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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2012年12月


 時は流れ、ゆらぎ、やがて跡形もなく消える。2011年度ブッカー賞受賞作。

歴史とは、不完全な記憶と文書の不備から生まれる確信である――。二十代で自殺した親友の日記が、老年を迎えた男の手に突然託される。それは、別れた恋人の母親の遺言だった。男は二十代の記憶を懸命に探りつつ、かつての恋人を探しあてるが……。記憶の嘘が存在にゆすぶりをかけるさまをスリリングに描くバーンズの新境地。

                     (新潮社HPより)



主人公はアントニー・ウエブスター(通称・トニー)
60台半ばで、一人暮らしだけど、離婚した妻・マーガレットとの今も連絡を取り合い
娘家族とも時々、交流を持ちながら、穏やかに暮らしている。


そんな彼の高校時代の話から20代前半の交友関係を前半では語る。
仲の良い友達コリン・アレックスに加え、途中から転校してきた頭脳明晰なエイドリアンが
仲間に加わった。
そして、大学に進学し、トニーは、ベロニカと知り合い、親密な関係になる。
一度だけ彼女の家に泊まりに行き、彼女の家族と会ったが、そこでは
ベロニカの兄を筆頭に家族には冷ややかな態度を取られやや居心地が悪い思いをした。
しかし、彼女の母親からは温かい気持ちを感じた。

その後、ベロニカとは別れたが、すぐに親友・エイドリアンからの手紙でベロニカと
付き合っているということを知らされる。
嫉妬?悪意?複雑な思いに駆られ、2人宛に出した手紙が後半出てくる。

そして、親友・アレックスからエイドリアンが自殺したという手紙。

そんな事から40年過ぎた、ある日。
トニー宛にベロニカの母親から500ポインドとエイドリアンの日記を託すという文書が
届く。
なぜ???
ベロニカの母親には、若い時、ただ1度しか会っていない。
親友エイドリアンの日記を何故、ベロニカの母が??

謎が深まります。
そして、トニーは、その謎を解くためにベロニカとの接触を試み、ついに会って話しを
聞くことが出来る。



トニーが抱く謎は、読み手にも大いに真相を知りたい謎。

そして段々と分かってくること。
過去の事柄。
語り手のトニーの一方的、思い込み。
若い頃の無神経さにトニー自身が苦しむこととなる。


最後に明かされた事実には、なんとも複雑な気持ちになりました。
エイドリアンの自殺の真相は想像するしかないけれど・・・・
頭脳明晰ゆえに、色々と思い悩んだんだろうか?

なかなか深い話でした。

離婚しちゃった元妻・マーガレットに好感が持てました。
トニーはマーガレットをこれからも何かにつけ精神的に頼るのかな?


                         ★★★★
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発行年月:2004年11月

デビュー作がブッカー賞候補に。サマセット・モーム賞、ベティ・トラクス賞受賞の傑作長篇。

イングランド北部のある通りで、夏の最後の一日が始まる。夕刻に起こる凶事を誰ひとり知る由もないまま――。通りの住人たちのいつもと変わらない一日が事細かに記され、そこに、住人の一人だった女の子の三年後の日々が撚りあわされてゆく。無名の人々の生と死を、斬新な文体と恐るべき完成度で結晶させた現代の聖物語。

                    (新潮社HPより)


とある通りに暮らす人々の日常が、時間を追って語られる。
どこかで人々をじ~っと観察しながらいる感じ。
人々が普通の日常を送ったある日の夕方、何らかのよくない事がその通りのすぐそばで
起きる。
何が起きたのか?知らされず・・・・終盤まで。
よくない何かが起きても、その後、再び人々はいつも通りの日常を送り
その様子がまた詳細に語られる。

そんななか、通りの22番地にかって住んでいた女の子の、そのよくない出来事の
3年後の日常が語られる。
今は別の場所で暮らすその女の子。
かつて通りの18番地に住むドライアイの男の子・マイケルと再会し、自分の今の悩みを打ち明ける。
家族にもまだ話せていない悩み。
マイケルの助けをかりて、両親にあることを告げに行く。

通りには双子が2組?
そして・・・・最後、また新たな双子の誕生!

3年前に起きたよくない出来事も人々の起こした奇跡によって事なきを得ていた。
その奇跡と言っていい事実は誰にも気づかれないこと。

なるほどね。。。。

今、普通に生活している自分も気づかないけれど、多くのいろいろな奇跡によって
成り立っている事なのかもしれないなぁ~。


なかなか深い話でした!!

