発行年月:2013年9月
少年が抱える切ない空想、曼珠沙華が語る夫の過去。老夫婦に届いた絵葉書の謎、少女が見る奇妙なサソリの夢。姉弟の哀しみを知る月の兎、製鏡所の娘が願う亡き人との再会。
ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった。それでも――。
六つの世界が呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。まだ誰も見たことのない群像劇。
(集英社HPより)
6つの短編連作集。
6つの話に登場する人物たちは、重なる。
最初の話<やさしい風の道>で登場の8歳の少年・章也とその姉の翔子。
最初の話では翔子は、章也の生まれる前に転落事故で亡くなっている。
章也のそばにいつも翔子がいて、二人は会話する。
章也には、自分の存在は姉の死があったからではないか?
姉が生きていたら、自分は生まれなかったんじゃないか?と思い、自分が生まれる前
両親と姉が生活していた家を訪ねる。
そこに住んでいるのが、瀬下という男性。
次の話<きえない花の声>では、瀬下の物語。
けれど、この話では瀬下は、溺死していて、その妻・栄恵の夫に対する疑惑。
浮気をしていたんじゃないか?という思いが勘違いであったことがわかる話。
瀬下は職場の同僚である男性・飯先と結乃の仲を取り持っていた。
栄恵は夫の死後、息子の俊樹を連れて引っ越す。
三番目の話<うあゆたう海の月>では瀬下と栄恵は、瀬下の定年を機に引越しことにする話。その引越し先は、女の子がベランダから転落死した家。
栄恵は、その女の子が寂しがらないように自分たちが住もうと決めた。
2番目の話の飯先と結乃は結婚し、女の子葎が生まれる。
そんな調子で、先の話に登場した人物が、次に出てきたときには、前の不幸はなかった
ことになっている話が展開される。
普通に生活しながら、突然、ふりかかる不幸が読んでいて辛いのだけど、
また別の設定で、この人たちの違う人生を読めるのでは?と期待しながら
途中からは読んでいました。
そして、最終章の<鏡の花>では、今までの物語で別々に語られた人たちが
一つの場所に集まる。
その場所は、民宿「菱花」・・・鏡という意味をもつ。
民宿に集う、面々は、5章までの話では、亡くなった人も多い。
日常のちょっとした事が変わるだけで、全く違う人生が展開されるという話。
辛いことが多かった話でしたが、最終章で、期待通り、救われて良かったぁ~。
最後にああ、よかったと思わせるための前の5章だったのかな?
こういう話は、映像化できないだろうな・・・。
なかなか面白い物語展開でした。
★★★★
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発行年月:1997年1月
生意気で動物仲間のボス的存在のネロ。ドイツ人夫妻に可愛がられ、故郷イタリアからドイツへ行くが……有名女流作家の世界的話題作
(文藝春秋HPより)
イタリアで縁起の悪いとされる日は13日の金曜日と並んで17日の金曜日。
そして11月は不吉な月とされる。
そんな11月17日金曜日、雷が鳴り響く正午に生まれたのが、この物語の
主人公・ネロ(イタリア語で黒を表す)。
同じ日に生まれた猫がネロを含めて4匹。
ネロはそのなかで斜視で生まれた妹猫・ローザの面倒をよく見ることが
唯一の良い点。
あとは、傍若無人な振る舞いで、家の鶏の卵は奪うし老犬にも凄みを効かせる。
隣は、ドイツ人の夫妻の別荘。
ネロは怖いものなしで、そのドイツ人夫妻に近づき、可愛がられる。
夫人が猫好きだと知り、擦り寄り甘えた声を出し、ミルクや食べ物をねだり
ふかふかなソファーでくつろぐ。
そして、同じ体験をローザにもさせてあげようと連れていく。
夫妻がドイツに帰ると知り、連れて行って貰おうと、可愛い猫を演じ、まんまと
作戦成功。
ローザも一緒にドイツへ向かう。
ドイツに行っても、周りの猫たちを威圧し、ボス気取り。
しかし年を取り、ローザも亡くなってしまうと再びイタリアの故郷が懐かしくなる。
夫妻がイタリアの別荘に行くときに、再び連れて行って貰う。
ネロが可愛い。
乱暴したり威張ったりだけれど、優しいところもあったし・・・。
猫の視点で人間観察している言葉も面白かった。
猫好きなら絶対、楽しめる本です!!
