寂れた温泉町・津雲へと続くかんかん橋。
菊おばあちゃんの嫁入り、出征、食堂『ののや』 の真子親子の別れ・・・。 多くを見送った今、町を容赦ない不況が襲う、それでも生き抜く女たちの、母なる強さと温かい涙の物語。
(角川書店HPより)
ある温泉街の人々を連作形式で綴ったお話6つ。
第一章 ののや
第二章 お母ちゃん
第三章 遠い人
第四章 雨が止んだら
第五章 土埃の向こう側
第六章 かんかん橋で
『ののや』は町の定食屋。
町の人々が集う場所。
その店の娘・真子は、町に古くからある写真展『フォトスタジオ KOKUMI』の菊おばあちゃんが大好き。
登下校の度に挨拶するが、おばちゃんはいつも「あんた誰だっけ?」と言う。
おばあちゃんは90歳を超えている。
かんかん橋を渡ってお嫁に来た。
そんな菊おばあちゃんの嫁入り当時の話を書いた第三章の<遠い人>は物悲しくて胸が痛くなるような
お話だった。
戦争の前後の時代の人々の苦悩が辛い話。
戦争はやっぱり悲劇しか生まなかったんだと思った。
戦地で亡くなった方も気の毒だけれど、残された人。
戦地からなんとか帰還出来た人、みんなそれぞれの辛い思いを抱えて、戦後を生きて来たんだな・・・。
ほかの話もそれぞれ苦悩を抱えながらも懸命に生きている人々を描いている。
懸命に生きていれば、必ず希望があるとも思わせてくれた。
町のなかにある小さな石造りの橋が、かんかん橋。
どんな時代にも変わらず、そこにあって、人々の記憶に残っていく物っていいな。
ののやの真子も幼い頃から、母親と離れてしまい、寂しい思いをしながら成長したけれど
優しい女の子になって、これからもきっと逞しく生きていくんだろうな。
★★★★
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木賞受賞作『切羽へ』をはじめ、大人の恋愛と一筋縄ではいかない関係を描いて独自の魅惑的な小説世界を展開する著者が、男と女の「愛ではないけれど、愛よりもかけがえのない関係」を描く長篇小説。
桐生駿と野田夏が初めて出会ったのは共に5歳のとき。夏の父に恋をした駿の母が、密会のため息子を連れて夏の家に通ったからだ。親同士の情事のあいだ、それとは知らず階下で待っていた幼いふたりは、やがて親たちの関係を知る。以来、別々の人生を歩み始めたふたりは、互いに「できれば思い出したくない相手」と感じながらも、なぜか人生の曲がり角ごとに出会ってしまう。まるで、互いの恋愛の証言者のように……。
それぞれおろかな恋愛を重ねながら、人生における愛のどうしようもなさを受け入れていく男女の関係を描く長篇小説。
(講談社HPより)
2人の男女の幼い時から、成人したあとまでを追った物語。
桐生駿と野田夏は幼馴染。
しかし、その出会い方はちょっと訳あり。
駿の母親と夏の父親は不倫関係にあった。
成長するにしたがって、それぞれが別の人間関係を築いていく。
駿は、父親が医者なので、それを目指すが、結局は医学部には入れず、会社員となり同じ会社に
恋人が出来、やがて結婚し、息子も出来る。
夏は、保母になり勤める保育園の園長を恋人にするが、結婚はせず、学生時代に付き合っていた
男と再び連絡を取り合うようになり、結婚し娘を産む。
成人するまで、互いに複数の異性と付き合い、別れる。
2人ともなんだか似た様な生き方。
親の生き方を真似ているようなかんじ。
誰かをずっと好きでいるってことが出来ない人たちばかりが出てくる、お話で
全く共感出来ないし、何の感動もない。
よくわからない人たちの生き方を描いたお話。
ま、読んでいる分には、退屈しなかったんだけど・・・・
やはり物語には、何らかの感動がほしいなぁ~。
★★★
好評を博した『珈琲屋の人々』続編。東京は下町の商店街にある『珈琲屋』。主人の行介はかつて、ある理由から人を殺していた……。心に傷を負った人間たちが、『珈琲屋』で語る様々なドラマを七編収録。情感溢れる筆致が冴える連作集。
(双葉社HPより)
続編を待っていました!!
商店街にある珈琲屋の店主・宗田行介は、過去に殺人を犯した前科持ち。
けれど、その殺人は、正義感ゆえ。
そして、その罪を服役を終えたあとも一人背負い、自らの罰を右手に与え続け、
その手は火傷で痛々しい。
寡黙だけど、珈琲屋を訪れる人々が困っていれば助ける、行介は格好良い。
そんな行介を昔から知る商店街の幼馴染・島木と冬子。
度々、珈琲屋に顔を出し、行介と会話する場面は、ちょっとほのぼの。
ほかのお客が持ち込むちょっとした厄介ごとを行介がアドバイスしたり実際に自ら危険を冒しながらも解決に
導いていく。
短編連作形式で、7つのお話が語られる。
表題の「ちょっぽけな恋」は、中学2年生の千明と同じく中学生の男子・芳樹の恋を応援する話。
母子家庭の千明と父子家庭の芳樹。
家族ぐるみのお付き合いに発展したら楽しそうだなぁ~(^^)
ちょっと重たい話が多いなかで、唯一ほっこりしたお話でした。
ずっと行介を想い続けた冬子の気持ちが、罪の重さから頑なにその気持ちを受け入れずにいた
行介の気持ちを変化させたラストの急展開は、なんだか嬉しかった。
この続きはあるのかなぁ~?