読むとタイトルの意味に納得です!


                           ★★★★



発行年月:2013年3月

もしもまたホロコーストが起こったら、誰があなたを匿ってくれるでしょう――。

フロリダの旧友夫妻を訪ねてきたイスラエルのユダヤ教正統派夫妻。うちとけた四人は、酒を飲み、マリファナまで回してすっかりハイに。そして妻たちが高校時代にやっていた「アンネ・フランク・ゲーム」を始める。無邪気なゲームがあらわにする、のぞいてはいけなかった夫婦の深淵。ユダヤ人を描いて人間の普遍を描きだす、傑作短篇集。【フランク・オコナー国際短篇賞受賞作】

                       (新潮社HPより)

 



表題作を含む8つの短編から成る書。

最初が表題作「アンネ・フランクについて語るときに僕たちが語ること」
ユダヤ人の迫害の話は知っているけれど、それを今も引き継いで生きている
ユダヤ人の存在については、考えたことがなかった。

表題作は、そんなユダヤ人の心のなかに潜む不安を知る。
再びホロコ-ストの時代になったとしたら、自分はどうする?
ユダヤ人じゃない人はユダヤ人を匿うことが出来るだろうか?
二組の夫婦がそんな話に及び、自分だったら、どうするか?と自然と考えてしまう作品。


他の7編もユダヤ人が主人公。
ユ-モアを交えたものもあるけれど、ブラックが効いているかんじ。

現代に生きるユダヤ人は、ずっと心の中にホロコ-ストの闇を抱えているのかな?
日本人としては、想像するに余りある出来事だけれど、
全く知らない民族のことを学ぶには、とても興味深い書であった。


読むのに正直、時間がかかるし、理解し難い部分もあるけれど
こういう外国人の書物を読むことも大切だと感じた。


                            ★★★






発行年月:2013年3月

小さな嘘が照らし出す、かけがえのない人への秘められた思い。十年ぶりの短篇集。

避暑地で出会った男女。疎遠だった父と息子。癌を患う元大学教授。人気女性作家とその夫。老女とかつての恋人。機内で隣り合わせ、奇妙な身の上を語り続ける男――。ふとしたはずみに小さな嘘が明らかになるとき、秘められた思いがあふれ出し、人と人との関係が姿を変える。ベストセラー『朗読者』の著者による、七つの物語

                    (新潮社HPより)




7つの短編集。
それぞれ、読んだあと余韻を残すような物語でさすがシュリンク!と思った。


<シ-ズン・オフ>
オ-ケストラでフル-トを演奏しているリチャ-ドは、シ-ズンオフの
海辺のペンションに宿泊する。
そこでスーザンに会う。
彼女は、そのペンション近くの屋敷に滞在中という。
2人は恋に落ちるが、ペンション経営の夫妻からス-ザンは自分とは違う
裕福な暮らしをしている人で、安アパ-トで暮らす自分とは雲泥の差の
環境にいる人だと知る。


<バ-デン・バ-デンの夜>
恋人のアンには内緒で、女友達・テレ-ゼと自分の書いた戯曲の初演を見に行き、
共にホテルで一夜を過ごす。が・・・2人の間にはその夜、何もなかった。
しかし、アンにそのことがバレ、何もなかったことを告げるが「嘘つき」と
言われてしまう。やけになり、別の女性一夜を共にし、関係を持ち
テレ-ゼとは一緒に寝たと嘘をつく。するとアンは、テレ-ゼに確認して
嘘じゃなかったことがわかったと言う。


<森のなかの家>
作家夫婦は半年前に森のなかの家に引っ越してきた。
今は、妻の作家としてのキャリアは上がり、夫の方は下り坂。
もうすぐ妻の書いた作品が全米図書賞を受賞しそうだというとき
夫は家の全ての通信手段を意図的に絶つ。



<真夜中の他人>
飛行機で隣になった男性から話しかけられる。
夜だから、寝たい気持ちもあったが、なんとなく話に付き合うが
男の話は次々に「え?ほんと?」という内容に。


<最後の夏>
末期癌を患っている男。
もういっその事、楽に死のうと安楽死の準備をしながら
一族と親友を別荘に集め、最後にみなと楽しい時間を過ごし死のうと
お膳たてをするけれど・・・・


