発行年月:2012年7月
北朝鮮に渡って行った兄と「かぞく」の物語
人生に「もしも」はない。私たちの家族のひとりが「もしも・・・」と口にした時点で、きっと私たちの間で何かが壊れる。それが「何か」はわからないけれど、私たちの誰もが、この言葉を口にしたことがない。でも私は思ってしまう。もしも兄が帰国していなかったら?(本文より)。70年代に「帰国事業」で日本から北朝鮮に渡って行った3人の兄、旗振り役の総連幹部として息子を送り出す父と母。そして日本に残った私。国家や思想によって引き裂かれていく「かぞく」の姿を通して、「家族」とは何か、「国」とは何かを問いかける作品です。8月4日公開の映画「かぞくのくに」(第62回ベルリン国際映画祭アートシアター連盟賞受賞)の原作本として監督ヤン・ヨンヒ氏が自らの体験をもとに書き上げた真実の物語。
(小学館HPより)
北朝鮮のいろいろなビックリな内情が赤裸々と語られている。
辛く切ない著者の家族の話でした。
朝鮮の歴史って大雑把にはわかっているつもりだったけれど、そこに暮らしていた
人たちが、その歴史のなかでどんな風に生きたのかは知らなかった。
著者の父親は、元々は、南朝鮮の済州島の生まれ。
1942年多くの朝鮮人が日本に渡っていたこともあり、著者の家族も日本に
渡り、当時在日朝鮮人が多かった大阪の街で暮らし始める。
そして、父は総連幹部として働く。
やがて、祖国の済州島で4.3事件が起き、島は軍事政府が樹立され
1950年には朝鮮戦争勃発という事態になり、帰国が難しくなり一家は
そのまま日本に留まることを選んだ。
そして、朝鮮は、南北分断され、その対立は在日社会にも影響。
総連幹部の父は元は南の出身ということもあり幹部といえ肩身が狭い地位。
総連がやがて推し進める北朝鮮への帰国事業にも力を注がなければならない立場。
著者には3人の兄が居るが、次男と三男が、その帰国事業のため北へ帰る。
当時、北へ帰れば「地上の楽園」が待っていると言われ、大きな夢を抱いて
帰国した人々。
だけど、実状は、全く逆。
そして一家の跡取りである長男までも北へ帰国することになってしまう。
総連幹部の父親、母親も父と同じように総連の仕事に没頭することで
息子たちを帰国させたことを正当化させようとしていた。
そんな両親の言動を冷静に見て育った著者。
何かおかしい。と思いながら成長していく。
そして、何度か兄たちに会いに行く機会があり、北朝鮮の実状を見て気づく。
やはりこの国はおかしいと。
それを表現する方法を見出し、公にした著者の勇気は凄い。
長男のコノ兄の死は、辛すぎる(/_;)
著者は今は北朝鮮入国禁止を言い渡されている身。
言いたいことが自由に言えない国、北朝鮮・・・やはり恐ろしい国だ。
映像化された著者の作品も見てみたい。
★★★★★
発行年月:2013年2月
『永遠の0(ゼロ)』の百田尚樹、大暴走!!
最新書き下ろしは、出版界を舞台にした掟破りのブラック・コメディ!
◆あらすじ◆
敏腕編集者・牛河原勘治の働く丸栄社には、本の出版を夢見る人間が集まってくる。
自らの輝かしい人生の記録を残したい団塊世代の男、スティーブ・ジョブズのような大物になりたいフリーター、ベストセラー作家になってママ友たちを見返してやりたい主婦……。
牛河原が彼らに持ちかけるジョイント・プレス方式とは――。
現代人のふくれあがった自意識といびつな欲望を鋭く切り取った問題作。
「知っているか? 現代では、夢を見るには金がいるんだ」
(太田出版HPより)
面白かったぁ~!
