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読んだ本の感想あれこれ。
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585adbc2.jpg発行年月:2004年3月


わたしはひどいことをしました。神さまはわたしたちをおゆるしになるでしょうか----。

コウコは、寝たきりに近いおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。夜、水槽のある部屋で、おばあちゃんは不思議な反応を見せ、少女のような表情でコウコと話をするようになる。ある日、熱帯魚の水槽を見守る二人が目にしたものは----なぜ、こんなむごいことに。コウコの嘆きが、おばあちゃんの胸奥に眠る少女時代の切ない記憶を呼び起こす……。

                                           (新潮文庫HPより)

今日は、梨木さんずくし・・・笑

薄い本なので、アッと言う間に読み終えました。
寝たきりの殆ど喋らないおばあちゃん・さわこと孫のコウコの物語。

コウコは何歳だろ?進学校に通うとあるから高校生かな?
熱帯魚が欲しくて、やっと飼う事を許され、水槽に浄水のためのモ-タ-を取り付け、ネオンテトラとエンゼルフィッシュを飼い始める。
熱帯魚を飼う事に伴って、夜中のトイレ介助を申し出たコウコが、おばあちゃんの異変に気づく。
モ-タ-音がおばあちゃんを覚醒した?

おばあちゃんは昔、さわちゃんと呼ばれていた。
ミッション系の学校に通い・・・・ちょっと憧れていた同級生・コウちゃんと友達になりたいと思っていた。
でも、ある事がキッカケで相反する態度で接するようになってしまう。
それは苦い思い出。

そんな思い出話が現在の話と交互に語られる。

小さな水槽のなかで起こる事件。
それを通して、かつての自分の行いを思い出し、興奮するさわちゃん。

水槽のなかのことを世界に置き換え、それを見ているコウコを神に置き換えて語るさわちゃんの説は、なかなか面白かった。ミッション系の学校に通っていたからなのかもしれないけど、妙に説得力があって、ちょっと怖いかんじもしましたが惹かれるものもありました。

人って、自分が第三者的に見ている「悪」には憎悪感を抱くのに、自身の心のなかにある「悪」って物には案外、気づいていないのかもしれないな・・・。
なんて思いました。

短いお話なのに、とっても、ふか~い内容でした。

暫くこの梨木作品の余韻に浸っていたい。


★★★★★
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a631db60.jpg発行年月:2002年1月(単行本では1999年)


ここにはないなにか」を探そうとしないで。ここが、あなたの場所。

祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして----。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。


                                           (新潮文庫HPより)

先に読んだ「りかさん」の続編とかで、興味あり読みました。
りかさんは、蓉子の祖母が大事にしていた市松人形。
「りかさん」のなかでは、まだ小学生の蓉子と会話したり、人形なのに、意思をきちんと伝えていました。
今回もりかさんは登場するのですが、話しかけたりはしません。
ただ、存在感は常にあり、蓉子を含めて共同生活する4人の女性の中心にいるも居るかんじ。
いつか話したりするのかな?なんて少し期待しながら読みました。

「りかさん」で小学生だった蓉子も成長し、今は植物染料を考える会のメンバ-として活動中。
ほか3人の女性・与希子、紀久は美大生で
与希子は染織を、紀久はテキスタイルの図案を学んでいる。
そしてマ-ガレットはアメリカから鍼灸を学びに来ている。

性格は違っても、物の捉えかたというか、感性が似ているかんじ。
会話の内容が、なかなか高尚でちょっと難しいところもありましたが、そんな部分も好き。
そして物語のなかで四季折々の自然から受ける感情の変化を表現した描写も素敵でした。

例えば・・蓉子が染物工房の先生・柚木と染料となる柏の葉を採取に行き、
緑が茂る柏の木の群生のなかにいて・・・
「あんまり緑がいっぱいで、息苦しいような・・・・・」という場面。
その感情はちょっとわかる気がする!
そして目の前に風景が浮かんで来るようでした。

柏の葉が喪服の染料になるのは知らなかったぁ~。
「死者を悼む色」・・・・・なるほど、なるほど。

物語中、知らなかった事もいっぱい出て来て、メモを取りながら読みたくなるかんじ。

今回は喋らない、りかさんでしたが、そのル-ツのようなものも詳しく知れて、楽しかった。
ちょっと重いかんじの昔話も交えたり、人間の過去のル-ツを探ると新たな繋がりの事実も出てくるんだなぁ~。
今、近くにいる人も実は過去の何らかの出来事により、お互いがお互いを引き寄せていたりして・・・
なんてちょっと思ったりもしました。

「りかさん」とこの「からくりからくさ」暫く時間をおいて、また再読したい!!

以前読んだ「りかさん」は単行本ですが、文庫本には、更なる関連話が収録されているとか
なので、近いうちにそちらも是非、読まなきゃ!と思ってます。


★★★★★
5e6165e7.jpg発行年月:1999年12月

人形の名は りかさん
過去ある人形たちの声がきこえる。

ようこは自分の部屋に戻り箱を見た。お人形のおいてあった下には着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう1つ箱のようなものが入っている。開けると和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で、つぎのことが書いてあった。
『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主である私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それは、りかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにする責任があります』・・・・・・人形を幸せにする?・・・・・・どういうことだろうってようこは思った。どういうふうに?

