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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2020年5月


傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。
2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……
犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!

                    (文藝春秋HPより)




一匹の犬・多聞。
迷い犬として東北の震災地を彷徨い
色々な人に出会いそれぞれの人たちと寄り添いながら生きていく。

<男と犬>
中垣和正は震災後、仕事をなくし先輩の口利きで始めたバイトは、犯罪がらみ。
わかっているけれど、認知症の母親、その世話に明け暮れる姉のため、
自分が稼ぐしかない。
多聞とはコンビニ前で出会い、以後、いつも連れて行動。


<泥棒と犬>
最初の話で出てきた男の死後、代わりに飼うことになったイラン人のミゲル。
震災後の街なかで盗みをはたらいている。
故郷の家族に楽をさせたくて。
が、組織の者に追われることになり「ショーグン」と名付けた多聞を
解放。


<夫婦と犬>
中山大貴は登山道でのトレーニング、多聞に遭遇。
クマに遇う危険を回避する手助けをしてもらい、そのまま家に連れて帰り
飼うことに。妻も賛成。
トレーニングにも一緒に行くがある日、大貴は山から滑落。
その場にいた多聞は、そのまま姿を消す。


<娼婦と犬>
山道を車で走っている最中、道に寝そべる多聞を見つけた須貝美羽は、大怪我を
して動けなくなっている多聞を救急動物病院に連れていく。
そのまま手術となったが命は取り留めた。
動物病院で、埋め込まれたマイクロチップから岩手県で飼われていた4歳の牡犬と
わかる。
「レオ」と名付けて飼うことに。
美羽が多聞に遇ったのは、付き合っていた男を殺害し埋めた帰り。
そして、娼婦として働いているラブホで男の頭を殴り、そのまま逃走。
「レオ」を解放。


<老人と犬>
家の前でなにかの気配を感じ、弥一は家のまえにいた多聞を見つける。
以前は猟銃会に所属していたが、今は会からも脱退して静かに過ごしている。
民家近くにクマが出没するから、仕留めてほしいと猟銃会から頼まれるが
断る。
別のものに頼んだらしいが、失敗したと。
余命短い病状だが、最後の力をクマ退治に使う決心をし、山に入るが
クマと間違われて命を落とす。
自分の命が尽きたら・・・と多聞のことを頼んでいた。



<少年と犬>
多聞は、九州に。
林の中から突然、飛び出てきた犬に遇う内村徹。
がりがりで衰弱している犬を動物病院へ。
飼い主は釜石市の出口春子さんというが、震災で亡くなっていると。
内村一家も震災で釜石から九州に移転してきた。
震災後全く喋らなくなった息子・光だったが、多聞が来てからは表情が明るくなり
喋るように。
不思議なことに多聞と光は、釜石で既に交流があった。
5年の年月をかけて光の元に来たということがわかる。




犬の能力って凄いなと思う。
こんな風に気持ちが通じ合った人間のことをずっと覚えているものなのか?


多聞と出会う人たちは、過酷な境遇におかれた人たちばかりだったけれど
多聞が寄り添ってくれた期間は幸せそうだった。


やっと会えた少年とずっと長く暮らしてほしかった。




                         ★★★★★




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