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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2014年12月


 「握っていなければならぬ貴重な手がふと離れてしまうとき、あたりにたちこめるとりとめのない時間は、甘美な苛酷さへとまがまがしく変容する。その一瞬に立ちあった者の心の乱れは、容易にはおさまるまい。『九年前の祈り』は傑作である。」─蓮實重彦氏絶賛!!幼い息子をつれて海辺の小さな集落に戻ってきたシングルマザーのさなえ。痛みと優しさが胸を衝く〈母と子〉の物語。

                    (講談社HPより)



2014年下半期の芥川賞受賞作ですね。
長編かな?と思って居たら・・・・4つのお話で・・・「あれ?短編集?」と
思いながら読み進むと、これはやはりひとつのお話なんじゃないかな?と
思えたちょっと不思議な構成の小説でした。

最初は、表題作の「九年前の祈り」
主人公の安藤きみえ(35歳)は、東京から実家のある大分県のとある海辺の集落に
息子の希敏(ケビン4歳)と共に帰ってくる。
元旦那は、カナダ人。

実家の母親から、元旦那と知り合ったキッカケになったカナダ旅行に一緒に行った
渡辺ミツ(みっちゃん姉)の息子が重い病気で入院中と聞く。
きみえには、忘れられない情景があり、それはカナダの教会でみっちゃん姉が
祈っていた姿。結構何かを長い時間かけて祈っていたその姿をきみえは今も
深く心に留めている。
ほかにも幾つか、みっちゃん姉の言葉を思い出す。
そんなみっちゃん姉の息子さんのお見舞いにケビンと共に出かける。
ケビンは時々、手が付けられないほどの癇癪を起こし周りの大人たちを困らせる。


次の話は<ウミガメの夜>
大学生たちが旅行中、浜辺で3人ウミガメの産卵を眺めている。
大分県は大学生のうちの一人の故郷。
一人は入院中の母親のことが心にあり、祖父とも以前、ウミガメの産卵を見にきた
ことを思い出す。


<お見舞い>
昔から憧れていた日高誠(マコ兄)。
東京の大学に進学し、卒業後、地元に戻り役所勤務をしていたけれど
10年前くらいから体調を崩し、その様子が気になる首藤寿哉(トシ)。

海辺に居た見知らぬ大学生3人が借りていたレンタカーが動かなくなったと
困っていると聞き、なかの一人が病気で入院中の母親の容態が悪くなったので
東京に戻らなきゃならないと聞き、車で空港まで送る。

兄によく虐められていたトシがちょっと虐めた、幼なじみが入院している
大学病院へ今度はマコ兄と一緒に見舞いに行こうと大学生たちを車に乗せながら
考えるトシ。


<悪の花>
千代子は、渡辺ミツの息子のことを思う。
ヘルパーとして働くミツの息子とは、老人たちが集まる、ふれあいサロンで知り合った。
自分の代わりに墓参りにも行ってくれて、そこに咲く繁茂する悪の花を取ってくれた。
ミツの息子が入院したと聞き、悪の花を取らせたのがいけなかったんじゃないか?と
申し訳なく思う。


読みながら、この話のこの人は、この話のこの人と同一人物?
などと考えながら読みました。
同じ集落の人たちの物語で、抱えている病がそれぞれの人たちを悩ませている。
けれど、九年前のミツの祈りは、それぞれの人たちを不思議な糸で結び
やがて、何かしら救いの手が差し伸べられる?

さなえの息子・ケビンもこの集落に呼び寄せられた?
救いの手に引き寄せられて?

なんて、勝手な自己解釈かな?

小野正嗣さんの本は、以前「マイクロバス」を読んで、何か暗く重い
けれど、不思議な魅力を感じ読み終えた後、余韻が残るような話だと記憶していますが
これも似たような印象でした。

ほかの本も読んでみよう!


                         ★★★★
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