心をそっと包みこむ、等身大の成長小説
未熟児として生まれ、ばらばらの父母のもと、
欠落感と一緒に育ってきた私は、介護ヘルパー先の
横江先生の家で額装の仕事に出会う。
ずっと混線していた私の心が、ゆっくり静かにほどけだす-----。
(集英社HPより)
音楽がらみの話を書かれる宮下さん。
今回も表題からして、音楽の話かな?と思ったら・・・ちょこっと違っていました。
でもガ-シュウィン作曲で知られる「サマ-タイム」は、主人公の佐古(名前は??)にとって特別なものでした。
佐古は早産で生まれいろいろな機能が未発達のままだった。
成長しても人とはちょっと馴染めず、その要因のひとつは、相手が話す言葉のなかに意味不明の雑音が混じるため、返答がうまく出来ないという。
しかし、高校を卒業し、運よく薬問屋に就職できたが、半年で会社は倒産。無職となる。
その後、ホ-ムヘルパ-の資格を取り、ケアセンタ-に派遣登録して、最初の派遣先が
物語の場となる元教師の横江先生宅。
先生の話口調は穏やかで、佐古の耳にもすんなり入るため会話に困ることがない。
意思疎通がウマくいくって良い人間関係を築くには大切ですからね。
先生の息子さん(名前は?)はお客さんが持ち込む絵の額装をするのが仕事。
先生の住む家の隣でお店を出していて、佐古はその手伝いも兼ねるようになる。
それから、先生の孫・隼とも出会う。
隼は、佐古の中学時代の同級生だった。佐古と同い年の19歳。
2人の会話も良かったなぁ~。
隼は、仕事に就くのが夢と佐古に言う。バイト先では怒られてばかりで、長続きしないとか。
こうすればいいとかそれは良くないとか言うわけではない佐古との会話で、隼は救われたかんじ。
佐古は良い子だな・・・・。
物語の後半、小学校のとき、行方知れずになった父親が突然、帰宅する。
平然と受け入れる母。
最初は違和感を抱きながら、自然と父と娘としての会話が成り立つ過程がウマく描かれていた。
良い事があると知らず知らずのうちに口ずさんでいた「サマ-タイム」を父が聞き
「楽しいことがあると歌っていたな」という場面が素敵だった。
父親が好きでよく聞いていたというCD「エラ・イン・ベルリン」は佐古も気づいたら好きになっていて
そのCDを見つけて「おまえも好きなのか?」と言うシ-ンも良かった。
わたしは知らなかったので、ちょっと視聴してみたけど
おぉ~!!凄くいいじゃん!!と感動した。
ジャズなんてあまり普段は聞かないけれど、この歌声は良い!
CD欲しくなった。
宮下さんは、やはり音楽に詳しいなぁ~。
わたしが無知なだけか?^^;
佐古は、優しい人たちが周りにいて、良かったな~。
ちょっと人と違うと、そのことを偏見で判断したりする人がいるけど
そういう社会は、佐古みたいな子は生きにくいだろうね。
その人の良い部分を最大限に引き出してあげられる人が一人でも居たら
その人は、自分が生きていくことに自信を持てるだろう。
なんて、偉そうに書いてる自分がちょっと上から目線っぽくてイヤだけど・・・・^^;
兎に角、良い物語でした!!
----------御首の在所を知らず------------
右大臣拝賀式の夜、甥の公暁によって殺された源実朝。
血で血を洗う骨肉の惨劇。
忽然と消えた実朝の首をめぐって繰り広げられる権謀術数。
(本の帯文より)
実朝は、父・頼朝の次男。
家督を継いだ兄・頼家が亡くなりその跡を継ぎ、右大臣拝賀の式典に向かい、その場で暗殺される。
斬りつけたのは、頼家の息子・公暁。親の仇と叫びながら・・・・・。
首を切り離し、奪って逃げるが、追っ手により討たれる。
そして、首は公暁の従者・弥源太に託され・・・・・。
はっきり言って、頼朝の死後の藤原摂関家とか北条家とか朝廷のその後の話は、よく知らない^^;
実朝の名前も・・・ああ、そんな人居たかな?くらいの知識でした(笑)。
けれど、面白かったです!!
