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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2017年12月


まるで神話のようだ。新しい時代の母娘の。梨木香歩氏推薦!標準的見た目の中学生の私と、オカルトマニアで女子力の高い美月ちゃんは幼なじみでママ同士も友人だ。ある日、美月ちゃんとクラスの男子を誘い、幽霊屋敷へ肝だめしに行くことに。幽霊屋敷探検に発端におこる出来事を通じ母娘たちの葛藤と成長が描かれる。”母娘問題”を独特の観察眼で捉えた感動作。椋鳩十賞、小さな童話賞大賞受賞作家、安東みきえ氏、初の長編小説。


                     (講談社HPより)




中学1年生の志保と美月。

同じ日に同じ病院で産まれ、ママ同士も仲良くなり双子みたいに育ち
途中、美月が父親の転勤で3年間、大阪に行き、中学で再び一緒になった。

志保は私立の中学受験に失敗。
自分はそれでよかったと思っている。
全部、ママの考えに従っての結果だから・・・


志保の母親も美月の母親も、それぞれに娘は愛しているんだと思う。
接し方が随分、違うもので、それぞれ間違いではない。
でも、言葉の強さとかで娘としては反抗的になったり、することはあるよなぁ~。
特に志保の母の言葉は強い。
同じ良い方でももう少し、言葉を選んだ方がいいんじゃない?と読みながら感じた。


そんな志保と美月は、地域で幽霊屋敷と言われている空き家を探検しようと
いう話になり男子・日比野敦を誘い3人で屋敷へ。
玄関の鍵が開いていたこともあり中へ・・・・
でも、そこで異様な空気感を感じ慌てる3人。
そして、おまわりさんが現れ・・・・

屋敷を管理している同級生の祥吉が自分が母親から頼まれて屋敷に行ったとき
鍵をかけ忘れたから・・・と証言してくれて親が引き取りに来てそれ以上
大事にならずに済む。

その時の、母親たちの娘に対する様子も違う。
志保の母親は結構、厳しい(間違ってはいないのだけど・・・)。


そして屋敷の持ち主となった繭。
母親と暮らすのが嫌で別のマンションで暮らしていたが、戻ろうかと思うと。

祥吉が仲を繋いで知り合った志保と美月と繭。

それぞれの母親に対する気持ちが読んでいて、「ああ、わかる」というものだった。


最後、嵐が来て屋敷のなかで起きたことは、なかなかスリリング。
繭の母親は、やはり娘のことが心配であの家に留まっていたのかなぁ~?

疎ましく感じることもある母親という存在。
娘という立場で考えたり、娘を持つ母親という立場で考えたりと
なかなか考えさせられる内容だった。


あと、祥吉は良い子だな(^^)





                      ★★★★★




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発行年月:2024年10月


大学のサークルを抜けたい姪のため、うその辞める理由を考えてあげたことをきっかけに、「うそ請負人」と頼みにされるようになった女性の困惑。会社の自転車置き場で、人間関係へのストレス発散のために同僚がとっていた思いがけない行動。日常の困ったことどもをやり過ごし、目の前の「今」を生き延びるための物語11篇。

                   (新潮社HPより)




11のお話、どの話も「ああ、こういうことあるよね~」

「こういう人、いたいた」と内心で過去の面倒な人間関係のことを
思い出してしまった(^^ゞ


最初の話<第三の悪癖>は、親友の大して聞きたくない話に辟易している独身女性・岩崎。
仕事場の休憩中にビニール袋に入った何かを叩きつけている中山さんを見かける。
母親の所有している食器を持ち出しては叩き割っているという。
二人は何となく意気投合。

岩崎さんも中山さんも真っ当な人なんだろうな。
真っ当な人同士、共有する時間を持てたらストレスを抱えていても
少し楽になれそう。


他の話も主人公たちは、それぞれ面倒くさい人間関係に翻弄されている。

表題作<うそコンシェルジュ>の主人公・みのりも真っ当で優しい。
成り行きで色々な人の悩みことを解決するために嘘を利用していく話。

姪の佐紀(大学生)がサークルの先輩の言葉がストレスで辞めたいけれど
なかなかやめさせてもらえないと言われ自分勝手な叔母を演じて先輩たちに
対峙し、先輩たちから姪を引き離すことに成功したり・・・
職場内の小島部長の悩み(ゴルフの誘いを断りたい)に乗って解決策を考えたり・・・
部長の姪の問題にまで・・・

