忍者ブログ
読んだ本の感想あれこれ。
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7



発行年月:2025年10月


たとえままならずとも。あたたかな恋の旋律
「好きだ」と言ってくれる男性と結婚するも、少しずつすれ違っていく心に気づかないふりをして生活を続けようとする「私」に、海辺の別荘で出会った隣人の画家を忘れられない「私」……。
恋に落ち、人を愛することに決まったかたちなどない。
目の前の気持ちに、ただ必死に追いつこうとする人々の姿を描いた6編の短編を収録。
一筋縄ではいかない、珠玉の恋愛小説集。
◆◇あらすじ◆◇
 夫を亡くし、10年間の結婚生活に終止符が打たれた恵美は、夫の残した別荘に暮らしている。心は悲しくもせつなくもないけれど、思い出すと目から自動的に涙が零れる。 
 自分が、女を好きなわけがない。そう納得させたくてした結婚だった。
 ある日、隣に画家の女性が越してきた。絹香と名乗る彼女と行き来するうち、恵美は自分の胸の奥の痛みに気づく。絹香もまた、怒ったように言う。
「恵美さん、旦那さんという人がいた人だったんだ」(「海鳴り遠くに」)
 高校を休みがちになった僕の家へ、夏休みの間だけはとこの桃子さんがやって来ることになった。両親の離婚により始まった母との2人暮らしにも慣れ、告白されて彼女もでき、〈幸福が加速している!〉はずだったのに……。(「風は西から」)
 自分は「普通」ではない。だから木に化ける蛾のように擬態を続け、「普通」の人間なのだ、と思い込もうとした。
 そうして70手前になった学校清掃員の老人はある夏、昔想いを寄せた友人によく似た少年に出会う。「男女(おとこおんな)」と呼ばれいじめられていた彼と関わるうち、自宅に招き食事をともにするようになる。だが、2人のひと夏の終わりはすぐそこまで来ていた――。(「赤くて冷たいゼリーのように」)           
                                    ――直木賞受賞作『夜に星を放つ』を超える感動をもたらす全6編
 読み終えた後、「いろいろあるけど、こんな人生も悪くないな」と顔を上げられる、至極の短編集です。
目次
海鳴り遠くに
風は西から
パスピエ
赤くて冷たいゼリーのように
天鵞絨のパライゾ
雪が踊っている


                   (文藝春秋HPより)



色々な「恋」を描いた短編集。
どの話もそれぞれ読んでいて面白かった。
切ないのが多かったけれど・・・。


<海鳴り遠く>
夫が遺した別荘で暮らしている恵美(38歳)。
隣の別荘に数か月滞在の画家の絹香と親しくなる。
恵美と絹香は互いに惹かれるけれど・・・

本当にお互いが好きなら、男女とか関係ないよね?って
周りも思う世の中になればいい。
ここからまた新たな関係が始まるのかな。


<風は西から>
両親が離婚した小学4年生から頑張ってきた陸。
高校2年生になって、告白されたのに、「好きかどうかわからなく
なっちゃった」と言われ・・・・理不尽過ぎるよ~(/_;)
この先、良いこと起きるといいな。


<パスピエ>
仕事帰りによく行く居酒屋に脚の綺麗な中野さんがバイトに加わる。
ついつい脚をみてしまう板倉(25歳)。
ストーカーに家を知られてしまったという中野さんが家についてきて
そのまま一緒に暮らすことに。
でも中野さんは居酒屋の大将の妻だった。

あ~板倉、かわいそう。
脚フェチはちょっと気持ち悪いけど、秘めた思いのままだから
まあ、そんなに嫌悪感はないかも。


<紅くて冷たいゼリーのように>
偏差値と授業料が高い私立高校の清掃員として働いている初老の宏。
17歳でバイクで事故死した祐のことを今でも想っている。
その祐に似たかんじの男子生徒がトイレで虐められているところを
目撃し、声を掛けたのを機に男子生徒・佐々木結(ゆう)と親しくなる。
結はその後、両親が離婚して遠くへ引っ越す。
そして、また別の男子生徒が暴力を受けているところを目撃し
助けに入り、暴行されて救急車で搬送。

