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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2014年4月



生きて、愛して、死ぬ、ということ。
その途方もない歓喜と悦楽。

あなたの心をかき乱す、七つの物語

                 (本の帯文よる/文藝春秋)




どれも濃厚な読み応えでした!

小池さん、凄いなぁ~。


<鍵>
46歳の周子。夫が病で急死し、今は長男と二人暮らし。
ある日、合鍵が出てくる。
それはオフイスに出入りしていた女性の部屋の鍵ではないか?と勘ぐる。


<木陰の家>
今は森のような木々に囲まれた実家で猫と暮らすわたし(58歳)。
かつては、ここには両親と、離婚後で戻った姉が3人で住んでいた。
わたしは実家にあまり寄りつかず、自宅療養の父の世話は主に姉がしていた。
そして父の危篤の知らせで実家に戻ったわたしだったが、不倫相手の家が実家の
近くにあったので、実家を抜け出し、家を見に行く。
そんな30年前のことを回想。


<終の伴侶>
13年前に離婚し独り暮らしの喜和子(57歳)。
別れた夫・拓郎の姉から拓郎の死を知る。
そして13年前に別れたときの拓郎の姿を想う。


<ソナチネ>
ピアニストの佐江は、チェリストの婚約者が居る。
とある金持ちの令嬢・菜々子(11歳)のピアノを個人的にレッスンしていて、
別荘で開かれる菜々子のリサイタルに招待された。
そして出会った菜々子の叔父にあたる男性・健次郎。


<千年萬年>
東京の娘一家が1週間滞在後帰っていった。
美津代(52歳)は、疲れがドッと出ている。
買ってあげたのに結局置いて行ったカメ。
買い物途中に見かけた指圧院の看板。
指圧でもしてもらおうと気楽な気持ちで指圧院を訪れるが、それは未知の
感覚を美津代に開花させる。


<交感>
26歳の作家・小堀縫子にファンレターを送る老齢の男性・飯沼政夫。
小説の感想を述べ、日常のことなども書いて寄越すファンレターに好感を抱き
返事を書く縫子。
そして、手紙のやり取りが続く。


<美代や>
内科医院の水口新平の元にある日、堀美代が亡くなったとの知らせがある。
美代は、水口家で住み込みで働いていたことがある女性。
母親は、美代のことを「美代や」とよく呼んでいた。
そして幼かった自分も美代のことを慕っていた。



表題作<ソナチネ>と<千年萬年>は、官能的。
ソナチネのピアニスト佐江は、この後、どうなっちゃうのだろ?
一方の千年萬年の美津代のこの後もすご~く気になる^^;
指圧の自宅出張って・・・・ドキドキ妄想が膨らんじゃうわ~(笑)。

官能的な描写も小池さんだと下品にならないのが良いですね~。
これ以上は、ちょっと読みたくないというギリギリのところで止めてくれるかんじ?


ほかの話もそれぞれ良かった。
主人公たちの年齢が自分の年に近いのもリアルなかんじで
老いは誰にもやってきて死もだんだん、身近になっていくんだなぁ~
なんて思って少し暗い気持ちにもなったけれど
残された時間を有効に生きていかなきゃなぁ~なんてことも考えた
意外と深いお話でした。


                         ★★★★★
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   発行年月:2012年11月

  生涯に1度しか書けなかった家族の物語

  亡き父が遺した日記には娘への愛、家族との不仲、
  そして恋人との魂の交流が記されていた。
  生と死、家族を問い直す入魂の感動作


                          (文藝春秋HPより)



主人公の三國衿子は、離婚して一人暮らし。
文芸誌の出版の仕事をしている。

衿子の父・泰造は衿子がまだ幼いときに他の女性と家庭を持つために出て行った。
その後は母親と二人暮らしをしていたが、母親は現在、認知症を患い施設入所中。

父は新しい家庭を持ち、そちらでも娘が二人。
成人し、それぞれ家庭を持っている。

父はパ-キンソン病を患い手足の自由が利かず、施設入所。
そして亡くなった。

物語は、亡くなった後の葬儀の場面から、父が生前、交流のあった人たちの存在を知り
泰造の知らなかった一面を少しずつ知ることになる。

晩年は病気のため、殆ど話すことはなかった泰造。
しかし、話さなかったけれど、いろいろなことを考え、生きることの情熱も失ってなかったと知る。
娘としては、複雑な心境になるような事実も出てくるけれど、そんな風に生き抜いたのだと知れたのは嬉しいことなのかもしれない。