イラストの絵も素敵でした。
★★★★★
発行年月:2005年6月
カレーソーセージ誕生を巡る一人の女性の悲恋の物語。食べ物が人間に与える幸福と苦悩が、ナチス・ドイツで脱走兵をかくまいつつ、不器用だがしたたかに生きるレーナの人生と共に語られる。
(河出書房新社HPより)
物語の始まりは現代。
主人公の「僕」は、10年以上前に屋台で食べたカレーソーセージが忘れられない。
大人になってからもハンブルグを訪れる度に食べに寄った。
でも屋台はあるとき、なくなってしまった。
屋台のおかみさん探しを始める「僕」。
おかみさんの名前はレーナ・ブリュッカー。
もう亡くなってるんじゃないか?という人も居たが・・
彼女に再会できた!
そしてカレーソーセージを考え出した人がレーナだと信じる「僕」は
彼女の元に通い、彼女の物語をきくことになる。
彼女の話す物語は1945年の終戦直前のドイツが舞台。
敗戦が近いドイツで夫や息子たちも戦争で家から離れているため一人暮らしをしていた
レーナ・ブリュッカー。
そんな彼女が若いドイツの脱走兵を家で匿うことに。
カレーソーセージのルーツを知りたい「僕」は、最初、関係なさそいなレーナの話に
やきもきする。
読んでいるわたしも同じ気持ちになる。
でも、段々とカレーソーセージのルーツよりもレーナの人生の物語の方に
興味が沸いてくる。
脱走兵のプレーマーを周囲からわからないように匿うことのスリル。
度々、訪れる地区防空責任者が来るたびに見つかるんじゃないかとヒヤヒヤ。
アパートの階下の夫人の「誰かがいるみたい」の指摘にもヒヤヒヤ。
時々、知らされるドイツの戦況。
ヒットラーの死から敗戦へと進むが、レーナはプレーマーにその事実を伝えない。
戦争が終わったことを知ったら、出て行ってしまうから・・・。
そして突然の別れ。
カレーソーセージのルーツは、とってもあっけなく、終盤に知らされるけれど
ああ、そういうことだと思ったと言うもの。
レーナ自身もそのことは喋っていたし・・・・。
語り手が現代の「僕」になったり、自分のことを語るレーナになったり。
なかなか面白く最後まで読みました。
あとがきにあったけれど・・・
カレーソーセージは、実際にベルリン、ハンブルグなどの北ドイツ地方の庶民の
代表的食べ物だそう。
普通は道端の立ち食い屋台で200円くらいで買えるとか。
ああ、食べてみたいな~^m^
★★★★
発行年月:2005年7月
イタリアの海辺の小さな村で繰り広げられる、
とっても ピュアな初恋物語。
「お金はないけど、君を想う気持ちは誰にもまけないよ」
(本の帯文より/小学館)
16歳のマルチェロは、漁師の父親と二人暮らしの16歳の高校生。
村一番の美少女・エレナに恋をして、彼女への想いを持ち歩いているメモ帳に
詩にして書き連ねる。
もうすぐエレナの16歳の誕生日。
村の掟で娘の最初のデートの相手は父親が、選ぶ。
父親に選ばれたい男の子は、贈り物を持参し、その贈り物が父親に気に入られる物ならば
デートの相手として認められる。
マルチェロの家は貧しい。
村一番の金持ちの息子・アルマンドが強力なライバル。
賢いマルチェロが考えた贈り物は?
みんなが高価な贈り物を選ぶだろうと予測し、自分はエレナの父親が本当に欲しい物を
贈ろうと考える。
が、それを手に入れるのが一苦労。
それの持ち主にお願いに行くと、交換条件の品を言われ、またその品の持ち主にお願いに行くと・・・・そこでも交換条件の品を言われ・・・・
そんなことがどんどん続くので、マルチェロは、村中を走り回ることになってしまう。
そんな姿が可愛い。
そして、その事から、村人同士で仲の悪かった人たちの仲を取り持つことに繋がったり
村中がマルチェロが走りまわることで幸せになっていくという
素晴らしい展開に。
そして、念願のデート。
エレナも可愛い♪
楽しくて心が温かくなる素敵な物語でした♪
偶然、図書館棚から手に取った本ですが、大当たり~ヽ(^o^)丿
子どもが読んでも大人が読んでも楽しめると思います。
★★★★★
発行年月:2009年9月
女三人寄ればハウスシェア。そこにあるのは楽園、それとも地獄-----

家族の過干渉から脱出したいOL。夫に離婚を懇願された女。夫に離婚を言い渡した女。気分一新したいけど、一人で引越しするのは腰が重いアラフォー・キャリア。
さまざまな「女三人のハウシェア」の形。
(角川書店HPより)
長編小説かと思ったら、短編集だったんですね~。
最初の話を読んで、次のが続きかと思ったら・・・全く別の話で「え?」と
一瞬思いました・・・^^;
でもどれも面白かった!