一人では問題解決策がうまく運ばないと思いきや、助太刀が加わって・・・
もう芝居の段取りもすごくなって、可笑しかった^m^


他の話もままならない人間関係のなかで頑張る人たちの姿がなんだか
愛おしい。

最後の<居残りの彼女>は小学4年生のさなえが居残り教室で出会った6年生の
堀内さんとのこと。
同級生から悪気はないのだろうけれど、仲間外れにされ哀しい気持ちになっていた
さなえにとって堀内さんとの出会いは嬉しいものになった。
小学生時代の2歳上って凄くお姉さんに感じるけれど、大人になったら
ほぼ同年なんだけどね~。



今回も楽しませてもらいました。
津村さんの物語は心理描写が巧みで、うまいなぁ~と感心しちゃう。



                       ★★★★★







発行年月:2024年7月


コロナ禍がはじまり、終息に向かった。
これは目眩? 日常の隣にある別世界。
分別盛りの人々の抱えた困惑と不安を
ユーモアと活力あふれる文章で描く四つの日常奇譚集。
妻は売れっ子イラストレーター、夫は音楽家。30代の夫婦が不動産屋の仲介で移り住んだ理想の家。しかし夫が出張中のある夜、天井から異様な物音が……。気のせい? 事故物件? それとも……。
そしてある日、夫婦は隣家の秘密を知ることになる。
(「屋根裏の散歩者」)
酔い潰れ、夜更けの電車内でヴァイオリンを抱いて眠る老人。慌てて下りていった彼の忘れ物は、なんと遺骨。「才女好き」と噂された男の、四十年に及ぶ家庭生活に、秘められたものはいったい何だったのか。
(「妻をめとらば才たけて」)
亡き父の後を継いだレストラン経営がコロナ禍で破綻に瀕している。家庭がきしみ始め、しっかり者の母が倒れ、妻は子供を連れて出て行く。負の連鎖の中でどん底の男が、はまったのは、因縁付きの謎の植物。完璧なフォルム、葉の緑のグラデーション。マニアの世界は地獄より深かった。
(「多肉」)
認知症の義母が亡くなった。ようやく見つけた葬儀用の遺影。しかしその肩先には人の手が写っている。そして切り取られた半分には見知らぬ男が。
背景からすると、近くの動物園で撮影されたようだ。
慎ましく物静かで、実の娘息子にも本音を語ることのなかった人の心の内にあったものは?
(「遺影」)
現実と非現実の裂け目から見えた、普通の人々の暮らしと日常の裏側。
『鏡の背面』(集英社文庫、吉川英治文学賞受賞作)や『冬の光』(文春文庫)
の流れにつながる、人の心の不思議と腑に落ちる人生のリアリティにあふれる力作


                  (朝日新聞出版HPより)


4つの話、どれも惹き込まれるように読んだ。

ちょっと不思議で哀しいような切ないような・・・・

最初の
<屋根裏の散歩者>は、いったい屋根裏の物音は誰が出している音なのか?と
真相がわかるまで、ドキドキした。

まさか・・・リクガメとは・・・・(^^ゞ
でも、そんな飼っていると違法なもの、しかも大きくなって何十年もまだまだ
生きるものがいるとしたら、わたしなら他へ引っ越したいな。
貴之、のんきすぎないか?(笑)



<妻をめとらば才たけて>
72歳のバイオリンが趣味の男が電車内に忘れたものは紙袋に入った骨壺だった。
最初から「えぇ~!」という衝撃だった。
でも、物語を読み進めるうちに彼がどれだけ妻を愛していたのかがわかり
切なくなった。
コロナさえなければ・・・



<多肉>
これはちょっとホラーっぽかったな~。
人から貰ったアカべ(和名ではリュウゼツランとか)を繁殖させることに
のめり込んでいく男のはなし。
男の異常さに呆れ、家を出てその後、離婚を果たした妻は逃れられてよかった。
男の切羽詰まった心理が読んでいて苦しかった。
でも最期は、そんなに苦痛そうじゃなかったから、ちょっと救われた。



<遺影>
亡くなった義母の遺影になりそうな写真を探していて
1枚の自然な笑顔の写真を見つける。
自分が撮った義母らしいけれど、その肩に手をかけている男に覚えがない。
よく一緒に行った森林公園内にある、ふれあい動物園で撮ったものだけれど。。
義母が楽しそうに接していた猿山の人格者というコーヘー?
写真は確かに人間だけれど・・・

これは少し不思議な話だったけれど、そういう不思議もあっていいかもと
心が温かくなる話だった。


篠田さんの長編も好きで読むけれど、この短編集もよかった!