出版業界の話も織り込まれていて、「へ~」 「なるほど~」などうなずきながら
読む箇所あり。
主人公の牛河原勘治(55歳)は、丸栄社の編集部長。
作家になることを夢見て送ってくる原稿の中から、これは!と思う人物に
コンタクトを取り、惜しくも賞は逃したけれど、このまま忘れられてしまうには
惜しい作品だと、著者の夢見る心をチクチク刺激し、出版社が後押しをするので
ぜひ、本にしませんか?と持ち掛ける。
中でも25歳の温井雄太郎(25歳)フリーターへの接触が面白かった。
将来は、ステーブ・ジョブズのようになると周りにも豪語している男。
その自信の根拠がわからない変な人。
しかし、牛河原にとっては、良いカモ。
温井の自尊心をくすぐるくすぐる・・・^m^
他にも周りのママ友のバカっぷりに嫌気がさしている主婦・大垣萌子は、自らを
賢いママとして「賢いママ、おばかなママ」という作品を応募してきた。
牛河原は、そんな人たちを騙して本人の夢(作家になれる)が現実のものになることを説く。
詐欺師の戦略が少しわかる。
面白いけれど、牛河原、悪い奴だな・・・と思いながらも、でもなぜか
憎めないと感じていたら・・・・あらあら、最後は「え?ホントは良い人?」
という展開になりました。
しかし、売れてる作家さんって、こうして考えると凄いなぁ~。
★★★★
発行年月:2013年7月
終戦前後の朝鮮半島と日本で、日本人引き揚げ者が味わった
壮絶な体験を赤裸々に綴る、息もつかせぬ愛と涙の
サバイバルストーリー。
1986年にアメリカで刊行後、数々の賞を受賞。
中学校の教材として採択された感動秘話。
(本の帯文より:ハート出版)
戦争体験記は、いろいろ読んだけれど、これまた壮絶な体験でした。
父親が満州で軍の仕事をしているため、母と姉とで朝鮮北部で暮らすヨーコ。
兄も居るのだが、弾薬工場に働きに行っている。
そんな家族の元に、共産党軍が攻めてくるから今すぐ、逃げるように知らせが来る。
兄に置手紙を残し、逃亡の旅に出る母と娘たち。
途中何度も命の危険に晒され、ハラハラ。
朝鮮人のなかにも自分たちも危険に晒されるのに家族を匿ってくれる者が居たり
運が味方してくれてなんとか日本に辿りつく母と娘たち。
しかし、それからも苦労は続く。
一番幼いヨーコを母も姉の淑世もとても強くて優しい。
自分たちが生きて行くために懸命に知恵を働かせる。
けれど、困っている人が居れば出来る範囲で手を差し伸べる。
辛い状況のなかでこそ、その人柄が表れるものだなぁ~とつくづく思い、
ヨーコの母親には頭が下がる思い。
残酷な場面も目にして来たし、辛い思いも沢山して来たけれど
ヨーコは決して当時の朝鮮人のことは悪く言っていない。
むしろ助けてくれた朝鮮の人たちに感謝の気持ちを持ち続けている。
あとがきで著者が述べている言葉、ひとつひとつが重い。
「出版された後、在米二世韓国人たちが本書に怒りを爆発させ、本を教材からはずす
運動をあらゆる手段を使ってやり始めた」・・・とあります。
そういう運動を起こした方々は著者の本心を理解されていない方達だと感じる。
著者は「本書を通じて世界中の人々が、真の平和の中に生きて行く事を
祈ってやみません。」と最後に言っています。
本当にその通り。
多くの人に読んで欲しい本です。
★★★★★
発行年月:2014年2月
東京のお菓子メーカーで働く中国出身のメイ。
天津への転勤が決まった彼にプロポーズされて――。
現代の日本と中国を舞台に、一対一で結ぶ夫婦という縁を描く「結婚」小説。
(中央公論新社HPより)
28歳の中国人・華 明月(メイ)は、留学生と日本に来て大学卒業後は
菓子会社に就職した。
大学で知り合った2つ年下の日本人の恋人が居るが、結婚に消極的で、このまま
付き合っていていいのか?と悩むメイ。
けれど、大手自動車メーカー勤務の彼が中国に転勤が決まり事態は急展開。
結婚して一緒に付いて来てと。
副業で、中国語講師としても働いているメイは急な申し出に困惑しながらも
プロポーズを受け入れる。
そして中国へ。
中国人と日本人のカップルによって繋がっていく、中国人と日本人の
人間関係が、いい。
こうして、1対1なら、相手を思いやれたりするのになぁ~。
でも喧嘩になると、つい中国人、日本人が絡んで来ちゃうのは辛いところ。
でも喧嘩しながらも分かり会おうと努力していけば、いいんだ。
舞台が日本になったり、中国になったり忙しいけれど、二人を囲む人たちも
皆、温かい人たちで、ほんわかした気分になれる。
最後は、数年後の様子。
みんな幸せそうでなにより。
中国語がたくさん、出てくるので多少読みにくいところもあるんだけれど
逆に中国のことがわかってそれも面白い。
歌がよく出てきたけど、実際にある曲なら聞いてみたいなぁ~。
★★★★
発行年月:2014年4月
片想いをモチーフにした連作短編集。
彼の部屋でラブレターを見つけた女、好きな人だけに振り向いてもらえないOL,
まだ恋を知らない女子高生、数か月で離婚したバーテンダー、恋人に会えない人気モデル、元彼の妻のブログを見ることを止められない二児の母・・・・・。
等身大の恋の物語
(発行:幻冬舎)
・五月の雨
・さっきまで、そこに
・ほんの、ちいさな場所で
・この夏も終わる
・雨が止むまで
・Too Late, Baby
・九月の近況をお知らせします
7つの短編、どれも恋の話だけど、ドラマチックなことは何も起きない。
誰かの日常を覗かせてもらっているかんじ。
ある意味、リアルかもね。
高校生の恋を描いた2つが好きだった。
<さっきまで、そこに>と<この夏も終わる>は、好きな人には思いが届かず
でも男子って、まだまだ男友達と居る時間の方が楽しかったりするんだろうなぁ~。
たわいもない話だけれど、こういう話を飽きずに読ませられるのは
やはり巧いってことなんだろうな。
しかし、大きな感動とかはないので、感想を書きにくいです^^;
この表紙の絵、くらもちふさこさんだったんだ~。
ずいぶん、漫画見てないけど、こういう絵だったっけ??
★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;