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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2023年7月


町に呑みこまれていくことに、疑いを持たなくなったのはいつからだろう。
ぬかるみの暗い温もりに、心安まるのはなぜだろう。
低層の団地群を抱くその町は寂れていた。商店街にはシャッターが目立ち、若者は都会に去り、昔からある池には幽霊が出るという。その土地で人びとが交わすどこか歪な睦み。母の介護にやって来た男はバーで出会った少年に惹かれ、文房具店の女は一人の客のためだけに店を開ける。同窓会を機に生まれた熱情に任せ、不実の恋に溺れる者たち……。終着点は見えている。だから、輝きに焦がれた。瞬く間に燃え尽きてもいいから。

                 (光文社HPより)


5つの短編集。
団地が出てくると、なぜ、こういう怪しげな雰囲気に、しっくり来るんだろう。
どの話も面白かった。
後味はよくないのが殆どなんだけど・・・

<トワイライトゾーン>
週末は、母親の様子を見るため実家に。
地元の同級生に誘われ、プチ同窓会に渋々、参加した帰り、一人ふらっと
寄った店。
帰り際「必要なときは3本のマッチを」とマッチ箱を手渡される。

店の授業員(?)の青年・ヒカルに不思議な魅力を感じていく50歳半ばの
数学教師。
ああ、あの場所にさえ行かなければ・・・っていう恐ろしさ
こういうふつうの人が、ちょっとしたことで妖しいものに出会ってしまう
のって怖い。


<蛍光>
亡くなった父親がやっていた文具店の片づけに通う主婦。
ノートを見てふと思い出した同級生の山城君のこと。
中学の時、店の文具を盗んでそれを父親が家までいって咎め、
家族に折檻されて翌日、貯水池で亡くなった。

これも怖かった。
この女性は特に悪くないと思うのだけど、こんな恐ろしい目に遇うとは・・・



<ルミネッセンス>
中学時代の同級生との飲み会の場で初恋の礼子と再会する55歳の石崎。
礼子と月に1度会う生活が続く。

ああ、バカだな。。。
何をやっているんだか
これが表題作でなくてもいいと思う。


<宵闇>
右目の下に赤く盛り上がったような傷痕がある花乃(14歳)。
3歳のときの交通事故が原因。
父親と外出中の事故だったので、両親はそれが元で喧嘩になり離婚。
学校では虐められっ子。
夏休みに入り、母親に頼まれ団地に住む母親の父の元に様子を度々、見に行く。
おじいちゃんは寡黙。
ママはおじいちゃんが好きじゃないみたい。
昔はおばちゃんに暴力をふるっていたからと。


孫のためには、虐めっこを捕まえて叱る、おじいちゃんが恰好よかった。
花乃はずっとそのことを忘れないでいると思う。
この話が唯一、読後感が良い。


<冥色>
東京のマンションを引き払い、神奈川県の団地に移転した男。
付きまとわれて辟易していた女性・珠子とも別れることが出来て満足。
同じ団地の女性からストーカーされていると相談され、近くのパン屋に
勤める女性を勤務後、迎えに行って一緒に帰る日課に。
が・・・ある日、突然、警察官に容疑者として捕らえられる。

これは、怖かった。
本人は忘れているということ?
珠子は殺されたのぉ~?



こういう短編集もいいな。



                   ★★★
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発行年月:2023年1月


法律が裁けないのなら、他の誰かが始末する。
司法を超えた復讐の代行者――それが〈私刑執行人(ハングマン)〉
現代版〝必殺〟ここに誕生!
警視庁捜査一課の瑠衣は、中堅ゼネコン課長の父と暮らす。ある日、父の同僚が交通事故で死亡するが、事故ではなく殺人と思われた。さらに別の課長が駅構内で転落死、そして父も工事現場で亡くなる。追い打ちをかけるように瑠衣の許へやってきた地検特捜部は、死亡した3人に裏金作りの嫌疑がかかっているという。父は会社に利用された挙げ句、殺されたのではないか。だが証拠はない……。疑心に駆られる瑠衣の前に、私立探偵の鳥海(とかい)が現れる。彼の話を聞いた瑠衣の全身に、震えが走った――。

                   (文藝春秋HPより)




ささっと読了。

今までの中山作品に比べると、普通かなぁ~。
つい最後の大ドンデン返しを期待してしまうので・・・(^^ゞ


警察官の身を利用して、父親を殺害した者に復讐する話なんだけど、
自ら進んでこんな行動をするとは、ビックリ!

