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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:1984年12月 (1974年に刊行)


本当の教育とは何か?
新任女教師小谷先生は、子供達との交流の中で、力強い希望と、
生きることの意味を学んでいく。
大阪の工業地帯を舞台に、辛い過去を背負って生きるバクじいさん
教員ヤクザ足立先生など魅力的な人物が織りなす人間賛歌。
荒廃する教育現場、断絶の深まる家庭にあって、人の心のふれ合いを
信じる灰谷文学は読まれ続ける。
親と子の熱い共感を呼ぶ感動の長編


                 (表紙裏の解説文より)



家の本棚から見つけて読んだ。
著者の名前も作品名も知っていたのに、今まで読んでこなかった。

読み始めたら止まらない。
小谷先生の優しさ。それに応える子どもたち。
子ども達のなかに、塵芥処理所に住む子が何人かいる。
鉄三もその一人で、寡黙で表情も乏しい。
けれど小谷先生は、鉄三が気になり、彼の家にも訪問。
ハエを飼っていることを知り、ハエに対する知識が豊富なことに
驚き感動する。
こういうところが素敵だなと。
ハエ=不潔と忌み嫌うのが普通だけど、その気持ちを置いておいて
鉄三の気持ちに寄り添う。
鉄三が一緒に暮らしているのは祖父のバクじい。
バクじいは戦地で酷い体験をしている。
物腰が柔らかく、鉄三を可愛がっていて、孫のことを気にかけてくれる
小谷先生への感謝する。


養護学校に行くまでの間ということで、みなこという知恵遅れ(?)の子が
転入してくる。
最初はみなこに振り回される小谷先生だけど子ども達は自分たちで
当番を決め、毎日2人ずつが面倒をみることになる。
子ども達、凄いなと思った。
そんな子を面倒みているのは・・・と保護者の一人が抗議するのだけど
その保護者の子どもが、また偉いいい子。
保護者も自分の考え方が間違っていたと、みなこの親に謝るというのも
いい。
みなこが養護学校に移るのでお別れという場面は、泣けた(/_;)


そんな素敵な話が色々。
可愛がっていた野犬が捕まり、それを解放する話も面白かった。


教師という仕事は大変で現実的には、こんなふうにいかないことも
多いと思う。
でもここに登場する小谷先生や足立先生みたいな人が沢山いたら
いいのになと思う。

他の著者の作品も読んでみよう。




                     ★★★★★
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発行年月:2025年2月


江戸は神田三島町にある三島屋の次男坊富次郎は、変わり百物語の二代目聞き手。飼い主の恨みを晴らす化け猫、命懸けで悪党壊滅に挑む河童、懺悔を泣き叫ぶ山姥が登場する客人の身の上話を聞いている。一方、兄・伊一郎の秘密の恋人が出奔。伊一郎の縁談を巡って、三島屋は大騒動に巻き込まれてしまう……。

                  (新潮社HPより)


絵師になりたい富次郎だが、三島屋の百物語の聞き手の役目も続けながら
絵の師匠・花山蟷螂の元に通う。


百物語の語り手の話は、やはり不思議でそこには哀しさや切なさも混じる。

表題の<猫の刻参り>は文(ふみ)が祖母の文(ぶん)から聞いた不思議な話。
行儀見習いでいた屋敷で猫の世話をしていたとき、夜半、不思議な鐘の音を聞く。
それは猫の刻を知らせるもので枕元にいた猫のシロじいじが案内してくれて
外に出ると月の代わりに肉球が空に浮かんでいた。

やがて祖母に縁談話がきて乗り気でなかったが結婚。
しかし、夫はすぐに女遊びを始め、姑のいびりもきつく
舅はみているだけで助けようとはせず、辛い日々。
そんなとき、一匹の猫が猫の刻参りに連れて行ってくれて結婚前に
世話していた猫に会い今の生活を語ると「懲らしめよう」と。
夫は舌を失くし喋れなくなり姑は頭の毛が全てなくなり口がきけなくなる。
二人は人でなく段々と猫に・・・
暴れまわりうるさいので奥座敷に閉じ込められる。

でも、おぶんは、そのために大好きだった猫が命を削っていることを知り
懲らしめるなんてやめてほしいと頼み、夫と姑は再び、人に。
以後、大人しくなる

二話めは<甲羅の伊達>
奉公先で子守りの仕事を任された、みぎわ。
奉公先の主人夫婦は仲が良く、子どもたちも、みぎわに懐いてかわいい。
が、その主人を妬む男が店に押し入り、番頭さんと女中頭が刺されて
亡くなってしまう。
みぎわも大怪我をし意識が戻らぬまま。
そんなとき、みぎわの故郷から一人の老人が見舞いに訪れる。
みぎわに声をかけると目を開け握られていた左手から小石のようなものが
転がる。
その小石とみぎわの話を老人が語る。
小石は河童の三平太の甲羅のかけら。