宏、優しい人なんだろうな。
優しい誰か信頼できる人と幸せな時間を持てるといいんだけど・・・。
イチゴのゼリーがなんだか哀しい(/_;)


<天鵞絨のパライゾ>
仕事を通して知り合ったYと結婚。
Yは裕福だったけれど、結婚後も仕事を続けさせて欲しいとお願いし
家事も仕事も頑張るけれど、少しづつすれ違い、離婚。
結婚前から気にかけてくれるユーシェンが荒れた生活をする自分を
慰め、立ち直らせてくれる。

結婚しなくてもいいじゃん別に・・・
一人で生きていける仕事もあるわけだし。


<雪が踊っている>
小学校3年の息子・紡が塾の友達に乱暴をしたと報せが入り迎えにいく。
相手側の連絡先を聞き、ケガをした子が以前、結婚まで考えた男性の息子
だと知る。
子ども同士は些細な喧嘩で、ケガも大したことなく、その後も仲良く
遊んでいる。
ある日、塾から二人が居なくなったと・・・
探すと公園で雪遊びしている。


別れた男と、よりが戻らず、ホッとした。
雪遊びのどさくさに紛れて雪玉を男にぶつけ「あの人が鬼だから・・・」
と子どもたちにも雪玉を投げる標的にしたのは、ナイス!

面白かったけれど、次は長編が読みたいな。

                    ★★★
PR



発行年月:2025年10月

長いスランプに陥った小説家はやけっぱちになり、唐津を旅することに。
陶芸体験をした窯元の夫婦から、水神にまつわる不思議な伝承を聞く。
今でいう「難民」であったという流浪の水神は、戦国時代、
いかにして秀吉の朝鮮出兵を止めようとしたのか……。
『かたづの!』の著者が、かつてないスケールで
歴史と現代を深く結びつける長篇小説。


                (新潮社HPより)




秀吉(猿)の朝鮮出兵をなんとかして止めようと奔走する水神たちの話を

小説家が旅した唐津で、とある陶芸家夫婦(ワサブローさんとナミエさん)から
聞く先祖から言い伝えらえてきたものだと聞く話。


秀吉が猿や家康を狸なのは、わかっているからすんなり理解したけれど。。。
肥後、宇土城城主・小西行長を魚屋(ととや)
加藤清正を虎之介として出て来るので、ちょっと「あれ?誰だっけ?」
と慣れるまで読むスピードが上がらず・・・。



水神(河童)たちも沢山でてきて・・・・
千利休と親しくなった、休利(キュウリ)、
小西行長と共に朝鮮に渡り、成り行きを見守る、ニタ
明の医師・許義徳と接触するカイ

戦の話と並行して、陶工の娘・銀非(ウンビ=キムヒともいう)と
親しくなった水神のスズの話も重要。
銀非はスズに別れのとき手渡した小ぶりの茶碗。
他にも銀非が焼いた茶碗は、茶人たちの間にも価値あるものとして茶室に
置かれていた。


秀吉が戦を朝鮮に向けているという時、銀非の器たちが一斉に揺れ始め
水神たちは、いち早く、その危機をしる。


水神たちのルーツである場が戦場になることは、今もその地にいる同胞たちの
危機。
どうしたら、戦を止めさせられるか?