正直、登場人物が多く、読むのに難儀はしましたが・・・。
物語の冒頭で、実朝は首を切り落とされてしまいます。
甥である公暁が何をそんなに恨んでいたのやら??と歴史に疎いわたしとしては疑問でしたが、ま、読んでいくにはその辺は置いておいて・・・

公暁は従者の弥源太とともに実朝の首を持って逃げます。
そして、一時は逃げ延びますが、やがて捕まり、公暁は討たれ弥源太が首を持って逃げていき、このままでは逃げ切れないと土の中に埋め、身を隠し、その後、掘り返してみると・・・・ない!
首は自分が掘り起こしてほかの所にあるから付いて来いと武常晴に言われ、付いて行った先には朝夷名三郎義秀がいた。
義秀の剛勇ぶりは広く知られていた。
そして屋敷には、義秀の甥であり、実朝の忠臣であった和田朝盛の姿もあった。
弥源太は実朝の首奪還に動き出す幕府側と対立する彼らと行動を共にする運命に。
実朝の首がいろいろな人たちを動かす。
朝廷と幕府の対立関係だけでなく、北条家と藤原家の関係などなど、この時代の人たちが心の中に持っていた憎しみやら欲望やら哀しみやら不安やらが入り混じって、それが亡き実朝の首を巡って現されていく。
凄い物語でした!
よく知っている人物は北条政子と後鳥羽上皇くらいでしたが、2人の周囲に居た人物達の方が物語を作っている。
しかし、やはり政子は凄い人だったんだ~!と改めて知った。
頼朝と作り上げた鎌倉幕府をたとえ身内に犠牲者が出ようと守りきらなければと思う気迫は
なるほど尼将軍と呼ばれた人だと納得。
そして、後半では、首を斬られ哀れな最期を迎えた実朝の本心が書かれていて、泣けた。
葉室作品には、必ず哀しく切ない主要人物の胸の内が描かれる。
京の文化に憧れ、和歌の素養を磨き、歌才を持っていた実朝は、政子が危惧していた通り、武門に生まれるべき人ではなかったのかもしれない。
そのことを本人も感じていたとしたら・・・・切ないなぁ~。
葉室作品のかなり初期の作品ですが、十分な読み応えでした!!
まだまだ未読のものを探して読んでいこう(^^)
夜だけ開く、たとえようもなく豪奢で魅惑的な夢のサーカス。
そこを舞台に競い合うよう運命づけられた、二人の天才魔術師を待つものとは。
世界30カ国で刊行、映画化決定の傑作ファンタジー、ついに登場!
(早川書房HPより)
このタイトルと表紙の絵から、ファンタジックな世界を想像して、ワクワク。
夜だけ開くサ-カスなんて・・・・。
でも読み始めたら、想像と違ってました。
今まで見てきたサ-カスの世界とは全く異質な世界。
日暮れに開場、夜明けに閉場 侵入者は放血される
そこは魔術師同士の対決の場になっていたのです!
天才魔術師を父に持つ、シ-リアとマルコは対決を運命付けられた2人。
しかし、やがて、2人は惹かれあい愛し合うようになる。
2人が対決をやめれば、サ-カスは崩壊してしまう。
さてさて、どうなる??
登場人物たちは多く、軽業師のツキコ、占い師のイゾベル、サ-カスの時計を作った時計職人のフリ-ドリッヒ・ティ-セン、サ-カス内で生まれた双子のウィジットとポペット。
人間の男の子・ベイリ-が物語の最初の方でサ-カス内にもぐりこみ、双子の女の子・ポペットと出会うけれど、それが後々まで親交を深めてサ-カスの危機も救うことになる。
最初から最後まで、ファンタジックな雰囲気で、夢のような美しい世界観に浸りながら楽しめた。
こういう物語は、やはり海外の作家さんでなくては書けないかも・・・。
映画化決定と知り、映画も是非、観たい!!と強く思いました。
初めて恋するときめきを描いた純情恋愛長編
四年間の学生生活を送った京都で、山根は四月一日から工業化学科の大学院生として新たなスタートをきった。学部生のころから暮らしている学生寮には、生物学科の安藤をはじめ電気電子工学科の寺田などゆかいな仲間たちのほか、数学科の龍彦もときどき遊びにやってくる。研究室でその日、明け方までかかってやっと山根は仮説を裏づける数値を導き出したが、教授から簡単な計算ミスを指摘され、ひとり居残りを命じられる。気分転換に糺(ただす)の森を訪れると突然の雷雨に見舞われ、豪雨の中に浮かび上がる満開の山桜の向こうに、白いワンピースを着たそのひとがいた。あれこれ考える前に楼門の下まで駆け寄り、自分の傘を彼女の足もとに置いて、一目散に立ち去っていた山根。ずぶ濡れになったせいか熱を出し、熱が下がってからもどうも様子がおかしい。そして京都御苑での花見の席で、龍彦のガールフレンドの花にいとも簡単に見抜かれる。「山根くん、もしかして好きなひと、できた?」。花は言う、もう一度姫に会いたければ、下鴨神社に毎日参拝すべし-----と。
(小学館HPより)
初恋っていいね~(^^)
京都の大学工学部院生の山根くんが主人公。
ある日、出会った野々宮美月に恋をする。
研究一筋の理系男子。女の子とは縁がなかった山根くんが友達の彼女・花からアドバイスを受けながら初デ-トに。
ハラハラドキドキ。
まるで影から見守る親の気分・・・^^;
一生懸命、美月のことを楽しませようとする山根くんが可愛い!
