発行年月:2005年6月
カレーソーセージ誕生を巡る一人の女性の悲恋の物語。食べ物が人間に与える幸福と苦悩が、ナチス・ドイツで脱走兵をかくまいつつ、不器用だがしたたかに生きるレーナの人生と共に語られる。
(河出書房新社HPより)
物語の始まりは現代。
主人公の「僕」は、10年以上前に屋台で食べたカレーソーセージが忘れられない。
大人になってからもハンブルグを訪れる度に食べに寄った。
でも屋台はあるとき、なくなってしまった。
屋台のおかみさん探しを始める「僕」。
おかみさんの名前はレーナ・ブリュッカー。
もう亡くなってるんじゃないか?という人も居たが・・
彼女に再会できた!
そしてカレーソーセージを考え出した人がレーナだと信じる「僕」は
彼女の元に通い、彼女の物語をきくことになる。
彼女の話す物語は1945年の終戦直前のドイツが舞台。
敗戦が近いドイツで夫や息子たちも戦争で家から離れているため一人暮らしをしていた
レーナ・ブリュッカー。
そんな彼女が若いドイツの脱走兵を家で匿うことに。
カレーソーセージのルーツを知りたい「僕」は、最初、関係なさそいなレーナの話に
やきもきする。
読んでいるわたしも同じ気持ちになる。
でも、段々とカレーソーセージのルーツよりもレーナの人生の物語の方に
興味が沸いてくる。
脱走兵のプレーマーを周囲からわからないように匿うことのスリル。
度々、訪れる地区防空責任者が来るたびに見つかるんじゃないかとヒヤヒヤ。
アパートの階下の夫人の「誰かがいるみたい」の指摘にもヒヤヒヤ。
時々、知らされるドイツの戦況。
ヒットラーの死から敗戦へと進むが、レーナはプレーマーにその事実を伝えない。
戦争が終わったことを知ったら、出て行ってしまうから・・・。
そして突然の別れ。
カレーソーセージのルーツは、とってもあっけなく、終盤に知らされるけれど
ああ、そういうことだと思ったと言うもの。
レーナ自身もそのことは喋っていたし・・・・。
語り手が現代の「僕」になったり、自分のことを語るレーナになったり。
なかなか面白く最後まで読みました。
あとがきにあったけれど・・・
カレーソーセージは、実際にベルリン、ハンブルグなどの北ドイツ地方の庶民の
代表的食べ物だそう。
普通は道端の立ち食い屋台で200円くらいで買えるとか。
ああ、食べてみたいな~^m^
★★★★
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発行年月:2005年7月
イタリアの海辺の小さな村で繰り広げられる、
とっても ピュアな初恋物語。
「お金はないけど、君を想う気持ちは誰にもまけないよ」
(本の帯文より/小学館)
16歳のマルチェロは、漁師の父親と二人暮らしの16歳の高校生。
村一番の美少女・エレナに恋をして、彼女への想いを持ち歩いているメモ帳に
詩にして書き連ねる。
もうすぐエレナの16歳の誕生日。
村の掟で娘の最初のデートの相手は父親が、選ぶ。
父親に選ばれたい男の子は、贈り物を持参し、その贈り物が父親に気に入られる物ならば
デートの相手として認められる。
マルチェロの家は貧しい。
村一番の金持ちの息子・アルマンドが強力なライバル。
賢いマルチェロが考えた贈り物は?
みんなが高価な贈り物を選ぶだろうと予測し、自分はエレナの父親が本当に欲しい物を
贈ろうと考える。
が、それを手に入れるのが一苦労。
それの持ち主にお願いに行くと、交換条件の品を言われ、またその品の持ち主にお願いに行くと・・・・そこでも交換条件の品を言われ・・・・
そんなことがどんどん続くので、マルチェロは、村中を走り回ることになってしまう。
そんな姿が可愛い。
そして、その事から、村人同士で仲の悪かった人たちの仲を取り持つことに繋がったり
村中がマルチェロが走りまわることで幸せになっていくという
素晴らしい展開に。
そして、念願のデート。
エレナも可愛い♪
楽しくて心が温かくなる素敵な物語でした♪
偶然、図書館棚から手に取った本ですが、大当たり~ヽ(^o^)丿
子どもが読んでも大人が読んでも楽しめると思います。
★★★★★
発行年月:2009年9月
女三人寄ればハウスシェア。そこにあるのは楽園、それとも地獄-----

家族の過干渉から脱出したいOL。夫に離婚を懇願された女。夫に離婚を言い渡した女。気分一新したいけど、一人で引越しするのは腰が重いアラフォー・キャリア。
さまざまな「女三人のハウシェア」の形。
(角川書店HPより)
長編小説かと思ったら、短編集だったんですね~。
最初の話を読んで、次のが続きかと思ったら・・・全く別の話で「え?」と
一瞬思いました・・・^^;
でもどれも面白かった!
