絶賛された受賞作に、著者の最新最高の作品を合わせた花束のような短編集!
空港の国際線到着ロビーを舞台に、渦のように生まれるドラマを、軽やかにすくい取り、「人生の意味(センス)を感得させる」、「偶然のぬくもりがながく心に残る」などと絶賛された、川端賞受賞作。恋の始まりと終わり、その思いがけなさを鮮やかに描く「寝室」など、美しい文章で、なつかしく色濃い時間を切り取る魅惑の6篇。
(新潮社HPより)
既に発表済みの6編を集めた書なので、「あ、これ読んだことある」という作品もありましたが
こうして順番に読むと、何か共通するようなものを感じた。
<犬とハモニカ>
空港の到着ロビ-に居る人々、それぞれがどういう経緯でここにいるのかが個別に語られる。
そして、飛行機が空港について同じ飛行機に乗り合わせていた人たちが降りてきて
僅かな関わりがあって・・・・。
犬とハモニカもそこに登場。
空港の情景が目に浮かんでくるような楽しさがあった。
<寝室>
5年間付き合った恋人から別れを切り出されショックを受ける文彦。
文彦には妻子がある。
恋人から言われた言葉「あなたはどのくらい困ったひとかわかっていない」
未練が残ったまま帰宅した文彦だったが、帰宅した途端、その気持ちは薄れベッドで寝ている
妻をみて恋人と別れたことに感謝したい気持ちになる。
まったくもって困ったおとこだ・・・・笑
<おそ夏のゆうぐれ>
付き合って半年の男と旅行。
旅行先で男に向かって「食べたい」という。
文字通りの意味にビックリしたが・・・・食べたのはほんの指の皮膚。
ちょっと怖い女。
食べれば自分の一部になっていつも一緒にいる気分でなにも怖くなくなるからと・・・
一番怖いのは、この女だよ~。
でもなんとなくそういう自分も冷静に見ているかんじで更にゾッ。
話としては面白かった。
<ピクニック>
結婚5年の夫婦。
週末は近所の公園に昼食を持って出かける。
ピクニックは妻の好み。
夫がその理由を聞くと「外で見る方があなたがはっきり見えるんだもの」と。
ちょっと不思議なかんじ。
夫もそれを感じるが・・・・この夫婦の今後がちょっと心配。
<夕顔>
付記にもあったが、これは江國流、源氏ものがたり。
儚く美しい源氏のピュアな恋物語。
<アレンテ-ジュ>
ポルトガルが舞台。
ゲイのカップル、マヌエルとルイシュが、リスボンからアレンテ-ジュに旅行。
旅行先で出会った人たちとのことで、小さな諍いが起きるが、仲直り。
町の様子がなんだか面白い。
街頭もまばらな道の壁に一列に並んだ、おばあさん8人は、江國さんがポルトガルに
旅行中、実際にみたそうだ。
どうしてそんな風に並んで??理由がしりた~い!!
どの話もとってもよかった。
たぶん、江國さんの文章が読んでいてとても心地いいからかな?
それぞれの話のなかで、登場する人たちが、身近な人からの言葉や態度から
ちょっとした違和感とか孤独感を感じる瞬間がうまく描かれていた。
いつもながら表題のセンスには脱帽です♪
ある夏のこと。旅先で道に迷った私が声をかけた小さな女の子。
ふたりのいっぷう変わった友情が紡ぎ出す、
不思議で素敵な物語----。
(白泉社HPより)
新聞記者をする私が、仕事で出かけた先で道に迷って出会った小さな女の子。
女の子に付いて行き、女の子の家で泊まらせてもらい、一緒にお散歩に出かけたり・・・。
私には恋人が居て、彼には明日、電車で帰る時刻まで教えてあるのに、
なかなかその電車の駅にたどり着けない。
女の子は一人で住んでいて、食事の支度やら、お菓子やら何でも用意してくれる。
家にはお喋りするお皿。なんと車の運転までしちゃうお皿。
そして散歩の途中で出会ったお喋りする風呂敷。
奇妙だけれど、何だか楽しい。
新聞記者の私は、そして突然、恋人の待つ元の場所に戻る。
きっかり帰ると告げた日の告げていた時刻に。
そして、私は恋人とその後、結婚し、子どもが生まれ孫も出来て・・・
すきまのおともだちたち・・・・すきまに落ちたときには又会える。
ファンタジックで楽しいお話でした!
挿絵のこみねゆらさんの絵も可愛くて色使いが素敵!
