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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2025年7月


情熱と分別のあわいに揺れるあなたへ。
40年ぶりに再会を果たした同級生のカメラマンとスタイリスト――「兎に角」
「ボケたら関係解消」が条件の70代ホストと美容師――「ひも」
遅咲き小説家と過去をあかさぬ大学教授――「情熱」
ほか、全6編。

                 (集英社HPより)



還暦頃の男女の話が6つ。
どれもいい。

情熱と分別のあわいに揺れる・・・巧い言い方だな・・・。
久しぶりに再会して、淡い恋心みたいなものはあるけれど
恋人みたいになるのは、ちょっと違うかなぁ~とか考えてるかんじ?

<兎に角>
40年ぶりに再会したカメラマンと写真館を構えた女性。
仕事仲間としての新たな関係が生まれるみたいだな


<スターダスト>
音楽ディレクターの63歳男性。自身もサックス奏者。
演歌の新星としてデビューしたのに世に轟くヒット曲に恵まれない歌手を
なんとかしてあげたいと思いつつ・・・・


<ひも>
老人ホストクラブに勤める74歳の男性・朗人。
そこで知り合った美容師の女性・江里子の元で今は家事をやりながら居候生活。
「ボケたら関係解消」
江里子の生き別れた娘だという女性が来る。母には会わずに明日から
ベトナムへ仕事(和裁を教える)で行くというので餞別に5万円を渡す。
江里子が帰宅し、美容院に朗人の生き別れた娘と言う人が来たよと。

可笑しな話だけれど、訪ねて来たのは誰だったんだ?


<グレーでいいじゃない>
ジャズピアニスト・トニー漆原(60歳)の葬儀で90歳の母親が
バッハのG線上のアリアを演奏している。
葬儀のあと、その母親と話をする仕事仲間だったサックス商社の紀和(35歳)。

ジャズ方面に行った息子を許せなかったのだと。
人生グレーでいいいんじゃないと生前、トニー漆原から言われた紀和。
90歳の母親も今は息子を認めているんだなとちょっとジ~ンとした。


<らっきょうとクロッカス>
裁判所職員の青田芙美(50歳)。
東京から札幌と職場を変えて、その場でそれなりに評価されてきたと
思っていたが今度、釧路に転勤。
何か失敗したのか?と自問。
男に振り回されて死んだ母親を反面教師に、叔母(母の妹)の元で厳しく
「マイナスからまっとうになるのは常に百点を取り続けなければ」と
言われて育つ。

職場が変ったのを機にもっと楽に生きれればいいのになぁ~
らっきょうの甘酢漬けが美味しく作れたり、おせち料理もちゃんと
作れるっていうのも尊敬。
新しい場所の大家さん夫婦とか、弁護士の竹下(60歳すぎ)との
人間関係もいいかんじ


<情熱>
表題作は一番最後。
40歳から作家活動を本格的に始めた島村。
講演依頼が博多であり
妻の知り合いでもある大学教授の内田夏海(還暦前)が自身も仕事で
博多に行くのでよかったら案内しますよと。
夏海は門司の出身らしい。
実は島村は密かに夏海を小説のモデルにしたいと考えている。


夏海が語る学生時代の思い出にいる男性が、なんだか素敵。
今は亡くなっているらしいけれど。。。
島村はそんな話を聞きながら、軽く嫉妬しているかんじで
ちょっと可愛い。



最後の小説家が
「北海道しか舞台にしない作家と言われているから、ちょっと反抗したい」と
言う言葉は、著者の桜木さん、そのものなかんじでクスッと笑えた。


そんなに印象に残る話たちじゃなかったけれど
軽く読めて楽しかった。




                    ★★★

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発行年月:2025年9月


騙し騙され、
知恵と欲の
丁々発止の果て
手にする物は?
天保の世。大坂の道具商の放蕩息子・「どら蔵」こと寅蔵(とらぞう)は、なまじ目利き自慢であるのが運の尽き、奉公先に大損害を与えてしまい、大坂にいられなくなりました。旅に出て辿り着きたるは、知恵と欲が渦巻く江戸の骨董商の世界。手練れたちに揉まれながらも大奮闘! できればよいのですが。そううまくは運ばないのが世の常、人の常。お宝を巡って時に騙され、時に勝負をかけ、時々情に流され――。丁々発止の果て、どらちゃんは「真物(ほんもの)」の目利きになれるのか?
魅力的なお宝そして登場人物(キャラクター)がてんこ盛り!
読み終えるのがもったいなくなるエンターテインメント時代小説!