水神会議が開かれ、水神たちは、それぞれ、あちらこちらで戦を止めるよう
働きかけてくれそうな人間と接触する。



史実でも朝鮮出兵は止められないことだと、わかっているのだけど
水神たちの必死さが健気で、本当に秀吉が大嫌いになる。
元々、好きじゃないのだけど・・・・(^^ゞ



表題の「水は動かず芹の中」は芥川龍之介の
「薄曇る水動かずよ芹の中」という文章からとっているらしい。

物語のなかで作家がサワタローさんに案内されて散歩に出て
芹が群生している場所に。
男性が芹を摘んでいて、少しわけてくれる。
芹を摘むは徒労といううたことばだとも教えてくれる。
身分の高い女性に片想いした下僕の実らぬ恋からの逸話から来たことばと。


小説家がサワタローさんたちと交流が続くが、2024年夫婦は朝鮮の白磁を勉強する
ため韓国に移住したとはがきが来る。
サワタローさんの居た場所に懐かしさもあり訪ねると、別の陶芸家が
新しい家で住んでいて、サワタローさん夫婦のことは全くしらないと。

記憶を頼りに芹の群生地に行くと、あのときの芹摘みの男性がいて
「河童はもういないんだよ」と。


最後に何か、不思議な余韻を残して終わる物語。


最近、なんだか河童絡みの物語が多いのは、偶然なのか???




                    ★★★★





発行年月:2025年6月


心震わせる生きもの賛歌。
美(う)っついのう。
紀州藩士の息子・十兵衛(後の本草学者・畔田翠山(くろだすいざん))は、幼いころから草花とは自在に語らうことができるのに、人と接するとうまく言葉を交わすことができずに育った。ある日、草花の採取に出かけた山中で天狗(てんぎゃん)と出会ってから、面妖な出来事が身の回りで次々と起こり……。若き本草学者の、生き物や家族、恩師との温かな交感と成長を描く、感動の時代幻想譚。


                 (実業之日本社HPより)





御伽噺みたいな物語で読んでいる間、楽しかった。

主人公は実在した人物だと、読みながら知る。
江戸時代後期に活躍した本草学者、藩医の畔田翠山(十兵衛)。
少し時代は違うけれど、朝ドラのモデルになった牧野富太郎とも
似ているかな~と。

翠山は、人と関わることが苦手で植物相手だと、自分のことを話したり
植物のことを知ろうと、じ~っと観察し、記録する。
師匠の小原桃洞には最初から目をかけられ、孫の義直とも最初は
ギクシャクした関係だったけれど、一緒に山に山草を調査しに
出かける仲間になっていく。
苦手だった人との関わり方も段々と自然に出来るようになって
そんな成長も読んでいて楽しかった。

山で出会った天狗や、あの世にいった父親やこの世で不幸な死に方をした
姫様なども出て来て、その都度、会話する翠山のことばが
誠実でやさしい。



挿絵が幾つか載っていて、それも翠山の描いたものだと知り驚く。
丁寧な線で、山の景色、草花、魚・・・・どれもいい。

そ~いえば、牧野富太郎の描く植物画も素敵だったな。

この物語の舞台、紀伊の国。
まだ行ったことはないけれど、今もこの物語が浮かぶような素敵な場所が
たくさん、ありそうだな・・・・。




                    ★★★★★



発行年月:2020年10月


お嬢さん、十八かそこらで、なんでそんなに悲しく笑う――。
暴力を唯一の趣味とする新道依子は、腕を買われ暴力団会長の一人娘を護衛することに。
拳の咆哮轟くシスターハードボイルド! 
装画:寺田克也

 
                 (河出書房新社HPより)




今年、イギリスのタガー賞を受賞したと話題になった本。



ハードボイルドは普段は読まないんだけれど・・・
凄く面白かった。
暴力的な描写は結構、グロいけれど、読みやすかった。


暴力団組長の一人娘・尚子(短大生)の護衛係としてスカウトされた
真道依子(22歳)。
依子は慎重170cm超えで体重は75kg。
風貌は日本人離れしていて、幼いころから祖父母の元で暮らし
祖父からは、敵を倒す技を多く学んでいて、喧嘩が大好き。
祖父母が亡くなり、新しい暴力を探して東京へ。



最初は、尚子と依子の関係はギクシャク。
でも、あることを境に、二人はお互いを信頼するように・・・


尚子の父親が鬼畜で、二人は屋敷を飛び出すことになる。
その先は、それまでの違った暴力関係なしの生活。
結局、追われることを恐れて世間をも騙す容姿と偽名で暮らすんだけど
う~ん、なんか拍子抜けな終わり方だったかな?


