彼女たちのやっかいな虚栄と、せつなる孤独に捧げる
「こんなはずじゃなかった」――悩みながら、
泣きながら戦っているすべての“彼女”たちのために。
カバーも帯もなく、バッグに放り込んで良し、
丸めて手に持ち歩いて良し----かつてない、女子必携の短編集。
(光文社HPより)
過去にアンソロジ-で発表した作品も含めた短編14編。
主人公は20代~30代の女性達。
周りには結婚している友達も多く、社会的に責任ある仕事を任されていたり、自身の恋や仕事の今後に悩む年代。
同窓会で再会したかつての友人たちとの語らいで感じる焦燥感。
女性の心理をとてもよく表している作品ばかり。
どれも面白かったけど、
三番目の「彼女の躓き」は、特に面白かった!
学生時代から主従関係のような二人の女性。
祥子にはいつも適わないと思っている私。
恋人を横取りされたこともある。
今の恋人・昌也は祥子には会わせないようにしなければ・・・・。
そして祥子から恋人を結婚も考えているという恋人を紹介するから会おうと。
そして自分にも付き合っている人がいることを話し、後にお互いの恋人と4人で会う。
それからが面白かったぁ~!
私の作戦。祥子に勝った!と思ったけれど・・・・・思わぬ落とし穴。
表紙にカバ-がなく、紙もちょっとわら半紙みたいで変わってた。
そして、本文に水彩画みたいなイラスト。
なんだか楽しい本でした♪
★★★★
現役大学生作家が、学生生活最後の年に書き下ろす、奇跡の物語。

亡くなった父が残したもの……喫茶店、星型の天窓、絆、そして、奇跡。三男三女母ひとり。ささやかな一家が出会う、ひと夏の奇跡の物語。家族が"家族を卒業する"とき、父の残した奇跡が降り注ぐ……。
(角川書店HPより)
デビュ-作の「桐島、部活やめるってよ」や「チア男子」は、現役の学生さんらしい今の若者の学生生活のお話でしたが、今回は、ひとつの家族の物語。
ちょっと趣向が変わっていましたが、今までのなかでは、一番プロの作家さんらしいものだったと思う。(上から目線ですが・・・^^;)
早坂家の兄弟姉妹6人が、それぞれの章ごとに、それぞれの抱えている悩みだったり想いを語る。
<長男・光彦>・・・大学生。家庭教師のアルバイトをしている。
<三男・真歩>・・・小学生。首からいつも黒いカメラを提げている。小学生にしてはク-ル。
<二女・小春>・・・高校3年生。ボ-イフレンドはギタ-の弾き語り奏者。
<二男・凌馬>・・・高校1年生。テニス部。兄が家庭教師で教えるあおいとは同級生。
<三女・るり>・・・双子の小春と似ているのは顔だけで性格は対照的。成績優秀。
<長女・琴美>・・・結婚し、家からは出ているが、家族のことをよく見ていてその洞察力はエスパ-並み。夫は警察官。
↑の順番で物語が進みます。
早坂家の大黒柱であった星則は、建築家で母親が経営する喫茶店(星やどり)も建てたり近所の家をリフォ-ムしたりしていたけれど、4年前に病死。
物語は子どもたちの語りが主ですが、両親の優しい気持ちも読んでいるとわかり、本当に理想の家族のかたちだなぁ~と思った。
一番、ジ~ンとしたのは、二番目の真歩の話。
小学生にしては、いつも落ち着いていて、どこか冷めたかんじの男の子なんだけど、卒業文集の係りに成り行き上なり、その同じ係りの子達とのやりとりが良かった。
4人が係りになったのだけど、二人は女子で、真歩ともう一人の男子・ハヤシ君との友情が泣けた。
どうしてカメラを提げていて、写真を撮ることに夢中になっているのかもわかり切なくなった。
けれど、写真館の青年とも出会い、真歩は、ちょっと今までと違うものを手に入れたかも。
いろいろな人と接して、いろいろな感情を抱くって成長していく過程では大切なんだなぁ~と思った。
ほかの話もそれぞれに良く、ラストの長女の琴美の話では、亡くなった父親が生前に、家族のためを想ってしていたことを知り、涙腺がウルウル。
長女の話をラストに持って来たのは、こういう意図からですね(^^)
著者の今後の作品にも大いに期待したいです!
社会人にそろそろなる頃ですよね?
★★★★
ある日の授業中、突然<それ>はやって来た。
遮断された高校、降り続く灰。
彼女は意を決し、自宅へと歩き始めるのだが----
変わりゆく世界の中の確かな希望を描く、第48回文藝賞受賞作!
