若き無名のボクサーたちが鍛え上げた肉体と拳で掴み取るのは、
何にも揺るがないタフさと一瞬の輝き。
男たちの成長ぶりを爽やかに描き出した時代を超えた青春小説の傑作!
角田ワールドは新たな見果てぬ地平へ!
強いから勝つんじゃない、勝つから強いんだ
(日本経済新聞社出版HPより)
500頁近い長編ですが、最初から最後まで一気に読ませてくれました。
さすが、角田さん!!拍手です!!
ま、正直なところ、試合シ-ンはちょっとだけ飛ばしましたが・・・^^;
最初に登場したのは、出版社勤務の25歳・那波田空也。
文芸志望なのに、異動の先は、隔月刊のボクシング雑誌編集部。
空也の担当する雑誌は「ザ・拳」。
そして訪れたボクシングジム。
練習風景などを見学させて貰って・・・・と軽い気持ちで出向いたけれど、自らもジムの練習生として
通いながら記事を書くことになる。
ジムのなかの花形選手・立花望(リング名:タイガ-立花)を主に取材対象にして、交流を深める。
同い年なので練習後は、話も弾み、楽しそう。
ほかのジム通いのメンバ-、中神や坂本も皆、好青年というかんじなので
読みながら、応援したくなる。
しかし、立花は、リング上では別人に変わる。
悪役ぶりを徹底して披露。
試合中は、相手を挑発する言動。
立花に対するヤジも多い。
本当の立花を知っているから、嫌いにならないで応援できるけど、普通なら嫌われるキャラを
あえて作って戦う。
そういうことってあるんだな・・・・・・。
ボクシングとかあまり知らないからわからなかったけど、そういう演出っぽいこともアリなんだと
知って頭に浮かんだのは,亀田興毅選手。
立花の試合中とリンクを降りた普段の生活で見せる姿のギャップが面白かった。
亀田興毅選手もなんだか同じような気がする。
物語のなかで、立花たちが試合をこなして、勝ったり負けたりしながらも成長していく様子が楽しかった。
空也との関係も取材する人、される人以上の信頼関係みたいなものが出来て行って
ずっと付き合っていける親友のような仲になっていったのも良かった。
新聞掲載小説なので、試合の描写は実に細かい。
なので、途中、先にも書いたけど飛ばし読みしてしまったけど、ボクシングがわかる人には
その辺も楽しめたと思う。
角田さん自身もジムに通って、空也みたいに実際にボクシング体験とかしたのかなぁ~?
物語の最後は、少し年月が経ち、空也や立花たちのその後の様子が書かれていた。
みんなそれぞれ前より立派になっていて嬉しかった♪
楽しい物語でした!
★★★★
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裕福だった過去に執着する母と弟。
家族から逃れたはずの奈津子だが、突然、夫が不治の病にかかる。
だがそれは、奇跡のような幸運だった。
夫とめぐる失われた過去への旅を描く著者最高傑作。
(河出書房新社HPより)
芥川賞受賞作品「冥土めぐり」と「99の接吻」の二編を収めた本書。
どちらも何か薄ら寒いような家族の物語でした。
「冥土めぐり」は、結婚後、四肢あ不自由になった夫・太一と共に、かつて両親と弟と訪れた高級リゾ-トホテルへ向かい、その旅を通して振り返る昔の家族のこと。
そしてこれからのこと。
元スチュワ-デスの母親と元一流企業の社員だった父親の結婚は、華やかな生活が続くと思われたけれど、やがて父親の発病と死を迎え、夢のような生活が一転するが、自分でその状況を何とかしようとはせず、娘の奈津子に頼りきり。
弟も似たようなかんじ。
理不尽な目に遭いながらも奈津子は淡々としている。
そして同じく突然の病で理不尽な生活を送ることになった太一と暮らし
太一自身は自分の状況に理不尽さを感じる風でもなくその日、その日を生きていることに気づく。
電動車椅子に乗れるようになったことを喜び買い物にも楽しく出かける。
本の解説にある奇跡のような幸福?
この状況をそう呼べるのには、何か悟りのような崇高な考え方が出来る人じゃないだろうか?
う~ん、なかなか深いかも。
もう1編の「99の接吻」の方が、幾らか理解できた。
3人の姉と母親と女ばかり5人で暮らしている末っ子・奈奈子の視点で語られる話。
奈奈子は姉たちを同様に愛していて、その姉たちが惹かれる違う町から越してきた「S」という男に
敵対心を抱きながら、姉たちと「S」の成り行きを観察している。
この家族もちょっと変わってる。
女同士でお酒を飲みながら性的な話題で盛り上がる。
母親もアッケラカンと経験談を語る・・・・・う~キモチワルイ。
ずっと仲良く女同士で暮らしていくのかな?
二編のお話それぞれが、似たようなイヤ~なかんじ。
文章はなかなか読みやすく、嫌なかんじなのに、ほかの作品もちょっと読んでみたくなる
不思議なかんじの読後感。
★★★
二度と還らない友情のきらめき、そして痛み。
純粋さゆえに傷つけあう少女の関係を描く表題作と「水の花火」を収録する珠玉の小説集!
