発行年月:2013年2月
『永遠の0(ゼロ)』の百田尚樹、大暴走!!
最新書き下ろしは、出版界を舞台にした掟破りのブラック・コメディ!
◆あらすじ◆
敏腕編集者・牛河原勘治の働く丸栄社には、本の出版を夢見る人間が集まってくる。
自らの輝かしい人生の記録を残したい団塊世代の男、スティーブ・ジョブズのような大物になりたいフリーター、ベストセラー作家になってママ友たちを見返してやりたい主婦……。
牛河原が彼らに持ちかけるジョイント・プレス方式とは――。
現代人のふくれあがった自意識といびつな欲望を鋭く切り取った問題作。
「知っているか? 現代では、夢を見るには金がいるんだ」
(太田出版HPより)
面白かったぁ~!
出版業界の話も織り込まれていて、「へ~」 「なるほど~」などうなずきながら
読む箇所あり。
主人公の牛河原勘治(55歳)は、丸栄社の編集部長。
作家になることを夢見て送ってくる原稿の中から、これは!と思う人物に
コンタクトを取り、惜しくも賞は逃したけれど、このまま忘れられてしまうには
惜しい作品だと、著者の夢見る心をチクチク刺激し、出版社が後押しをするので
ぜひ、本にしませんか?と持ち掛ける。
中でも25歳の温井雄太郎(25歳)フリーターへの接触が面白かった。
将来は、ステーブ・ジョブズのようになると周りにも豪語している男。
その自信の根拠がわからない変な人。
しかし、牛河原にとっては、良いカモ。
温井の自尊心をくすぐるくすぐる・・・^m^
他にも周りのママ友のバカっぷりに嫌気がさしている主婦・大垣萌子は、自らを
賢いママとして「賢いママ、おばかなママ」という作品を応募してきた。
牛河原は、そんな人たちを騙して本人の夢(作家になれる)が現実のものになることを説く。
詐欺師の戦略が少しわかる。
面白いけれど、牛河原、悪い奴だな・・・と思いながらも、でもなぜか
憎めないと感じていたら・・・・あらあら、最後は「え?ホントは良い人?」
という展開になりました。
しかし、売れてる作家さんって、こうして考えると凄いなぁ~。
★★★★
発行年月:2014年2月
夢が現実を浸食してゆく
殺してもいいんですよ─── リセットすれば何度でも殺せます 快楽を追求する都市「エピキュロポリス」の夢を繰り返し見る充(みつる) これはただの悪夢か、それとも─── 早くも本年の衝撃度No.1! 夢と現実の狭間を揺れる著者の最高傑作! (祥伝社HPより) |
主人公の日夏充は、システムエンジニアとして働いている。
ある日、中学時代の同級生・高峰と久しぶりに会い、再会を約束する。
そして、その翌日、中学時代の恩師の訃報を聞き、通夜に出かけ、再び
同級生・高峰と会う。
通夜の帰り、電車に乗り、その途中で、不思議な体験をする。
知らない都市になぜか居て・・・次に気が付いたら、日付が変わった昼間の電車内だった。
それから慌てて会社に行くが、大事な仕事をすっぽかした状態になり
突如、解雇命令が下される。
が・・・すぐに次の就職先が決まる。
次世代総合開発という会社。
そこの総括部調査室室長という肩書での辞令。
会社に出向くと、一人の女性社員・大槻砂季がいて、仕事内容などを説明される。
二人だけの部署。
仕事は、電話対応業務とレポート作成業務のふたつ。
不思議な会社だけれど与えられた仕事を淡々とこなしていく日々に、
まあまあ満足していく主人公。
しかし、時々、夢なのか、現実なのか、電車のなかにいて突然、辿りついた
「エポキュポリス」という都市に自分が居る。
そして、その都市の住人になることを強く迫られる。
果たして夢なのか?現実なのか?
主人公の戸惑いがそのまま読み手にも伝わってきて、どうなる?と気になり
先へ先へと頁を捲りました。
結局のところ、謎の都市・エポキュポリスって何だったんだろ?
死後の世界????
よくわからないまま終わってしまった感じだけれど、よくわからないなりに
楽しめたかな?
平山さんの作品はこういうかんじ多いなぁ~^^;
でも平山さんの書くこういう話、嫌いじゃないな。
好みが分かれる話でしょうけれど。
★★★
発行年月:2009年7月(単行本は2006年8月)
「生きて、必ず生きて帰る。妻のそばへ、娘の元へ」
涙を流さずにはいられない、男の絆、家族の絆。
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくる――。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。
「俺は絶対に特攻に志願しない。妻に生きて帰ると約束したからだ」
「真珠湾に参加するとわかっていたら、結婚はしませんでした」
「零戦はかつて無敵の戦士でしたが、今や――老兵です」
「私には妻がいます。妻のために死にたくないのです」
「私は帝国海軍の恥さらしですね」
(講談社文庫HPより)
映画を先に少し前に観ているので、読みながら映画の映像が目に浮かんでくるようでした。
そして、また感動しました。
映画は、原作に忠実につくった作品だったんだなぁ~。
物語の主人公は、宮部久蔵。
大正8年生まれで昭和20年南西諸島沖で戦死(26歳)。
そんな宮部久蔵のことを孫の佐伯慶子と弟・健太郎が調べる。
慶子と健太郎には、祖父が健在しているが、宮部久蔵は、二人にとっては、もう一人の祖父。
健在する祖父と亡くなった祖父・宮部久蔵の関係もわかってくる。
映画では、あまり焦点が当たらなかった慶子の苦悩。
自分の仕事(フリーライター)と結婚についてのこと。
祖父のことを調べていくうちに、自分が今後、どう生きるべきかを考える。
映画では、健太郎の将来に対する姿勢の方を主に描いていたので、姉の人生も
前に踏み出した過程がよく理解できた。
そして、やはり考えさせられた戦争のこと。
世論って恐ろしい。
大事なひとつしかない命さえ、犠牲にすることが国のためと考えられ、生きて帰りたいと
いう言葉が言えない時代。
そんな時代のなかで、久蔵が「生きたい」と思い、部下たちにも「生きろ」と説くのは
なかなかできることではない。
そして、最期は・・・・これは何度読んでも泣ける(/_;)
戦争なんて、本当に愚かなことだとつくづく感じる。
これがデビュー作というのにも驚く。
最後の解説が児玉清さんというのも、ビックリでした!
