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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2013年9月


 初心者も安心の素朴な恋物語、上級者ならではの屈折した恋愛...恋をテーマに現代作家の作品をセレクト。訳者書下ろしの「恋するザムザ」を加えた全10短編収録。恋愛甘苦度表示付き。

                    (中央公論新社HPより)




「愛し合う二人に代わって」・・・マイリー・メロイ

「テレサ」・・・デヴィッド・クレーンズ
「二人の少年と一人の少女」・・・トバイアス・ウルフ
「甘い夢を」・・・ペーター・シュタム
「L・デパードとアリエット---愛の物語」・・・ローレン・グロフ
「薄暗い運命」・・・リュドミラ・ペトルシェフスカヤ
「ジャック・ランダ・ホテル」・・・アリス・マンロー
「モントリオールの恋人」・・・リチャード・フォード
「恋するザムザ」・・・村上春樹



10の恋愛小説。それぞれ面白かった。

最初の話「愛し合う二人に代わって」は、ロマンチックで印象的。
代理人結婚を引き受ける男女のその後。
アメリカでの9.11その後のイラク侵攻など時代背景もありながら・・
代理人結婚ってこういう時代ならなんだかわかる気もするな。

あと、印象に残ったのは
「二人の少年と一人の少女」。
表題そのままの少年2人と少女の関係。
いわゆる三角関係というものですが、3人は仲良しで、一組のカップルと行動を
いつもともにするもう一人の少年の気持ちが切ない。


「L・デパードとマリエット・・・」は、え?そういう展開?と意外性が
面白かった。43歳の元水泳オリンピック選手と16歳の車いすの少女の物語。
少女の印象がどんどん変化するんです!


ほかの作品もそれぞれ良かった!


でも最後の村上氏の「恋するザムザ」は、正直・・・う~ん。よくわからないな。
カフカの「変身」をベースにしたらしいけれど、そのベースにした作品を
良く知らないからいけないのか??
編訳の前の作品たちの方が面白かったな・・・・あくまでも私的に・・・・^m^

しかし、この本1冊としては、とても楽しめた♪


                           ★★★★
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発行年月:2013年11月


 撮影現場から姿を消した人気女優と、あとを追うベテラン俳優。よみがえる禁断の恋の記憶――。

最愛の娘を失った老俳優と、今をときめく人気女優の、奇妙な逃避行。その途上で彼の脳裏によみがえるのは、友人の母親との禁断の恋の記憶だった。二人きりで過ごした短い時間があんなにも光に満ちていたのは、なぜだったのか? 数十年の後、その手がかりが不意に明らかになる――。ブッカー賞、カフカ賞受賞作家による最新長篇。

                     (新潮社HPより)





年老いた俳優の男性が、自身が15歳のときの恋を回想しながら
現在の話も進む。

15歳で親友の35歳の母親と肉体関係を持つって、ちょっと気味悪いんだけれど
文章が綺麗なので、嫌なかんじはしない。

そして、現在の話は、映画出演の話が舞い込むが、共演する人気女優が撮影を
放り行方をくらます事態に巻き込まれていく。

主人公の老俳優は10年前に娘を亡くしている。
娘は27歳だったが、精神的に弱っていたのは父親も知っていた。
そして、死後、娘は妊娠していたことに更なるショックを受ける。
妻のリディアは、娘の死を未だ受け入れられずに苦しんでいる。


娘のことを救ってやれなかった事で、人気女優の抱える問題を解決するために
何とかしたいと思ったのかな?

