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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:1996年12月


天使の美貌、無意識の媚態。
薔薇の蜜で男たちを溺れ死なせていく少女モイラと父親の濃密な愛の部屋。
稀有なロマネスク。

             (ちくま文庫HPより)



牟礼藻羅(むれもいら)大正初年12月に生まれた。
母親・繁世は、娘を出産しすぐに亡くなってしまう。
モイラは、父・林作の溺愛を受けながら成長していく。
貿易商の父は経済的に豊かで家には家庭教師の御包千加(みくるみ)や
家政婦の富枝、台所仕事をする、やよがいる。
家庭教師と家政婦はモイラを嫌悪し、厳しく接する。
馬の世話係の常吉(ドゥミトリィ)はモイラに好意を抱きながら
自身の気持ちを懸命に律している。
自分に好意を持つ男性たちの視線には敏感で、それを楽しんでいる
ところがあるモイラ。
幼い時から男性たちを魅了するしぐさが自然と出るモイラ。

父親の溺愛ぶりはなかなか凄いけれど、ずっと自分の元に置いておくわけでは
なく経済的に申し分ない天上守安(マリウス)にモイラを嫁がせるのには
ビックリ。
モイラ16歳。マリウス30歳近く。
しかもマリウスは婚約者がいたのに、そちらを破談しての結婚。

嫁ぎ先の使用人たちからは、半ば呆れられた存在。
あまりにも幼稚で無知。
牟礼家から同行してきた世話役のやよが唯一のモイラの味方。
それでもモイラは気にしない。
マリウスに愛されるわけだけど、そんなに幸せそうではない。


結婚する前に父親の別荘に行き、隣の別荘に滞在していたピータァと
知り合いピータァの熱烈な好意を受け、なすがまま男女の関係に。

父親の林作は、そんなことが起きても特に咎める様子はなく
ただただ静観しているのが、不思議。
むしろ愉しんでいるような気がする。
よくわからない心理。



物語がどう進むのか?
結果、マリウスはモイラが自分に好意を寄せてくれないことに
段々と気持ちが塞いで、自死してしまう。

夫が亡くなっても大して悲しそうじゃないモイラ。

そして林作もまた心のなかで再びモイラが戻って来そうだと
嬉しがる気持ちを持っている。


ああ、凄い話だな。


でも文章は美しいので、いやらしさはなかった。
なかなか、面白かったなぁ~。




                     ★★★★
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発行年月:2025年1月


直木賞作家が描く、明治開国の仏を巡る群像
200年の間、固く閉ざされていた扉。
それはフェノロサと岡倉天心の手によって開かれた――
飛鳥時代に聖徳太子の姿を模して造られたと言われる、
法隆寺夢殿・救世観音像。
その厨子は鎌倉時代以降、固く閉ざされ、
扉を開けば直ちに仏罰が下ると信じられていた。
「金のために秘仏を見せるというのか」
「支援がなければ、法隆寺はもう保てません」
国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、
しかし、欧米では東洋美術が評価され始めている。
近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、
秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの思いとは。
直木賞作家が描き出す歴史群像劇の傑作。

                  (文藝春秋HPより)



法隆寺の夢殿の扉のなかに納められている救世観音像を巡る話。

明治、新政府になり神仏判然令が発布されたことにより寺院と神社は一体に
なってはならないという。
天皇を現人神とする考えから。

混乱する法隆寺の僧侶たち。
代表を務める千早定朝の苦悩。
それにより寺の宝は政府に引き渡し、もはや宝がなくなった法隆寺には
価値なしという見方が広まった。
けれどそれを救ったのは異人たちだった。

日本の美術に関心を持ち、高く評価したのが
アーネスト・フェノロサ。
そしてその考えに賛同し、金銭的援助をするビゲロー。
そしてアーネストが日本の大学で教員になったときの教え子の岡倉覚三(天心)が
法隆寺への視察の通訳兼助手として同行。
写真に記録を残すために同行したのが小川一真。


救世観音像に関わる人たち、それぞれの人間ドラマも面白かった。


しかし、岡倉天心って、女性関係が滅茶苦茶な人だったんだな・・・
ちょっと印象変わっちゃったよ(^^ゞ



                     ★★★★★





発行年月:2025年3月


2019目の刊行以来、単行本で愛され続け、
異例のロングセラーとなっている
『月とコーヒー』。
人気作家が腕によりをかけて紡いだ
とっておきの小さな物語たち。
待望の第2集ができあがりました。
◎火星が最も地球に近づいた夜の小さな奇跡
◎〈まっくら都市〉で〈こころ〉を探すモグラの冒険
◎駄目なロボットによる素晴らしいオーケストラ
◎〈トカゲ式ゴム印〉と世界の果ての地球儀屋
◎夜を青く塗り替える、〈貴婦人〉という名の石炭
◎空を飛べなかった男と、ほろ苦いビター・チョコレート
◎〈白紙屋〉の白い手袋と三人の年老いた泥棒
今夜は少し遠いところへ
出かけてみませんか。
世界の片隅に生きる
ささやかで優しい
誰かと誰かのお話を
あなたにお届けします。


