忍者ブログ
読んだ本の感想あれこれ。
[1]  [2]  [3]  [4



発行年月:2010年9月


 気鬱を払い、心を養う。庭ってのは不思議なもんだ。
江戸・千駄木町の庭師一家「植辰」に、千両の庭をこしらえる大きな仕事が舞い込んだ。だが、庶民に流行り病が猛威を振るい、武家と商家では謎の失踪事件が連続する。不穏な浮き世に、植辰の面々が立ち向かう。

<「植辰」に集う人々>
●辰蔵……作庭の腕は一流だが、酒好きでおっとりとぼけた親方
●お百合……男所帯をきびきび仕切っている、辰蔵の一人娘
●福助……池泉や流れなどの水読みに優れた庭師。元備前の侍
●玄林……穴太衆の末裔で、石の見立てや石組を得意とする庭師
●ちゃら……辰蔵に拾われて植辰で修業中の元浮浪児。「ちゃんちゃら可笑しいや」が口癖

                   (講談社HPより)




主人公・ちゃらがとっても魅力的。

庭師・辰蔵の元で庭師として働いて10年。
辰蔵の娘・お百合との会話は実の家族のような気安さで微笑ましい。


千両の庭を作ってくれと言われたり、高級料亭(?)の庭(南蛮好みの庭)を任されたり、
老夫婦の庭を掟破りの雑木で設えたり、ちゃらの庭づくりの考えに親方の辰蔵がアドバイスをしながら作っていく庭造りの様子が楽しい。


孤児として、幼いときに色々な家に貰われては逃げ出していた、ちゃらは
庭師という天職を見つけたんでしょう。

とある出来事から知り合った若侍・佐伯伊織も最初は、ひ弱なイメージでしたが
ここぞというときには頼りになって良かった!

この時代に流行った病、今では「厳しすぎるでしょ?」というお家とり潰しなども
出てくる。

ちゃらが思いを寄せたお都留とのことはちょっと切なかったけれど
お百合との関係は今後、何らかの変化があるのかな?


朝井さんはお庭についての思い入れが強いのかな?
巻末に紹介されていた「実さえ花さえ」も種苗屋の若夫婦のお話だとか。
そちらもまた読んでみたいな。


                       ★★★★
PR



発行年月:2014年12月


 江戸中期、松茸は幕府への貴重な献上品であり、松茸狩は尾張藩主が好む一大行事であった。算術が得意な江戸育ちの尾張藩士・小四郎はそれを生かして藩財政の立て直しを夢見ていたが、なぜか「御松茸同心」を拝命。尾張の山守に助けられながらも松茸不作の原因を探る日々が始まった。やがて小四郎は、山に魅せられ、自分の生きる道を切り開いていく――。数式でははかれない世界がそこにはあった! 直木賞作家が描く、傑作時代小説!

                     (徳間書店HPより)




父の後を継ぎ、江戸藩邸で定府藩士として勤めていた榊原小四郎。

家督を継いだのは18歳の昨年。
亡き母の妹・稲が母親代わりで育ててくれた。
稲が儒学者の娘であったことから小四郎は幼いときから
学問に向かわされ算術が得意。
共に働く者たちを心の中で愚弄していた。
いつかは藩のためもっと重要な仕事を任される立場になりたいと野心を抱いていた。
が・・・・突然の任は「御松茸同心」の命。

江戸を離れ、国許である尾張の地で不作続きの松茸を何とかしなければならない
お役目。

自身の不運を嘆き、渋々役目に励む小四郎。
ともに国許に戻った、3人の父親の古い友人たちが愉快。
小四郎のことを子ども扱いしたり、とろい奴とからかったり・・・・
でも手伝いに来てくれたり小四郎のことを気にかけてくれる。


最初は3年の任期だったが、9年が過ぎてしまう。
松茸を豊作にするヒントも段々と掴んでいく。

松茸に詳しい村人たちにも助けられ、小四郎も「御松茸同心」の仕事に夢中に
なる。
同じく「御松茸同心」の矢橋栄之進が最後に明かした正体は驚きだった。

登場人物たちがいい。
温かい交流が読んでいて楽しい。
小四郎が成長していく姿が良かったぁ~。


徳川家の御三家(尾張家、紀伊家、水戸家)の話は詳しく知らなかったので勉強になりました。

謹慎の身にあった尾張藩主の徳川宗春公に松茸狩りをして貰おうと奮闘する
人々の姿がなんだかジ~ンとした。
子ども騙しのようなものでも、きっと宗春公は嬉しかったでしょうね~。
実話かどうかはわからないけれど、その舞台となった興正寺は、
たまたま、長女が下宿している近くなので、今度訪れてみたいなぁ~。


  

                          ★★★★★



発行年月:2014年9月


 「好色一代男」「世間胸算用」などの浮世草子で知られる井原西鶴は寛永19年(1642)生まれで、松尾芭蕉や近松門左衛門と同時代を生きた俳諧師でもあり浄瑠璃作者でもあった。俳諧師としては、一昼夜に多数の句を吟ずる矢数俳諧を創始し、2万3500句を休みなく発する興行を打ったこともあるが、その異端ぶりから、「阿蘭陀流」とも呼ばれた。
若くして妻を亡くし、盲目の娘と大坂に暮らしながら、全身全霊をこめて創作に打ち込んだ西鶴。人間大好き、世間に興味津々、数多の騒動を引き起こしつつ、新しいジャンルの作品を次々と発表して300年前のベストセラー作家となった阿蘭陀西鶴の姿を描く、書き下ろし長編時代小説。
芭蕉との確執、近松との交流。娘と二人の奇妙な暮らし。
創作に一切妥協なし。傍迷惑な天才作家・井原西鶴とは何者か?