親友の母親・ミセスグレイのその後のことが終盤に明かされ、
息子の親友と、ふつうなら考えられない行動を起こしたわけが明かされる。
切ないな・・・(/_;)


ラスト、精神的に追い込まれていた女優を、再び、撮影現場に戻す力を与えたのが
リディアであったことが、嬉しい。
これを機にリディアの喪失感が今後、薄れていくといいな。

内容的には、前に誰かの小説で読んだような話(15歳のときの思い出話はシュリンクの「朗読者」を思い出すかんじでした)でしたが、文章が巧みで美しい。

強烈な思い出が生きて行くうえで蘇ってくるなんて経験、わたしにはないけれど
ふと、した瞬間に過去の何でもない情景を思い出す瞬間は誰にでもあるでしょうね。

なんだか、この表紙の絵も素敵。
穏やかな未来がこの、道の先に開けていそう。


                            ★★★



発行年月:2014年4月


 音楽の才がありながら、亡き母に変わって家族の世話を強いられるスウ姉さんが、困難にも負けず、持ち前のユーモアとを共に生きていく。村岡花子訳で読む、世界中の「隠れた尊い女性たち」に捧げる物語。

                      (河出文庫HPより)



村岡花子さんの訳ということで、読んでみました。
主人公のスウ姉さんは、ピアニストになりたいという夢を置いて
亡き母のため、自分が一家の家事や雑多なことを引き受ける。

母親が亡くなったのは、14歳の時。
その時、12歳の妹・メイ。10歳の弟。ゴルドン。

物語は、スウ姉さんが20歳のときから始まる。
お手伝いさんが2人いる裕福な暮らしをしていたけれど、父親の経営する銀行が
破たんし、一家は貧乏暮らし。
家と家財道具を売り、別荘のある田舎町へ一家揃って引っ越し。

スウには、新鋭作家の恋人・ケントが居て、早く結婚して二人で暮らそうと言われ続けて
いるけれど、心身共に弱った父親の面倒を見なければという責任感から
結婚を先延ばししている。
そのため、ケントは妹のメイと結婚。


スウ姉さんの人生、理不尽過ぎる!と周りの人たちのあまりにも無頓着ぶりに
頭に来たりします^^;
が・・・・当のスウ姉さんは、その理不尽さをあまり嘆く風でもない。

唯一本音を漏らすのは、ブレストン小母さんの前でだけ。


父親が亡くなり、これからはピアニストになるという夢を追いかけようと決心し
以前、自分のピアノを褒めてくれたバルトン教授の元を訪ねるスウ姉さんだったが・・・

教授の助言はて適格でした!
その真意をちゃんと理解したスウ姉さんもやはり、賢い。

優しくて賢いスウ姉さん。
なんだか、すごく好き!

周りから見たら、人生を棒に振った可哀想な人と見えてしまうけれど
よく考えたら、スウ姉さんが、そうすることを選んだのですね。
いつも家族の皆に頼りにされて、重荷だと感じながらも
そんな期待に応えたいと思ってしまう性分なんですね。


けれど、ラストは、やっとスウ姉さんにも幸せな日々が訪れそうで
ホッとしました。
幸せになれなきゃ、あまりにもひどい!


村岡花子さんの訳、いいですね。
とても読みやすいです♪

                          ★★★★★



発行年月:2012年8月

「不死身の男」と「トラの嫁」。二つの謎めいた物語が、祖父の人生を浮き彫りにする。

自分は死なないと嘯き、賭けを挑む男。爆撃された動物園から逃げ出したトラと心を通わせた少女。紛争地帯で奮闘する若き女医は、二つの物語から亡き祖父の人生を辿っていく。戦争に打ちひしがれた人々の思いを綴る確かな筆致と、鮮やかな幻想性。弱冠25歳でオレンジ賞を受賞したセルビア系作家による、驚異のデビュー長篇。

                   (新潮社HPより)



この表紙の絵に先ずは興味を覚えました。
動物のなかではトラが結構、好きなので。


物語は、女医のナタリアが同じく医師だった祖父の死の知らせを受け、祖父の
生前の語ってくれた物語を思い出しながら、祖父が育ったガリーナ村へと向かう。


祖父が語った「不死身の男」と「トラの嫁」の話。
やはり「トラの嫁」の方が印象的だったなぁ~。

そのトラの嫁と祖父はまだ10歳くらいの時に、大きく関わっていくことになる。
目が見えず、言葉も話せない「トラの嫁」。
トラの嫁と呼ばれる過程の物語が少し残酷な部分もある昔話的なかんじ。

