発行年月:2015年10月
未来への光と希望に満ちた、少年リクの勇気と成長の物語
宇都宮から福島へ転校した小学校5年生の少年リク。引っ越した町には、人影がなかった。道路にも、校庭にも誰もいない。外で遊びたい。思いっきり自転車でかっ飛ばしたい。そんなリクが白の王国で出会ったのは、リクを対等な人間として扱ってくれる優しい大人たち、山で生きる野生の動物、そして……
(キノブックスHPより)
3.11後に医師の父と福島県に引っ越した10歳の佐藤陸。
横浜の叔母さんは陸まで引っ越すことに反対した。
「わざわざ死ににいくようなものよ」と。
転校先では歓迎され、担任の岩本先生も優しくて良い先生。
最初に手渡されたのが線量バッジ。放射線の線量を常時チェックする。
子ども達は明るくしている。
大人たちが怒っていて、愚痴っているのをみて。
自分たちが明るく振る舞わい怒りを鎮めようと無意識に感じている。
だから、実際、とても疲れる。
ひとつひとつの文章が、胸にささる。
福島で暮らす人たちの心のなかに抱えたものが伝わってくるようで・・・・。
そして、冬休み、リクは北海道への5泊6日の自然体験ツアーに参加する。
リクが最年長で4年生、3年生、2年生、1年生と各一人ずつ。
北海道では、大村さんという家で皆がホームスティ。
大村家にはおじさん、おばさんの他、司法試験を受けるため勉強中の洋一がいる。
大村家の人たちがとても温かい。
他の北海道の人たちの接し方にもリクは居心地の良さを感じる。
未来が不安とか放射能が怖いとか一言も言わず、子どもたちに同情もとくになく
がんばれも言わない。対等に扱ってくれるのがうれしい。
そして、北海道の山のなかで、自然の動物たちを見る。
夜、夢の中に知らない男の子が出てきてとても楽しく遊ぶ。
男の子と一緒に不思議な生き物がいる。「トンチ」というらしい。
リクが色々なことを経験しながら、成長していく姿がいい。
ファンタジックな部分もすてき。
福島の話って知っていて読んだけれど、今まで読んだその類の本とは違う。
特に何かを教えるものではなく、福島という地で暮らしている人たちの
ことを遠くから応援したくなる物語。
子どもにも読みやすい本だと思います。
多くの人に読んでほしいな。
★★★★★
発行年月:2001年4月
まもなく渋谷の街が抜ける、
精神病院への移送途中、逃亡した14歳の少年は、
霧雨に濡れるすり鉢の底の街に何を感じたのか?
知覚と妄想の狭間に潜む鮮烈な世界を描く傑作書き下ろし!
(幻冬舎HPより)
三部作だそうですが・・・
前の「コンセント」と「アンテナ」は未読です。
でもこれだけで十分面白かった!
主人公の佐藤ミミにとても好感が持てました。
両親を幼くして亡くし、父方の祖父母の元で幸せに成長し・・・
武道家でもあった祖父から、武道を学び、自衛官~看護師と職業を変える。
でもそこで得た技術はその後のミミの大きな力になっていくのが凄い。
文章に無駄がない。
一つ一つの出来事が全て後に繋がって行く。
そして、ミミは移送屋に。
精神的に異常だと周囲が認めた者から依頼を受けて、本人に接触し納得したうえで
病院や施設まで移送する仕事。
ある日、14歳の正也を移送中に脱走され、正也を探す。
正也とミミとの関係がいい。
正也のような人は、実際居るでしょう。
周囲からは異常者のような目で見られ、本人は、今いる世界から安心できる
居場所を求め苦しむ。時には暴力で抵抗したり・・・
ミミはそんな正也の存在から真正面から向き合い、会話を長く続けることが出来る。
精神科の患者さんとの向き合い方のような物も書かれている。
世間から偏見の目で見られる精神科疾患の人のことがこういう物語から
少し救われるといいな。
時間があれば三部作の前二作も読んでみよう。
★★★★★
発行年月:2014年10月
大災厄に見舞われた後、外来語も自動車もインターネットも無くなった鎖国状態の日本で、死を奪われた世代の老人義郎には、体が弱く美しい曾孫、無名をめぐる心配事が尽きない。やがて少年となった無名は「献灯使」として海外へ旅立つ運命に……。 原発事故後のいつかの「日本」を描いたデストピア文学の傑作!未曾有の“超現実”近未来小説集
(講談社HPより)
表題作が一番長い話ですが、5つの話が収録。
違う話ですが、全部、同じ世界観を色々な主人公たちで書いたかんじ。
恐ろしかったです。
原発事故後の日本がこんな風になったら・・・・と思うと。
表題作の<献灯使>は、100歳を優に超えた老人と暮らす曾孫の無名の話。
無名の母は、彼を産んだ3日後に息をひきとり、父親はそのショックからか
逃げだすように姿を消し行方知れず。
無名は優秀な子ども。
彼の能力を国際医学研究が分析し世界中の人々に役立てるため献灯使となることを
受け入れる。
彼のその後が気になるのだけど・・・その後の短編にその答えはあったのか???
