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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2016年4月  (単行本は2010年10月刊行)


私は“幸せ”ですか?
人間の“業”とは、そして幸福とは。
乱歩賞作家が問いかける、予測不能の人間ミステリー!!
母に捨てられ、父を殺された有子。
犯人の自殺、消えた青年、母との再会。
鎖のように繋がる怒りと悲しみ。
そして叶わぬ恋――。
人間が持つ“業”に翻弄されながら、
一人の女子短大生は自分の道を歩き始めた――。


                   (潮文庫HPより)




何とも理不尽な・・・


実直な父が何者かに刺殺される生田有子(19歳)。
幼い頃に母は男性と失踪し、その後は父親と二人暮らし。

父親は警備会社で働き、ある日、工事現場に侵入してきた女性・及川明菜が
建物から転落し、今は病院で寝たきり状態。
その時、女性は従業員の男の名前を呼び、その男も一緒に転落したが
搬送された病院から姿を消したまま。

不可解なことだらけで、父親がなぜ、刺殺されなければならなかったのか?
真相を知りたい有子は、警備会社の職員で元刑事の中原とともに
真相究明をしていく。


父親を刺したのは、及川明。
転落事故で寝たきりになっている明菜の父親。
けれど、及川明は「たいへんな過ちを犯してしまった」とのことばを遺書に遺し
自死。


真相が段々、わかると怒りが沸いてきた。

明菜と一緒に転落した男もしょうもない男だけど、その父親もまた酷い男。
そんな親子のせいで有子の父親と及川明は命を落とすことになったのか?


寝たきり状態の明菜に会う有子。
その事実を知って、彼女のために自分が何か出来ないかと行動するのは
凄いことだと感心したけど、なかなかこういう気持ちになることは
難しいだろうな。


最後の解説を書かれた医学博士で栄養士の言葉を読むと、なるほどねと
思うところはあったけれど・・・・

でも、物語としては、まあまあ楽しめた。




                      ★★★
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発行年月:2023年8月


わたしたちのしたこと。しなかったこと。これは、いまを生きるあなたのための物語。
『きみはいい子』『わたしをみつけて』『世界の果てのこどもたち』など、
話題作を生み出し続ける著者、4年ぶりの新作!
2016年本屋大賞3位、
『世界の果てのこどもたち』には書かれなかったもうひとつの真実。
満洲・新京で暮らす女学生、ひろみ。
「尽忠報国」「一億玉砕」「五族協和」、そう信じていた――
永遠に失われた、もう、どこにもない国。
あの場所で見たこと、聞いたこと、
そして、わたしに託されたことを、わたしは忘れない。
終戦間際の満洲を、圧倒的な事実に基づき描く。
これは、いまを生きるあなたのための物語。


                    (講談社HPより)



戦時中、満州で生活していた日本人たち。
主人公のひろみは高等女学校に通っていたけれど、毎日、軍の命令で
過酷な仕事をしていた。
原紙を作る仕事。その後、その原紙を高温の窯で溶かし引き上げる作業へ。


何のため?と読みながら思ったし、たぶん、当時の学生たちもわかって
いなかったんだと思う。
ただ、そうすることが国のためと信じて一所懸命にやっていた。


けれど、後にそれは細菌兵器として使う気球を作っていたのだと知る。
風船爆弾と呼ばれた兵器。
実際に、ひろみたちが作っていたものが使われることはなく終わった様子だけれど
その事実を知ってからの苦悩は、読んでいるほうにも伝わって
本当に、戦争って無駄だし、誰も幸せにならないことだなと思う。
哀しいし虚しいし・・・・

今も、あちらこちらで起きている戦争だけど
本当に、なんで始めちゃうんだろ。


ひろみが年をとり、孫のあかりに語る体験談。
最後の当時の同級生たちの再会の場面は、よかった。
皆、それぞれその後も生きて来たんだな・・・・と。


生きて語り継いでくれる人が段々、いなくなってしまう。
こういう物語は貴重だな。




                    ★★★★★



発行年月:1984年12月 (1974年に刊行)