  
                 (講談社HPより)





大阪の骨董所・龍仙堂の別家・松仙堂の長男・寅蔵(18歳)が道具商として

多くの体験を経て成長していく物語。

元々は病死した母が道具商の娘として目利きで父親は手代だったが
母の父が逝去した際、二人は夫婦となり松仙堂を継いだ。
そして母親から小さい頃より、寅蔵は目利きの多くを学び、実際かなりの
目利きとして成長していた。
けれど。。。。それが原因で奉公先で失敗して父親から叱られ、家を出て
江戸へ向かう。


亡くなった母親の妹・叔母の静江が江戸までの路銀を用意してくれる。

寅蔵が出会う人たちが皆、面白くて良い人たち。
最初に叔母の夫から途中の御遣いを頼まれ酒問屋へ。
そこの主から御遣いの駄賃だと小壺(古い丹波)を貰う。
みみずく法師と名付け
旅のお供に大事に持ち歩くが、途中で割れてしまう。
そして、それを直してくれた道具商・白浪屋の権兵衛親分。
行くところがないなら・・・とそこで寝泊まりし、道具商の手伝い。
娘のれんや陶工の金助、末吉とも親しくなる。


そうやって、色々な人の縁を繋ぎながら道具商として逞しく成長
していく寅蔵の姿は読んでいて楽しい。


権兵衛親分のところから、次に寅蔵を預かる温古堂の田畑液斎。
町人学者でもいある人物。
寅蔵は師匠を尊敬しながらも結構、好き勝手喋り、それを鷹揚に受ける師匠。
寅蔵の持っていた古丹波(みみずく法師)を一度、割れたものと気づきながら
最初に寅蔵に会った際、寅蔵が気に入った伊万里の盃と交換してくれた。
その盃は芝居を観に連れて行ってもらったところで竹本桃之介(女性)が
見つけて欲しいと頼まれていたもの。


寅吉は、手紙商(いまでいうカタログ販売?)をやってみたいと思い付き
それに手を貸す鍋島貫太郎(23歳)。
許嫁がいるのだけど、自分には想い人が他にいると聞き、寅蔵が奔走したのも
面白かった。
相手にも他に想い人がいるとわかり、話し合いでめでたく解決。
貫太郎の想い人・さつきは10ほど年上で3人の子持ち。
それでも幸せそうなのはいい。
江戸でいろいろありながら成長していく寅蔵が、大阪で反乱(大塩平八郎の)
があり実家のことが心配だからとすべてを置いて大阪へ戻る。
師匠やほかの人たちから餞別の品を貰い・・・

実家が無事だったけれど、あちらこちら焼け跡だらけで、幼馴染のるうの
所で厄介に腹違いの弟・佐次郎と焼け跡を廻り品を拾ったりしながら
商売。
るうが蔵の中のものを売り捌いてOKというので
神社で道具商を集めての売り立て会を開くことに。

最後のその場面には江戸からも寅蔵が世話になった面々が来て賑やか。

まだまだ成長していく寅蔵を読んでみたいと思うほど
楽しい物語だったなぁ~。




                  ★★★★★



発行年月:2025年8月


高永家の子供たちは四兄妹。中学の新米教師で正義感の強い長男、いわゆる美容男子である高三の次男、スカートを穿いて進学校に通う高一の三男、いちばん如才なく兄たちのことを観察している中二の末娘たちだ。父親は再婚しているけれど、離婚した「ママ」も気ままに子供たちに会いに来る。そんなフクザツな家庭で過ごす四兄妹が夏休みを経て、新学期の「9月1日」を迎えるまでを描いた青春家族小説。9月1日、それは学校に通う子どもたちにとって、とても大きな意味をもつ日――。