その他の話
<韋駄天どこまでも>
<不死の鳥>
<彼岸>
<動物たちのバベル>
平成の時代がとっくに終わった時代の日本が描かれている。
それを読んでも不安になる。
著者は、ベルリン在住だとか。
なるほど・・・。
他所から見た今の日本の現状を憂い警告を示したものなのか?
★★★
発行年月:2015年1月
霧深いなか、道案内の剛力たちに守られながら、ニザマの地方官僚の姫君ユシャッバとその近衛兵の一行が尾根を渡っていた。陰謀渦巻く当地で追われた一行は、山を下った先にある港町を目指していた。
剛力集団の中には、鳥飼のエゴンがいた。顔に大きな傷を持つエゴンは言葉をうまく使えないが、鳥たちとは、障害なく意思疎通がとれているようだ。そんな彼の様子を興味深く見ていたのは、他ならぬユシャッバだった――。
(講談社HPより)
前作の「図書館の魔女 上下」の続編。
同じ世界ですが、主人公は違う。
前作は<一の谷>の図書館の魔女・マツリカとユキヒトの物語だったけれど
今回、ユキヒトは名前がチラッと出てくるのみ。
マツリカは終盤に登場しました!
今回も分厚い本。658頁。
仕事休みの今日、家事の合間に、昼前から読み始め、なんとか夕方に読了。
すごい達成感・・・笑
正直、ちょっと途中、斜め読みしました^^;
言葉は上手く話せないけれど、烏のハァウと意思疎通を図り、情報取集により
仲間の危機を救う・エゴンが主役かな?
エゴンたち剛力の仲間に加え
焼き討ちされた村で意識のなかった少年・黒(ハク)を助け
途中で出会ったニザマの姫君・ユシャッバを安全なところに連れていく。
その行きついた先でマツリカ登場!
マツリカと剛力たちのやり取りが愉快でした^m^
マツリカのクールなかんじ、いいわ~♪
この世界観はやはり素晴らしい!
続編読みたいな。
もう少し、コンパクトにしてほしいけど・・・^^;
★★★★★
発行年月:2004年3月
富士山のふもとに集め続けたゴミの 要塞に住む妖怪のような老女の話「ジャミラ」他、
霊峰富士にまつわる、せつなくも美しい 小説集!
(文藝春秋HPより)
富士山が出てくる4つの短編。
どの話も良かった!
<青い峠>
コンビニでチーフとして働く岡野(29歳)。
元は医学生だった。大学の友人・飯田と正式信者に
なるために富士山麓の研鑚所にいた時の思い出。
研鑚所で飯田は、亡くなった・・・富士山が好きだった。
バイトのこずえが岡野の支えになってくれそうでホッとする。
これって、オウムの話だよね?
こんな風に能力ある人が潰されちゃう宗教って恐ろしいと改めて感じた。
<樹海>
小学校から受験で入学し、中学卒業で、それぞれ違う進路を選んだ3人の少年。
卒業旅行として、樹海で野宿。
無鉄砲だけれど、何かを学んだようす。
首を吊り損ねた男に遭遇の場面はドキッ!
<ジャミラ>
ゴミに囲まれて富士の麓の街で暮らす老女・木村マツ。
市役所環境課のボクは、木村マツにジャミラと名付ける。
説得に応じ、ゴミ撤去となる。
なんだか、ジャミラが哀しい。
少しでも楽しく人の関わりを感じながらこれからは暮らして欲しいな。
<ひかりの子>
水子供養の観音菩薩にお参りに行った、看護師の美奈子。
自身が関わる堕胎手術で生きられなかった子どもたちの魂が
安らかであるように、祈る。
そこで出会った流産で子どもを亡くした女性・梶川むつ子と
女性ばかりで富士登山するツアーに参加する。
参加女性たちのそれぞれの話が強烈。
なかでも子宮がん末期で最後の頑張りに富士山に登る決心をした小林順子が
印象的。
彼女を支えながら美奈子も登る。
病院勤務で産科に居た時堕胎手術で生きられなかった子どもを、
わたしも見たことあるので美奈子の怒りは共感できた!
どの話も重たいものを抱えた人たちが富士山に救われる。
そういう力がやっぱり、あるんでしょうね。
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;