                        (講談社HPより)




物語の主役は西鶴の娘・おあいかな?
9歳で母は病死。
幼い2人の弟たちはほかの家へ養子に出され、おあいは父親と奉公人と暮らす日々。
おあいは盲目だが、母親が生活に必要なことは教えてくれていたので、
料理や裁縫もこなすことが出来る。
見えない代わりに、嗅覚、聴覚など、ほかの感覚が研ぎ澄まされ家のなかでの生活に
不自由することは殆どない様子。
ここまでに育て上げた母親が素晴らしいなぁ~。

西鶴は、俳諧師としては、なかなか才能を認められず、それならばと考えたのが
一昼夜に2万3500句を詠むという興行。
居直りとも思えるその行い、己こそ新風、一流だと自讃し「阿蘭陀西鶴」を自称。
貧乏なのに貧乏くさいことは嫌いで気位ばかり高い父・西鶴を半ば呆れながらも
見守る娘・おあい。

やがて、浄瑠璃や浮世草子も手掛けるようになり、こちらでの人気が出てくる。

そして、おあいが知る破天荒な父親の本当の気持ち。

下戸だと思っていたけれど、母が亡くなってから暫くして酒を断っていた。
弟たちを外に出したのに自分だけをそばにおいたわけ。


父親の深い愛情を知るおあい。
家族愛溢れる人だったと知り、感動しました。
晩年の二人の生活も穏やかで幸せそうでした。
いまの時代なら、早すぎる一生だけれど・・・。


同じ時代の松尾芭蕉や近松門左衛門も登場して、そういう交流関係だったんだと
知れたのも面白かった。


朝井さんの作品は、読み応えあります!
他の作品も読んでいきたいな。


                         ★★★★★




発行年月:2013年8月


あなたに逢いたい。命にかえても。


幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、天狗党の一士に嫁いで
水戸へ 下った中島歌子。
だが、尊王攘夷の急先鋒である天狗党は暴走する。
内乱の激化にともない、歌子は夫から引き離され、囚われの身となった。
樋口一葉の歌の師匠として知られ、明治の世に歌塾「萩の舎」を主宰し
一世を風靡した歌子は、何を想い、胸に秘めていたのか。
落涙の結末!

葉室麟氏絶賛!
女性はこれほどまでに恋を抱いて生きるのか。

                     (講談社HPより)



歌人・中島歌子の生涯を、その門下生であった三宅花圃が、語る。
花圃は作家として、その後活躍し、後輩には樋口一葉が存在していた。


樋口一葉の名は有名ですが、中島歌子と聞いても????
その師匠であった人の物語。

中島歌子は、後定宿の指定を受けている「池田屋」の娘として裕福な暮らしを
していたが、宿に泊まった林忠左衛門以徳に恋心を抱き、その恋を成就する
形で妻となる。
この辺りまでは、読み手も明るい気持ちで物語に向き合えます。
が・・・・以徳は、水戸藩士の侍。
時代は尊王攘夷を唱える若い侍たちがあちらこちらの藩にいる時代。
藩に迷惑がかかってはいけないと脱藩して、天狗党の一員としてその志を貫こうと
する以徳。
結婚して憧れの人の妻とはなったものの、離れ離れの日々。
そして、動乱に巻き込まれる以徳たち。

志のために、ほかのグループと戦ったり、敗れれば逆徒扱いで処刑。
その妻子までが囚われ、同じように処罰を受けるという厳しい時代。
歌子も囚われの身として、いつ命が絶たれるのかわからない状況のなか
生き延びる。
幼い子どもまでが斬首という酷い最期。
辛いことが続くと読むのも苦痛になってきましたが、これが歴史なんだと
我慢して読みました。

辛いなかでも恋しい人を想って歌を詠む女たちが哀しい。


牢から離れ命からがら生き延びた歌子のおかげで、今日まで知られる
歌人や文筆家が育ったと思うと、よく生き延びてくれたという思いが
強く沸いてくる。
読み応え十分の作品でした!!


                         ★★★★★

カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
メ-タ-
kyokoさんの読書メーター
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[09/20 kyoko]
[05/23 のぶ]
[09/15 kyoko]
[09/14 ひろ]
[03/06 kyoko]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
kyoko
HP:
性別:
女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
フリーエリア

Copyright (c)本を片手に・・・ All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  image by Night on the Planet  Template by tsukika

忍者ブログ [PR]