愛しい人を守るため、追いつめられていく私
心から逃げたい
優しい夫と愛しい子供との日々に、突然襲いかかる父との再会。
忌まわしい過去を、おぞましい父の存在を、決して知られてはならない。
家族を捨て、憎しみを胸に、死と隣り合わせの父親と彷徨う生活が始まる。
どこへ行けばいいのか、いつまで逃げればいいのか……。
追いつめられた女の苦渋の選択も切ない、哀しみの長編サスペンス!
(光文社HPより)
途中までは、サスペンス要素が大きく、主人公の澪が逃げるのをハラハラドキドキしながら読んでいた。
「逃げる」・・・・最初は、自分の記憶のなかにある嫌悪してきた父親・伊作から、そして、そんな父親がいることを夫や義母に隠すため、家族からも逃げる。
澪はどうなるんだろ??と思って読んでいたら・・・・父親と対面し、一緒に暮らすことになる。
最初は、殺すために会うことにしたけれど・・・いざそのタイミングになると実行できなかった。
父親は肺がんを患っていて、余命は1年未満と知る。
自分の記憶にある思い出したくないこと。
母親や祖母から聞かされた父親のこと。
父親と暮らしながらいろいろな場所を転々とし働き、伊作の病状を気にしながら生活を共にする。
そして、段々と真実が明らかになっていく。
一方、逃げている澪を心配して、必死に探す夫・昌彦。
昌彦の母も、まだ幼い娘の雪那も澪のことを心配している。
澪の記憶のなかの忌まわしいことは、誤解だった。
自分の母親が全ての元凶だったと知る。
ラストは、ハッピ-エンド。
あ~良かったとホッとする結末。
まだ澪の心の中の不安は、少し残っているけれど、温かい家族が見守ってくれているから、きっとこの後は大丈夫!と思えた。
この本を読み終えて、永井さんが2010年の9月に亡くなっていたことを知りました。
ショックです(/_;)。
まだお若いのに・・・・・。
次はどんな作品を書いてくださるのか、まだまだ楽しみにしていたかったのに・・・・。
ご冥福をお祈りします。
★★★
届け、この思い。
明日の日本のために-----
1羽の伝書鳩が運んできた50年前のSOS
時を越えて2人の男をつなぐ奇跡の行方は?
ファンタジーノベル大賞受賞の気鋭が贈るハートフル・サスペンス!
未曾有(みぞう)の危機に、すべてを託された1羽の伝書鳩
高度経済成長真っ盛りの昭和36年、明和(めいわ)新聞の記者・坪井永史(つぼいえいじ)の元に日米安保に絡む特ダネが舞い込んだ。情報提供者は女子大生・山岸葉子(やまぎしようこ)。だが接触した直後に彼女は失踪してしまう。かつて戦地で死に別れた軍鳩(ぐんきゅう)・クロノスと瓜二(うりふた)つの伝書鳩を伴い、坪井は葉子の消息を追う。だが、訪れた米軍基地・川俣(かわまた)飛行場で正体不明の一党に拉致(らち)されてしまう。50年後の平成23年、アルバイトの溝口俊太(みぞぐちしゅんた)は明和新聞の屋上で1羽の鳩と出会う。鳩の足につけられた通信管には、日本の命運を握るメッセージが……。
(祥伝社HPより)
すごく良かった!!物語に惹き込まれて読み続けました。
ファンタジ-の要素もあるけど、戦中、戦後の日本の重苦しい時代背景もあってか、すごく重厚なかんじのお話でした!
中村さんの話は、いつもいろいろな資料をたくさん調べたうえで物語を構築されたじゃないかな?と思わせる物語で、読み応え十分です。
今回は、時空を越えて現代に住む青年・俊太と50年前の世界で危機的状況に陥る永史が伝書鳩(名前はクロノス)を介して通じるとお話。
二人が交錯する前に、それぞれの話が交互に進行。
永史は戦地で激戦を体験していた。伝書鳩の世話をする係り・鳩兵だった。
ことさら可愛がっていた鳩をクロノスと名づけていたが激戦中に死んでしまった。
終戦後、永史は明和新聞社の記者として働くが、その新聞社の鳩舎でクロノスの生き写しか?と思うほどの鳩の雛を目にする。
俊太はもうすぐ30歳。
最初に勤めた会社で、心理的ストレスからうつ病になり自ら退社していた。
従兄弟・優介の勧めで彼が勤める明和新聞社のアルバイト員として働くことになる。
そしてある日、社の屋上で迷い鳩を見つける。
普通の鳩と思ったが、以前、使われていた鳩小屋のなかに入っていった。
レ-ス中の鳩が何か助けを求めているのか?
交互に語られた二人が一羽の伝書鳩・クロノスによって繋がる。
全く違う時代なのに、クロノスが時空を超えてそれぞれのメッセ-ジを繋ぐ。
戦時中の日本とアメリカの関係、日本国内の紛争、いろいろな過去の事象も交えた話もあって、ここではクロノスがもしかしたら起きていたかもしれない日本の危機を救うという大きな話にもなっている。
そして、ラストにはびっくりで嬉しい対面も!
図書館になかなか入らないので、リクエストして入れて貰った本。
うしろに予約者も少ないから、まだメジャ-じゃないのかなぁ?
以前、読んだ本もすごく良かったので、わたしのなかでは新刊が出たら必ず読みたい作家さんの一人です。!
