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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2025年6月


恋愛小説の旗手・島本理生の新境地!
他人からはままならない恋愛に思えても、本人たちは案外、
その”雑味”を楽しんでいるのかもしれないーー。




目次
停止する春
最悪よりは平凡
家出の庭
God breath you
一撃のお姫さま
*5つのちょっと不思議な、新たなる読書体験
「停止する春」
東日本大震災から11年目。会社で毎年行われていた黙とうがなくなった。
それから私は、仕事を休むことにした。代わりに、毎日時間をかけて大根餅を作る。ある日、八角の香る味玉を作り置きした私は、着ていたパジャマの袖口を輪にして戸棚に結び、首を突っ込んだ……。
「最悪よりは平凡」
掃除機をかければインコをうっかり吸い込み窒息死させ、夫が書斎を欲しがれば娘を家から追い出す母に、「妖艶な美しい娘」をイメージして「魔美」と名づけられた私。顔見知りの配達員にはキスされそうになり、年下のバーテンダーには手を握られ、不幸とまでは言い切れないさまざまな嫌気を持て余す。
「家出の庭」
ある日、義母が家出した。西日に照らされた庭に。青いテントの中で義母はオイルサーディンの缶を開け、赤ワインを飲んで眠る。家出3日目、私はお腹に宿した子が女の子だと知る。
「God breath you」
女子大でキリスト教を中心に近現代の文学を教える私はある日、ほろ酔いでおでんバーから出たところを若い青年に声をかけられる。彼は、世を騒がせた宗教施設で幹部候補として育てられた宗教二世だった。
「一撃のお姫さま」
歌舞伎町が舞台のアニメ主題歌の仕事を受けたアーティストの睡は、音ゲーの配信者兼会社員の友人から、曲作りのためホストに通うことを提案される。100万円を使い切ることを決めた彼女は夜な夜なチープな照明に照らされ、シャンパンコールを浴びることになるがーー。


                   (文藝春秋HPより)



どの話も面白かった。
それぞれの主人公たちが応援したくなる。


最初の話<停止する春>は、ちょっと、ドキッとしてしまった。
こんな風に、人は死へ向かってしまうこともあるんだなと。

印象的だったのは
<God breath you>
40歳の大学で近現代キリスト教文学について講義していり依里と
偶然、出会った25歳の時生の物語。
年の差は関係なく、惹かれるってあるんだと思う。
二人の今後が気になるけど、ずっといい関係が続くといいなと思った。


表題作<一撃のお姫さま>も面白かった。
アニメの主題歌を作曲している若松睡。
曲のイメージが湧かないと言っていたら「体験してみればいい」と。
100万円を軍資金にホストクラブへ。
そこで36歳のホスト・聖一と若手の涼太と対面。
聖一とlineでやり取りし、食事に行ったり・・・

睡が、仕事と割り切っているのがいい。
聖一とも用は済んだと判断したら、すっぱり連絡を絶って
別のところから今度は若い子を選び、いい感じの曲を作る。
うん、プロだな。
変にホストに溺れたら興ざめだったけど、なんか、爽快だった!




                       ★★★★
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発行年月:2025年3月


愛する娘を傷つけたくない。著者渾身の人情譚
痛みも後悔も乗り越えて、いつかみんなできっと笑える。
『銀花の蔵』で直木賞候補、
いま注目の作家が放つ“傑作家族小説”!
売れない芸人を続ける娘、夫の隠し子疑惑が発覚した妻、父と血のつながらない高校生……
大阪・ミナミを舞台に、人の「あたたかさ」を照らす群像劇。
◎松虫通のファミリア
「ピアニストになってほしい」亡妻の願いをかなえるために英才教育を施した娘のハルミは、漫才師になると言って出ていった。1995年、阪神淡路大震災で娘を亡くした吾郎は、5歳になる孫の存在を「元相方」から知らされる。
◎ミナミの春、万国の春
元相方のハルミが憧れた漫才師はただ一組、「カサブランカ」。ハルミ亡き後も追い続けたが、後ろ姿は遠く、ヒデヨシは漫才師を辞めた。2025年、万博の春に結婚を決めたハルミの娘のため、ヒデヨシは「カサブランカ」に会いに行く。
(他、計6篇)


