その男は、ある日突然に「消えた」----母の元恋人を捜す娘が見つけた、切なすぎる真実。

昭和二十七年。何の前触れもなく姿を消し、二度と戻らなかった恋人。それから五十年……末期ガンを宣告された母に代わって消えた男を捜す娘は、いつしか母の想いに諦めたはずの自分の恋を重ねはじめる。函館の街を舞台に、昭和と平成、二つの時代を挟んで向き合う二組の恋人たちの行き着く先は-----衝撃の結末が胸を揺さぶる渾身の恋愛長編。
(新潮社HPより)
久しぶりに切ない恋愛小説を読んで感動しました!
谷村さんは、北の地方が舞台のお話が多いけど、今回もそうでした。
余命短い母親・美月が母の看病のためといい東京の仕事を辞めて来た娘・季恵に話す、夫と結婚する前に好きだった人・大橋藤一郎の話。
その人は、ある日、突然、自分の目の前から姿を消したという。
なにが起きたのか?その後の彼はどういう暮らしをしていたのか?
娘に探してほしいと頼む。
最初は、父親の前に好きだった人を今まだ忘れられずにいるという母親の気持ちに戸惑う季恵。
しかし、母の望みを叶えてあげたいと必死に大橋を探す。
探偵事務所の古賀と出会い、大橋の友人だった喜多門と出会い、いろいろな真実が明かされていく。
母親と大橋が交わしていた手紙の文面も書かれ、二人がお互いのことを深く愛していたことがわかる。
しかし、それなのになぜ消えた!?という疑問も大きくなっていく。
そして、最後は姿を消す前の大橋の気持ちが綴られる。
青函連絡船の遭難事故という史実も絡みながら、ラストはなんとも切ない(/_;)。
読み終えた後も、静かな余韻に浸っていました。
さまざまな職業人の生き方を伝記を通して学ぶシリーズ。偉人たちの業績とそれにいたるまでの過程での希望や情熱、ときには欲を描く。
[主要目次]
1 スーパースターをめざす生き方=野口英世(医学者)
2 リーダーシップをふるう生き方=北里柴三郎(医学者)
3 男女の壁をこえる生き方=荻野吟子(産婦人科・小児科医)
4 地道さをつらぬく生き方=山極勝三郎(医学者)
5 町医者にこだわる生き方=荻野久作(産婦人科医・医学者)
6 自己犠牲という生き方=永井隆(放射線科医)
7 献身で社会を変える生き方=フロレンス・ナイチンゲール(看護師)
特別編 ヒューマニズムにかける生き方=国境なき医師団(NGO)
ほか
(ぺりかん社HPより)
看護師という職業柄、ここに登場の偉人たちは、名前だけは知っていました。
けれど、「へ~こういう人だったんだぁ~」と知ることも多く、自分のなかで持っていた偉人のイメ-ジがちょっと変わったひともいたのが面白かった。
最初の野口英世は、誰でも知っている偉人ですが・・・・・お金の苦労をしていて、外国に渡る費用をなんとか用立ててもらったのに、一晩で大金を使い果たすという信じられない放蕩ぶりには驚いた。
ほかにもオギノ式開発の荻野久作の夫婦仲の良さとか、ナイチンゲ-ルの人生後半は様子とか、知らなかった情報も得ることが出来た。
医師といっても患者さんに向き合う臨床医もいれば、人とは殆ど接することなく研究に明け暮れる医師もいる。
しかし、思いは、病気で苦しむ人を助けたいという信念は共通していた。
そして、自己が犠牲になろうとも目的に向かって歩み続ける姿勢は、感動した。
これは一応、児童書らしい。
なのでとても分かりやすい。
文章を要約したようなイラスト(漫画)も面白かった!
著者が書いているのかな?
ほかのお仕事話の話もまた読ませてもらおうかな?
最期のとき、あなたは何を着たいですか?
充実した人生の最期を迎えるための準備=『終活』をキーワードに、他人と関わり合いながら生きる人間の「絆」を描いた、人情系エンタテインメント。小説すばる新人賞作家による渾身の一作!