亡くなったお父さんは、瑠衣のこの行動は喜ばないと思うなぁ~。
自分が親だったらむしろ辛すぎる。
この後、瑠衣はどう生きるんだろう。

平然と警察官として生きてはいけないでしょう。
普通の神経ならば。


う~ん。
スラスラ読ませるけれど読後感がよくない話。



                         ★★☆




発行年月:2005年11月


身長175センチ、22歳、処女。いや、「女の童貞」と呼んでほしい―
就職が決まった大学四年生のだるい日常の底に潜む、
うっすらとした、だが、すぐそこにある悪意。
そしてかすかな希望…?第21回太宰治賞受賞作。


                 (筑摩書房HPより)


著者の本は、結構、読んでいるけれど、こちらのデビュー作は知らなかった。

読み始めは・・・へ~こんな青春小説からデビューしたんだなぁ~と
自己評価の低いちょっと変わった女子大生の日常を、緩い気持ちで
「なんか、いいな。学生のころをちょっと思い出すなぁ~」なんて読んでいた。

が・・・そんな生半可な物語じゃなかった!!

主人公の女子大生・ホリガイの周りにいる大学生たち(辞めて社会人の人もいる)
の抱えているものが結構、ヘヴィだったりして「( ゚Д゚)!?」となること度々。
リストカットを繰り返す人、自死しちゃった人、過去に酷い暴力に遇った人
などなど・・・

ホリガイは、そんな人たちに普通に接して、そっと寄り添ったりしている。
でホリガイ自身も過去にそれに近い経験があったから、わかることもあったのかな?
放っておいても何ら責められないのに、きっと見過ごせないんだろうな。


大学卒業後の進路も決まっていて、地元の県職員になるという。
児童福祉に関わりたいと。
その動機が、なかなか凄い。
テレビで4歳の男の子が行方不明のままというのを18歳で知り、その子の
ことが気になっているという。


実際、偶然にも男の子を助ける。
その子は、間違いなく、ホリガイの行動がなかったら、助け出せなかった。
この場面は、泣けた。
そのことを知らせた自死した同級生のことも、助けてあげられたらな・・・と。


ホリガイが知り合った1つ下のイノギとの関係も、いい。
イノギは、ホリガイと出会ったことで救われたこと多いと思う。
二人の再会が近いうちにありそうなラストもよかった。


ホリガイは自分のことを低く評価しているけれど、大したもんだと思う。
凄いよ!と褒めてあげたいくらい。

どんな社会人になっているだろうか。


全部、読み終えて、表紙を見ると、なんだかジ~ンとする。
この表紙、いいな。
少年が穏やかな顔で微笑んでいて・・・
この表題もいい。 元の題は「マンイーター」だったそうだけど、
こちらの方がいい、断然、いいと思う。


映画化されているみたいなので、是非、観てみたい!!

                      ★★★★★

 


発行年月:2023年8月


つい重ねてしまった嘘の先に……
『鍵のない夢を見る』から10年、辻村深月が詐欺を描く。
幸せが欲しくて嘘にすがりついてしまう人間の哀しみが、心に迫る3篇。

                (文藝春秋HPより)


3つの詐欺話。

<2020年のロマンス詐欺>
山形から東京の大学に入学が決まり上京し一人暮らしが始まった耀太。
が・・・新型コロナウイルスの流行で緊急事態宣言。
大学の入学式もサークル活動もなく、バイトで生活費を自分で稼ぐ予定が
そのバイト先も決まらず・・・
そんなとき、幼馴染からすすめられたオンラインで出来るバイト。

一人の主婦とのメールで、なんとかお金を振り込ませなければならない
事態になるが・・・

コロナなんてなかったら、こんな詐欺に加担することもなかっただろう。
耀太は、優しくて良い子だと思う。
騙した相手だけど、窮地に居ると知って助けにいく行動力は凄い!
ラストは、ほっこり。