<うちの大黒柱>
高校の同級生であるミホとマサミは25歳。
それぞれ社会人で自立しているけれど、お互いに生活環境を変えたいと思う。
どこか一軒家を借りて住もうと決め、もう一人くらい一緒に住む人が居れば
金銭的にも物件的にも理想と思い、マサミが同じ会社のリョウコを誘う。
リョウコは身長180cmで実に頼りになる存在だった。
<二人のムスメ>
離婚して娘と二人暮らしのシゲコ。
ある日、娘・ルミが父子家庭の友人・チカを連れてくる。
チカは酒乱の父親から暴力を避けるために家から離れたいと言う。
仕方なく、同居を許すシゲコ。
<三人で一人分>
78歳のツル子は58歳のときから同年代のソノエ、アサヨとマンション暮らしを始めた。
年老いていくだけじゃダメよね!とある日気づく3人。
<異物>
独り暮らしのレイコの元に、妹のヒトミが幼稚園児のセイラを連れてくる。
旦那と離婚したいから・・・というが、二人に振り回されて我慢の限界に達する
レイコ。
<母の友だち>
41歳の母・ノリコの友人・シマちゃんがある日、転がり込んでくる。
夫が浮気をしたから見せしめに家出したという。
ノリコの夫は貿易関係の仕事で海外に単身赴任中。
娘のミナは国立大学進学を目標に勉学に励む日々だが、ノリコとシマちゃんは
毎日、遊び放題、買い物三昧のお気楽生活
<リストラ姉妹>
気ままな一人暮らしをしていたクニコの元に同時期に会社をリストラされたと
娘のワカとユカが戻ってくる。
<噂の三人>
50歳目前の女3人。
同じ会社に勤める3人が同居を決めたことで、社内には三人の噂があれこれ飛び交う。
<バラの香り>
83歳のミシマシマは近所の、お薬師さんに参拝するのが日課。
毎日、そこのベンチに休み、偶然隣に座った人に話し掛ける。
そしてある日、話が弾んだカナザワタマエを家に誘い、更に意気投合。
タマエはマンションの30階に一人暮らしで、ここみたいな場所に住みたいという。
シマが好きなだけ居てもいいと言うことで同居生活が始まる。
そして、また別の日、19歳のさくらが今にも倒れそうにいるのを、見つる。
お金も行くところもないという、さくらを家に住まわせることにする。
<友だちではない>
マキとサヤカは高校の同級生。
もう一人一緒に住んでいた友人が海外に行ってしまったので、新たな同居人を募集し、
面接をして決める。
センス抜群で気に入ったリョウコが新たな同居人になったが、一緒に住んでみると・・・
<蛍姉妹>
リオとミオは双子。
双子なのに仲が悪くけんかばかり。
雨上がり決死隊の「蛍原徹」に見た目が似ていたため蛍姉妹と子どもの頃、呼ばれていた。
リオの友だち・フユミはリオの家に遊びに行き、フユミの母親がいつも愚痴ばかりだったと記憶している。
リオが家を出て独立したいと言い出し、両親と暮らしていたフユミも家から出て
二人で暮らそうと決める。
周囲の人たちとの交流が楽しい場所で快適に暮らしていたが、ある日、ミオが
一緒に住まわせて欲しいとやって来た。
仲が良い友だちでも一緒に暮らすって何かと大変そうだから、わたしには無理だと
思うけれど、年を取ったら気兼ねが要らない親友となら一緒に暮らすのもいいかな?
なんてちょっと思った。
「バラの香り」が良かったな。
老女2人の元で暮らすことになった19歳のさくらとの3人の関係がほのぼの
していて、この短編集のなかで一番好き♪
いくつになっても女性はバラの香りが好きなんだな~。
★★★
発行年月:2013年7月
知らないままでいられたら、気づかないままだったら、どんなに幸福だっただろう――。

革命児と称される若手図書館長、中途半端な才能に苦悩しながらも半身が不自由な母と同居する書道家と養護教諭の妻。悪意も邪気もない「子どものような」純香がこの街に来た瞬間から、大人たちが心の奥に隠していた「嫉妬」の芽が顔をのぞかせる──。いま最も注目される著者が満を持して放つ、繊細で強烈な本格長篇。
(新潮社HPより)
登場人物たちの心理描写が巧い!!
