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読んだ本の感想あれこれ。
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41mU7ke30DL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年10月


朝日新聞連載小説の単行本化。著者は芥川賞を受賞した初めての中国人作家。貧農の子・二順は雑技学校に通っていたが、怪我のため調理師をめざす。彼が作る巨大な肉団子「獅子頭」は評判を呼び、妻子を中国に残して日本の中華料理店へ。同僚の中国人、ウェイトレスの日本人女性、予想外のカルチャー・ギャップ……気の弱い二順は日本でどう生きていくのか。力強い明るさにみちた波乱万丈の成長小説。


                                     (朝日新聞出版HPより)


ちょっと厚い本(450頁ほど)だけど、読みやすいので、スラスラと読めました♪
楊さんの物語は、中国人の考え方や暮らしぶりがよくわかって、興味深いことばかり。

物語の主人公は張二順(ジャン・ア-シュン)。
1967年、彼の出生時から始まる物語。
舞台は中国の田舎から大連、そして日本へと移っていく。


両親は貧しい農民だったけれど、伯父が大連で裕福な暮らしをしていて、その伯父の力で父親が雑技団の調理師としての職を得、二順も7歳で父親に次いで大連に渡り雑技団に入学する。
調理の経験などない父親だったが、一生懸命、調理を覚える。
練習が終わり、食堂で食事を貰う訓練生たち。
父親はそっと二順のご飯のなかに小さな肉団子=獅子頭を入れてくれる。

物語は、場所を変え、二順に関わる人も変わるのだけど、いつも獅子頭がある。

雑技団を怪我で辞めたあとは、調理人の道に進む二順。
そして、妻となる雲紗(ユゥンシャ)と出会う。
結婚し、娘・雲舞(ユゥンウ-)も生まれ、幸せな二順だったけど・・・・波乱万丈な暮らしへ移って行く。


やがて単身で、日本に渡り、そこで料理人として働く。
中国人が思う、日本の文化のあれこれは、なかなか新鮮。
蕎麦屋で蕎麦を食べる場面は面白かった。
中国人って、そういう風に考えるのかぁ~。


波乱万丈な暮らしのなかでも、悲壮感が感じられないのが救い。
二順が出会う人たちは、みな、気持ちが優しいひとたちで、だからそれに甘えてしまうダメな二順なんだけど、憎めない。

日本で別の家庭を持つことになるのだが、妻となった幸子には愛情をあまり感じない二順。
なんでじゃあ結婚したの!?と思うところだけど、そこには中国人ならではの政治的背景が絡んできている。

幸子と結婚しなくては、強姦罪にされ、国に戻され政治犯となってしまうと恐れが強かったから。

二順の無知がそうさせたんだろうけど、時代的背景や暮らしてきた環境を考えると、そういう考え方をする者は別に特殊じゃないのかも。
日本人には、ちょっとわからない考え方だけど。

成り行き任せの感が拭えない二順だけれど、なんとなく幸せな暮らしが出来そうか?と思えるラストで
ホッとするような気が抜けるような変なかんじ。

でも、なかなか面白い一人の中国青年の生き方でした。

料理屋が舞台なので、美味しそうな料理がたくさん登場するのは楽しかった♪

本場の獅子頭・・・どんな味なんだろ?


★★★★

 

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41ZT7KMKQRL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2004年5月


鎌倉の四季の中に綴られた女性の人生の哀歓。
鎌倉の美しい四季の中、女盛りが過ぎようとする女性の心情と良き時代を生きた老女の生涯を描く、名エッセイストの瑞々しい小説デビュー作。悲しいほど儚い生だから、命は輝き、老いさえ愛しい。



                       (集英社HPより)



初読みの作家さん。
図書館棚から、長女が手に取り「これ、おかあさんには面白いかも」と。
長女がよんだわけじゃなく、単なる勘で選んでくれたそうで・・・^^;

期待せず読んだら、これがすごい深い話でした!!