再婚後の生活のなかで、ほかに大事に想う女性の存在があったり・・・
短歌の会で親交を深めた女性との友情があったり・・・

自分は幼いときに父から捨てられたのだけど、自分のことを最後まで気に掛けてほかの二人の娘より深い愛情を感じていてくれたと知る遺された手紙の文面はジ~ンとした。

短歌を通じて知り合った女性と交わす手紙のなかに詠まれている歌も素敵だった!

そして巻末の著者のことばで、泰造の詠んだ歌は小池さんのお父様が実際に詠んだ歌だそうで
なんだか感動した!

この物語は、小池さんのお父様がモデルなんですかね?


読み応え十分の物語でした!


 

★★★★★

41fqhqAZfZL__SX230_.jpg   発行年月:2012年6月


   他人の秘密。それは、震えるほどの興奮------。



大学院生・白石珠は、ある日ふとしたきっかけから
近所に住む既婚男性・石坂を尾行、表参道で不倫現場を目撃してしまう。
同棲中の恋人・卓也への浮気疑惑にとらわれながらも、
石坂への尾行を繰り返す珠だったが------。


                                   (角川書店HPより)


なかなか面白い話でした。
ちょっと今までの小池作品とは違うかんじでしたが、わたしは楽しめました。

主人公・白石珠は25歳の大学院生。
母親は既に亡くなり、父親は遠くドイツで恋人と暮らしている。
珠は27歳の卓也とマンションで同棲中。
父親からある程度の仕送りを受けながら、結構、お気楽な身分というかんじ。
卓也は53歳の女優・三ツ木桃子の専属運転手兼雑用を仕事としている。

物語は、珠がかつて大学での講義で、篠原教授が言っていたソフィ・カルの<文学的・哲学的尾行」をふとしたキッカケで試してみたくなるというところから始まる。
尾行というと、何か下心ありのような感覚を覚えますが、こういう設定でだと何か正当化されてしまうようなかんじ。
しかし、尾行される側の近所の既婚男性・石坂史郎(45歳)にしたら迷惑な話。
浮気相手とのことまで知られてしまうのですから・・・・・^^;

そして珠自身も尾行をしながら、恋人の卓也と桃子の関係を妄想し、不安に駆られ悩む。

珠のいろいろな気持ちの葛藤が読んでいて面白かった。

意外だったのは、ラスト近く、ついに石坂に尾行を気づかれ、呼び出され「理由を教えてくれ」と言われるところ。
もっと修羅場状態になるかと思いきや・・・・・。

石坂って変な男だな。
妻に浮気がばれ(珠のせいでは決してない)、救急車で妻搬送の事件まで起きながら浮気相手との関係は続行されてるかんじだし・・・・。

そして、珠も尾行癖がついたのか??という終わり。

う~ん。よくわからない人たちの変な話だったな。

でも、物語としては結構、面白く退屈しなかったのは、やはり著者の筆の巧さかな?


物語のテ-マになっている「文学的・哲学的尾行」もよくわからないけど、なんだか気になる。
ソフィ・カルという芸術家にもちょっと興味を覚えた。
ソフィィ・カルの書いた「本当の話」も今度、読んでみようかな?


★★★
 
 
31e2G2X7GsL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年6月


夫の暴力から逃れ失踪した女が、身を潜めた地方都市の片隅で生き抜く姿を静謐な文体で描ききり、現在に生きる人が抱え持つ心の闇に迫った力作長編! 
絶望と希望、生と死の境界に怜悧に斬り込んだ著者の新境地!