本当の教育とは何か?
新任女教師小谷先生は、子供達との交流の中で、力強い希望と、
生きることの意味を学んでいく。
大阪の工業地帯を舞台に、辛い過去を背負って生きるバクじいさん
教員ヤクザ足立先生など魅力的な人物が織りなす人間賛歌。
荒廃する教育現場、断絶の深まる家庭にあって、人の心のふれ合いを
信じる灰谷文学は読まれ続ける。
親と子の熱い共感を呼ぶ感動の長編


                 (表紙裏の解説文より)



家の本棚から見つけて読んだ。
著者の名前も作品名も知っていたのに、今まで読んでこなかった。

読み始めたら止まらない。
小谷先生の優しさ。それに応える子どもたち。
子ども達のなかに、塵芥処理所に住む子が何人かいる。
鉄三もその一人で、寡黙で表情も乏しい。
けれど小谷先生は、鉄三が気になり、彼の家にも訪問。
ハエを飼っていることを知り、ハエに対する知識が豊富なことに
驚き感動する。
こういうところが素敵だなと。
ハエ=不潔と忌み嫌うのが普通だけど、その気持ちを置いておいて
鉄三の気持ちに寄り添う。
鉄三が一緒に暮らしているのは祖父のバクじい。
バクじいは戦地で酷い体験をしている。
物腰が柔らかく、鉄三を可愛がっていて、孫のことを気にかけてくれる
小谷先生への感謝する。


養護学校に行くまでの間ということで、みなこという知恵遅れ(?)の子が
転入してくる。
最初はみなこに振り回される小谷先生だけど子ども達は自分たちで
当番を決め、毎日2人ずつが面倒をみることになる。
子ども達、凄いなと思った。
そんな子を面倒みているのは・・・と保護者の一人が抗議するのだけど
その保護者の子どもが、また偉いいい子。
保護者も自分の考え方が間違っていたと、みなこの親に謝るというのも
いい。
みなこが養護学校に移るのでお別れという場面は、泣けた(/_;)


そんな素敵な話が色々。
可愛がっていた野犬が捕まり、それを解放する話も面白かった。


教師という仕事は大変で現実的には、こんなふうにいかないことも
多いと思う。
でもここに登場する小谷先生や足立先生みたいな人が沢山いたら
いいのになと思う。

他の著者の作品も読んでみよう。




                     ★★★★★



発行年月:2025年2月


江戸は神田三島町にある三島屋の次男坊富次郎は、変わり百物語の二代目聞き手。飼い主の恨みを晴らす化け猫、命懸けで悪党壊滅に挑む河童、懺悔を泣き叫ぶ山姥が登場する客人の身の上話を聞いている。一方、兄・伊一郎の秘密の恋人が出奔。伊一郎の縁談を巡って、三島屋は大騒動に巻き込まれてしまう……。

                  (新潮社HPより)


絵師になりたい富次郎だが、三島屋の百物語の聞き手の役目も続けながら
絵の師匠・花山蟷螂の元に通う。


百物語の語り手の話は、やはり不思議でそこには哀しさや切なさも混じる。

表題の<猫の刻参り>は文(ふみ)が祖母の文(ぶん)から聞いた不思議な話。
行儀見習いでいた屋敷で猫の世話をしていたとき、夜半、不思議な鐘の音を聞く。
それは猫の刻を知らせるもので枕元にいた猫のシロじいじが案内してくれて
外に出ると月の代わりに肉球が空に浮かんでいた。

やがて祖母に縁談話がきて乗り気でなかったが結婚。
しかし、夫はすぐに女遊びを始め、姑のいびりもきつく
舅はみているだけで助けようとはせず、辛い日々。
そんなとき、一匹の猫が猫の刻参りに連れて行ってくれて結婚前に
世話していた猫に会い今の生活を語ると「懲らしめよう」と。
夫は舌を失くし喋れなくなり姑は頭の毛が全てなくなり口がきけなくなる。
二人は人でなく段々と猫に・・・
暴れまわりうるさいので奥座敷に閉じ込められる。

でも、おぶんは、そのために大好きだった猫が命を削っていることを知り
懲らしめるなんてやめてほしいと頼み、夫と姑は再び、人に。
以後、大人しくなる

二話めは<甲羅の伊達>
奉公先で子守りの仕事を任された、みぎわ。
奉公先の主人夫婦は仲が良く、子どもたちも、みぎわに懐いてかわいい。
が、その主人を妬む男が店に押し入り、番頭さんと女中頭が刺されて
亡くなってしまう。
みぎわも大怪我をし意識が戻らぬまま。
そんなとき、みぎわの故郷から一人の老人が見舞いに訪れる。
みぎわに声をかけると目を開け握られていた左手から小石のようなものが
転がる。
その小石とみぎわの話を老人が語る。
小石は河童の三平太の甲羅のかけら。