                  (文藝春秋HPより)



大阪に馴染みはないけれど、人情に厚いひとたちの温かい話で
大阪に詳しかったら、もっと楽しめたんだろうなぁ~と思う。


短編集だけれど繋がりがあるので、ああ、あの話は、こういうことだったのか
と気づきながら読めるのもよかった。


共通しているのは、姉妹の漫才コンビ「カサブランカ」のハナコとチョーコ。
彼女たちに憧れて芸人を目指し、コンビを組んだ「はんだごて」の
ハルミとヒデヨシ。


最初の話は、ハルミの子ども・彩(5歳)を祖父である吾郎が
彩を預かっているヒデヨシの元に迎えに行く話。

最初の話を読んだ時点では「?」と思うことが、段々と後の話から分かってくる。


時代は1995年から現在・2025年の大阪万博の頃まで。
1995年・・・・阪神・淡路大震災の年。
彩をなぜ祖父が迎えに行ったのかの背景にあったことは、ちょっと
辛い話だった。

それでも最後の章では、彩の結婚式で、色々大変なことを乗り越えて
その場にいる人たちが皆、穏やかな気持ちで彩を祝っている場面。


良いお話でした!




                      ★★★★




発行年月:2025年2月


震災直後に殺人を犯し、死刑を覚悟しながらも
ある人物を探すため姿を消した青年・真柴亮。
刑事の陣内康介は津波で娘を失いながらも容疑者を追う。
ふたりはどこへ辿り着くのか──。
『孤狼の血』『盤上の向日葵』の著者が
地元・東北を舞台に描く震災クライムサスペンス。


               (新潮社HPより)



なんとも辛い話なんだろう。

二人を殺してしまった真柴亮だけど、それは不運によるもの。
切羽詰まった状況のなかで、起きてしまったこと。
それも二回も。
本当になんという不運。


東北の震災直後に起きたことも、物語を緊迫感あるものにしていた。

途中、出会った村木直人(5歳)との束の間の逃避行は、最初はお荷物を
抱えてしまった感があったけれど、ずっと直人のことを気にかけながら
行動していた。
優しい青年なんだなとわかり、なんとか最後は真柴亮自身にも
救いのある結末であるといいのにな・・・と願いながら読んだ。



幼い頃、父親は自分と母嫌を置いて逃げたと思っていたけれど
父親からの手紙を読んで、自分の誤解だったことを理解できたんじゃないかな?
体育館に立てこもったが、そこにいた人たちには最初から危害を与える
つもりもなく、皆が必要としているものを持ってくるよう要求していた。


が・・・・最期は、やはり不運で・・・(ノД`)・゜・。



立てこもりの場にいた人たちや、直人はたぶん、真柴が悪人ではないと
わかったと思う。


哀しい最期だったけれど、最後に父親の手紙を読めたことは
少し、救いだった。
刑事の陣内も震災で娘を亡くした、辛い状況なのに、犯人逮捕に
尽力して、その姿が感動的だった。



物語としては最高に面白かった!



                    ★★★★★






発行年月:2025年3月


映画『花まんま』の世界を広げるスピンオフ
直木賞受賞作『花まんま』から20年、映画から魂を吹き込まれた新たな感動作!
本書は2025年4月25日に公開予定の映画『花まんま』のサイドストーリー。登場人物の背景にある「もうひとつの物語」を、原作者ならではの視点で描き出し、映画のその先の世界へと、読者をいざないます。
~映画から生まれた4つの物語~
「花のたましい」
… 見えない明日を懸命に生きる駒子と智美。はかなくも美しい友情の行く末。
「百舌鳥乃宮十六夜詣」
… 幼少期の不思議な体験を昭和の世相に重ねて描くノスタルジック・ホラー。
「アネキ台風」
… こわれかけた家族をパワー全開で再生しようとする肝っ玉アネキの奮闘記。
「初恋忌」
… 人生の終わりを予感した男の身に起こる、小さな奇跡。感涙必至の好篇!
泣いて、笑って、幸せに。
目次
「花のたましい」
「百舌鳥乃宮十六夜詣」
「アネキ台風」
「初恋忌」
全4篇。すべて書き下ろし。


