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読んだ本の感想あれこれ。
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41g7AMUpOpL__SL500_AA300_.jpg 発行年月:2012年9月


祖国への変わらぬ熱情を静かに燃やし続けてきた人々の魂に触れた紀行。

エストニアの人々が歌う「我が祖国」とは、生れた土地のこと。そして、それは地球そのもの――スカンジナビア半島の対岸、バルト海に面したエストニア。首都タリンから、古都タルトゥ、オテパーの森、バルト海に囲まれた島々へ――端正な街並みと緑深い森、他国による長い被支配の歴史を持つこの国への九日間の旅の記録。


                                          (新潮社HPより)



あまり馴染みのないエストニアの紀行文。
バルト三国のひとつとしてソ連から独立した国?くらいの知識しかなかったけれど
紀行文を読みながら、自然豊かな国で暮らす人々の暮らしぶりがとても素敵に思えた。

梨木さんはコウノトリに出会えることを期待していたのですが・・・・
そこに居た形跡だけで実際に姿を見ることはなかったのが少し残念。
写真で見ると、びっくりするようなところに巣をつくるのが面白かった!

エストニアの、歴史をみると・・・
ドイツやデンマ-ク、スウェ-デン、ロシア、ソ連の支配下に置かれていた国。
ロシア軍が攻めて来る恐怖に怯えながら暮らした時代、地下にトンネルを掘り巨大な迷路のような
地下通路を40年かけて造ったりしたそうだ。
写真で見ると地上の道と変わらないかんじ。

唯一の良き時代はスウェ-デンによる統治下時代だったそう。
その時代に築いたものが今も残っているのは良かった!

梨木さんたち日本人に対しては友好的だったのも嬉しい。

お年寄りたちの描写がなんだかすごく可愛らしい。
蛭を使った民間療法をする、ちょっとエッチなおじいさんの話は愉快だったなぁ~。
ちょっと不思議現象の起きたホテルでの話も興味深かった。

本の中ほどにある写真集もとても綺麗。
同行した木寺紀雄さんの写真。



全く知らなかったエストニアのことを少し知ることが出来て
いろいろと楽しめた1冊でした♪


★★★★★
 
 
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41V9ckahQhL__SX230_.jpg   発行年月:2012年4月


   強くたくましく人生を切り開いていくシングルマザーのビルドゥングロマン!




   珊瑚、21歳。生まれたばかりの赤ちゃん雪を抱え、
   途方に暮れていたところ、様々な人との出逢いや助けに支えられ、
   心にも体にもやさしい、惣菜カフェをオープンさせることになる……。


                                         (角川書店HPより)


変わったタイトルだな・・・と思ったら登場人物の名前だったんですね~。

山野珊瑚は家庭の金銭的事情で高校を中退。
母親とは別れて暮らし、20歳で結婚するけど、すぐに離婚。

子ども・雪は知り合いの助産婦見習いの友達・那美に取り上げてもらった。

生まれたばかりの雪と共に食べていくためには働かなくてはならない。
どうしたらいい?そんな状況で見つけた「赤ちゃん、お預かりします」の貼り紙。
貼り紙の主は、薮内くらら。
珊瑚の救世主とも言うべき人物になる。

くららさんの作る料理が全部おいしそうだった~!
美味しい料理は、人を前向きな気持ちにさせてくれるんだなぁ~とつくづく思った!

赤ちゃんの雪を、くららに預けて、以前勤めていたパン屋さんで働く珊瑚。
しかし、パン屋さん夫妻は近いうちに外国に行くという。
さて、どうする?