★★★★★
失恋ばかりの、私の体。ああ、でも、私は彼のことが、本当に、好きだった。

32歳。次は、凪の海みたいな恋愛をしたかった。なのに、彼と関係を結んでから、私は笑えなくなった。好きになるほど、苦しくなるのだ。すべての恋愛は狂気である、という。けれど本当にこの狂気を乗り越え、次の海へと漕ぎ出していけるのか----。行き場のない黒い感情と、その先に見えるほんの少しの希望を鮮烈に描いた会心作。
(新潮社HPより)
なんて苦しい恋なんだろう。
32歳の夏目はアルバイトしながら絵を描いている。
そして、ある日、男友達・瀬田から「夏目が好きそうな絵・・・・」と個展に誘われ、そこでまず絵に魅せられる。
白い富士山の絵。
その絵を描いた間島という男に段々と惹かれてゆく夏目。
恋人がいるらしいと聞いているし、近づいたらいけない人だということを感じているのに、どんどん惹かれていく夏目。
とうとう自分から告白して恋人のような関係になるのに・・・・・。
夏目の理性が段々抑えられなくなっていく過程が、なんとも切なかった。
夏目だけでなく、間島も、また瀬田もそれぞれに苦境に立たされているかんじで、
もっと巧く自分を好きだという人と向き合えばいいのに・・・・なんて思ってしまった。
ま、それが出来ない人たちだから、こういう状況になっているんだろうけど・・・。
夏目が最後、願うように、皆の想いがどうか救われますように・・・とわたしも思った!
この作者の作品、あまり読んだ記憶ないけど、この物語を読んで、ほかの作品も読んでみようと思った!
この表題と表紙絵のセンスが◎。
女ごころを書いたら、女子以上。ダメ男を書いたら、日本一!
女主人公5人VS男主人公5人で贈る“長嶋有ひとり紅白歌合戦”。
デビュー10周年を迎える、各紙誌絶賛の第10作品集。
(河出書房新社HPより)
どうってことない誰かの日常を垣間見ているかんじの文章。
でもなんだか可笑しい。
<丹下>
書き物を仕事にしている女性。
遠くで「丹下」という言葉がよく聞こえる。
なんなんだ?丹下って?
<マラソンをさぼる>
高校のマラソン大会だけど、同級生に誘われさぼる男子生徒。
<穴場で>
花火大会をみる男女数人の会話あれこれ。
<山根と六郎>
コンビニでお湯を貰い、カップ麺を食べる男子大学生二人の話。
<噛みながら>
銀行強盗の現場に居合わせた女性。
緊迫した状況なのに、なぜか過去のことを思い出し、可笑しくなる。
最後の行動にはビックリ。変わった人だな^^;
<ジャ-ジの一人>
台風後の別荘(?)が気になり一人山荘に向かいすこで過ごす。
映画にもなったジャ-ジの二人の前日談だとか?
ジャ-ジの二人が見たくなった!
<ファットスプレッド>
音楽好きなカップルの会話。
ここに出てきた音楽は特に好きじゃないので・・・・^^;
<海の男>
海釣りに行った二人の男性の話。
仲良さそうでいいな(^^)
<十時間>
母親の帰宅を待つ姉妹の話。
寒い日、心細さ・・・・なんだか切なくなった。
<祝福>
結婚式に招かれた男性。
その他大勢の人たち。
どこにでもありそうな風景と会話だな。
全体的にすごく面白いわけじゃないし、本を閉じたら内容をすぐ忘れそう^^;
でも、読んでいるときは結構、楽しめた。
僕の奥さん、咲子が家出して1カ月。
僕は姉の月夜さんと咲子に会いに、新幹線に乗る-----。
温かな気持ちに包まれる表題作他、
切ない恋、禍々しい恋、淡い想い、忘れられない痛みなど、
珠玉の短篇連作集。
(河出書房新社HPより)
5つのお話は、それぞれに良かったと思う。
全部植物に因んだタイトルがついているお話。
・銀杏
・椿
・羽衣草
・欅(けやき)
・昼咲月見草
主人公は主に30代くらいの女性。
最初の話「銀杏」では、大学時代からの友人が銀杏を手土産に訪ねて来て、その友人と会話しながら、自分のもう暫く会ってなくて、別れることになるんじゃないかという恋人のことをあれこれ思い出す話。
なんでもない会話の様子が好き。
「椿」は娘のピアノの教師との不倫の話。
「羽衣草」は、母より11歳下の叔母の亜津子の家を訪問する女性。
小さい頃から、この叔母のことが好きで、年の離れた姉のような感覚で接することが出来る。
叔母のつくる手料理はちょっと斬新なアイデアだけど、美味しいと。
実際、美味しそうだった!
この話が一番好きだったなぁ~。
こんな叔母さん居たらいいな。
塩せんべいにポテトサラダの組み合わせは、試してみたい(笑)
「欅」は66歳で亡くなった叔母の葬儀で疎遠になっていた従姉妹達に会い、叔母や従姉妹達で過ごした夏の日の思い出を巡る話。
「昼咲月見草」は、浩介は妻の姉・月夜と家出した妻を迎えに新幹線に乗り、その途中で思い出す、妻の姉と同じ名前の月夜さんのこと。
その月夜さんはおばあさんで、浩介が予備校生時代、一人暮らしをしていたアパートの真上の部屋に住む人だった。
そのおばあさんから貰った千円札が、ここ一番というときに自分を精神的に助けてくれた。
この話も好きだった。
そして、表紙のイラスト、昼咲月見草の絵が素敵!
装画は波多野 光さん。
波多野さんのイラストももっといろいろ見てみたい!
イラスト集とか探してみようかな?
05 | 2025/06 | 07 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 5 | 6 | 7 | |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
29 | 30 |
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;