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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2022年6月


昭和三十八年、三井三池炭鉱の爆発と国鉄事故が同日に発生。「魔の土曜日」と言われたその夜、十二歳の黒沢百々子は何者かに両親を惨殺された。なに不自由のない家庭に生まれ育ち、母ゆずりの美貌で音楽家をめざしていた百々子だが、事件は重く立ちはだかり、暗く歪んだ悪夢が待ち構えていた……。著者畢生の書下ろし大河ミステリ。

                 (新潮社HPより)



昭和38年の11月9日にふたつの大きな事故があり、この物語の冒頭の事件も
その同じ日に起きている。

そのためか、最初から最後まで、凄い緊迫したリアリティを感じた。
冒頭の事件では、ある夫婦が殺害される。
犯人は、少し読み進めれば、わかる。
では、なぜ?そうしなければならなかったのか?と疑問を抱えながら読み進め
犯人の一途過ぎる思いがなんとも辛い。

犯した罪は大きいけれど、不思議と嫌悪感みたいなものは感じなかった。

両親を殺された百々子は、当時、私立の裕福な家庭の子が多い学園の初等科6年で
事件の日は、学校の1泊2日の合宿に出かけていた。

百々子を支えたのは、当時担任だった美村。事件を知り、合宿先から百々子を
東京まで送り届け、その後も何かと気遣う。

百々子の両親が懇意にしていた家政婦の石川たづと多吉夫妻が、百々子を預かり
日常を共にする。
その家の子どもの長男・紘一、長女・美佐も百々子の良き話し相手となる。



ここからネタバレ含みつつ・・・

一番、百々子のことを心配していたのは、百々子の叔父(母親の弟)・沼田左千夫。
彼は、百々子を最初に見た時から、百々子のことしか感がえられなくなっていた。
叔父という立場から見れば、異常でしか、ないけど、その想いは純粋で
百々子に自分から触れることもなく、精一杯、自制していた。

そのことが、姉夫婦を殺害することになってしまったのは、左千夫自身も
本意ではなかったと思う。
万全に隠し通すべきだった思いを姉に知られてしまったのは、偶然だった。
思いを目に見える形で残すべきではなかったとは思うけれど・・・
一人暮らしの寮の管理人(妻)が親切心で姉を留守宅に入れたために
知られてしまった。

姉に強く非難され、追い詰められてしまった。


百々子が両親を殺害した犯人が、いつも優しかった叔父だと知り、ショックで
その後は強い憎しみと嫌悪感を抱くのは当然だと思う。
けれど、60歳を過ぎた百々子が、過去のことを思い出し語る終盤では、
叔父に対して、少し違った思いを語っている。
そこには、憎悪よりも憐れみの気持ちの方が勝っていたと思う。
そのことに、少しホッとした。

左千夫の最期が、本当に辛そうで、胸が痛くなるものだったから。
こんな風にしか、生きられなかった左千夫に、憐れみの気持ちでいっぱい。
泣ける・・・(ノД`)・゜・。



小池さんは、これを書くのに10年という歳月がかかったそう。
その10年の間には、自身がケガをしたり、お母様が病気で亡くなり、
ご主人も闘病生活の末、亡くされたとか。
ご自身の生活も大変なときに、このような凄い物語を書き上げたのは
本当に、凄いとしか言いようがない。

色々な作品を読ませて貰ったけれど、間違いなく、一番の作品だと思う。


                     ★★★★★
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