尚子の母親は組頭の男と出奔したのだけど、交通事故現場から車に
残された親子を助けたことが原因で存在が組にもバレる。
その後、どうなったんだろ?

二人が使っていた偽名を後に、尚子と依子が買うことになるんだけれど
母親と組頭は、その名前を使う必要がなくなって無事に
生きていてくれたらいいんだけれど・・・。



普段、あまり読まないかんじの話で、賞を貰ったと話題に
ならなければ、読まなかった1冊。
まあまあ楽しめた。



                     ★★★








発行年月:1990年6月


元祖「アンパンマン」収録。やなせたかしの原点がここにある!
2013年は、「あんぱんまん」が初めてフレーベル館『キンダーおはなしえほん』に掲載されてからちょうど40年。テレビアニメ「それいけ! アンパンマン」放映からも25年を迎えます。
『十二の真珠』は、この“アンパンマン”の原点ともいえる作品が収録されており、「一話を400字詰め原稿用紙3枚で書き上げる」という、やなせ氏のその後の作品の基本形を形作った短編童話集。
昨年から今年にかけ「中居正広の怪しい噂の集まる図書館」(テレビ朝日系)、「ZIP!」(日本テレビ系)といったテレビ番組で取り上げられ、再び注目が集まっています。
元祖「アンパンマン」ほか、名作「チリンの鈴」など、珠玉の短編童話を12話収録。
子どもだけでなく、大人もいっしょに楽しめる一冊です。
やなせたかしの新たな“まえがき”も収録予定!
▼収録作品
バラの花とジョー/クシャラ姫/天使チオバラニ/チリンの鈴/アンナ・カバレリイナのはないき/アンパンマン/星の絵/風の歌/デングリ蛙とラスト蛇/ジャンボとバルー/キュラキュラの血/十二の真珠
*解説文は、復刻版のものを引用
                 (発行/株式会社サンリオ)
                


朝ドラをみていたので、アンパンマンの原点になったお話や、ほかの話も
読んでみたくて、こちらを手に取った。


挿絵も沢山あり、物語もどれもいい。
全体的に、ちょっと哀しいかんじはするけれど、それを書いた著者の意図を
想像しながら読んだ。

やはり印象的なのは「チリンの鈴」。
狼に家族や仲間を惨殺された羊の子が狼のもとで「あなたのように強くなりたい」
と一生懸命、鍛錬し、立派な角を持つ強い羊に成長。
そして、おおかみに仇を討つ。

そこで、終わらないのがこの物語の核心かな?
おおかみを倒しても、ちりんの心は晴れず、恐ろしいものとして
誰からも疎まれる存在になってしまった、ちりん。


憎む心を持ち続けるということは、その人自身をより不幸にすることなのかも
しれないな・・・。


まえがきとあとがきに、著者の気持ちが書かれている。
ユーモアもあり優しい気遣いの人なんだな・・・と。

もくじに予告編(物語を短くまとめた文)まで載せてある・・・^m^

そこには、こう記されている。

この本を読もうとして、てっとりばやく内容を知りたいひと、また、
読まないで批判文をかこうとするひとのために親切なガイド、あるいは
血わき肉おどる予告篇であります。



アンパンマンの太ったおじさんも可愛くてすき。
贅沢な一冊だなと思います。


                    ★★★★★



                      
カレンダー
10 2025/11 12
S M T W T F S
1
2 3 7
11 13 14
18 21 22
23 26 27 28 29
30
メ-タ-
kyokoさんの読書メーター
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[09/20 kyoko]
[05/23 のぶ]
[09/15 kyoko]
[09/14 ひろ]
[03/06 kyoko]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
kyoko
HP:
性別:
女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
フリーエリア

Copyright (c)本を片手に・・・ All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  image by Night on the Planet  Template by tsukika

忍者ブログ [PR]