                   (文藝春秋HPより)



映画を少し前に見ていたので、誰の物語なのかが、わかりやすかった♪

最初の<花のたましい>は、映画では父親のお好み焼き屋を手伝いながら
自分の夢であるメークアップアーティストの夢のため、頑張る駒子の物語。
映画では主人公・俊樹の幼馴染である。
ファースト・サマーウイカさんが演じていたので、そのまんまの姿が読んでいて
浮かんできた。
病院で看護助手をしている智美から入院患者の女の子(瑠美)のために
彼女が好きなキャラクターに似せたメイクをしてあげてほしいと頼まれる。

数回、メイクをしてあげて、久しぶりにお見舞いに行くけれど、
彼女は亡くなったと聞く。
そして智美も・・・。
そして瑠美の母親から不思議だけど、お人よしの智美らしい話を聞く。


もう、これは泣けた・・・(ノД`)・゜・。
智美、どれだけいい子なんだ~


他の話もよかった。
二番めのは、ちょっとホラー色強くて物悲しい。


<アネキ台風>は、映画で鈴木亮平が働いている製作所の社員・はじめの姉
香りの話。
はじめが白血病にかかり骨髄移植の提供者を探すことに。
はじめには実は血の繋がった姉がもうひとりいる事実を隠してきたが
姉の香織が奔走し、なんとか姉の骨髄移植ができることに


最後の<初恋忌>も感動。
映画では21歳で見知らぬ人に刺殺された喜代美をずっと大切に想ってきた
男性の話。
喜代美が本当に、思いやりがあって良い人だったことが知れてよかった。



どれもすごくいい話でした。



                   ★★★★★




発行年月:2025年8月


11歳になったその年、戦争が始まった――
美しい時間、美しい言葉、愛する者たちを、
戦争は容赦なく、うばっていく。
それでも彼女は、心の中の「美しいもの」を守りつづけた。
詩に思いをきざみ、未来へつなごうとした。
〈あらすじ〉
物語は、ある女性が日本から届いた段ボール箱をひもとくことから始まる。中に入っていたのは、名もなき女性詩人の青春の思い出の数かずだった――
「誰からも愛されますように」という母親の願いのとおり、立花ミモザはみなに好かれ、自由で、めぐまれた少女時代をすごしていた。しかし、ミモザの日常は、しだいに戦争の影におおわれていく。昼はもんぺ姿で農作業、夜は大好きな読書もままならず、空襲におびえる日々。父親は家族に暴力を振るうようになり、ミモザの「美しいもの」は、次々に汚され、うばわれていく。
詩人になりたい、無念なこの思いのたけを、わたしは詩に書きたい――戦争の時代にあっても、心の中の美しさを守りとおした少女の青春の記憶。
著者が敬愛する詩人・茨木のり子さんへのオマージュを込めて描いた、「詩人」と「戦争」の物語。


                    (さ・え・ら書房HPより)



1930年4月に生まれた立花ミモザの生涯を追う。
青春時代は戦時下。
美しくないばかりの時代でも美しい文章に惹かれ本を読むのが唯一の楽しみ。
そのため、後に視力を悪化させ手術の失敗で右目の視力をうしなうことに
なるのだけど。。。

戦時下の話は、やはり胸が痛くなる。
こんな時代に思春期を迎えたミモザたちのことを考えると本当に辛い。

辛い戦時下では人間の性格まで変えてしまい、父親が母親に暴力をふるうことが
多くなったり、ミモザの意見も全く聞き入れなくなる。
それでも美しい文章に夢中になることでなんとか気持ちを前向きに
頑張っていたミモザ。

ミモザが好んだ 花物語(吉屋信子/著)を、読んでみたくなった。
ハイネの詩集も、素敵な言葉が並んでいた。


物語の後半で、そんなミモザの生涯を振り返っている人物は、ミモザの娘・すみれ
なんだとわかる。

ミモザは娘を産んですぐに亡くなってしまったらしい。
それは哀しいことなんだけど、娘を産んだことをちゃんと見届けていたのは
少し救われた。


戦争の残酷さを描きながらも、すてきな物語だった。




                       ★★★★


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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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