                                     
  (本の帯文より)

雛人形に関係ある人形のお話。
物語はある日、ようこのおばあちゃん(お父さんのお母さん)から、お人形のりかさんが送られてくるところから始まる。
ようこは「リカちゃん人形のリカちゃん」が欲しいと言う意味でおばあちゃんにリカちゃんが欲しいと言ったのに・・・とがっかり。
でも、すぐに、りかさんがようこの大切な存在になってくる。

お人形には魂が込められているとかよく聞くけど、それを裏付けるような物語でもあります。

ようこの元に送られて来た、りかさんはおばあさんとの長い時間を供に過ごし、その時の記憶を持って、ようこにいろいろと話して聞かせます。
人形が喋るというとちょっと不気味な感じもするけど、ここではごく自然な成り行きなので、不気味さは不思議と感じなかった。

りかさんは、ほかの人形の生い立ちなども教えてくれる。

お友達の登美子ちゃんの家で何やら悲しそうなお人形・汐汲みが気になり、真相を探るとずっと汐汲みが守ってきたアビゲイルという西洋人形の存在を知る。
歴史的な意味のあるアビゲイルの物語は切なかった。

日本にある使命を持って渡ってきたアビゲイルなのに、戦争によって酷い体験をした気の毒なお人形。
物は言わないけど、さぞ辛かったでしょう。

りかさんとようこによって、魂は少し穏やかなものになったかな?


ようこのおばあさんが話す事もとても心に沁みるものでした。
例えば・・・人形は吸い取り紙のように感情の濁りの部分を吸い取っていく。その技術が未熟だと人間の生気まで吸い取ったり、濁りの部分だけを持ち主に残してどうしようもない根性悪にしてしまうことがある。とか

人形遊びをしないで大きくなった女の子は癇が強すぎて自分でも大変。積み重ねてきた思いがその人を蝕んでいく。など


この本は図書館の児童書コ-ナ-で見つけましたが、大人が読む方が理解し易い本かも?と思いました。
とても素敵な本でした。

文庫本では、また違う話が収録されているそうなので、そちらも読んでみたいな。

梨木さんの本は(わたしにとっては)ハズレがないな。

★★★★★

fb142e3a.jpg発行年月:2004年1月


ジャングルでは毎日たくさんの命が生まれ、伊久留ために食べ、食べられ、それら全てが夢である如くやがては皆死んでいく。そのワニは傲慢でジャングル一の嫌われ者。仲間を食べ兄弟さえ食べ生きてきた。そしてある日悲劇的とも言える最期を迎える。自己中心と他者尊重の境界を問う一冊。密度ある絵で。

                     
(理論社HPより)


梨木さんの絵本は、やはり素晴らしい。

過去に読んだ絵本は「蟹塚縁起」 「ペンキや」 「マジョモリ」ですが、この「ワニ」が一番、哲学的かも。
絵本というと、幼児~児童のものと思いますが、これらは、大人が読む絵本かもしれない。
絵が素晴らしいので、勿論、子どもが見ても楽しめるけど・・・。

この「ワニ」に出てくるのは、ジャングルの野生に生きる者たちなので、弱肉強食の様子も描かれています。
「わ~かわいそう」と思いますが、自然とはそういうものなんだと気付かされます。

そして、この主人公のワニは、兄弟までを食べてしまう。
人間からしたら・・「なにも兄弟まで食べなくても~」と思いますが、このワニにとってそういう考え方はなく、自分と他者でしか物を見ず、兄弟たちはその他者に当たる。
「ナカマ」という認識はない。

カメレオンに会って「俺たちは仲間だぞ」と言われ、なぜ?と問い、その答えから自分がどういう種類の生き物かを知り戸惑うものの結局、カメレオンも飲み込む。

そして、密かに自分が「親友」と思っているライオンとの対峙の場面。
最期のときにワニが「これは正しいことかもしれない」と思うのは、ちょっと切ないけれど、これも自然の摂理ということでしょう。

淡々とジャングルの様子を物語にしながら、ワニの一生を通じていろいろな事を考えされてくれた。

う~ん、深い話だ・・・・。

絵もいい!リアルで、この文にはとても合っている!

★★★★
c1c16046.jpg発行年月:2003年5月(第2刷)


春のマジョモリは花が満開。ある朝つばきは森から届いた招待状を手に初めて森の奥へ。そこで会ったハナさんとノギクやサクラのおいしいお茶のティ-パ-ティ-。後からもう一人来た女の子とはどこかで会ったことがあるけれど思い出せない・・・・かけがえのない“小さな女の子の時間”をくっきりと描く絵本。


    
                   (理論社HPより)

梨木さんの絵本、読むのは三冊目。
これは可愛らしいお話でした。

代々、御陵の横にある神社の神官を務める家の娘・つばきにある日、届いた手紙。

「まじょもりへ ごしょうたい」

そして、つばきは、普段子どもは入ってはいけないとされている神聖な場所である御陵へ。
子ども達はそこのことを「もり」と呼んでいる。

そこで出会った、ハナさんとの楽しい一時。
女の子ならば、ウキウキしちゃう場面(^^)。

御神饌をハナさんから出されて・・・新しい食べ方を教えるつばき。
ここでいう御神饌って、落雁のようなものかな?
本当にその食べ方は美味しいのかなぁ?

後から、来た女の子・・・・・なるほど、そういうことね!

ほのぼのしてる優しいお話ですが、御陵のなかのお話なので、高貴なかんじもします。

絵もまたまた素敵!
早川さんの絵は優しくて、梨木さんの文章によく合います♪

★★★★★
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