                  (徳間書店HPより)



ひとつひとつは、とても短いのだけど
そこに、ある雰囲気がすごくいい。すきだなぁ~。
情景とかが、ふと頭に浮かんでくる文章。

ひとつひとつの話は別々のものだけど、ふと「あれ?この人前に出てきた?」と
気づくのもあって、ちょっと嬉しくなる。


一番印象に残ったのが<1125>
11月25日の誕生日は家族で映画を見る日にした父。
母は早くに亡くなり、父と弟2人と妹とわたしの5人で映画をみる。
けれど17年前は、恋人との約束を優先し父には嘘をついてその
映画を見る会を欠席した、わたし。
そのことを詫びて父がその日、皆でみようとしていた「カマンザの朝食」の
動画データーを贈る。


カマンザの朝食・・・検索しちゃったよ(笑)
その日、映画を見る会に居たのは父のみだった。
そして、それぞれの場所で5人が「カマンザの朝食」を同時刻にみることを
約束するというのも素敵。
いい家族だな・・・・とほのぼの(^^)


いつもながら本の装丁も素敵でした♪



                   ★★★★★



発行年月:2024年11月


小学生のとき、担任の先生と町の外からやって来た男が駆け落ちしたのを忘れられない主婦。東京 でバツイチ子持ちの恋人との関係に寂しさを覚える看護師。認知症の義母に夫とのセックスレスの悩みを打ち明ける管理栄養士。父と離婚した母が迎えに来て、まもなく転校することに なる小六の女の子。発達障害のある娘を一人で育てるシングルマザー。
遠き山に日は落ちて――
小さな町で、それぞれの人生を自分らしく懸命に生きる女性たちを描いた感動作。

                     (光文社HPより)



短篇連作の形で進む。
30代半ばになった同じ小学校出身の人たちの話。
全校生徒が少ない福岡県北部の小さな町の小学校の閉校がきまり
秋祭りを盛大に皆で盛り上げ、町を離れていた卒業生たちも集まる。

最初の話<ドヴォルザークの織より>は
地元から36年間出たことがなく、同じように過ごしてきた同級生と結婚し
今は息子が同じ小学校に通っている類のはなし。

担任の女性教師・群先生がどこからか来た画家とのSEXを目撃してしまう。
そのとき、一緒にいたのは年下の香坂玄(こうちゃん)。

こうちゃんはその後、両親が離婚して母親の実家に引っ越した。
そして作家になって、秋祭りの会場へ。

香坂玄、いいかんじと思っていたけど、とんでもない奴になっていて
ビックリ。
あのとき、類と目撃したことに囚われているかんじでゾッとした。


それぞれの今の置かれた立場やらが語られ、それぞれの立場で今、頑張っている
姿に共感したり、同情したり・・・


どうなる?と思われた類と悟志夫婦も、いろいろありながらも、そのまま
進んで行きそうなラストはホッとした。


凄く感動というような物語ではないけれど、楽しめた。

この表紙の絵を見るとドヴォルザークの曲が自然に頭に浮かぶ。




                   ★★★





発行年月:2002年8月


一年に四度の入退院を繰り返す作家松下センセ。
満身創痍の体で反戦の座り込みに参加する。
ひっそりとした暮らしを営むことすら、センセには烈しい生き方なのだ。

                 (筑摩書房HPより)




少し前に読んだ「教科書に載った小説」で

著者の「絵本」という凄く短い物語に凄く惹かれた。

中学3年生の教科書に載ったのは」1981年からだそうで
わたしは、既に短大に行っていた頃だった。
中学生でこの著者に出会っていたら、きっとそのころからファンに
なってであろうに・・・・

自分のことを松下センセと言いながら、書いているのが可愛い^m^


貧乏で口数が少なくて字が巧くなくて・・・・などなど
謙遜するようなことがいっぱい出て来るけれど、奥様や子どもさん
お孫さんたちにも慕われてその暮らしの一コマ一コマがすごくいい。
ほのぼのしていて癒される。

産まれてすぐに重篤な肺炎に罹り、命は助かったものの
右目の視力を失い、左耳は聴こえず、肺の機能も悪く、入退院を繰り返して
いる生活だと書かれていた。

それでも原発反対とかアメリカ軍絡みの座り込みには、参加している
熱い気持ちを持った松下センセ。

奥様はよく出来た人だと思った。
普通なら座り込みなんてダメだと喧嘩になりそうだけど・・・。

奥様とは幼馴染なのかな?
その辺を詳しく知るためにも豆腐屋時代の話を次は読んでみようかな。




                    ★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
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