みぎわと三平太の出会いから別れ。
三平太は消えても、ずっと、みぎわを守ってくれている。


三番目の話は<百本包丁>
語り手は一膳飯屋のおかみ・初代(28歳)。
自身が体験したこと。
父は腕のいい木耕細工の職人で、一番それを買い上げてくれていたのが
仲買商・伊元屋。
そこの娘は花蝶といい、美人で評判。
けれど花蝶はいろいろな男と関係を持ち、男たちを骨抜きに、
男同志は嫉妬心で争う。
初代の父や兄もそんな花蝶の毒牙にかかり骨抜き状態に。
そんなとき、伊元屋の御殿が炎上。火はどんどん広がり初代は母の松江と」ともに
火から逃げる。
そして、山のなかに迷いこみ一頭の大きな山犬に出会う。
山犬は名前を花桃というと自ら名乗り、御館(みたち)に案内してくれる。
二人はそこで包丁人に。
迷い人たちが訪れた館で料理を作る仕事をするものが居なくなった代わりに働く
ように言われる。
食材は豊富に揃い、館の主が声で指示してくれるので困ることはない。
100本の包丁を使い切ればお役御免となるという。

山姥が出てきたり、花蝶の生首が出てきたりだったわりに
一番、面白かったかも。



でも3つの話と並行して語られる三島屋の伊一郎の静香とのことが
今後、どうなっていくのか?
富次郎は謎の男と、取引したけれど、それがどうなるのか?
気になることだらけ。

百物語は簡潔にでいいから、三島屋の物語をもっと詳しく知りたいな~。




                ★★★★



発行年月:2025年2月


女も住むこの国のことを、女抜きで決めないでほしい――
坂本龍馬、板垣退助らが活躍した時代、高知に楠瀬喜多という女性がいた
男も女も、民衆には多くの権利がなかった頃、高知で女性参政権を求めて申し立てをした楠瀬喜多。江戸から大正にかけて生き、世界でも早い時期に声を上げた彼女は、板垣退助ら男性の民権家が活躍した激動の時代に、何を見て、何を感じていたのか。そしてそのまなざしの先にあったものは――
100年後の今のわたしたちが手にしているものの大切さに気づかされる、著者初の評伝小説


                   (ポプラ社HPより)


幕末の日本の歴史背景もあり、そんな激動の時代に生きた楠瀬喜多という女性が
未来の女性たちのため、大きな声をあげ、女性たちの意識も変え
政治に女性が参加する道筋を作っていく。

物語は米屋の跡取り娘として育ち、手習い塾へ通い始めるところから。
喜多は6歳。手習い所には奉公人の吉之丞(13歳)と共に・・・
手習い所には8歳からしか入れないと知り、8歳と偽り・・・
しかしすぐにばれてしまう。
けれど読み書きも8歳の子より出来たため入塾を許可される。

同じ手習い所に通う猪之助とその付き添いで通う實と出会う。
猪之助は腕白な乱暴者の印象だが實が間をうまく取り持ち、仲良くなる。

猪之助はのちの板垣退助。
2人は幼いときから親交があったというのは創作かな?
でも生涯を通じて日本の国の平和な将来のためにと奔走する。


二人とも案外、長生きしたんだな。
板垣退助は反対するものに命を狙われたけれど・・・・
犯人に対して、わだかまりなく許す態度は凄い。
国を良くしたい思いは同じなのだから・・・と


教科書に出て来る人物も沢山登場。
坂本龍馬の姉・とめと喜多の関係もよかったなぁ~。

龍馬が慕っていたという、姉のとめ、素敵な人だ。

また喜多の親友・あやめは時代に翻弄されたかんじで、少し哀しいが
その娘は生き方を自分で選んだ様子で嬉しかった。
芸の道に進んだが身の振り方に迷っているところを喜多が援助し
好きな人と暮らす道を選んだのはよかった。


長編だったけれど、読み応え十分で、良い物語だった。




                        ★★★★★




発行年月:2001年9月


広瀬すず主演で映画化! 2025年夏公開
英国で暮らす悦子は、娘を喪い、人生を振り返る。
戦後の長崎で出会った母娘との記憶はやがて不穏の色を濃くしていく。
映画化原作

                 (早川書房HPより)



映画化されるというので、原作を読んでみた。
改訂版が出版されているが、図書館で旧いのを借りて・・・


物語は戦後の長崎が舞台。
そこの風景がこの表紙の絵。

長崎で出会った悦子(映画では広瀬すず)と佐知子(映画では二階堂ふみ)の
話が主。
悦子は、夫・二郎(映画では松下浩平)と暮らしていて妊娠中。
佐知子は娘の万里子とふたりで長崎へ。
伯父の家に世話になっていたけれど、アメリカ人のフランクとアメリカに
行くつもりで、こちらに来たという。
が・・・フランクは一人でアメリカに渡ってしまう。
あっけらかんとした佐知子。そんな佐知子の言動に、ちょっと理解できない
悦子。