                   ★★★★



発行年月:1998年8月


沖縄・波照間島住民がまきこまれた戦争マラリアの惨劇と、
よみがえる島人を描いた作品。


                (かど創房/発行)



先に読んだ安東きみえさんの「夜叉神川」の中に出てきたお話になかに
これが元になったんだろうなという話があり、興味を覚えたので読んでみた。

沖縄の波照間島という名前も知らなかった。
西表島から南に進んだところにある小さな離島。
自然豊かなその地で平和に暮らしていた人たちが、次第に戦争の脅威に
翻弄されていく。

沖縄本土で決戦が始まり、島民たちは軍から赴任してきた新しい教師・山下を
最初は軍の人間とは知らず、温かく迎え、山下自身も「島民のお役に立ちたい」
と語り、子どもたちとも遊んだりして過ごす。
が・・・ある日、突然、豹変し島民たちを指示する。
手には刀を持ち、強制的に離島し疎開することを命令する。


仕方なく西表島(南風見田/はえみた)に移った島民たちだったが、
波照間島の環境とは雲泥の差で
蒸し暑く、蚊の媒介によりマラリアの感染が広がり、
人々は苦しみながら
命を落としていく。

敵は攻めてこないのに、こんな風に最期を迎えた人たちが大勢いたことが
哀しい。
山下には腹が立って仕方ない。
そんな環境でも識名校長は青空教室を開いたり、この劣悪な環境では
生きていけないと八重山軍刀の主部隊、旅団長に船で数名と共に夜中
向かい直訴し、それが受け入れられ波照間島に帰島することが許される。
 
山下に毅然と立ち向かった識名校長たちは素晴らしい。
島民のことを守ったのだから。

島を離れるとき、岩に刻んだ 「忘勿石 ハテルマ シキナ」の文字


元の島に戻れた島民は少なかったようだけれど、その後は平和な暮らしが
続いてよかった。


知らなかったことを学んだ。



                    ★★★★★



発行年月:2021年11月(単行本は2015年5月白水社より刊行)
  • 1979年、台北。中華商場の魔術師に魅せられた子どもたち。

  • 現実と幻想、過去と未来が溶けあう、どこか懐かしい極上の物語。

  • 現代台湾を代表する作家の連作短篇。単行本未収録短篇を併録。

著者

呉 明益 (ゴ,メイエキ)

1971年台北生まれ。現代台湾を代表する小説家・エッセイスト。97年、短篇集『本日公休』でデビュー。おもな小説に、『眠りの航路』『複眼人』『雨の島』など。『自転車泥棒』で国際ブッカー賞最終候補。

天野 健太郎 (アマノ ケンタロウ)

1971年生まれ。翻訳家・俳人。台湾文学・文化を積極的に紹介。訳書に、呉明益『自転車泥棒』、陳浩基『13・67』、龍應台『台湾海峡一九四九』など。句文集に『風景と自由』など。2018年没。



                           (河出文庫HPより)





以前読んだ中島京子さんの「小日向でお茶を」に出てきた本書
気になって読んでみた。

1970年代の子ども時代に同じ場所で過ごした人たちが、そのころのことを回想する形で
進む短篇連作。

共通して出て来るのは、、貧しい身なりで歩道橋の上でマジックを披露している
魔術師の男性。
子どもたちは、皆、その魔術師のことを気にかけていて、ふとした時に会話をする。


最初の話は、靴屋の息子がみた魔術師が操る紙の黒い小人。
どうやっているのか?気になるが教えてはくれない。
ある日、雨に濡れた小人がぺしゃんこになって道路に張り付いているのを
拾うとして腕がちぎれてしまい「小人が死んじゃった」と叫ぶ。
魔術師はその後、新たな小人を作る。


こんな風に話のそれぞれに、「死」を子どもたちが感じる瞬間が出て来る。
魔術師に関わった子達は、そのことを大人になっても覚えている。


独特の雰囲気があって、面白かった。
文章も読みやすい。
きっと訳者もいいんだろうな。


最後に単行本では未収録の短編があったけれど、なんだか雰囲気が違う感じがした。
読み終えて最後にみたら訳者が違う人だった。

天野氏が訳した「自転車泥棒」も読んでみようかな?




                              ★★★★★

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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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