忍者ブログ
読んだ本の感想あれこれ。
[2044]  [2043]  [2042]  [2041]  [2040]  [2039]  [2038]  [2037]  [2036]  [2035]  [2034



発行年月:2018年1月


 たとえ世界中が敵にまわっても、僕だけは味方だ。 公衆浴場で赤ん坊を預かるのが仕事の小母さん、 死んだ息子と劇場で再会した母親、 敬愛する作家の本を方々に置いて歩く受付嬢、 ひ孫とスパイ大作戦を立てる曽祖父——。 取り繕うことができない人々の、ひたむきな歩みが深く胸を打つ。 あなただけの〈友〉が必ず見つかる。静謐で美しい傑作短編集!

                       (幻冬舎HPより)




7つの短編。

どれも良かった。
優しい流れるような日本語・・・小川さんらしい。


<先回りローバ>
吃音のあるボクの前に現れた老婆(ローバ)。
両親は本当の誕生日を6日経った日に届をだした。
だからボクの声はその空白の6日間に取り込まれる。
8歳の本当の誕生日をローバは祝ってくれた。


<亡き王女のための刺繍>
出産祝いのよだれかけを、りこさんのお店で注文。
りこさんの刺繍の腕はピカイチ。
頼んだ刺繍は、ツルボラン。冥界の地面に咲く花。


<かわいそうなこと>
かわいそうなことリストをつけている。
社会科見学で行った自然史博物館に骨が宙に展示されている
シロナガスクジラ。地球上で一番大きな動物。食べ物は小さなオキアミ。
皆に大きいと言われ、展示されている心臓の模型は子どもたちの遊び場。

ママの雑誌にあった集合写真に名前が記載されていない人。
・・・・ひとりおいて・・・・。
そのひとりおいておかれた人。
かわいそうなことはどこにも潜んでいる。


<一つの歌を分け合う>
幼い頃から兄弟のようにしていた従兄が大学の寮のベッドで死んでいるのを
友人により発見される。
伯母は納骨が済んでしばらくすると、「あの子がミュージカルで主演を
つとめているから見に行かなきゃ」と。
高校生の僕は一緒にミュージカル「レ・ミゼラブル」を観に行く。


<乳歯>
少年は1歳に満たないときから歩きまわり、迷子になり両親の
心配のたねになる。
迷子になるのは、活発だからではなく、何か一つに心を奪われ、
そこに視点が定まり、どこまでも追っていくから。
そして海外旅行先でも少年はひとり歩き廻り、聖堂内へ。
そこで色々なものを見て、廻る。
解説してくれた見知らぬ男。
父親に発見されたときには、その男は何処にもいなかった。
その夜、乳歯が抜けた。


<仮名の作家>
作家M・Mをこよなく愛す。
新刊が出ればあちらこちらで買い求め40~50冊になったら
それを気付かれないように町のあちらこちらに置いて廻る。
M・Mの書いたものは全部、暗記している。
M・Mと会える読者の会に出席する。
そのたびに彼に質問し、彼が答える。
無言の合図を送り合い、愛を確かめ合う。


<盲腸線の秘密>
廃線の危機にある盲腸線を救おうとボクと曾祖父は毎日、電車に乗る。
乗るときは、ストーリーをつくる。
あるときはスパイ、あるときは政治家、元囚人、
それからただの幼子と、その子守りをしているだけの隠居老人として。


<口笛の上手な白雪姫>
小母さんは公衆浴場の一部分だった。
浴場の裏庭の小さな小屋に住み、子どもたちは
白雪姫が小人と暮らしていた小屋を連想した。
小母さんは、公衆浴場営業しているときは、女性がゆっくり入浴できるように
幼い子どもの世話をしていた。無愛想で華奢だけど
鳴いている彼らを落ち着かせることができた。
その武器は口笛。けれど大人たちの耳には届かない。



表題作もいいけれど、一番気に入ったのは
<かわいそうなこと>。
少年の考えるかわいそうなこと・・・・なるほどね~と思った。

小川さんの言葉遣いが好き。

                          ★★★★
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
mail
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4
7 8 10 12 13
14 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
メ-タ-
kyokoさんの読書メーター
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
[09/20 kyoko]
[05/23 のぶ]
[09/15 kyoko]
[09/14 ひろ]
[03/06 kyoko]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
kyoko
HP:
性別:
女性
自己紹介:
台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;

バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
フリーエリア

Copyright (c)本を片手に・・・ All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog  image by Night on the Planet  Template by tsukika

忍者ブログ [PR]