<リュ-ゲン島のヨハン・セバスチャン・バッハ>
父親とバッハの音楽フェスティバルに出かける息子。
父親とは一度も話しあったことがなく、父親のことが全く理解できない。
この機会に父親と話し彼を理解しようと思うのだが・・・
会話も途切れ途切れ。
大好きなバッハのことはよく語る父。
しかし、やはり父の心のうちはよくわからない。
けれど・・・初めて父の涙をみる。


<南への旅>
施設で暮らす年老いた女性。
子ども4人と孫たちは、みなそれぞれ立派に成長しているけれど
あるときから、愛情を感じることが出来なくなっていた。
誕生日には皆が集まり祝ってくれた。
そこでふと孫が口にした別れた夫の、後の妻のこと。
その場が嫌な雰囲気になり誕生会は終わる。
翌日、熱を出すと孫のエミリア(大学生)が見舞いに来てくれる。
そして、エミリアに一緒に南への旅をしてほしいと頼み
2人は南へ。
かつての恋人との思い出の地。
そのことを話すとエミリアはそのかつての恋人と再会の機会を作る。
捨てられたと言って来たけれど、本当は自分が捨てたんだと
そのときの気持ちを思い出す。


どの話も、主人公たちの気持ちが痛いほど伝わって来て、切ないような
寂しいような複雑な気持ちを共感しました。
本当に心理描写に長けた作家さんだと思います。

嘘と言っても、いろいろ。
自分を守るためにそう信じ込んでいるものもあったし・・・・


映画化されるという「週末」、楽しみです!
近くの映画館で観られるかなぁ~?


                          ★★★★★

51eqkiPzO2L__SL500_AA300_.jpg発行年月:2012年10月


きっと大丈夫。運命は私たちを脅かすことはあっても本当の不幸からは守ってくれるはずだから。

ワロージャは戦地から、サーシャはモスクワから、初めて結ばれた夏の日の思い出、戦場の過酷な日常、愛しているのに分かりあえない家族について綴った。ワロージャの戦死の知らせを受け取った後も、時代も場所も超えて手紙は続く。二人はそれぞれ別の時代を生きている、再び出会う日まで。ロシア・ブッカー賞作家の最新長編。


                                         (新潮社HPより)



不思議な文通形式の物語。

ワロ-ジャは、1900年の中国でロシア兵として義和団事件の鎮圧に参加している。
サ-シャは、現在のモスクワに住んでいる。

しかし、2人はかつて恋人だった。
手紙にもそれぞれの2人で過ごした思い出の出来事を書いている。

ワロ-ジャは戦地で、毎日仲間が死んだり、怪我をしたり自分もいつおなじ様な目に
遭うかわからない状態で必死に生きている。
生きていることを確認するためにもサ-シャへの手紙を書き続ける。
戦地の惨いことも沢山書かれるけれど、生きたい!
再びサ-シャに会うために・・・。


一方のサ-シャは、平和なモスクワで暮らしていて日常のあれこれを書く。
そして、妻と離婚した男と結婚。
その男の元妻や娘のことも手紙に書かれる。
サ-シャはやがて妊娠するが、流産してしまう。



2人の手紙は交互に出てくるけれど、途中から、相手の手紙はちゃんとお互いが読んでいるのだろうか??
と疑問が生じてくる。

恋人同士なのに、サ-シャが結婚したり、流産したりしたあとのワロ-ジャの手紙には
それに関することは出てこないし・・・・

サ-シャの手紙にもワロ-ジャの安否を気にかけるような内容は出てこない。


????疑問がいっぱいの2人の手紙。

でも、それぞれの手紙の内容には、惹き付けられる。
戦地にいるワロ-ジャの方が生きることに向けての発言が多いように感じた。


それに反してサ-シャの方は日常のあれこれを書いているけれど、
流産したり、両親の死など常に何か心を痛めて疲れている。



2人に共通するのは、空想好きだということかな?
ワロ-ジャは本当の父親がいつか自分の前に現れることを思い、あれこれその場面を思い描く。

サ-シャは、自分にはもう一人の自分そっくりの双子の姉がいて、その子は意地悪で
時々現れるのだと言う。

お互いが幼いときの思い出話を語る部分が面白かった。


不思議な物語で、感想を書きにくい。
けれど、日本の作家にはない雰囲気の物語。
読んでいる最中、浸れる感覚がいい。

やはりたまには外国の作家の物語を読みたい。


                                          ★★★★



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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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