みぎわと三平太の出会いから別れ。
三平太は消えても、ずっと、みぎわを守ってくれている。


三番目の話は<百本包丁>
語り手は一膳飯屋のおかみ・初代(28歳)。
自身が体験したこと。
父は腕のいい木耕細工の職人で、一番それを買い上げてくれていたのが
仲買商・伊元屋。
そこの娘は花蝶といい、美人で評判。
けれど花蝶はいろいろな男と関係を持ち、男たちを骨抜きに、
男同志は嫉妬心で争う。
初代の父や兄もそんな花蝶の毒牙にかかり骨抜き状態に。
そんなとき、伊元屋の御殿が炎上。火はどんどん広がり初代は母の松江と」ともに
火から逃げる。
そして、山のなかに迷いこみ一頭の大きな山犬に出会う。
山犬は名前を花桃というと自ら名乗り、御館(みたち)に案内してくれる。
二人はそこで包丁人に。
迷い人たちが訪れた館で料理を作る仕事をするものが居なくなった代わりに働く
ように言われる。
食材は豊富に揃い、館の主が声で指示してくれるので困ることはない。
100本の包丁を使い切ればお役御免となるという。

山姥が出てきたり、花蝶の生首が出てきたりだったわりに
一番、面白かったかも。



でも3つの話と並行して語られる三島屋の伊一郎の静香とのことが
今後、どうなっていくのか?
富次郎は謎の男と、取引したけれど、それがどうなるのか?
気になることだらけ。

百物語は簡潔にでいいから、三島屋の物語をもっと詳しく知りたいな~。




                ★★★★



発行年月:2025年2月


女も住むこの国のことを、女抜きで決めないでほしい――
坂本龍馬、板垣退助らが活躍した時代、高知に楠瀬喜多という女性がいた
男も女も、民衆には多くの権利がなかった頃、高知で女性参政権を求めて申し立てをした楠瀬喜多。江戸から大正にかけて生き、世界でも早い時期に声を上げた彼女は、板垣退助ら男性の民権家が活躍した激動の時代に、何を見て、何を感じていたのか。そしてそのまなざしの先にあったものは――
100年後の今のわたしたちが手にしているものの大切さに気づかされる、著者初の評伝小説


                   (ポプラ社HPより)


幕末の日本の歴史背景もあり、そんな激動の時代に生きた楠瀬喜多という女性が
未来の女性たちのため、大きな声をあげ、女性たちの意識も変え
政治に女性が参加する道筋を作っていく。

物語は米屋の跡取り娘として育ち、手習い塾へ通い始めるところから。
喜多は6歳。手習い所には奉公人の吉之丞(13歳)と共に・・・
手習い所には8歳からしか入れないと知り、8歳と偽り・・・
しかしすぐにばれてしまう。
けれど読み書きも8歳の子より出来たため入塾を許可される。

同じ手習い所に通う猪之助とその付き添いで通う實と出会う。
猪之助は腕白な乱暴者の印象だが實が間をうまく取り持ち、仲良くなる。

猪之助はのちの板垣退助。
2人は幼いときから親交があったというのは創作かな?
でも生涯を通じて日本の国の平和な将来のためにと奔走する。


二人とも案外、長生きしたんだな。
板垣退助は反対するものに命を狙われたけれど・・・・
犯人に対して、わだかまりなく許す態度は凄い。
国を良くしたい思いは同じなのだから・・・と


教科書に出て来る人物も沢山登場。
坂本龍馬の姉・とめと喜多の関係もよかったなぁ~。

龍馬が慕っていたという、姉のとめ、素敵な人だ。

また喜多の親友・あやめは時代に翻弄されたかんじで、少し哀しいが
その娘は生き方を自分で選んだ様子で嬉しかった。
芸の道に進んだが身の振り方に迷っているところを喜多が援助し
好きな人と暮らす道を選んだのはよかった。


長編だったけれど、読み応え十分で、良い物語だった。




                        ★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
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