物語は、そんな悦子と佐知子が親しくしていた時代を過去のものとして
今はイギリスで一人暮らしをしている悦子の物語と交互で描かれる。

佐知子のことを非難するようなこともあった悦子だけど
二郎との子ども・景子は最近、自死してしまっていて、そんな母を
心配して次女のニキが訪ねてきている。
ニキはイギリスにわたってから知り合った二番目の夫との子らしい。

ニキの誕生までの話は出て来ないのでよくわからないけれど
結構、悦子も波乱万丈の人生だな・・・。
佐知子と親しくしていたころとは違う人みたいで
佐知子みたいだなと思ってしまった。


戦後の長崎という場所もあって、なんとなく暗いかんじだけれど
人間関係が丁寧に描かれていて、よかった。


映画化されたものも見てみたいな~。




                   ★★★




発行年月:2024年11月


今日が、雨でよかった――時を超え、かたちを変えて巡る、“つながり”と再生の物語。
ビルの取り壊しに伴うリフォームジュエリー会社の廃業を起点に時間をさかのぼりながら、物から物へ、人から人へと、30年の月日のなかで巡る想いと“つながり”、そして新たなはじまりを描く、寺地はるな(2023年本屋大賞9位)の真骨頂が光る、感動長篇。
出会い、卒業、就職、結婚、親子、別れ……。中学の卒業制作づくりで出会った4人がそれぞれ直面する数々の選択と、その先にある転機、人生のままならなさ。不器用に、でもひたむきに向き合う彼らの姿を通して、日常のささいな不安や違和感を丁寧にすくい取って人の弱さにそっと寄り添いながら、いまを生きるあなたにエールを贈る大人の青春小説。
《あらすじ》
1996年冬、中学卒業を控え、卒業制作のレリーフづくりで同じ班になった永瀬珠、高峰能見、森侑、木下しずくはそのモチーフを考えていた。進路に迷う美術部員の永瀬、男女問わず学校中の人気者の高峰、誰に対しても優しくおっとりした森、物静かで周囲と距離を置く転校生のしずく。タイプの異なる4人がモチーフに選んだのは雫型(ティアドロップ)だった。
「古代、雨は神々が流す涙であると考えられていました。雨の雫はあつまって川となり、海へと流れ込み、やがて空にのぼっていく。その繰り返しが『永遠』を意味する、という説があります」
「永遠って、なんですか? 先生。そんなもの、あるんですか?」
美術教師が教えた「永遠」の意味。以来、永瀬や高峰の心に「永遠」が静かに宿り、やがて4人は別々の道を歩み始めた――。
時は流れて2025年春、リフォームジュエリー会社『ジュエリータカミネ』は、入居するビルの取り壊しにあわせて営業を終了した。ビルからの退去当日、デザイナーとして勤めた永瀬は将来への不安を抱えつつも次の仕事を決められずにいた。かたや、信念を持って店を立ち上げた高峰は、妻との離婚や自身の体調を崩して以来すっかり覇気がない。森は誰もが知る企業に勤めたものの上司のパワハラによって心に傷を負った。地金職人として独立したのち離島へ渡ったしずくは、いまも自分の感情を表すのが苦手なままだ。
30年の道のりの過程にある仕事、結婚、親子関係……。人との関わりでつまずきながらも、一方で人とのつながりによって救われてきた不器用な4人は、ままならない人生にもどのようにして前を向こうとするのか。「永遠」は不変で繰り返されるからこそ続くものなのか、それとも――。物から物へ受け継がれるジュエリー、人から人へと受け継がれる想いを通して、つながりの尊さとささやかで慈しみ深い日常を描く珠玉のヒューマンドラマ。


                    (NHK出版HPより)



永瀬 珠・・・同級生の高峰能見に誘われて「ジュエリータカミネ」で
       ジュエリーデザイナーとして25歳~20年間働いてきた

高峰能見・・・株式会社高峰の社長。「ジュエリータカミネ」は廃業すると決める


森 侑(たすく)・・・高峰ビル内の「かに印刷」で働いていた。会社が移転することに


木下しずく・・・高峰とは親戚関係。家庭の事情で中学卒業と同時に地金細工をする
        駒工房に弟子入りした。一時期、高峰の家で暮らしていた。



4人は中学3年生の卒業制作のとき、同じ班になり以来、親交がつづく。
男女で、こういう絆で結ばれている関係はいいな~。

高峰も森も結婚して子供もいるのだけど、高峰は離婚して妻と娘とは離れて暮らしている。
一時、心労から入院までした高峰だけど、その時も森や珠が見舞い勇気づけている。
しずくは、少し内向的であまり自分を主張しないけれど、好きな人と巡りあって
しあわせそうで良かった。


表題の「雫」は、卒業制作で4人が作ったモチーフ。
永遠に継続されていくという意味もあると教えてくれた美術教師の田村先生も
素敵だったな。

最後はその田村の個展で4人が再会という場面。
しずくのパートナー・奥田さおりもすてきな女性だった。


最後の場面は雨だけど、清々しい。




                      ★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

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