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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2020年9月


【第164回直木賞受賞作】
「誰の心にも淀みはある。でも、それが人ってもんでね」
江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。
青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張形をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏」)。
裏長屋で飯屋を営む与吾蔵は、仕入れ帰りに立ち寄る根津権現で、小さな唄声を聞く。かつて、荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が手酷く捨ててしまった女がよく口にしていた、珍しい唄だった。唄声の主は小さな女の子供。思わず声をかけた与吾蔵だったが――(「はじめましょ」)ほか全六話。
生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、著者渾身の時代小説。

                     (集英社HPより)



心町(うやまち)にある貧乏長屋の人々の暮らしを描いた連作短編集。

長屋の差配は茂十。
茂十が、この長屋の差配として来た経緯は最後の章<灰の男>にある。


長屋の人たちの暮らしぶりが目に浮かぶ。
長屋のそばに流れる川は淀んで何かが溜まっている匂いが漂っている。
それでも人々の暮らしのそばにいつもあるもの。



最初の<心淋し川>の、ちほは好きになった人と別れることになり
この長屋を出ることは叶わなかったけれど、最後の章で別の人と結婚して
ここを出て行くことになったんだなぁ~とわかり良かった。

次の話<閨仏>の、りきは、ほかの妾3人と自分の暮らしの行く末を
考えた行動をとる。閨仏ってなんだ?と思ったら・・・( ゚Д゚)

<はじめましょ>は、この6つの話のなかでは、ほっこりする話。
飯屋を営む与吾蔵は昔、捨てた女から教わった歌を歌う少女に出会う。
かつて捨てた女との再会。
最終章で少女と3人で家族になっていると知り、これも嬉しかった。

次の<冬虫夏草>は、ちょっと哀しいとうか、複雑な気持ちになる話。
元は薬問屋の商いで成功した家のおかみさんと息子だった吉と富士之助。
商いが傾いたのは、息子の結婚と夫の急死が引き金。
息子は侍にたてつき大怪我を負い立ち上がることも出来ない大怪我。
嫁とは離縁させ、息子の面倒を見ながら長屋で暮らしている。
吉は、はた目には気の毒な人なのだけど、本人だけは喜々としているという
なんとも子離れ出来ない女性なのかなぁ~?理解に苦しむ女性。


<明けぬ里>は、元遊女の、ようは、偶然、同じ世界にいた明里に会う。
一番の売れっ子で、見た目の美しく誰にでも優しいのは変わりなく。
お互いにお腹の子の誕生が楽しみねと話したのに、その後、旦那とは
違う人と心中したと知る。


最後の<灰の男>は、長屋の差配人・茂十の話。
長屋に来たのは、一人の男を見張るため。
今は呆けたただの老人で皆から楡じいと呼ばれている男。
だが、その男は、間違いなく、息子の命を奪った男。

息子が先に楡じい(吉次郎)の息子の命を奪っていた。


どれも読みやすく、主人公たちのこれからが気になる話だった。




                     ★★★★
PR



発行年月:2018年11月

大坂堂島の紙問屋・嶋屋を営んでいた秋成は、町一帯を襲った火事によって店を失い幼なじみの雨月が結ぶ香具波志庵に居候することに。ところがその雨月、飄々とした性格ながら妖しを引き寄せる体質で、しだいに彼らの周りには、憎まれ口をたたく兎やら、成仏できぬ人の怨念やらが溢れ出す。さらにその先で待ち受けていたのは、世界の成り立ちを根本から変える驚くべき真実だった―江戸怪異譚の傑作『雨月物語』に大胆な現代的解釈を試みた、珠玉の連作短篇集。

                   (中央公論新社HPより)



雨月、秋成、遊戯・・・・二人と1匹の会話が愉快。

江戸時代の人々の暮らしのなかで起きる怪奇なこと。
登場する人物が、実は亡くなっているということが物語のなかでは
よくあり、誰かが登場するたびに「このひとも実は・・・・・」と
考えるようになってしまう^^;



物語は短編連作の形で進むけれど、最後に「ああ、やっぱり」と
納得の真実。



この物語のなかの上田秋成が書いた<雨月物語>を参考に西條さんが書いた物語が本書。

雨月を想う秋成の気持ちが、なんとも切ないけれど温かいものも感じる
終盤の遊戯とのやり取りが特にいい。


素敵な怪奇集だった!