続きが気になったのは他にも
「大人の言い分」の勇樹は、包丁であのあと母親を刺したのか?
DV夫から逃れ息子と2人で暮らしたのに、苦しい生活にイライラすることが多くなり、息
子の勇樹に手を上げてしまう日々。
反省するのに、また同じように子どもを殴ったり蹴ったり
しかし、勇樹は泣かずに耐える「お母さんが好きだから・・・」と
可哀想過ぎて、泣けて来たけど、最後の勇樹の行動には驚いた!
どうなったの?あのあと!?
いつか2人が笑顔で暮らす話が読みたい!
★★★★
中学2年の男子生徒が部室棟の屋上から転落し死亡した。
事故? 自殺? それとも他殺なのか……?
やがて生徒がいじめを受けていたことが明らかになり、
小さな町に波紋がひろがり始める。
朝日新聞朝刊連載時から大反響の問題作
(朝日新聞出版HPより)
凄くリアリティある物語でした。
中学2年生の男子・名倉裕一が校内で転落死の場面から始まる。
なぜ、彼は死んだのか?
事故?自殺?事件?
彼と同じ部活で、よく一緒にいた4人の同級生が警察から事情聴取を受ける。
14歳の藤田一輝と坂井瑛介は、逮捕。
13歳の金子修斗と市川健太は児童相談所へ。
しかし、名倉裕一の死が彼らと直接関わるとの証拠はなく、立件されず、彼らは釈放となる。
彼の死の真相を追うとともに、名倉裕一の生前の様子が、いろいろと語られる。
いじめがあったのは事実だと最初に彼らの自供でわかったけれど・・・
いろいろな状況で、明らかにされるクラスの様子、部活内での様子を見ると、亡くなった名倉くんは
気の毒だけれど、皆から疎まれてしまったのも仕方ないと思えてしまう。
どうして、こんな性格になってしまったんだろう?
虐めの首謀者とされてしまった体格の良い坂井くんは、みなの虐めがエスカレ-トしそうになると
止めていたり、場の雰囲気を考えて自分が犠牲になる行動を取っていた。
ちゃんと庇ってくれる者もいたと言うのが救いでもあった。
死の真相は、ある程度、最後の方でわかったけれど
ここに関わった多くの生徒たちには、重い罪の意識が一生消えないんだろうな・・・・
と考えると辛い。
最初から最後まで一気に読ませる凄い話でした!!
★★★★★
きっと大丈夫。運命は私たちを脅かすことはあっても本当の不幸からは守ってくれるはずだから。

ワロージャは戦地から、サーシャはモスクワから、初めて結ばれた夏の日の思い出、戦場の過酷な日常、愛しているのに分かりあえない家族について綴った。ワロージャの戦死の知らせを受け取った後も、時代も場所も超えて手紙は続く。二人はそれぞれ別の時代を生きている、再び出会う日まで。ロシア・ブッカー賞作家の最新長編。

(新潮社HPより)
不思議な文通形式の物語。
ワロ-ジャは、1900年の中国でロシア兵として義和団事件の鎮圧に参加している。
サ-シャは、現在のモスクワに住んでいる。
しかし、2人はかつて恋人だった。
手紙にもそれぞれの2人で過ごした思い出の出来事を書いている。
ワロ-ジャは戦地で、毎日仲間が死んだり、怪我をしたり自分もいつおなじ様な目に
遭うかわからない状態で必死に生きている。
生きていることを確認するためにもサ-シャへの手紙を書き続ける。
戦地の惨いことも沢山書かれるけれど、生きたい!
再びサ-シャに会うために・・・。
一方のサ-シャは、平和なモスクワで暮らしていて日常のあれこれを書く。
そして、妻と離婚した男と結婚。
その男の元妻や娘のことも手紙に書かれる。
サ-シャはやがて妊娠するが、流産してしまう。
2人の手紙は交互に出てくるけれど、途中から、相手の手紙はちゃんとお互いが読んでいるのだろうか??
と疑問が生じてくる。
恋人同士なのに、サ-シャが結婚したり、流産したりしたあとのワロ-ジャの手紙には
それに関することは出てこないし・・・・
サ-シャの手紙にもワロ-ジャの安否を気にかけるような内容は出てこない。
????疑問がいっぱいの2人の手紙。
でも、それぞれの手紙の内容には、惹き付けられる。
戦地にいるワロ-ジャの方が生きることに向けての発言が多いように感じた。
それに反してサ-シャの方は日常のあれこれを書いているけれど、
流産したり、両親の死など常に何か心を痛めて疲れている。
2人に共通するのは、空想好きだということかな?
ワロ-ジャは本当の父親がいつか自分の前に現れることを思い、あれこれその場面を思い描く。
サ-シャは、自分にはもう一人の自分そっくりの双子の姉がいて、その子は意地悪で
時々現れるのだと言う。
お互いが幼いときの思い出話を語る部分が面白かった。
不思議な物語で、感想を書きにくい。
けれど、日本の作家にはない雰囲気の物語。
読んでいる最中、浸れる感覚がいい。
やはりたまには外国の作家の物語を読みたい。
★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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