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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2021年3月


人工知能を搭載したAFと呼ばれるロボットのクララは、
病弱な少女ジョジーの家で暮らすことになる。
やがて二人は友情を育んでゆくが、一家には大きな秘密があった……
愛とは、知性とは、家族とは? 生きることの意味を問う感動作。
ノーベル文学賞受賞第一作


                (早川書房HPより)



最初は、お店のショーウインドウの中から外の世界を見て
誰かに選ばれるのを待つロボットのクララ。
お日さまの光を浴びると元気になれるので、出来るだけ、お日さまに当たりたい。
でも日によっては後ろの方に並ぶ日もあり・・・
そんなある日、クララと出会う。
二人は会った瞬間にお互いがかけがいのない存在になると直感。
クララに必ず迎えに来ると約束して去るが・・・・その後なかなか現れず・・・

そしてついにクララの家で暮らすことになる。
クララを選ぶとき、ジョジーの母・クリシーがクララにあるテストを
するのがちょっと気になった。
それはジョジーの真似を上手に出来るか?というもの。
賢いクララは巧く真似て母親にも気に入られたわけだけど・・・


クララとジョジーは、本当の友達のような関係になる。
けれどジョジーは時々、体調を崩しベッドで過ごす日も。
クララはジョジーに沢山のお日さまを浴びさせようとある計画を立て
隣家のリックもそれに協力する。
リックとジョジーは幼い時から仲良しで
この先もずっと一緒と約束し合っている。

クララがジョジーの家に来た理由は、単にジョジーの遊び相手としてという
ものではないことがわかったときは、ゾッとした。
クララが上手にジョジーの真似ができることをテストした意味がわかって
大人の身勝手さが恐ろしかった。


幸い、クララの思いが通じ、ジョジーが健康になったときはホッとした。

やがてジョジーは成長し、家を離れ自立するとクララは不要なロボットという
扱い。
哀しいけれど仕方ないのかな?
家族としてずっと家にいることも出来たと思うのだけど。。。。
でもクララは幸せそう。
ジョジーと過ごした日々を廃品置き場で回想している。

ロボットのなかには、自分が希望するような家に行けなかったものも
多く、そういう意味では相思相愛の家で過ごせたクララは幸せだったのかも。



カズオ・イシグロ氏の「わたしを離さないで」を随分前に読んだけれど
何か共通するものがある。
他の作品もまた読んでみよう。





                  ★★★★








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発行年月:2025年1月


コロナウィルス感染拡大のなか、小説家のヤマネは、『実践講座・身近な場所を表現する/地図と映像を手がかりに』という講座を担当することになる。PCを通して語られるそれぞれの記憶、忘れられない風景、そこから生まれる言葉……。PC越しに誰かの記憶が、住む場所も年齢もばらばらな人たちの別の新たな記憶を呼び覚まし、ゆるやかにつながりあってゆく。
読売新聞夕刊連載小説、待望の単行本化


                   (中央公論新社HPより)




コロナ禍でリモートの講座に参加するメンバーたちが

テーマに沿った情景や写真をそれぞれ提供し、みなで共有する。

知らない場所なのに、知っているような・・・懐かしいような・・・
実に楽しそうな講座で、いちいち頭のなかで景色やそこにいる人のことを
想像してしまうので読む速度は遅かった。
でもそんな時間が楽しい。
文章だけを追うと何ら変哲のないものだけれど・・・

コロナ禍がやや落ち着いた2年後、皆が集まった様子が
これまた凄く楽しそう。
会うのは初めてなのに、もう皆、友達というかんじで会話がポンポン弾み
そのかんじのまま、街を歩く。
こんなかんじならどこまでも歩いて行けそう。


後半の3枚の写真をそれぞれが提示し、そこに文章を付けるというのは
特に面白かった。



                       ★★★★



発行年月:2017年12月


まるで神話のようだ。新しい時代の母娘の。梨木香歩氏推薦!標準的見た目の中学生の私と、オカルトマニアで女子力の高い美月ちゃんは幼なじみでママ同士も友人だ。ある日、美月ちゃんとクラスの男子を誘い、幽霊屋敷へ肝だめしに行くことに。幽霊屋敷探検に発端におこる出来事を通じ母娘たちの葛藤と成長が描かれる。”母娘問題”を独特の観察眼で捉えた感動作。椋鳩十賞、小さな童話賞大賞受賞作家、安東みきえ氏、初の長編小説。


                     (講談社HPより)