表紙の絵もステキだなぁ~。



                      ★★★★★



発行年月:2018年5月

武家の庶子でありながら、家族に疎まれ寒村の寺に預けられた久斎は、兄僧たちからも辛く当たられていた。そんななか、水汲みに出かける沢で出会う村の娘・しのとの時間だけが唯一の救いだったのだが……。手ひどい裏切りにあい、信じるものを見失って、久斎は寺を飛び出した。盗みで食い繋ぐ万吉と出会い、名を訪ねられた久斎は“無暁”と名乗り、ともに江戸に向かう――波瀾万丈の人生の始まりだった。

                   (光文社HPより)




垂水行之助・・・久斉の名で寺で修行するが辛い出来きごとがあり寺を飛び出し

知り合った同い年の万吉と共に江戸に向かう。
九斉は以後の自分の名を無暁と決める。

やくざの若頭・乙蔵と知り合い、成り行き上、やくざ稼業に身を置くが
敵対する組の者に襲われた際、自分をかばった万吉が命を落とす。
一家総出で相手側に攻め入り、相手側の親分など8人を殺す。
無暁も2人を殺めた罪で島送りの刑となり八丈島へ。



常に寄り添ってくれる者が現れるのが唯一の救いだけど
自ら苦しい道に進んでいく無暁の姿が痛々しい。

飢饉が人々を襲う描写が生々しく、実に残酷で飢えと闘う辛さが
精神も壊し人が獣に化して行く様が恐ろしかった。

そんな様子を見た無暁は更に自分を追い込んでいく。
千年行も成し遂げ、人々の尊敬を受けるまでになったのに
そこで留まらない姿勢には、驚いた。


最期を見届けてくれた弟子が2人いたのがせめてもの救い。


凄い生き方だな。
静かに手を合わせたくなるようなお話でした。

先に読んだ<銀杏手ならい>に次いで、こちらも素晴らしい!!
この著者の他の書をこれからも少しずつ読んで行こう!


                        ★★★★★





発行年月:2017年11月


 

いちょうの大樹が看板の手習所
『銀杏堂(ぎんなんどう)』で、
出戻り女師匠と侮(あなど)られながらも
小さな瞳を見つめ続ける萌(もえ)。

立派に巣立つその日まで。
教え、教えられ、
今日も子供たちと格闘中!

子供たちと一緒に己(おのれ)を育てていきたい。
いまの私にできるのは、それだけです。

小日向水道町(こひなたすいどうちょう)にある、いちょうの大樹が看板の『銀杏堂(ぎんなんどう)』は、嶋村(しまむら)夫妻が25年に亘(わた)って切り盛りしてきた手習指南所。子を生(な)せず、その家に出戻ることになった一人娘の萌(もえ)は、隠居を決め込む父・承仙(しょうせん)の跡を継(つ)ぎ、母・美津(みつ)の手助けを得ながら筆子(ふでこ)たちに読み書き算盤(そろばん)を教えることに。だが、親たちは女師匠と侮(あなど)り、子供たちは反抗を繰り返す。彼らのことを思って為すことも、願い通りに届かない。そんなある日、手習所の前に捨てられていた赤ん坊をその胸に抱いた時、萌はその子を引き取る決心を固めるが……。子供たちに一対一で向き合い、寄り添う若き手習師匠の格闘の日々を、濃(こま)やかな筆致で鮮やかに描き出す珠玉の時代小説!


                  (祥伝社HPより)



手習い塾「銀杏堂」の子どもたちと手習い指南の美津、
その娘・萌が子ども達へ接する様子が何とも微笑ましい。

塾以外での子どもたちのことまで気にかける萌は
心優しい良い先生。

美津と萌は、血は繋がっていないけれど、お互いを大事に
思い本当に良い関係。
そこに新たに加わった赤ん坊の美弥。

これ続編ないのかな?

初めて読んだ作家さんかも?

すごく良かった。
なんだか心が洗われるようなお話でした!


他の本も手に取りたい!



                  ★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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