児玉さんの言葉にもジ~ンと来るものがありました。
★★★★★
発行年月:2013年9月
外界で行方を絶った兄を捜すため王国を出た姫君は、天を衝く塔が聳える未知の世界に降りたち、雑踏の中、一人の工員と出会う――どこまでも純粋、かぎりなく繊細な、下町の恋物語
(中央公論新社HPより)
読み始めの雰囲気は、異世界を描いたSFファンタジー小説。
でも徐々に何か違う。
え?そういう事だったのか?
主人公・エンノイアは王国の後継者候補にひとり。
一番の後継者は兄のヌースだが、今は王国に居ない。
外の世界に幽閉されている可能性がある。
エンノイアは、その兄を探し王国に連れ戻す使命を自ら望み王国を後にする。
そして、出会った杉本諒。
お供の者と逸れて困っているところを助けて貰う。
そして、次第にわかってくるエンノイアの居た世界のこと。
エンノイアは、静(しずか)という別名があった。
自分の居た世界の知らなかった事実を知る。
そして、杉本の助けで兄に再会するが、兄は王国に戻る気はなく、静にもここに
とどまるように言う。
そして、静は、ある決心をし王国に戻ると決める。
物語は、ここでお終い。
この後の静の行動が気になる。
続編があるかな?
あれば読みたい。
★★★★
発行年月:2014年1月
武将の妻たちの凛とした姿
徳川頼宣に嫁いだ加藤清正の娘八十姫の秘話、鍋島直茂の妻と姑の間のふとした会話、伊達家から立花へ嫁に来た母の実家への想いなど。
(文藝春秋HPより)
今回は、短編集。
豊臣時代の末期から江戸時代(島原の乱あたり)までに生きた武将の妻たちの物語を
7編。
時代の波に翻弄されながらも、そのなかで強く自分の信念を持って
策略的に嫁ぐ場合も多かった女性たちが秘めていた思いや、嫁いだ先で
感じることを史実に基づきながら、淡々と綴っていた。
淡々と語るなかに、女性たちの思いが強く伝わり、
過酷な状況でも常に凛として生きた女性たちの生き方がとても美しかった。
<汐の恋人>
戦地の朝鮮に居る夫に文を出した瀬川采女の妻・菊子。
その文が、秀吉の目にふれ、それが元で、菊子と会うことにする秀吉。
采女も戦地から秀吉の元に戻り、切腹か?という事態に・・・
<氷雨降る>
京の公家の娘でキリシタンのジュスタ(洗礼名)が島原半島に4万石を領する
有馬晴信の元に嫁する。
関ヶ原の合戦後、晴信は領土問題に巻き込まれ罪を問われるが、キリシタンは自死は
禁じられていると斬首を望みその通りになる。
ジュスタは二人の娘とともに実家に戻り、幕府がキリシタンへの迫害を強める中でも
宣教師たちに潜伏場所を与える。
<花の陰>
細川忠隆と千世の話。
忠隆は、忠興、ガラシャ夫人(玉子)を両親に持ち、千世は前田利家の末の娘。
ガラシャ夫人が石田三成の命を拒み自害した折、一緒に居た千世は前田家に逃れた
ことで細川家の非難を買い、忠興の手前、妻とは離れたままとなった忠隆だが
自身の気持ちは千世を責めていなかった。
二人は再び、ともに暮らすことを選ぶが、忠興の怒りをかうことになる。
<ぎんぎんじょ>
肥前の大名鍋島直茂の継母・慶銀誾如(けいぎんに)が亡くなる。
93歳の大往生であった。
その最期を看取った直茂の正室・彦鶴。
姑の顔をしみじみ見入っている彦鶴に侍女が草花の蒔絵を施した黒漆塗りの文箱を
提げてくる。そのなかには一通の書状。
<くいのないように>
加藤清正の娘・八十姫が徳川頼宜の元に嫁すことになる。
父・清正の当然の死を徳川家康の謀ではないか?と疑っている八十姫だったが
父が嫁入りのときに待たせよと用意してあった清正愛用の片鎌槍の意味と
自分のなまえの由来を知る。
<牡丹の咲くころ>
伊達正宗を祖父にもつ鍋姫が立花忠成の元に嫁ぐ。
当時の立花家は、伊達家にとっては格下。
忠成自身も身分が合わないと戸惑っていた婚儀ではあったが、二人は仲睦まじく暮らす。
その後、起きた伊達騒動。
<天草の賦>
1637年島原の乱。
肥後前島原と肥後天草の農民およそ2万8千人が蜂起した。
総大将は16歳の益田四郎時貞(通称:天草四郎)。
その天草四郎の命を救おうと奮起する万という女性。
時代の波に翻弄されながらも、どの女性たちも己の信念は強く持ち、
言いなりになるのではなく、自らが生きる道を切り開くのだというような
力強さも感じた。
本当に凛としていて美しい武将の妻たちの物語でした!!
表紙の絵が、いつもの葉室さんの書とは、違う雰囲気なのも好みです。
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;