                  (双葉社HPより)



9月1日・・・新学期が始まる日。 
      全国で18歳以下の一番自殺者の多い日。


高永家の四兄弟妹。
それぞれの章で、彼らの悩みなどが明かされる。

<第一章 智親>
高校3年生。
メイクには興味なしだけれど、自身の肌荒れを何とかしたいという
思いから美容男子に。放課後は、隣のクラスの西野かの子と化粧品の開拓の
ため西大久保へ。かの子はリスカの痕を繰り返している。
LINEで9月1日は学校終わったらそのまま新大久保直行な、約束!
9月1日の朝、駅で待ってるから


<第二章 民>
中学2年生。
明るくムードメーカーな自分と思っていたら
女子バスケ部の中で孤立してしまう。
告白されて付き合うことになり、一緒に海に遊びに行った時、彼が撮った
写真が何故か、出回り、民に対しての意地悪な発言がたくさん。
面倒なことになったからと彼からは一方的に別れようと。



<第三章 善羽>
中学校教師。1年2組担当。担当科目は社会科。
夏休み中も学校で仕事に追われる。
午前中は男子バレー部の顧問として指導。
自身はサッカーしか経験ないが、独学でなんとか指導。
市役所に就職した彼女とデートする時間もなくふられた。
もうすぐ新学期だが、三年生の女子生徒が自死したと連絡あり。
バレー部にその弟(中1)祐介がいる。
祐介が心配で仕方ない。



<第四章 武蔵>
高校1年生。
県内でも偏差値の高さが1.2を争う学校に通っている。
制服はスラックスでもスカートでもOKなのでスカートで通っている。
男子でスカートは武蔵のみ。
なぜか、自分につきまとう高江洲太郎(S)と桜田あすか。
どんな時も二人は味方。



四人には、産みの親のママ。
父親の再婚相手の玲子。
ママがいなくなってから育ててくれた父方の祖母・おかーさん。

三人の母親がいる。
ママがどうして家を出て行ったのか?よくわからないのだけど
三人がそれぞれ、子どもたちのことを気にかけ愛情を持って
接している。
そして三人は定期的に会ってお喋りしている。

父親の影だけ薄い家族だけれど、いいかんじ。

それぞれ、悩みはあっても、自分のことを大切に想っている家族や
友人がいれば、なんとかなる・・・・と思わせてくれる物語。




                         ★★★★



発行年月:2025年6月


恋愛小説の旗手・島本理生の新境地!
他人からはままならない恋愛に思えても、本人たちは案外、
その”雑味”を楽しんでいるのかもしれないーー。




目次
停止する春
最悪よりは平凡
家出の庭
God breath you
一撃のお姫さま
*5つのちょっと不思議な、新たなる読書体験
「停止する春」
東日本大震災から11年目。会社で毎年行われていた黙とうがなくなった。
それから私は、仕事を休むことにした。代わりに、毎日時間をかけて大根餅を作る。ある日、八角の香る味玉を作り置きした私は、着ていたパジャマの袖口を輪にして戸棚に結び、首を突っ込んだ……。
「最悪よりは平凡」
掃除機をかければインコをうっかり吸い込み窒息死させ、夫が書斎を欲しがれば娘を家から追い出す母に、「妖艶な美しい娘」をイメージして「魔美」と名づけられた私。顔見知りの配達員にはキスされそうになり、年下のバーテンダーには手を握られ、不幸とまでは言い切れないさまざまな嫌気を持て余す。
「家出の庭」
ある日、義母が家出した。西日に照らされた庭に。青いテントの中で義母はオイルサーディンの缶を開け、赤ワインを飲んで眠る。家出3日目、私はお腹に宿した子が女の子だと知る。
「God breath you」
女子大でキリスト教を中心に近現代の文学を教える私はある日、ほろ酔いでおでんバーから出たところを若い青年に声をかけられる。彼は、世を騒がせた宗教施設で幹部候補として育てられた宗教二世だった。
「一撃のお姫さま」
歌舞伎町が舞台のアニメ主題歌の仕事を受けたアーティストの睡は、音ゲーの配信者兼会社員の友人から、曲作りのためホストに通うことを提案される。100万円を使い切ることを決めた彼女は夜な夜なチープな照明に照らされ、シャンパンコールを浴びることになるがーー。