書道家の秋津龍生は、大きな章を今だ獲得せず、高校の養護教諭である妻・怜子に
経済的に頼る日々。
そして半身不随で痴呆が進む母親を自宅で介護する。
林原信輝は図書館館長。
祖母の元で生活していた妹の純香(25歳)を最近、引き取り一緒に暮らし始めた。
純香は知的障害があり物事の判断が一人では出来ないが
唯一の能力が書道。
どんな書でもそっくりに真似て書くことが出来る。
が・・そんな真似をしたときには×をそこに書くことを祖母から約束されていた。
そして、書道家である秋津の個展に出向いた純香が秋津と出会う。
秋津に対して物怖じせず、自分の書を見ての意見を述べる純香に興味を覚える秋津。
そして、養護教諭の怜子の学校に講演で訪れた信輝。
秋津夫妻と林原兄妹・・・・2組の男女が知り合い、接近していく。
そんななかで生まれていくそれぞれの感情。
嫉妬芯だったり猜疑心だったり、好奇心だったり・・・・
取り繕う顔の下に隠された人の本音や気持ちの葛藤が巧く表現されていて
巧い!!と思う。
そんななか、心身共に無垢な純香の言葉が新鮮でした!
無垢ゆえに他者を追い詰め自身が傷ついてしまったのは哀しかった・・・(/_;)
養護教諭の仕事上での関わる女子生徒・君島との話も衝撃的でした。
色々な要素が織り込まれているのに、巧くそれらが結びついて
驚きのラスト!
もう理想的な物語の展開です!!
すごい作家さんだと思います!!
今後の作品も期待します!!
★★★★★
発行年月:2012年12月
時は流れ、ゆらぎ、やがて跡形もなく消える。2011年度ブッカー賞受賞作。

歴史とは、不完全な記憶と文書の不備から生まれる確信である――。二十代で自殺した親友の日記が、老年を迎えた男の手に突然託される。それは、別れた恋人の母親の遺言だった。男は二十代の記憶を懸命に探りつつ、かつての恋人を探しあてるが……。記憶の嘘が存在にゆすぶりをかけるさまをスリリングに描くバーンズの新境地。
(新潮社HPより)
主人公はアントニー・ウエブスター(通称・トニー)
60台半ばで、一人暮らしだけど、離婚した妻・マーガレットとの今も連絡を取り合い
娘家族とも時々、交流を持ちながら、穏やかに暮らしている。
そんな彼の高校時代の話から20代前半の交友関係を前半では語る。
仲の良い友達コリン・アレックスに加え、途中から転校してきた頭脳明晰なエイドリアンが
仲間に加わった。
そして、大学に進学し、トニーは、ベロニカと知り合い、親密な関係になる。
一度だけ彼女の家に泊まりに行き、彼女の家族と会ったが、そこでは
ベロニカの兄を筆頭に家族には冷ややかな態度を取られやや居心地が悪い思いをした。
しかし、彼女の母親からは温かい気持ちを感じた。
その後、ベロニカとは別れたが、すぐに親友・エイドリアンからの手紙でベロニカと
付き合っているということを知らされる。
嫉妬?悪意?複雑な思いに駆られ、2人宛に出した手紙が後半出てくる。
そして、親友・アレックスからエイドリアンが自殺したという手紙。
そんな事から40年過ぎた、ある日。
トニー宛にベロニカの母親から500ポインドとエイドリアンの日記を託すという文書が
届く。
なぜ???
ベロニカの母親には、若い時、ただ1度しか会っていない。
親友エイドリアンの日記を何故、ベロニカの母が??
謎が深まります。
そして、トニーは、その謎を解くためにベロニカとの接触を試み、ついに会って話しを
聞くことが出来る。
トニーが抱く謎は、読み手にも大いに真相を知りたい謎。
そして段々と分かってくること。
過去の事柄。
語り手のトニーの一方的、思い込み。
若い頃の無神経さにトニー自身が苦しむこととなる。
最後に明かされた事実には、なんとも複雑な気持ちになりました。
エイドリアンの自殺の真相は想像するしかないけれど・・・・
頭脳明晰ゆえに、色々と思い悩んだんだろうか?
なかなか深い話でした。
離婚しちゃった元妻・マーガレットに好感が持てました。
トニーはマーガレットをこれからも何かにつけ精神的に頼るのかな?
★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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