・恵理。
その母親・ゆり子が営む小料理屋「しののめ」の常連になり、別荘滞在中の紘子と知り合い、捨て犬を飼う事になり、動物病院の獣医師・沙世とも出会う。
実にいろいろな女性と知り合う主人公の梶木岳夫。

捨て犬をロクと名づけ飼うのだけど、このロクが可愛い♪
利口だし・・・。
唯川さんがきっと犬好きなんだろうなぁ~。


そして終盤、意外な真実がわかる。

なかなか面白いお話でした♪


                                       ★★★

51IA-xJe4aL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2012年6月


最期のとき、あなたは何を着たいですか?
充実した人生の最期を迎えるための準備=『終活』をキーワードに、他人と関わり合いながら生きる人間の「絆」を描いた、人情系エンタテインメント。小説すばる新人賞作家による渾身の一作!


                     (集英社HPより)



主人公の香川市絵(34歳)は、司法書士。
勤めていた事務所のボスは折り合いが合わず、独立することに。
事務所兼自宅として購入したのは、築80年のあばら屋。
そして、そこに父親の再婚相手の連れ子だった血のつながりのない弟・基大が転がり込んで2年ちょい。

事務所兼自宅は奥まった場所にあるので、とおりまで出たところで、門前相談所を構える。
そして、そこに段々に集まるお年寄り。
その人たちの相談を聞くうちに思いつく、終活ファッションショ-。

基大はデザイナ-。その友人で度々遊びに来るリオ(本名はのりお)は謎のダンサ-。
一風変わった人々が集まり、ショ-のための準備が始まる。

不登校の女子高校生、ホスピス入院中の30半ばの女性。
姑の遺言状どおりの葬儀が出来なかったことを悔いる嫁などなどが参加。

笑いのなかに「死」という誰にでも訪れる現実を見つめる場面があったりで、物語の進行と同時に自分自身の「死」にも目を向けることが必要だなと痛感した。


著者は、現役の司法書士でNPO活動や講演を通じて「終活」の普及に勤めているそうです。
なるほど・・・・・文章で説明されるより、こうして物語になっている方が、広く普及されるかも。
新人賞受賞の「たぶらかし」も読んでみたいなぁ~。


                                        ★★★★
 
41mU7ke30DL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年10月


朝日新聞連載小説の単行本化。著者は芥川賞を受賞した初めての中国人作家。貧農の子・二順は雑技学校に通っていたが、怪我のため調理師をめざす。彼が作る巨大な肉団子「獅子頭」は評判を呼び、妻子を中国に残して日本の中華料理店へ。同僚の中国人、ウェイトレスの日本人女性、予想外のカルチャー・ギャップ……気の弱い二順は日本でどう生きていくのか。力強い明るさにみちた波乱万丈の成長小説。


                                     (朝日新聞出版HPより)


ちょっと厚い本(450頁ほど)だけど、読みやすいので、スラスラと読めました♪
楊さんの物語は、中国人の考え方や暮らしぶりがよくわかって、興味深いことばかり。

物語の主人公は張二順(ジャン・ア-シュン)。
1967年、彼の出生時から始まる物語。
舞台は中国の田舎から大連、そして日本へと移っていく。


両親は貧しい農民だったけれど、伯父が大連で裕福な暮らしをしていて、その伯父の力で父親が雑技団の調理師としての職を得、二順も7歳で父親に次いで大連に渡り雑技団に入学する。
調理の経験などない父親だったが、一生懸命、調理を覚える。
練習が終わり、食堂で食事を貰う訓練生たち。
父親はそっと二順のご飯のなかに小さな肉団子=獅子頭を入れてくれる。

物語は、場所を変え、二順に関わる人も変わるのだけど、いつも獅子頭がある。

雑技団を怪我で辞めたあとは、調理人の道に進む二順。
そして、妻となる雲紗(ユゥンシャ)と出会う。
結婚し、娘・雲舞(ユゥンウ-)も生まれ、幸せな二順だったけど・・・・波乱万丈な暮らしへ移って行く。


やがて単身で、日本に渡り、そこで料理人として働く。
中国人が思う、日本の文化のあれこれは、なかなか新鮮。
蕎麦屋で蕎麦を食べる場面は面白かった。
中国人って、そういう風に考えるのかぁ~。


波乱万丈な暮らしのなかでも、悲壮感が感じられないのが救い。
二順が出会う人たちは、みな、気持ちが優しいひとたちで、だからそれに甘えてしまうダメな二順なんだけど、憎めない。

日本で別の家庭を持つことになるのだが、妻となった幸子には愛情をあまり感じない二順。
なんでじゃあ結婚したの!?と思うところだけど、そこには中国人ならではの政治的背景が絡んできている。

幸子と結婚しなくては、強姦罪にされ、国に戻され政治犯となってしまうと恐れが強かったから。

二順の無知がそうさせたんだろうけど、時代的背景や暮らしてきた環境を考えると、そういう考え方をする者は別に特殊じゃないのかも。
日本人には、ちょっとわからない考え方だけど。

成り行き任せの感が拭えない二順だけれど、なんとなく幸せな暮らしが出来そうか?と思えるラストで
ホッとするような気が抜けるような変なかんじ。

でも、なかなか面白い一人の中国青年の生き方でした。

料理屋が舞台なので、美味しそうな料理がたくさん登場するのは楽しかった♪

本場の獅子頭・・・どんな味なんだろ?


★★★★

 

31V73shvUvL__SX230_.jpg   発行年月:2011年11月


   彼女たちのやっかいな虚栄と、せつなる孤独に捧げる

   「こんなはずじゃなかった」――悩みながら、
   泣きながら戦っているすべての“彼女”たちのために。

カバーも帯もなく、バッグに放り込んで良し、
丸めて手に持ち歩いて良し----かつてない、女子必携の短編集。



                                          (光文社HPより)



過去にアンソロジ-で発表した作品も含めた短編14編。

主人公は20代~30代の女性達。
周りには結婚している友達も多く、社会的に責任ある仕事を任されていたり、自身の恋や仕事の今後に悩む年代。
同窓会で再会したかつての友人たちとの語らいで感じる焦燥感。

女性の心理をとてもよく表している作品ばかり。

どれも面白かったけど、
三番目の「彼女の躓き」は、特に面白かった!
学生時代から主従関係のような二人の女性。
祥子にはいつも適わないと思っている私。
恋人を横取りされたこともある。
今の恋人・昌也は祥子には会わせないようにしなければ・・・・。
そして祥子から恋人を結婚も考えているという恋人を紹介するから会おうと。
そして自分にも付き合っている人がいることを話し、後にお互いの恋人と4人で会う。

それからが面白かったぁ~!
私の作戦。祥子に勝った!と思ったけれど・・・・・思わぬ落とし穴。


表紙にカバ-がなく、紙もちょっとわら半紙みたいで変わってた。
そして、本文に水彩画みたいなイラスト。

なんだか楽しい本でした♪


                                        ★★★★

 
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