                   (文藝春秋HPより)



どの話も面白かった。
それぞれの主人公たちが応援したくなる。


最初の話<停止する春>は、ちょっと、ドキッとしてしまった。
こんな風に、人は死へ向かってしまうこともあるんだなと。

印象的だったのは
<God breath you>
40歳の大学で近現代キリスト教文学について講義していり依里と
偶然、出会った25歳の時生の物語。
年の差は関係なく、惹かれるってあるんだと思う。
二人の今後が気になるけど、ずっといい関係が続くといいなと思った。


表題作<一撃のお姫さま>も面白かった。
アニメの主題歌を作曲している若松睡。
曲のイメージが湧かないと言っていたら「体験してみればいい」と。
100万円を軍資金にホストクラブへ。
そこで36歳のホスト・聖一と若手の涼太と対面。
聖一とlineでやり取りし、食事に行ったり・・・

睡が、仕事と割り切っているのがいい。
聖一とも用は済んだと判断したら、すっぱり連絡を絶って
別のところから今度は若い子を選び、いい感じの曲を作る。
うん、プロだな。
変にホストに溺れたら興ざめだったけど、なんか、爽快だった!




                       ★★★★



発行年月:2025年3月


愛する娘を傷つけたくない。著者渾身の人情譚
痛みも後悔も乗り越えて、いつかみんなできっと笑える。
『銀花の蔵』で直木賞候補、
いま注目の作家が放つ“傑作家族小説”!
売れない芸人を続ける娘、夫の隠し子疑惑が発覚した妻、父と血のつながらない高校生……
大阪・ミナミを舞台に、人の「あたたかさ」を照らす群像劇。
◎松虫通のファミリア
「ピアニストになってほしい」亡妻の願いをかなえるために英才教育を施した娘のハルミは、漫才師になると言って出ていった。1995年、阪神淡路大震災で娘を亡くした吾郎は、5歳になる孫の存在を「元相方」から知らされる。
◎ミナミの春、万国の春
元相方のハルミが憧れた漫才師はただ一組、「カサブランカ」。ハルミ亡き後も追い続けたが、後ろ姿は遠く、ヒデヨシは漫才師を辞めた。2025年、万博の春に結婚を決めたハルミの娘のため、ヒデヨシは「カサブランカ」に会いに行く。
(他、計6篇)


                  (文藝春秋HPより)



大阪に馴染みはないけれど、人情に厚いひとたちの温かい話で
大阪に詳しかったら、もっと楽しめたんだろうなぁ~と思う。


短編集だけれど繋がりがあるので、ああ、あの話は、こういうことだったのか
と気づきながら読めるのもよかった。


共通しているのは、姉妹の漫才コンビ「カサブランカ」のハナコとチョーコ。
彼女たちに憧れて芸人を目指し、コンビを組んだ「はんだごて」の
ハルミとヒデヨシ。


最初の話は、ハルミの子ども・彩(5歳)を祖父である吾郎が
彩を預かっているヒデヨシの元に迎えに行く話。

最初の話を読んだ時点では「?」と思うことが、段々と後の話から分かってくる。


時代は1995年から現在・2025年の大阪万博の頃まで。
1995年・・・・阪神・淡路大震災の年。
彩をなぜ祖父が迎えに行ったのかの背景にあったことは、ちょっと
辛い話だった。

それでも最後の章では、彩の結婚式で、色々大変なことを乗り越えて
その場にいる人たちが皆、穏やかな気持ちで彩を祝っている場面。


良いお話でした!




                      ★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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