江國さんの不思議なお話に合っていました。
★★★★
姉妹のルールは好きな人を<共有すること>
ブエノスアイレス近郊の日系コロニアで育った佐和子とミカエラの姉妹は、少女の頃からボーイフレンドををルールにしていた。留学のため来日した二人だったが、誰からも好かれる笑顔の男、達哉と知り合う。達哉は佐和子との交際を望み、彼女は初めて姉妹のルールを破り、日本で達哉と結婚する。同じく達哉に好意を抱いていたミカエラは父親がはっきりとしない命を宿してアルゼンチンに帰国する。20年後、佐和子は突然、達哉に離婚届を残して、語学学校の教え子であった田渕ともに故国に戻る。一方、ミカエラは成長した娘アジェレンと暮らしていたが、達哉が佐和子を追いかけてアルゼンチンにやってくると……。
(小学館HPより)
登場人物たちの考え方、行動、どれにも全く共感は出来なかったなぁ~。
でも、それぞれの行動に嫌悪感みたいなものは、なく淡々と恋の行方を傍観してるかんじで読んでいた。
姉・佐和子(カリ-ナ)は、達哉と結婚し、日本で暮らしていたが、ある日、一方的にアルゼンチンに帰国してしまう。
そして、ほかの男と暮らし始める。
妹・十和子(ミカエラ)は、娘のアジェレンと暮らしているが、アジェレンの父親が誰なのかは明らかにされない。
そして、かつては達哉に好意を抱いていた。
アジェレンは、母親(ミカエラ)の上司である男性(妻子あり)と恋愛中。
結婚したら、恋愛なんて・・・・と思ってる自分には全くもって自由奔放な登場人物たち。
ある意味、うらやましいかも(笑)。
似たもの同士だから、大して問題にもならず、成り行き任せのかんじで過ぎていく。
日本とアルゼンチンの両方が舞台で、ちょっと異国のかんじも味わえて面白かった。
江國さんのその場の情景が浮かぶような文章なので、楽しく読めた。
表紙の写真も雰囲気あって◎!
表題の「金米糖の降るところ」の意味も文中にあるけど、ロマンチックな発想で素敵だった!
★★★★
人妻は物を感じちゃいけないなんて法があるかしら。
----せめて、きちんとした不倫妻になろう。
満ち足りているはずの生活から、逃れようもなくどんどんと恋に落ちていく。恋愛を、言葉の力ですべて白日の下にさらす、江國作品の新たなる挑戦!
恋愛のあらゆる局面を、かつてない文体で描きつくす意欲作!
私は転落したのかしら。でも、どこから?
会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、純粋な美弥子さんに心ひかれ、2人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた-----。
(講談社HPより)
面白かったぁ~。
今まで不倫を扱った物語は、沢山、読んできたけれど、文体が異質。
まるで、童話か何かを読んでいるような感覚。
主人公の美弥子は、真面目で家事も抜かりなくこなす。
いつ誰に見られても恥ずかしくないように生活することを心がけていて、見習いたいところがいっぱい。
子どもがまだ居なくて、夫の浩と二人暮らし。
夫婦仲も悪くない様子。
でも、アメリカ人のジョ-ンズと知り合い、二人で散歩をすることが習慣化し、段々惹かれていく。
先にジョ-ンズのほうが、美弥子に好意を寄せていた様子だけど・・・。
そして、親密さは増して・・・・。
今まで清く正しく暮らしてきた主婦ならこその行動かなぁ~?
本人が言う「世界の外に出てしまった」ら、もう元には戻れないのかなぁ~?
ジョ-ンズはアメリカに妻と子どもが居て、その結婚の前にも一度離婚をしていて・・・・
かなり要注意人物というかんじだけど、大学の先生だし、物腰も柔らかで無理強いはせず常に紳士的な態度となれば、最初に抱いていた警戒心のようなものも薄れるのかも。
読みながら・・・あら、良いかんじの人。とわたしも思ってしまったから・・・笑
でも、最後の・・・・・もう小鳥のようには見えないのでした。 はショックだった!
ジョ-ンズが憎らしくなってきた!
美弥子はどうなるんだろ??
と考えたら、気の毒になりました。
表紙の絵とこの物語の内容が、ピッタリ!
フランシスコ・ゴヤの「気まぐれ」No.72 お前は逃げられまい だそうです。
★★★★
三世代にわたる「風変わりな一族」の物語
東京・神谷町の洋館に暮らす柳島家は、ロシア人の祖母、変わった教育方針、四人の子供のうち二人が父か母が違う…等の事情で周囲から浮いていた。時代、場所、語り手を変え、幸福の危うさ、力強さを綴る。
(集英社HPより)
600頁近い厚い本でしたが、面白くて最後まで夢中でした。
3世代にわたる柳島家というある変わった一家の歴史。
3世代の人々が代わる代わる時系列もバラバラで語る物語。
メモを用意して、相関図を書きながら読みました。
覚え書きとしてここに書いておくと・・・・・
ロシア人の絹は柳島竹次郎とイギリスで出会う。
そして、日本に二人で暮らし、3人の子ども(菊乃、百合、桐之輔)が生まれる。
菊乃が豊彦と結婚し、その子どもが4人(望、光一、陸子、卯月)。
けれど、望は父親が別にいて、卯月は母親が別にいる。
百合は一度結婚したが離縁して再び戻り、桐之輔は生涯独身宣言をしている。
子ども達は学校に通わず、自宅で家庭教師や親たちから勉強を教わっている。
3ヶ月だけ学校に通ってみたが、いずれも学校生活に馴染めず問題児扱いとされ学校に通うことは断念。
他者から見たら、実に風変わりな柳島家なのですが、家族は皆、仲良しで会話などを読んでも上流階級の上品な暮らしぶりといったかんじで楽しい。
段々、あとの年代になってくると、皆が年を取り、亡くなる人も出てくるけれど、この家族の一員で居られたことには、皆、満足していたんじゃないかな?
後ろの方で絹が竹次郎と知り合ったころの話には、驚きの事実があって、
あ~この家族の風変わりな様は、ここからスタ-トしていたのだなぁ~なんて思った。
抱擁とライスには塩・・・・柳島家を表す言葉が表題になっている。
ライスには塩・・・・わたしもこれはわかる!コショウも欲しいかも(笑)
本が終わりに近づくと、柳島家の話は、もうお終い?と淋しくなった。
ずっとこの一族の歴史を見ていたいと思ってしまった。
楽しかった。
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;