珊瑚は、パン屋さんでの日々とくららの作る料理やいろいろな料理法を聞くうちに自分でもからだに良い「食」を提供したいと思い、カフェ&お惣菜のお店を開くことに決める。


オ-プンまで大変なこと。
経営面(資金繰り)のことやらカフェメニュ-についてなどを乗り越えて無事にオ-プン。
オ-プンしてからも大変なことだらけだけど、周りの人の助けをかりながら、乗り越えていけそう。


単なるサクセススト-リ-に終わってないところは、さすが、梨木さん。
珊瑚と母親との関係。
珊瑚と元・夫とその母親との関係など、いろいろな難しい感情面についても触れながら
人は一人では生きていけないし、人に助けてもらう為にプライドもときには捨てなきゃ生きて行かれないんだな・・・・


そして、食を提供するって母親なら毎日、子どもたちにしていることだけど、改めて、とっても大事なことなんだから毎日、手抜きはしても愛情は込めなきゃなぁ~なんて思ったりもした。



あと、こんな素敵なお惣菜カフェが実在したら、いいなぁ~なんて。

★★★★★
 
41yuTZrCZpL__SL500_AA300_.jpg発行年月:2011年4月

春の朝、土壌生物を調べに行った近所の公園で、
叔父のノボちゃんにばったり会った。
そこから思いもよらぬ一日がはじまり……。
少年の日の感情と思考を、清々しい空気の中に描く、新・青春小説。



                      (理論社HPより)


読むたびに思うけど・・・梨木さんって、やっぱり凄い!!

物語の主人公・コペル君は14歳。
日本人だけど、呼び名はコペル(名前は出てきたかなぁ~?)。

母親が大学で教鞭をとっていて、少し離れた地に転勤になってしまい、父親が母親の体調を心配しながら度々、その地を訪ねるいうち、いつしか母親の住む地に一緒に行ってしまった。
なので、一人暮らし。
とはいえ、すぐ近くに叔父が居て、度々様子を見に来てくれる。

叔父はノボちゃん。染織家。
そしてコペルには愛犬のブラキ氏がいる。
ブラキ氏はゴ-ルデンリトリバ-で本当の名前はブラキッシュだけどいつしか省略してブラキ氏となった。

梨木さんといえば、いままでの作品の多くに植物が出てきたけど、ここでも染織家のノボちゃんが草木から染料の素を採取する場面があるので、いろいろな植物、または生物が出て来る。

コペル君の考えることが実に哲学的。
そして会話するノボちゃんとの話のなかに、実に深いものが沢山。

人が生きていくなかで考えてみなくちゃいけないことをあれこれ提起してくれる。

コペルの友人、ユ-ジン君をノボちゃんと共に訪ねた先でも多くのことが問題提起される。
ユ-ジンは、暫く前から学校に来ていない。
その原因はなんだろ?そのわけは、ちゃんと説明されている。
なるほど・・・・・そういう辛いことがあったんだ。


ユ-ジンもまたコペルと同様一人暮らしという設定。
それだけ聞くと不自然だなと思うけど、ユ-ジンの家庭環境を考えたら、別に不自然ではない。

梨木さんの物語には、不自然さを感じない計算された設定がちゃんとされているのも凄いと思う。

ユ-ジンの亡くなった祖母の話も良かった。

表題の「僕は、そして僕たちはどう生きるか」の言葉は物語中に出てくる言葉だけど
それは、洞穴に潜んで住んでいた男性が言った言葉。
その人は、召集令状が来たが、それから逃れていた。

そして洞窟に一人潜んで何を考えていたか?というと「僕は、そして僕たちは・・・・・」ということをずっと考えていたと。


召集令状が来たら、国のため戦地に向かうことが当たり前だった時代、それをしながら生き延びたその男の人の気持ちをコペルたちが考える場面は、一緒に考えさせられた。

そして物語の全体を通して、この本で何を言いたかったのか?ということが最後にキチンと示されていた。

本文最後の方を抜粋しておこう。

・・・・・人間には、やっぱり群れが必要なんだって、僕はしみじみ思う。・・・・強制や糾弾のない、許し合える、ゆるやかで温かい絆の群れが。人が一人になることも了解してくれる、離れていくことも認めてくれる、けど、いつでも迎えてくれる、そんな「いい加減」な群れ・・・・・・・・・
そういう「群れの体温」みたいなものを必要としている人に、いざ、出会ったら、ときを逸せず、すぐさま、この言葉をいう力を、自分につけるために、僕は考え続け生きていく。