主人公の私=雪子は中学2年生。以前通っていた女子校に馴染めず、東京の中学校へ編入してきた。そのクラスで出会った本好きの少女・七緒に誘われて美術部に入り、予測のつかない彼女の言動に翻弄されながらも、きらめくような日々をともに過ごす。しかし次第に七緒がクラスから浮いていること、その言葉にウソが混じっているらしいことに気づき始める。美術教師の突然の死やカウンセラーとの関わりの中で、ふたりが共有した真実と嘘の間で揺れ動く私。やがてある事件を経てふたりは疎遠になっていく……。
(講談社HPより)
表題作のほかに高校生でデビュ-した直後に書いた作品「水の花火」が収録されていた。
二編とも学生時代の女の子同士の友情を描いている。
わたし自身、ここに出てくるようなわかり難い性格の子と仲良くした記憶がないので
ちょっと理解し難い箇所もあったけれど・・・・
表題作の「七緒のために」の七緒と雪子の関係には、お互いを傷つけてしまうことになっても
一緒に居たい、そんな切ないような友情を感じた。
前の学校で友達関係が上手くいかなかった雪子にとって
転校先で出会った七緒は、明るく無邪気なかんじで好感が持てたのは理解できる。
しかし、いろいろな話が段々「?」と思うことが多いと気づく。
だからと言って嫌いになるほどではない。
雪子は七緒のことをよくわかっているかんじ。
七緒は常に具体的なことを聞いてはいけない雰囲気を漂わせている。
大らかさと無頓着さを装いながら実際はこちらは気後れしてしまうほどの危うい
緊張感に満ちた気配をまとっていた。
う~ん、なるほど。。。。
この表現、凄いなぁ~!どんなかんじの子かよくわかる!!
ある事件をきっかけに二人の仲は決裂してしまうのだけど、
こんなに分かり合える同性だからこそ一緒にこれ以上居るのが苦しかったのかな?
二人の家庭環境や精神状態とかが違っていれば別の友情が続いたのかもしれない。
ここに出てくるスク-ルカウンセラ-の栗栖先生は、一見優しく相手を理解しているようで
全く二人のためになる言動を起こしていないように感じてもどかしかった。
ここに出てくる同年代の子が読んだらどんな感想を持つのだろう?
ちょっと長女にでも読ませてみたい(受験生なので無理だと叱られるからダメか?)。
もうひとつのお話「水の花火」のほうも親友と別れる話だけど、少し前向きなかんじ。
初期の作品らしい初々しさも感じられて、なかなか良かった。
★★★★
人生のピークを過ぎてしまった女優とデイトレーダー。
ふたりはやがて恋に落ちる。
ひとがひとと出会い、生きていくことのすべてを描いた、
真心の物語。
(ポプラ社HPより)
かつては可愛い女優として評判だった野滝繭美(芸名:滝沢マユ)と
かつてはディ・トレ-ダ-として巨万の富を得た松田健作。
二人の男女があるパ-ティで知り合い、やがて恋人同士に。
出会ったときには、仕事は過去の栄光。
そんなときに惹かれあったのが良かったのかも。
二人で古い洋館を買い、その庭にバラの苗を植えていく。
色とりどりのバラは、綺麗で逞しい。
そんな植物の生命力を見ながら、これからの人生も二人で生きていこう!と
心に決める。
松田が一文無しに近い状態に陥るのは、波乱に満ちた状況なんだろうけど、あまり危機感がない。
ホントの一文無しとは違うからか??
結局、過去の功績を買われて証券会社で、働いているから、二人の経済的な危機はない様子。
健作が夢で見るサラリ-マンの話とか、花の言葉を聞けるイヤフォンの話が、もっと
広がっていくのかと期待したけど、その辺はそのままで、なんだかよくわからなかったなぁ~。
二人の関係は、セレブぶってないかんじで好感が持てたけど
正直、あまり面白みを感じない小説だったな・・・・・^^;
★★★
祖国への変わらぬ熱情を静かに燃やし続けてきた人々の魂に触れた紀行。

エストニアの人々が歌う「我が祖国」とは、生れた土地のこと。そして、それは地球そのもの――スカンジナビア半島の対岸、バルト海に面したエストニア。首都タリンから、古都タルトゥ、オテパーの森、バルト海に囲まれた島々へ――端正な街並みと緑深い森、他国による長い被支配の歴史を持つこの国への九日間の旅の記録。
(新潮社HPより)
あまり馴染みのないエストニアの紀行文。
バルト三国のひとつとしてソ連から独立した国?くらいの知識しかなかったけれど
紀行文を読みながら、自然豊かな国で暮らす人々の暮らしぶりがとても素敵に思えた。
梨木さんはコウノトリに出会えることを期待していたのですが・・・・
そこに居た形跡だけで実際に姿を見ることはなかったのが少し残念。
写真で見ると、びっくりするようなところに巣をつくるのが面白かった!
エストニアの、歴史をみると・・・
ドイツやデンマ-ク、スウェ-デン、ロシア、ソ連の支配下に置かれていた国。
ロシア軍が攻めて来る恐怖に怯えながら暮らした時代、地下にトンネルを掘り巨大な迷路のような
地下通路を40年かけて造ったりしたそうだ。
写真で見ると地上の道と変わらないかんじ。
唯一の良き時代はスウェ-デンによる統治下時代だったそう。
その時代に築いたものが今も残っているのは良かった!
梨木さんたち日本人に対しては友好的だったのも嬉しい。
お年寄りたちの描写がなんだかすごく可愛らしい。
蛭を使った民間療法をする、ちょっとエッチなおじいさんの話は愉快だったなぁ~。
ちょっと不思議現象の起きたホテルでの話も興味深かった。
本の中ほどにある写真集もとても綺麗。
同行した木寺紀雄さんの写真。
全く知らなかったエストニアのことを少し知ることが出来て
いろいろと楽しめた1冊でした♪
★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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