                     (日本経済新聞社HPより)



今まで読んできた、小池さんの恋愛小説とは、少し違う雰囲気でした。
今までは、セレブな主婦とか、お洒落な環境のなかでの恋愛話が多かったように思うけれど。。。

今回の主人公・新谷泉38歳は、世間でも名を知られている映画監督の妻。
かつて夫の下で働いていて結婚したのだが、夫の日常的な暴力に身体的・精神的にも追い詰められ逃亡する。
行くあてもなくたどり着いた場所で、偶然、住み込みの家政婦として生活する場所を見つける。
その家主は、年老いた画家・天坊八重子。
八重子の言葉使いはやや乱暴だが、泉の境遇を詮索するような事もなく、日夜、製作活動に勤しみ泉に対しての要求もさほど多くない。

滅多に外出しない八重子に連れられて行った、飲み屋「ブル-・ベルベット」は、おかまのママ・サクラが経営する店。
サクラと八重子のどちらも口悪く相手をののしりながらの会話が可笑しかった。
相手を口ではボロクソに貶しながらも、お互いがよき理解者なのだなぁ~とも感じた。

その店で、泉は、かつて取材でたずねてきた事のある雑誌記者だった塚本鉄治と再会する。
塚本は、ある容疑の濡れ衣をかけられ逃亡している身だと。

似たような境遇の二人は、次第にお互いを必要な存在と認める。


どん底の中で出会った、自分を理解してくれる異性との出会いがあれば、当然、恋愛に発展するでしょう。

この出会いは偶然だし、ありきたりと言えばそう言えなくもないけど
二人の考え方がしごく真っ当で、二人が常識人なので、応援したくなりました。

画家の八重子とおかまのサクラも、言うことはとても常識的。
かなり辛辣な口調だったりするけど、本当はとても優しい人たちなので、好感が持てました。

そして、物語の終盤の展開も予想通りだったけど、安心出来る終わり方だったので
ホッとした。


恋愛小説というよりは、人間ドラマというかんじで、なかなか良かったと思う。
こういう作品もまた書いて欲しいな。

★★★★
 
Kiss.jpg発行年月:2010年9月


唇を重ねると、千の言葉が渦巻いた。そこに嘘はなかった。名手にしか描けない恋と愛、そして人生。

そのとき、感じた。一糸まとわぬ男を、彼の秘めていたものを。決して若くはなかった。この先のことなど、なにもわからず、なにひとつ決まっていなかった。でも、どんな交歓より、つながり合え、どんな未来より、身をまかせられた。甘く、とろけるばかりでない深みと味わい。あられもない、男と女の交わりと営みを描く九つの恋愛短篇。

                                             (新潮社HPより)

この表紙がいい。
明るいだけの恋じゃない、何か重いものを背負った恋人たちの物語を読む前から予感させてくれた。

9つの恋愛。
それもそれぞれ、そこに登場する恋人たちが愛おしくなるかんじだった。
切ない恋や悲しい結末を迎える恋もあったけど・・・それが不幸かなんて断定出来ない。
第三者には理解出来ない、幸福の瞬間があったのだろう。


どれも印象深いけど・・・
特に好きなのは「猫壷」かな?
今、付き合っている女性の前に付き合っていた女性・佳奈から急に呼び出される・慎二。
二人が一緒に暮らしていたときに飼っていた猫の遺骨をしばらく預かって欲しいというお願いで、それを受け入れる慎二。
猫の骨壷を部屋に置いた環境が慎二にいろいろな思いを抱かせていく話。

女性が語る話が多いなかで、この話は男性の慎二が語る。
そんな事もあって、印象に強く残っているのかも。


ラストの「オンブラ・マイ・フ」も好き。
不倫関係にありながら心中した男女の女性・多美子が死んでいる身で生きてきた34年間を繰り返し繰り返し見つめなおす旅を続けているという話。
でも最後は、安らかな眠りにおちていくようで、ホッとした。

過ちだらけだと第三者は言うでしょうけど、多美子自身も苦しんだのだし赦してあげてもいいんじゃないかな?と思って読んでいたので・・・。


多くの経験を積んだ大人だからこそ書ける恋愛小説でしょうね。

Kissという表題も意味が深いかも。

★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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