美月もそんな山根くんの優しい気持ちを汲んで、アクシデントにも笑顔でフォロ-。
お似合いのカップル誕生!!
と思っていたら・・・・・。
なるほど、そういう環境で育ったお嬢様だったのね・・・・。
それでもめげずに告白した山根くんの勇気に拍手!
その告白を誠意をもって受けなかった美月にも拍手!
実らなかった恋だけど、山根くんにとっては良い経験だったと思うし、良い思い出は一生残るでしょう。
恋っていいな~と思わせてくれる物語でした(^^)
京都ならではの風景、季節行事なども織り込まれていて、京都にまた行きたくなります。
葵祭りも見てみたいなぁ~。
姉妹編として先に出ている「左京区七夕通東入ル」も読んでみよう。
そちらは、山根くんがアドバイスを受けた花ちゃんと山根君の友人・龍彦の恋のお話とか。
★★★★
ここは、世界でいちばん小さなア-ケ-ド。
愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。
小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語
(講談社HPより)
世界で一番小さなア-ケ-ドのなかで暮らす人たちとそこに買い物に来る人の物語。
ア-ケ-ドのお店が、ちょっと変わった品物を扱っている。
衣装の端切れを扱うレ-ス屋さん、使用済みの絵葉書などを扱う紙店、義眼、勲章、
遺髪で作られたレ-スなど。
ア-ケ-ドで過ごした幼い頃の思い出を振り返りつつ、今現在のア-ケ-ドで暮らす人たちの話が語られていく。
語り手は、既に大人になった私。
父親はア-ケ-ドの大家さんだった。
そして私は16歳のとき、町の半分を焼き尽くす火災により、そのとき、映画館に居た父親を亡くしている。
心に残ったのは2番目の「百科事典少女」。
幼いとき、一緒にア-ケ-ドの一番奥の中庭にある読書休憩室で本を開いて同じときを過ごしたRちゃんとの想い出が語られる。
Rちゃんは数ある本のなかで百科事典を好んで読んでいた。その様子が実に可愛らしい。
第1巻【あいう】の最初のペ-ジからスタ-トし、第10巻の【ん】まで読み終えるのを楽しみにしていたのに・・・
その後、Rちゃんのお父さん(紳士おじさん)が訪れてRちゃんが開いて読んだペ-ジを鉛筆で書き写すという作業を続ける。
子どもを亡くした父親の哀しみが伝わってきて切ない。
ほかの話も、今はもう居ない人を思い出すような話で切ない。
けれど、その人の思い出は、遺された物たちによって、いつまでも残っている。
それが辛いのか、手放しに来る人もいたけれど・・・。
変わった品物を売る店主たちも皆、個性的でした。
現実離れしたお話ではないのに、小川さんの作品は、現在ある世界とはまた違う世界を感じさせる不思議な雰囲気を漂わせる。
やはり小川さんの作品は良いです!!
表紙の酒井絢子さんの絵が、物語の雰囲気を高めてくれている。
ちょっと気になった遺髪でレ-ス編みって、本当に何処かでやっている商売なんだろうか??
かなり魅惑的。
★★★★★
| 05 | 2026/06 | 07 |
| S | M | T | W | T | F | S |
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
