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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2015年8月


 ある晴れた夏の日、わたしが、湖に浮かべたボートの上で出会ったのは、
ふわふわの毛につつまれた、二本足で歩くハリネズミのようなふしぎな生きもの、
「ヤービ」でした。

                   (福音館書店HPより)




梨木さんの新刊は、可愛らしいお話でした♪


人間(おおきい人)とヤービが出会う場面が素敵。
ミルクキャンディーを刺し出したら、ヤービは受け取り、家に持ち帰る。
ママヤービがそれでミルクシロップを作ってくれた。

それは、誰かを殺した食べ物を受け付けなくなったヤービのいとこのセジロを
救う。
ミルクは誰も殺していない食べ物だから・・・。


ヤービたちクーイ族のほかに、人間を小さくしたような姿のトリカたち
ベック族も出てくる。

自然のなかで、まだ人間が知らない生き物たちがこうして生活していると
想像するだけで楽しい。


小沢さんの絵も素敵。

大人も楽しめる可愛い本でした♪
続編もあるかんじなので、期待して待ちたいと思います。


                      ★★★★★
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発行年月:2014年9月

胸奥の深い森へと還って行く。見失っていた自分に立ち返るために……。

蘇りの水と水銀を司る神霊に守られて吉野の地に生きる草壁皇子の物語――歴史に材をとった中篇「丹生都比売」と、「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」「コート」「夏の朝」「ハクガン異聞」、1994年から2011年の8篇の作品を収録する、初めての作品集。しずかに澄みわたる、梨木香歩の小説世界

                       (新潮社HPより)


どれも素晴らしいお話。
梨木さんらしいちょっと独特な不思議な空間に連れて行かれるような気持ちに
させられて、それがすごく心地ちいいのです!!
ああ、さすが梨木さんだぁ~と思わせてくれる作品集でした!!


表題作の「丹生都比売」だけやや長めのお話。

時は1300年以上前の壬申の乱のころのお話。
大海人皇子・おおあまのおうじ(天武天皇)と
鸕野讚良皇女・うののさららのひめみこ(持統天皇)の子どもである草壁皇子の物語。
 心優しき皇子が戦乱の世に巻き込まれる様子はなんだか痛々しい思いがしました。

このお話だけでも読み応え十分!
 

他は短いお話。
特に好きだったのが2つ。

「コート」
2つ違いの姉と幼い時からずっと冬になるとお揃いのピンクのコートを母親が用意してあり着せられていた。
母は9着のサイズ違いの同じ型のコートを買ってあったから。
でも16歳の姉は、自分好みのコートを買い、わたしはおさがりでないコートを着る。

妹が姉を想う気持ちが切なく温かかった。



「夏の朝」
6歳の誕生日に特別な球根(親指姫の生まれる球根)が欲しいとねだるが
代わりにユリの球根をお花屋さんからプレゼントとして貰った夏ちゃん。
なかから女の子が生まれたので、春ちゃんと名付ける。

子どもの個性を大事に見守るって大事だな・・・・。
夏ちゃんが可愛い♪
お母さんも一時は悩んだと思うけれど、見守る姿勢は素晴らしい!


梨木さんのあとがきも良かった!
今度は新作の長編を読みたいな。


                            ★★★★★




発行年月:2014年4月



 昭和の初め,南九州の離島(遅島)に,人文地理学の研究者,秋野が調査にやって来た.かつて修験道の霊山があった,山がちで,雪すら降るその島は,自然が豊かで変化に富み,彼は惹きつけられて行く.50年後,不思議な縁に導かれ,秋野は再び島を訪れる──.歩き続けること,見つめ続けることによってしか,姿を現さない真実がある.著者渾身の書き下ろし小説.


                    (岩波書店HPより)



ロマン溢れる物語でした。
南九州の離島・遅島に調査のため滞在している秋野。
亡くなった主任教授がやり残した調査を引き継ぐため。
ウネ婆さんと嘉助爺さん宅に居候させて貰い、生活を共にする。
なんとも情緒たっぷりの暮らしぶり。
船を漕いで湯治場に仲良く向かう二人を見送る秋野の場面は幻想的なかんじだった。


居候させて貰っている地域は龍目蓋(たつのまぶた)という場所。
そこから、毎日調査に出かける秋野。
影吹で、西洋館を見つける。ウネ婆さんの話では山根さんという人が住むという。
後日、山根さんを訪ね、話が弾み、いつでも泊まって良いと言う言葉に甘え
そこから出かけた方が近い場所の調査にはそこを拠点とさせてもらう。

島の歴史をあれこれ知る。
かつては、寺院があり、修験道の島でもあったという。
しかし、明治の政府の神仏分離宣言を機に寺院は一瞬で壊されてしまった。
神道を国体の基盤とするため神と仏が融合したものは引き離すこととなり
長年、仏教より下に見られていた神道の関係者がここぞとばかりに暴走し潰したとか。
また当時は民間宗教=モノミミも島に広がっていて、それらも排除の対象にされた。