物語の舞台は、はっきり何処と記されていないけれど、著者の経歴や、
隣国との紛争が起きているなどのことから、バルカン半島の旧ユーゴスラビアの
何処かかな?と想像できる。
そんな状況下を考えて、そんななかでの人々の暮らしを考えると何とも重たい気持ちにも
なる物語だった。
著者自身も紛争を逃れてユーゴスラビアからエジプトに渡り、その後、アメリカに移住。
著者の経験が活かされた物語でもあるんでしょうね。


祖父の生き様は凄まじい。
孫のナタリアもその血を受け継いで逞しく僻地での子どもたちの命を救う慈善活動を
していて、尊敬する。

物語を読み終えて最初の祖父が、まだ幼いナタリアを動物園に連れて行って
トラを眺めて会話する場面を読みたくなり、繰り返して読んだ。

25歳でデビューした著者の作品と言う通り、表紙裏の著者の顔写真は
可愛らしい。
こんな凄い文章を書いた人には見えない。


次の作品はまだ書かないのかなぁ~?
日本語訳されたら、ぜひ、次の作品も読んでみたい!


                           ★★★★★

 




発行年月:2013年8月


 創刊十五周年記念 全一〇一篇から選んだ傑作短篇アンソロジー。

娘から見た母の人生を描いて、長篇さながらの読後感を残すジュンパ・ラヒリ、孤独で不器用な魂を写しとるミランダ・ジュライ、ユダヤ人を描きながらどこまでも普遍的なネイサン・イングランダー、以上三作のフランク・オコナー国際短篇賞受賞作のほか、マンロー、シュリンク、ウリツカヤなど、クレストから選りすぐった十二篇。

                 (新潮社HPより)


非武装地帯・・・ アンソニー・ドープ(『メモリー・ウォール』より)
地獄/天国・・・ジュンパ・ラヒリ(『見知らぬ場所より)』
エリーゼに会う・・・ナム・リー(『ボート』より)
自然現象・・・リュドミラ・ウリツカヤ(『女が嘘をつくとき』より)
水泳チーム 階段の男・・・ミランダ・ジュライ(『いちばんここに似合う人』より)
老人が動物たちを葬る・・・クレメンス・マイヤー(『夜と灯りと』より)
美しい子ども・・・ディミトリ・フェルフルスト(『残念な日々』より)
ヒョウ・・・ウェルズ・タワー(『奪い尽くされ、焼き尽くされ』より)
若い寡婦たちには果物をただで・・・ネイサン・イングランダー(『アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること』より)
リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ・・・ベルンハント・シュリンク(『夏の嘘』より)
女たち・・・アリス・マンスロー(『小説のように』より)



読んだ本も数点あり。
長編の一部分だけを抜粋した形で短編集としてまとめてある何とも贅沢な1冊。
新潮クレストブックスには、いつも楽しませて貰っている。


最初の作品、「非武装地帯」は、韓国軍と共に北との境界線に銃を持って待機するアメリカ兵の青年がそこでみる自然(特に鳥)の観察を故郷の家に手紙で送る話。
緊迫した状況のなかで語られる自然の美しさの対比が何とも哀愁をそそる。

「天国と地獄」は、違う国籍の二人が結婚することでふたつの家族が翻弄される様子が
少し滑稽。

「エリーゼに会う」は、笑った。本人には笑いごとじゃない状況でしょうが・・

「水泳チーム」も愉快。プールもないのにこの先、泳ぐ場面もないであろう3人に家のなかで
水泳を教えることになってしまった女性の話。


ほかの作品もそれぞれ短いけれど、良い。
実におもしろい。

最後2つは、ちょっと人の老いについての物悲しさのようなものがあって、短編集の終わりにふさわしいかな?


まだ読んだことない作品は、長編でも読んでみたいと思わせてくれた。


                          ★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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