物語に登場する二人の老年にさしかかる年代の女性達。
信子と菊子。
若い頃から仲良くしている友人同士で、それぞれ既婚者。

物語の最初は、二人がお花見をする描写。
菊子のおば夫婦が住んでいた家で、その庭にある桜の花を見に行く。
おじは既に亡くなっているが、日本が皆、貧しく慎ましやかな暮らしをしていた時代、豊かな洋風文化のなかで気楽に暮らし、ドイツ人との交流もあった人。
そのためおば・逸子も年老いた今もどこか夢見がちで気位が高い。
おばは病気療養中で入院しているが、なにかと姪である菊子を呼び、あれこれ用事を言いつけ、自分の身元保証人になってほしいとも言われている。

そして、菊子の夫・讓二も堅実な暮らしから離れているかんじで、外国骨董を買い占めて楽しんでいる。
おじの遺したドイツの人形も非常に価値のある物だと知り、自分のものでもないのに、喜んだり・・・。


対して、信子は平凡だけれど、良識ある夫・亮吉と安定した暮らしをそているかんじ。
何度か膵炎で入退院を繰り返したが、胆のう摘出により健康を取り戻した。


菊子と信子は度々、会い、いろいろな話をする。
信子からすると菊子は、若い頃から華やかなイメ-ジのなかで暮らす存在だったけど、菊子からは
「私の欲しいもの、全部持っている・・・・・・あなたはきっと死ぬまで幸せよ」と言われる。



そして、終盤、そんな菊子の言葉の通り、菊子には辛いことが重なって起きていく。

それを傍らで心配しながらみている信子も辛そう。

年老いて生きていくと、こういうことは誰の身にも起きていくことなんだろうな。
辛いな・・・イヤだな・・・・とちょっと気持ちが沈んでしまった。

けれど、生きて死んでいくってこういうことなだろうな。
それは公平に誰にでも訪れることなのだから、そうなったらそうなったで仕方ない。

物語の最後の
「いずれ死ぬことが、今生きているということだ」には、妙な潔さを感じて、不思議とその言葉に素直に共感できた!


うん、なかなか本でした!

ただし、若者が読んでもこの良さは、わからないだろうなぁ~。
自分もこういうものの良さがわかる年代になってしまったか?^^;


舞台が鎌倉で、丁度旅行をしてきた後だったので、出てくる地名やら、景色の描写が頭に浮かんできて楽しかった♪


★★★★
 
51PuyeViyAL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年8月


苺、桃、マスカット……鮮やかな果実に囲まれて娘は育った。
捨ててきたはずの故郷と母、交わされた約束。
停電の夜に、記憶の灯がともる。
みずみずしくて甘酸っぱい、家族の物語



                       (中央公論新社HPより)


主人公・鈴子は、夫の誠一郎と盲導犬の茶々とアメリカで暮らしている。
誠一郎はピアノと作曲をニュ-ヨ-クにあるカレッジで教えている。
鈴子の実家は、青果店。
母親が祖母から受け継いで営んでいる。


鈴子のアメリカでの暮らしぶりと、日本で過ごしてきた思い出を回想するかたちで物語が進む。

まだ祖母が元気だった頃の思い出だったり、2つ上の幼馴染・隆史との初恋の思い出だったり、
誠一郎と出会い、付き合いが始まった頃の思い出だったり・・・・

そこにはいつも、母・咲恵が、鈴子に対して話した言葉や態度が絡んでくる。
娘を心配する気持ちからだと頭ではわかっていても、どうして母親の言葉って、素直に聞けないんだろう?
反発して、心にもないひどい事を時には言ってしまったり、それでまた喧嘩になったり・・・

娘なら、ここでのやり取りは、自身の母親とのやり取りにも過去あったものではないかな?

各章が果物の名前になっている。
第一章 夏みかん
第二章 すももと枇杷
第三章 グレ-プフル-ツ
第四章 苺
第五章 りんごとみかん
第六章 栗と苺
第七章 ゆず

果物の部類だと思っている「苺」は、スパイなんだという例えが面白かった♪

鈴子の夫・誠一郎さん、素敵な人だったなぁ~。
盲目であるけど、ほかの人が見えないものも、ちゃんと見えている。

わだかまりをもった母と娘が最後は歩み寄れたのも誠一郎さんの力もあるかもね。


                                        ★★★★

 
51AFDqRm3CL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年11月


世田谷区、松陰神社前駅から徒歩15分。
女性専用の下宿「タマヨハウス」には、年ごろの三人の女が暮らしていた。
弁護士を目指す涼子、アパレルのデザイナーとして働く撫子、
そして不条理なリストラに遭い、人生にも道にも迷い続ける柊子。
幸せでも不幸せでもない日常を過ごしていた彼女たちだが、
春の訪れとともに現れた真面目だけが取り柄の臨時管理人の過干渉によって、
少しずつ「足りない何か」が浮き彫りになっていく。