西洋館に住む山根さんの父親は寺院で修業する僧侶だった為、その混乱時島を脱出したという。
そして父親が持っていたという寺院の見取り図を見せてもらう。



昔そこで暮らしていた人たちの生活の様子を、人や残されたものから探るって面白そう。
人文地理学って興味あるなぁ~。

ウネ婆さんが語る雨坊主の話もちょっと怖いけれど面白かったし。


波音(はと)に出かけそこに住む梶井さんと知り合ったことも調査をしていく上で
とても大事な出会いだった。
梶井さんと共に歩き、語らう場面も素敵だった。


そんな素晴らしい夢のようだった隠島での生活から50年後に終盤切り替わる。
秋野が島を訪れたのは昭和初期。
その50年の間には、戦争があって、多くのものをなくす。
なんとも辛い。戦争はやっぱり得るものがない。

秋野はその間、結婚し、子どもが出来た。
そして息子が偶然、隠島の開発事業に関わっていると知り、島を50年ぶりに訪ねる。


自然を壊し近代化していくのはある程度必要なことかもしれないけれど
なんだか空しい。
壊すのなら、そこがどんな土地だったのか、残すものが必要かも。
読みながら、いろいろ考えさせられた。

梨木さんの物語には、植物や生物が多く登場する。
それを後で調べるのも楽しい。
今回気になってどんな植物か調べたのが以下の2つ。


 
ミツガクワク・・・氷河期の生き残りかと言われる植物だとか。

 
ハマカンゾウ・・・ヤギが食べつくしてしまったと書かれていた植物。
そんなに美味しいんだろか??


ああ、美しく儚い夢のようなお話でした。


                         ★★★★★




発行年月:2013年10月


 ここは天に近い場所なのだ——。『家守綺譚』以後を描く、心の冒険の物語。

亡き友の生家の守(もり)を託されている駆け出し文士、綿貫征四郎。行方知れずになって半年余りが経つ愛犬ゴローの目撃情報に基づき、家も原稿もほっぽり出して鈴鹿山中に分け入った綿貫を瞠目させたもの。それは、自然の猛威には抗わぬが背筋を伸ばし、冬には冬を、夏には夏を生きる姿だった。人びとも、人にあらざる者たちも……。

                   (新潮社HPより)


途中までは、植物に纏わる話が短編連作のように続く。
が・・・後半は、居なくなった愛犬・ゴローを鈴鹿の山のなかで見たと友人であり
菌類の研究者である南川から聞く。
そして、その山には、イワナの夫婦が営む宿があるとか?

鈴鹿の山へ出かける綿貫征四郎。
前作『家守奇譚』では、家のなかや庭くらいしか動きがなかったインドアの綿貫が
今回は、山のなかを歩き廻る、アウトドアの物語。


出会う人々(人とは限らないけれど・・・)も沢山。
掛け軸から度々、登場の高堂の出番は少なく最初は寂しいなぁ~なんて思いましたが
山のなかで出会う者たちとのやりとりが愉快。

人のようで、河童だったり、イワナだったり・・・・。
周りの人たちもそんな人だか、何者かよくわからない者たちとの共存を自然に
受け入れて生活している様が良い。

しかし、ゴローは山でどんなお役目をしていたのでしょうか??

表題の「冬虫夏草」は、サナギダケの話で出てくる。
南川が綿貫に説明した話をここに書きとめておこう。

サナギダケ=冬場、幼虫のうちに糸状菌の一種に感染し、菌糸が内部で増殖し
ちょうど、サナギになったときに体表を突き破って子実体が外に現れる。
根っこはサナギに繋がった状態。


実際、そんな不思議な状態の植物があるのかな?
後で調べてみよう。


今回も、多くの植物の話、勉強になりました。

物語も御伽噺と現実の中間のような、なんとも不思議なお話ですが
梨木さんの文章は、やはり読んでいて心地良かった!!


                           ★★★★★




21NsvfbmLrL__SL500_AA300_.jpg 発行年月:2013年3月


鳥のように、雲のように、その土地を辿る。ゆかしい地名に心惹かれる----。

作家の胸奥の「ものがたり」がはぐくまれる場所に、滋養を与える旅の記憶。49の土地の来歴を綴り重ねた葉篇随筆。読む者の心も、はるばると時を超える。旅に持ち歩く「薬草袋」のなかの、いい匂いのハーブのブーケや、愛着のある思い出のメモの切れ端のような……日常を生きるときの常備薬ともなり、魂を活性化する、軽やかな愛蔵本。


                       (新潮社HPより)


今回は、物語でなく地名について書いたエッセイ。
この表題の鳥と雲はなんなくわかるけれど、薬草袋とは?と思ったのですが、
最初の「タイトルのこと」を読んで納得しました!


登場する地名は49。
知らない地名も沢山。
冒頭の地図で確認しながら、読みました。
ちょっと社会科みたいに勉強するかんじで楽しかった。

住んでいる静岡県の地名は1つも登場せず、少し残念でしたが
お隣の愛知県の<蒲郡>が登場!
でも、この地名、南アルプス市と同じように「新しく生まれた地名」の括りで出てきたのが意外でした。
明治11年に蒲形村と西之郡村が合併して蒲郡村となったとか。

こうして読んでみると、近くの町名とかもその由来がちょっと気になってくるなぁ~。

タイトルの下に描かれていた小さな挿画も素敵でした♪


★★★★★
 

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