(河出書房新社HPより)
結構、薄い本なので、アッという間に読了。
よくわからない状況のなかで、どんどん緊迫感が増す描写が出てきて、恐怖を感じた。
句読点がないので、息をつく間もないけど・・・それが効果的。
高校の授業中に感じた、激しい音と閃光。
何が起きた?理解出来ない人たち。
それでも、ひとりじゃないのは心強い。
まだ笑う余裕もある。
けれど、どこか遠くで起きていると思っていたにに恐怖がどんどん自分達のそばに迫ってくる。
怖い、怖い。
物語のラストは、希望らしいきものはないけど絶望だけでもない。
まだまだ物語の世界は、このあとも続いていって、登場人物たちは必死に生き抜くための努力をするのだろう。
しんどいなぁ~。
著者のプロフィ-ルを見ると、すごい優秀な人なんだな。
現在は東京大学大学院に在籍中だけど、
元は東京大学医学部で医者を目指していたとか。
将来は作家になるたいと方向転換して、文学部へ転部だと。
これが作家活動、第一号というわけですが、これから書くものにも期待したい作家さんが
誕生です!
★★★
人と犬の絆、人間の原罪、
驚異のデビュー作
スティーヴン・キング絶賛、発売忽ち140万部突破の全米大ベストセラー小説。動物文学の新たなる金字塔。
ウィスコンシンの静かな農場で犬のブリーダー業を営むソーテル家の一大サーガ。思いがけない父の死とその真相、母と叔父の接近。居場所を失った息子エドガーは、3匹の犬とともに森に姿を消す──。人と犬との絆、人間の原罪、少年の成長を魔術的に、寓話的に描き、物語の醍醐味に正面から挑んだデビュー作。
(NHK出版HPより)
素晴らしい物語でした!!
700頁を超える長編作品ですが、全く飽きませんでした!
むしろ残りの頁がなくなってくるのが寂しくなったほど!
犬好きの人ならすごく楽しめると思うけど、犬より猫派のわたしでさえ、犬って素晴らしい生き物だな・・・と思った。
主人公は、表題通り、生まれつき言葉を発することが出来ない少年・エドガ-・ソ-テル。
祖父がこの土地を買い取り、犬の飼育や繁殖を行い、それによって生まれたソ-テル犬は誇り高い賢い犬として、世に知られることにまでなった。
エドガ-の父・ジョンがその後を引き継ぎ、母と結婚し、流産を2度繰り返した後、生まれたのがエドガ-であった。
エドガ-は、言葉は喋れないけれど2歳から手話をはじめ、犬とも手話で接し、エドガ-が生まれたときから居た犬のア-モンディンとはいつも一緒に行動し、まるでエドガ-の二番目の母親のよう。
信頼関係で繋がっていた。
平和だったソ-テル家だったのに、少しずつその様子が変わってくる。
そのキッカケになったのは、ジョンの弟・クロ-ドが農場に戻って来たこと。
ジョンとは意見が対立し、口論が耐えない。
そして、突然の父の死。
その死の瞬間、居合わせたエドガ-は、後に、自分が言葉を話せていたら、父親を助けられたのではないか?と自責の念にかられ苦しむ。
母親も父の死を哀しんでいるが、クロ-ドが家のなかに入り込むことを容易に受け入れ、クロ-ド自身をも受け入れているかんじがエドガ-を一層、苦しめる。
そして、父の幽霊と接する。
精神状態がアンバランスになっていくエドガ-。
そして起こしてしまう惨事。
その後、3匹の犬と一緒に家出して森のなかで生活する。
この場面は、哀しく過酷なんだけど、自然を相手に生きるエドガ-と犬たちの様子が生き生きしている。
最初は空腹に苦しむが、その問題も解消し、親切なヘンリ-という男性の元で暫く生活をする。
ヘンリ-とエドガ-たちのやり取りの場面はホッとするものだった。
しかし、再び、家に帰らなければとヘンリ-に別れを告げて家に帰る。
ハッピ-エンドでなかったラストの成り行きにはビックリだった!
いつまでも余韻が残る。
これは、またぜひ時間のあるときに時間をかけて再読したい。
★★★★★
工業高校機械科1年唯一の女子、冷たく熱い鉄の塊に挑む!
めざせ「ものづくり」の真髄!!
「高校生ものづくりコンテスト」旋盤青春物語。
「高校生ものづくりコンテスト」とは……
全国の工業高校生の精鋭たちが、技術・技能を競い合う大会。「高校生技能五輪」「ものづくり甲子園」などとも呼ばれ、日本の高校生による「ものづくり」の頂点をめざす大会として注目を集めている。
(講談社HPより)
主人公の女子高校生・三郷心の成長物語というかんじかな?
祖父は三年前に亡くなったが、工場(三郷金属工業)をつくり、最盛期には30人以上の職人を雇っていた。
祖父の旋盤の技術は、広く高評価されていた。
が・・・時代の流れか工場は経営が立ち行かなくなってしまった。
心労の末、病に倒れ亡くなった祖父。
祖父の職人魂を見守り続けた、祖母が時折、心に語る言葉が温かい。
旋盤よりコンピュ-タ-を扱う仕事に興味があった心だが、学校の先生からの勧めで「ものづくりコンテスト」に参加することを目標に頑張る。
最初は、渋々。
一緒にコンテストに臨む先輩・原口との間にも信頼関係が生まれ、今まで自分が見えてなかったものに気づいていく心。
工業高校の女子って、やはり特殊なんだろうなぁ~。
でも、ものづくりが好きで、技術を磨いて将来はそれを活かした仕事をしたいと想っているのは男子と同じなんだろうな。
清清しい青春小説でした♪
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;