(集英社HPより)
主人公の香川市絵(34歳)は、司法書士。
勤めていた事務所のボスは折り合いが合わず、独立することに。
事務所兼自宅として購入したのは、築80年のあばら屋。
そして、そこに父親の再婚相手の連れ子だった血のつながりのない弟・基大が転がり込んで2年ちょい。
事務所兼自宅は奥まった場所にあるので、とおりまで出たところで、門前相談所を構える。
そして、そこに段々に集まるお年寄り。
その人たちの相談を聞くうちに思いつく、終活ファッションショ-。
基大はデザイナ-。その友人で度々遊びに来るリオ(本名はのりお)は謎のダンサ-。
一風変わった人々が集まり、ショ-のための準備が始まる。
不登校の女子高校生、ホスピス入院中の30半ばの女性。
姑の遺言状どおりの葬儀が出来なかったことを悔いる嫁などなどが参加。
笑いのなかに「死」という誰にでも訪れる現実を見つめる場面があったりで、物語の進行と同時に自分自身の「死」にも目を向けることが必要だなと痛感した。
著者は、現役の司法書士でNPO活動や講演を通じて「終活」の普及に勤めているそうです。
なるほど・・・・・文章で説明されるより、こうして物語になっている方が、広く普及されるかも。
新人賞受賞の「たぶらかし」も読んでみたいなぁ~。
★★★★
息子とともに、幻の祖国へ
16歳年下の同居人男性と、10歳の息子。奇妙な家族で向かった先は----。ベールに包まれた「北朝鮮」を辿るノンフィクション。
わたしは、ただ見る。肯定的にも否定的にも捉えない。見ることによって現実に近づき、想像することによって現実から離れ、また見て、現実の只中に戻り、見て想像した対象を揺すり起こして文章を書く----。
(講談社HPより)
この表題を見たとき、「あれ?柳さんは韓国籍なのに、北朝鮮へ行って何をしたのかな?」なんて思ってしまった。
韓国と北朝鮮は分断されお互いを敵視しているんじゃないか?と思っていたから。
しかし、冒頭に書かれているが、祖父が日本に渡ったときには朝鮮半島は南北に分断されていなかったし、もしかしたら北に居た可能性もあると。
だから朝鮮民主主義人民共和国は幻の祖国なのだと。
柳さんの祖父が長距離ランナ-としてオリンピックを目指していたという話は、以前、著者の「8月の果て」で読み、祖父が祖国を離れることになった経緯も読んだ。
なので、柳さんが北朝鮮に対して抱く感情は理解出来る。
そこに描かれる北朝鮮の人々は、日本人と何ら変わらないかんじ。
笑顔で話し、冗談も言うし・・・考えてみれば当たり前なのかもしれないけれど、テレビで報道される北朝鮮に対しては暗く陰湿なイメ-ジばかりを植えつけられていたので、ちょっとした違和感さえ感じてしまった。
まあ、作家として広く知られている柳さんだから特別な扱いがあったのかもしれないけど。
しかし、柳さんが目で見て感じたここに描かれた北朝鮮も真実なんだろうな・・・・。
朝鮮半島の暗い過去の歴史を振り返ったり、いろいろと興味深いことも書かれていた。
あまり知らなかったポプラ戦争のリ・オッチさんの体験談には、ビックリ!
この方の半生だけでも物語が出来そう(実際あるのかも?)。
最後の章では、息子さんの丈陽(たけはる)君(10歳)と同居人の村上さん(26歳)が一緒。
柳さんの息子さん、こんなに大きくなったんだぁ~。
丈陽くんのお父さんにあたる方は病気で2000年に亡くなっていて、まだ生まれたばかりの息子さんを苦労して育てたのは別の書で読んでいたので、ここで母子が楽しそうに過ごす場面を見れたのは嬉しかった!
母親としての愛情も感じられるエピソ-ドも楽しい。
柳さんに言わせると、「日本こそ、霧の国」なのだそうです。
その言葉について、日本人として考えさせられることが多い書でもありました。
★★★★
発行年月:2012年5月
町の中に、家の中に、犯罪の種は眠っている
普通の町に生きるありふれた人々にふと魔が差す瞬間、
転がり落ちる奈落を見事にとらえる5篇。
現代の地方の姿を鋭く衝く短篇集
(文藝春秋HPより)
5つの短編集。
「仁志野町の泥棒」
ミチルは小学3年生のとき転校して来たりっちゃん(律子)に遭遇。
そして思い出す子どもの頃のこと。
律子の母親のしていたことを町の大人たちは、なかったこととしていた。
「石蕗南地区の放火」
財団法人町村公共相互共済地方支部勤務の笙子。
消防の詰め所が家事になり、災害共済金支払い手続きのため消防署へ出向く。
消防署は笙子の実家のすぐそば。
そして、消防員のなかにはかつて合コンで知り合った大林が居た。
「美弥谷団地の逃亡者」
ネットの出会い系で知り合った陽治に海に誘われ一緒に行動する浅沼美衣。
陽治は優しい面もあるが、暴力を振るうことも再三。
そして、明かされる陽治と行動をする直前のこと。
「芹葉大学の夢と殺人」
高校の美術教師・二木美玖がホテルの非常階段から転落死。
首には何者かに強く絞められた跡。
美玖は先月、芹葉大学で他殺体で見つかった坂下工学部教授の教え子であり、死体遺棄容疑で指名手配中の羽根木雄大容疑者の元交際相手でもあった。
事件が起きるまでの真実が明かされる。
「君本家の誘拐」
良枝は買い物途中、ベビ-カ-に乗せて一緒に居た、生後10ヶ月の咲良の姿がないと店員に申し出てあちらこちら探す。
26歳で結婚し、やっと授かった子ども。
誘拐したのは??
どの話も、切ないような哀しいような・・・。
犯罪を犯す人って、何も極悪人ばかりじゃないんだな・・・・と思う。
ちょっとした抜け出せない状況に追い込まれて、そんななかでいろいろな偶然とかが犯罪を起こし得る状況を生み出してしまい、罪を犯してしまう。
2番目と3番目の話は、殺人を犯しての・・・・なので、それぞれの犯人には身勝手な考え方で殺された人のことを考えたら、腹立たしかった。
最後の「君本家の誘拐」は、子育て経験のある人なら、良枝の行動は、ある程度、共感出来る部分がある。
大事に至らなかったことに心底ホッとした。
読んでいて後味のあまりよくない話ばかりだったけど、物語としては、なかなか面白いと思った。
表題作があるのか?と最初は思って読んだけど、読み終えてみたら表題がついた作品はなかった。
けれど、逆に全ての話をこの表題で表しているのか?と思うと、なかなか巧いなぁ~とも思う。
好き嫌いは、分かれそうだけれど、わたしはこういう作品も結構、良いと思う。
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;