                                         (ポプラ社HPより)


表紙から子どもが主人公の児童書?と思ったけれど、違いました。
そして、なんとなく哀しい話かな?と勝手に想像して読みましたが、それもハズレでした。

女性専用の下宿屋「タマヨハウス」に暮らす3人と、管理人のタマヨがアメリカの友達(恋人)の看病のため渡米し、代わりに管理人として来たのは、トモミ。
トモミはタマヨのいとこ。そして、男性だった!
でも、タマヨが今までやっていた通り、朝、晩の食事の用意から細々した日常のことを完璧にこなしてくれる。
そして、思ったことをズバズバ言う。


下宿人の3人の女性たち
涼子(26歳)・・・・弁護士を目指す司法浪人生

撫子(36歳)・・・・アパレルデザイナ-、24歳の上堂薗くんに結婚を迫られている。
柊子(34歳)・・・・前の会社で横領の濡れ衣を着せられリストラ後、就職活動中


3人には、それぞれに父親とのことで、抱えている想いがある。

表紙の絵は、柊子が幼いときの記憶。
それは父の葬儀に参列したときの記憶。
よくわからないけれど、黒い服を着せられ、なぜか不機嫌な母親に連れられ姉とともに葬儀会場に向かった幼い柊子。
雨が降っていたので、持っていた赤い傘をさして、先を歩く母を必死で追う。

表紙の絵から、何か悲壮感が漂ってきましたが、実際には、父親の記憶は乏しく、姉から後にそのときの状況を聞く柊子。

ほかの二人も父親との関係には、ちょっとした確執があるのだけれど、管理人のトモミさんからのアドバイスだったり、タマヨハウスに集う人たちによって、その確執が少し和らいでいく。

自分の心の中で悶々としていることも、こうして良い方向に向かうことって、良い人間関係のなかに居る人にはあるだるだろうなぁ~。
こういう人と人との関わり方、いいなぁ~。

素敵なお話でした♪

ほかの本も読んでみよう!


                                           ★★★★




 
51ZLXehalkL__SX230_.jpg   発行年月:2011年12月


   私たちは無力だけれど、傍らに立ち、そっと寄り添うことができる。



男の求愛に破滅していく0Lが語る衝撃の表題作。
しだれ桜の下に立つ白い男とは。教会に現れた野生児は神に選ばれし者なのか。
残された日々を生きるがんの父に寄りそう娘の決断は…? 
魂を揺さぶる四編の愛の物語。


                                            (角川書店HPより)


表題作「私の愛した男について」だけ書き下ろし作品で他の3編は、既に発表の作品に多少加筆して1冊の本にしたらしい。

表題作は、一番最初。
妻子がありながら、部下の私に接近し、関係を求める男性・高野。

セックス依存症とか。
う~ん、こういう病気本当にあるらしいけど、その標的にされたらイヤだな。
病気とはいえ、高野には嫌悪感を抱いてしまう。
しかし、それを淡々と受け入れていく主人公の女性の心理がわたしにはわからない。
奥さんからあの人は病気だから気をつけてと忠告されても、関係を続け妊娠。
う~ん。わからない。
好きになってきたということなら少しは理解出来るのだけど・・・・


「幻桜」
知的障害者のみっちゃんと脳性まひの女性の物語。
ともに障害を持ち、意思疎通が困難な二人だけど、気持ちは通じあっていた。
切ないけれど、温かいものも感じた。


「命のつけし名は」
ある日、教会に訪れた不思議な青年。
牧師さん夫婦は、その青年を預かることにする。
先天性の聴力障害を持つ青年は、その病気のため生きていく術を知らなかった。
牧師夫妻が温かい愛情を注ぎやがて、別の場所で暮らした青年の成長ぶりに
じ~んとした。


「森に還る人」
骨折のため入院した病院の医師により肺に癌があることが発見される。
余命わずかなステ-ジまで進行した癌のため、ホスピスに転院することになった父。
ホスピスに入るには、本人への病気の告知が前提。
告知のとき、泣いていた父だが、その後はそんなことを忘れたように明るい表情。

人が死ぬことは避けられないけれど、その最期のときに、自身も周りも納得した末の死が理想的と思う。そういう意味ではこの物語の父娘は、理想的な死を迎えたのかも。
そういう最期を迎えた人の死は哀しいけど、なんだか清清しいと思う。


どの話も読み応えがあり、良かった!


                                        ★★★★


 
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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