長女が先にこの本を読み
「すごい!すごく良かった!!」と言っていて
そりゃ、梨木さんの本だから良いでしょうと応えたけど・・・・

これは最高だと読んで思った。

★5つじゃ足りないくらいだけど・・・



 

★★★★★
 


 
57930434.jpeg   発行年月:2010年12月


   暮しの中で遭遇する事象を個人的かつ
   社会的に映し出したエッセイ28編を収録。
   「憤ったり寂しかったり納得したり、何かを愛しんだり
   発見して感激したり嬉しくなったり」──あとがきより。



                              (文化出版局HPより)


梨木さんの物語が好きで、幾つか読んでいます。
エッセイは今回初めてでしたが、これがまた良い!

日々の暮らしの何気ないものたちに、優しくて鋭い視点で接する様に感動しました。
今まで読んだ物語から、きっと植物とか自然のものに愛着を感じていらっしゃる方なんだろうな~と想像していましたが、ここでも植物の話がやはり出て来て、わたしの想像は当たっていた!と嬉しくなった。

でも、植物以外のものとの関わり方も面白かった。
見知らぬ人たちとの関わり方がユニ-ク。

「見知らぬ人に声をかける」での言葉・・・見知らぬ人と、一瞬でも楽しい会話が交わせたら、それは二人の勝利である。
なるほどね・・・・ユニ-クだけど、とても良い考え方だ!と心のなかで拍手!

「プラスチック膜を破って」では
電車待ちをする客たちがアナウンスの何かいつもと違う言葉に同じように微笑む場面や電車内で1匹の蚊を次々に手で仕留めようとする様は、まさに各自がプラスチック膜を破った瞬間とか。
その表現が巧い!

そして、物にたいする考え方もユニ-クでした。

旧式のカ-ナビに翻弄されることが度々あっても梨木さんは寛大な気持ちで接している。
カ-ナビの音声が女性だから彼女と呼んでいるし(笑)。
そしてこの話の題が・・・「個性的なリ-ダ-と付き合う」。
う~ん、タイトルのつけ方にもセンスあり!!

何から何まで、いちいち感心しながら読みました。

やはり梨木さんは、わたしにとって一番の作家さんだ!と確信したエッセイでした♪♪
文庫が出たら買って手元に置きたい!


★★★★★

 
93294247.jpg発行年月:2010年10月

物語の水源へ

緑溢れる武蔵野に老いた犬と住む棚。
アフリカ取材の話が来た頃から、不思議な符合が起こりはじめる。
そしてアフリカで彼女が見つけたものとは。
物語創生の物語。

                         (筑摩書房HPより)
  


生と死を考える、梨木さんらしい不思議な物語でした。
主人公の山本 翠は、ライタ-で仕事上の名前を棚(たな)と言う。

愛犬マ-スに異変が起き、獣医に「子宮に腫瘍があり手術が必要」と言われる。
腫瘍はどうしてできるのか?を問う棚に
「体のなかの要らないものがそうなるのかも」と言う医師。

過去に避妊手術を受けさせたことがあり、子どもを一度も宿すことなく存在する子宮が不要なものを
腫瘍に変えたのか?とも思う棚。
こういう発想は、なるほど~と思いました。女性ならではの考え方かも。
マ-スは術後は元気になりホッとしました。


そして、ライタ-としての仕事でアフリカに向かう棚。
物語はアフリカに飛びます。
ライタ-としての仕事とともに最近亡くなった知り合いの片山がウガンダで呪医について学んでいたことに興味を持ち、彼の足跡も追う。

この辺りから不思議な話にどんどん突入。
呪医っていう響きも何か怪しいかんじ。
でも、全く理解出来ない世界ではないな。と読みながら感じた。

科学ではうまく証明出来ないものが、人の生死には存在しそうだと、思っているから・・・。

棚がアフリカで感じたことを基にライタ-として書いた文章が最後
「ピスタチオ---------死者の眠りのために」として30ペ-ジほどあります。
その文章が良かった!


★★★
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