この戦は日本国を守る戦である。死しても負けることは許されぬと心得よ。

長州藩士・高杉晋作。本名・春風。幕府を守るべき彼が、欧米列強に蹂躙される上海の姿に日本の未来を見た時、「レボリューション」の天命は下った。民衆を率いて四カ国連合艦隊と幕府から藩を守り抜き、徳川治世を散らす嵐となった男の奇策に富んだ戦いと、二十八年の濃密な生涯を壮大なスケールで描く、渾身の本格歴史小説。
(新潮社HPより)
高杉晋作の物語。
名前は知っている。
でも明治維新前に活躍した長州藩の人くらいの恥ずかしいくらい浅い知識のみ・・・^^;
NHKの大河ドラマ『竜馬伝』で竜馬を福山雅治が演じていたとき
高杉晋作役は、確か、伊勢谷友介だった。
喀血する場面を鮮烈に覚えているので、間違いないと思うけれど・・・(違ったらすみません)。
ドラマのイメ-ジや自分のなかに描いていた高杉晋作という人物と、
物語の人物の印象はかなり違っていたのに驚いた。
この物語にある数ある偉業を知らなかった為ですが・・・・
27歳で病死するまでにしたことは、凄い!
やることが大胆!
自分の信ずることならば、後先考えずに突き進むかんじ。
たまたま事は巧くいったから良かったけれど、間違えば、
命を落とすことになることを何度もしている。
脱藩も一度や二度じゃないというのもハチャメチャ。
牢に入れられる事態になっても、晋作の力が必要になり再び表舞台に舞い戻る。
運も良い人だったんだなぁ~。
上海に行った時には、アヘン戦争後の中国の状態を目の当たりにして、
日本が同じようなことにならないようにしなければ!と強く思うのは、当然だけど
英国公使館に火を放つとか、やることが凄い。
必要だからと軍艦の購入を独断で決め藩に支払いさせようと思ったり・・・
けれど、最後は病死とは、なんとも無念だったでしょうね。
人一倍働いたのだから、幕末後の日本を見たかったでしょうに・・・・・。
初代内閣総理大臣になった伊藤博文が晋作の子分的位置で働いていたのは、
なんだか面白かった。
最初、ちょっと教科書を読んでいるようで、正直
頁をめくる手が進まなかったのですが、いろいろと勉強させていただきました。
★★★
発行年月:2013年1月
貧乏侍の弥市と商家に婿入りした喜平次。
国許を追われ江戸に暮らす二人は、
十六年ぶりに初恋の女と再会し用心棒を引き受けるが……。
三人の男女の儘ならぬ人生を哀歓豊かに描く傑作時代小説。
(幻冬舎HPより)
今回の話は、ちょっと今までと違う感じ。
面白かったけれど・・・・緊迫感があまりなく
2人の男の置かれている立場が、のんびりした感じだからかなぁ~。
藩内の争いに巻き込まれて運悪く、国許から江戸に出なければならなくなった
草波弥市と小池喜平次。
弥市は、剣術を教えることで細々とした暮らしをする独り者。
喜平次は、飛脚問屋に婿入りして武士ではなく商人として生きていた。
そんな2人に、任された仕事は、国許で上司であった猪口民部の娘・萩乃が江戸にいるので、用心棒をすること。
2人を裏切ったかたちの民部だが、その娘・萩乃には、2人とも好意を抱いていた。
弥市も喜平次もお人好しだなぁ~。
自分を裏切った人の娘を守る役目を受け入れるんだから・・・・
しかも萩乃には夫が居るんだから・・・。
2人が萩乃に会うのは16年ぶり。
それでも変わらぬ想い・・・萩乃は幸せな人。
でも、女のわたしには、イマイチ萩乃の魅力が伝わって来ず・・・
なので、弥市の見合い相手・弥生が出てきたときは、嬉しかった!!
仇名は大福餅の弥生。
なんだかすごく好感が持てる女性でした。
弥市と弥生・・・・・名前も似てるし・・・^m^
お似合いの夫婦になると思うなぁ~。
武士同士の真剣勝負の場面は、一気に緊迫感が増して、ハラハラドキドキ。
悪しき者は倒れる。
気持ちの良い終わり方は、今回も大満足でした(^^)
葉室作品は人気なので、新刊がなかなか図書館の順番が廻って来ません。
次の作品も、気長に順番待ちしてます。
★★★
早くに両親を亡くし十六歳で奉公に出た菜々だったが、主人の風早市之進が無実の罪を着せられてしまう。驚くことに市之進を嵌めたのは、無念の死を遂げた父の仇敵その男だった。風早家の幼き二人の子を守るため菜々は孤軍奮闘し、そして一世一代の勝負に出る---軽妙洒脱にして痛快な時代エンターテインメント
(双葉社HPより)
主人公・菜々の奉公先の家族が素晴らしい。
主人の風早市之進とその妻・佐知は、奉公人である菜々を大事に家族同然のように接してくれる。
その優しさに報いようと菜々も家族のために奮闘する。
菜々は武士の子であり、父親・安坂長七郎が切腹を強いられたのは、轟平次郎という男の策略によるものだったと知りいつか仇討ちをと密かに思っていた。
菜々の周りには心強い味方がどんどん増えていく。
最初は嫌なかんじの人だな~と思っても菜々の真っ直ぐな毅然とした態度に感心し、出会う人たちを惹きつけてしまう。
誰からも愛される性格の菜々。
思うわぬかたちで仇討ちを果たす機会を得て、見事に自分の思いを遂げる。
が・・・・命を奪うことはしない。
う~ん、これも良かった!