<うちの大黒柱>
高校の同級生であるミホとマサミは25歳。
それぞれ社会人で自立しているけれど、お互いに生活環境を変えたいと思う。
どこか一軒家を借りて住もうと決め、もう一人くらい一緒に住む人が居れば
金銭的にも物件的にも理想と思い、マサミが同じ会社のリョウコを誘う。
リョウコは身長180cmで実に頼りになる存在だった。
<二人のムスメ>
離婚して娘と二人暮らしのシゲコ。
ある日、娘・ルミが父子家庭の友人・チカを連れてくる。
チカは酒乱の父親から暴力を避けるために家から離れたいと言う。
仕方なく、同居を許すシゲコ。
<三人で一人分>
78歳のツル子は58歳のときから同年代のソノエ、アサヨとマンション暮らしを始めた。
年老いていくだけじゃダメよね!とある日気づく3人。
<異物>
独り暮らしのレイコの元に、妹のヒトミが幼稚園児のセイラを連れてくる。
旦那と離婚したいから・・・というが、二人に振り回されて我慢の限界に達する
レイコ。
<母の友だち>
41歳の母・ノリコの友人・シマちゃんがある日、転がり込んでくる。
夫が浮気をしたから見せしめに家出したという。
ノリコの夫は貿易関係の仕事で海外に単身赴任中。
娘のミナは国立大学進学を目標に勉学に励む日々だが、ノリコとシマちゃんは
毎日、遊び放題、買い物三昧のお気楽生活
<リストラ姉妹>
気ままな一人暮らしをしていたクニコの元に同時期に会社をリストラされたと
娘のワカとユカが戻ってくる。
<噂の三人>
50歳目前の女3人。
同じ会社に勤める3人が同居を決めたことで、社内には三人の噂があれこれ飛び交う。
<バラの香り>
83歳のミシマシマは近所の、お薬師さんに参拝するのが日課。
毎日、そこのベンチに休み、偶然隣に座った人に話し掛ける。
そしてある日、話が弾んだカナザワタマエを家に誘い、更に意気投合。
タマエはマンションの30階に一人暮らしで、ここみたいな場所に住みたいという。
シマが好きなだけ居てもいいと言うことで同居生活が始まる。
そして、また別の日、19歳のさくらが今にも倒れそうにいるのを、見つる。
お金も行くところもないという、さくらを家に住まわせることにする。
<友だちではない>
マキとサヤカは高校の同級生。
もう一人一緒に住んでいた友人が海外に行ってしまったので、新たな同居人を募集し、
面接をして決める。
センス抜群で気に入ったリョウコが新たな同居人になったが、一緒に住んでみると・・・
<蛍姉妹>
リオとミオは双子。
双子なのに仲が悪くけんかばかり。
雨上がり決死隊の「蛍原徹」に見た目が似ていたため蛍姉妹と子どもの頃、呼ばれていた。
リオの友だち・フユミはリオの家に遊びに行き、フユミの母親がいつも愚痴ばかりだったと記憶している。
リオが家を出て独立したいと言い出し、両親と暮らしていたフユミも家から出て
二人で暮らそうと決める。
周囲の人たちとの交流が楽しい場所で快適に暮らしていたが、ある日、ミオが
一緒に住まわせて欲しいとやって来た。
仲が良い友だちでも一緒に暮らすって何かと大変そうだから、わたしには無理だと
思うけれど、年を取ったら気兼ねが要らない親友となら一緒に暮らすのもいいかな?
なんてちょっと思った。
「バラの香り」が良かったな。
老女2人の元で暮らすことになった19歳のさくらとの3人の関係がほのぼの
していて、この短編集のなかで一番好き♪
いくつになっても女性はバラの香りが好きなんだな~。
★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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