<五年目の受験詐欺>
これは、母親が悪い。
息子の中学受験の際に、お金(100万円)を渡して志望校に合格を橋渡し
して貰った。
が・・・五年後、それが詐欺だったと、当時同じような立場にいた
人から知らされる。
その人の息子は不合格だったのでお金は返金されたそうだけど・・・。
息子は自力で合格していたんだと喜ぶ気持ちもあったけれど
夫にも内緒でやったことを今更どうしよかと悩む母親


あ~、息子の実力を信じてあげられない母親はダメだ~。
仮にお金によって合格したって、後が大変なだけだと思うし。

でも、それを夫と息子に話し、ちゃんと理解して貰えてよかった。
良い家族だな。


<あの人のサロン詐欺>
憧れの漫画原作者・谷嵜レオになりきり、オンラインサロンのオフ会を
開く女性・紡(36歳)の話。
本物は、覆面作家として、SNSなどはしないすべてが謎の人物。

誰にもばれずに本人になりきる紡。
けれど、本人が下着の窃盗容疑で逮捕のニュース。

どうなる???と思ったら、谷嵜本人の元に会いにいく紡。

連載中止になり世間からも見放された感の谷嵜を救うことになって
本当のファンってこういう人だよねと思う。


3つの詐欺話。
それぞれの人の心理描写が巧みで面白かった。



                    ★★★★



発行年月:2019年9月


熱い涙なしでは読めない、北海道の離島を舞台に心の再生を描く青春成長小説
たったひとつの失敗で夢と居場所を失くし、ずっとうちひしがれていた。
強い風に海鳥舞う北海道の離島との出会いが、少年を救い新たな試練を与える。
中学二年生の頃、医師を目指していた川嶋有人は、重度のアレルギー発作を起こした転校生を助けようとするが失敗し、軽度の障がいを負わせてしまう。それ以来、夢も未来も失ったと引きこもっていた有人だったが、憧れの叔父・雅彦の勧めにより、彼が医師として勤める北海道の離島・照羽尻島の高校に入学することに。「海鳥の楽園」と呼ばれるその島の高校の全校生徒は、有人を含めてたったの5人。待っていたのは島男子の誠、可愛くて優しい涼先輩、ある事情により札幌を離れた桃花、鳥類学者を目指すハル先輩など個性ある級友たちだった。東京とは何もかもが違う離島での生活に戸惑いながらも、有人は少しずつ自信を取り戻し始める。しかし、突然の別れと残酷な真実が有人に降りかかり……。
熱い涙なしでは読めない、明日へ踏み出す勇気をくれる感動の物語!


                     (角川書店HPより)



有人が引きこもりになった原因が結構、重たい。

頑張って行動に出たことが、まず凄い勇気が要ることだっただろう。
結果、うまく助けられず、その子に軽い障害が残ることになってしまった。
それは有人が責任を負うことではないのに・・・・。
この時、有人に対して冷たい言葉を言った人たちは最低だと
強い怒りが沸いてきた。


引きこもってしまう気持ちも理解できる。

そんな有人を立ち直らせるために、働いたのは叔父さん。

医師として北海道の離島の診療所で働いている。
その島に有人を呼び寄せ、見守る。
強く学校に行けとかは言わず、少しずつ手伝いをさせたり、部屋の外に
出すことを試みながら・・・・

島の人たちは気さくで良い人たちだけれど、ちょっと人間関係が密な
かんじは、都会育ちの有人には慣れるまで大変そうだったな・・・。


結果、有人は学校にも通い、友人もでき、再び目標を持って
頑張ろうと前を向き始めた。


障害が少し残ってしまった元同級生にも再会して
彼女が有人の行動が有難かったと言ってくれてよかった。
そして、彼女もちゃんと目標を持ってそれに向かっていると知り
ホッとした。


叔父さんの死にはちょっとビックリだったけど、そのあと赴任してきた
ドクターが1か月で辞めてしまった話は、ちょっと残念だった。
こういう人間関係が密になっている環境に、溶け込める人でないと
キツイんだろうな。
読んでいて、ちょっとこのドクターが気の毒だった。


物語としては、まあまあかな?



                     ★★★

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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
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