物語に出てくる蛍草は、露草の別名なんですね~。
表紙の花の絵も素敵です。
今回もジ~ンと胸に響く良い作品でした。
発行年月:2012年11月
少し臆病な女性たちに贈るラブストーリー
楓は冴えない中学校教師。
思いがけず料理上手の恋人を居候させることになり、
また学校では問題児を面倒みるハメに。
等身大のファンタジ
(文芸春秋HPより)
凄く不思議な状況でしたが、主人公の楓を応援したくなる物語。
楓は、中学で社会科を教えている。
熱血教師とはほど遠く、授業中の生徒たちの様子にも特に関心がない。
けれど、そんな教師だからこそ、救える生徒もいる。
自身の元教師でもあった野崎が同じ学校にいる。
楓のことを「教師に向いていないはずなのに・・・」と思いながらも野崎は
ちょっと問題がある生徒を楓と関わらせる。
卓球が物凄く上手いのに部内でもめ事を起こし居場所のない市井くん。
クラスの雰囲気を変えてしまう張本人の高井さん。
楓は野崎先生に頼まれて、生徒たちと面談するけれど、説教めいたことは一切言わない。
自分がなんとか変えてみせようという気合もない。
教師らしくないけれど、生徒にも一人の人として対等に向き合う姿勢が、好感が持てる。
市井くんも高井さんも楓と接することで、少し心の持ち方が変わる。
こういう対応が自然に出来る人っていいな。
教師としては、らしくないけれど、結果的に生徒の気持ちを変えることが出来るのは素晴らしい。
こういう素質みたいなものを持った人が教師には本当はふさわしいんじゃないかな?
なんて思ってしまった。
楓の私生活もユニーク。
恋人は何者でしょ?
突然消えて、ふいにまた現れるって・・・・。
和歌教室の講師・田辺先生とも恋人だった時がある?
不思議なことがあれこれあったけど、ゆったりした温かいかんじの物語。
でも楓の境遇を考えるとちょっと切なくもある。
楓がこの先、幸せに誰かと暮らしてくれたらいいんだけどなぁ~。
★★★★★
想いを貫いた江戸の人々の生きざま。<ハヤカワ・ミステルワ-ルド>からの入魂の歴史小説。
江戸参府のオランダ使節団が、自分たちの宿「長崎屋」に泊まるのを、るんと美鶴は誇りにしていた。文政五年、二人は碧眼の若者、丈吉と出逢い、両国の血をひき彼と交流を深めてゆく。まもなく、病人のために秘薬を探していたるんは、薬の納入先を聞きつけた丈吉と回船問屋を訪れる。が、店に赴いた彼らが発見したのは男の死体だった。さらに、数年後シ-ボルトをめぐる大事件が起こり、姉妹はその渦中に。
(早川書房HPより)
少し前に、朝井まてかさんの「先生のお庭番」を読んでいたので、その同じ時代の話ということで
興味深く最初から最後まで読みました。
オランダからの商館長が代々、泊まる「長崎屋」という宿屋。
そこの姉妹・るんと美鶴。
器量よしの二人は世間でも評判。
そして、成長した二人の前に現れたのは、碧い眼の若者・丈吉と親しくなる。
丈吉は先のオランダ商館長・ヘンドリック・ドゥ-フと日本人の母(長崎の遊女だった)との子。
シ-ボルトにも日本人の女性との間に娘・イネがいるのを知っていますが、
この時代、そういう子どもは他にも居たんですね~。
丈吉は、その後、不幸な目に遭うのが切なかったなぁ~。
史実を交えての物語なので、教科書で見た名前が結構出てきます。
怪しい武士が間宮林蔵だったり・・・・。
シ-ボルトが来日し、やがて起きたシ-ボルト事件に、るんや美鶴の愛する人たちも巻き込まれていきます。
シ-ボルト事件でそれに関与した者の厳しい取調べがあったのは、「先生のお庭番」やほかのもので読んで知っていましたが、こうして物語のなかの人物の身近な人が苦しめられるのは、辛かった。
多くの人が犠牲になったシ-ボルト事件は暗い事件だけれど、たシ-ボルトは
日本で過ごした貴重な体験を大事に思い、自分を拘束することになった事件の密告者(間宮林蔵)の功績を称え世界に林蔵の名を広げたことは嬉しい。
密告者としての汚名がついた林蔵も格好よかった。
皆、それぞれ自分の信じる思いを貫いただけ。
シ-ボルトの娘・イネのその後のことがちょっと興味あるな・・・。
調べてみようかな?
どんどん、新刊を出される葉室さんですが、少し前の作品も良いです(^^)
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;