中学1年生の志保と美月。

同じ日に同じ病院で産まれ、ママ同士も仲良くなり双子みたいに育ち
途中、美月が父親の転勤で3年間、大阪に行き、中学で再び一緒になった。

志保は私立の中学受験に失敗。
自分はそれでよかったと思っている。
全部、ママの考えに従っての結果だから・・・


志保の母親も美月の母親も、それぞれに娘は愛しているんだと思う。
接し方が随分、違うもので、それぞれ間違いではない。
でも、言葉の強さとかで娘としては反抗的になったり、することはあるよなぁ~。
特に志保の母の言葉は強い。
同じ良い方でももう少し、言葉を選んだ方がいいんじゃない?と読みながら感じた。


そんな志保と美月は、地域で幽霊屋敷と言われている空き家を探検しようと
いう話になり男子・日比野敦を誘い3人で屋敷へ。
玄関の鍵が開いていたこともあり中へ・・・・
でも、そこで異様な空気感を感じ慌てる3人。
そして、おまわりさんが現れ・・・・

屋敷を管理している同級生の祥吉が自分が母親から頼まれて屋敷に行ったとき
鍵をかけ忘れたから・・・と証言してくれて親が引き取りに来てそれ以上
大事にならずに済む。

その時の、母親たちの娘に対する様子も違う。
志保の母親は結構、厳しい(間違ってはいないのだけど・・・)。


そして屋敷の持ち主となった繭。
母親と暮らすのが嫌で別のマンションで暮らしていたが、戻ろうかと思うと。

祥吉が仲を繋いで知り合った志保と美月と繭。

それぞれの母親に対する気持ちが読んでいて、「ああ、わかる」というものだった。


最後、嵐が来て屋敷のなかで起きたことは、なかなかスリリング。
繭の母親は、やはり娘のことが心配であの家に留まっていたのかなぁ~?

疎ましく感じることもある母親という存在。
娘という立場で考えたり、娘を持つ母親という立場で考えたりと
なかなか考えさせられる内容だった。


あと、祥吉は良い子だな(^^)





                      ★★★★★







発行年月:2024年10月


大学のサークルを抜けたい姪のため、うその辞める理由を考えてあげたことをきっかけに、「うそ請負人」と頼みにされるようになった女性の困惑。会社の自転車置き場で、人間関係へのストレス発散のために同僚がとっていた思いがけない行動。日常の困ったことどもをやり過ごし、目の前の「今」を生き延びるための物語11篇。

                   (新潮社HPより)




11のお話、どの話も「ああ、こういうことあるよね~」

「こういう人、いたいた」と内心で過去の面倒な人間関係のことを
思い出してしまった(^^ゞ


最初の話<第三の悪癖>は、親友の大して聞きたくない話に辟易している独身女性・岩崎。
仕事場の休憩中にビニール袋に入った何かを叩きつけている中山さんを見かける。
母親の所有している食器を持ち出しては叩き割っているという。
二人は何となく意気投合。

岩崎さんも中山さんも真っ当な人なんだろうな。
真っ当な人同士、共有する時間を持てたらストレスを抱えていても
少し楽になれそう。


他の話も主人公たちは、それぞれ面倒くさい人間関係に翻弄されている。

表題作<うそコンシェルジュ>の主人公・みのりも真っ当で優しい。
成り行きで色々な人の悩みことを解決するために嘘を利用していく話。

姪の佐紀(大学生)がサークルの先輩の言葉がストレスで辞めたいけれど
なかなかやめさせてもらえないと言われ自分勝手な叔母を演じて先輩たちに
対峙し、先輩たちから姪を引き離すことに成功したり・・・
職場内の小島部長の悩み(ゴルフの誘いを断りたい)に乗って解決策を考えたり・・・
部長の姪の問題にまで・・・

一人では問題解決策がうまく運ばないと思いきや、助太刀が加わって・・・
もう芝居の段取りもすごくなって、可笑しかった^m^


他の話もままならない人間関係のなかで頑張る人たちの姿がなんだか
愛おしい。

最後の<居残りの彼女>は小学4年生のさなえが居残り教室で出会った6年生の
堀内さんとのこと。
同級生から悪気はないのだろうけれど、仲間外れにされ哀しい気持ちになっていた
さなえにとって堀内さんとの出会いは嬉しいものになった。
小学生時代の2歳上って凄くお姉さんに感じるけれど、大人になったら
ほぼ同年なんだけどね~。



今回も楽しませてもらいました。
津村さんの物語は心理描写が巧みで、うまいなぁ~と感心しちゃう。



                       ★★★★★







発行年月:2024年7月


コロナ禍がはじまり、終息に向かった。
これは目眩? 日常の隣にある別世界。
分別盛りの人々の抱えた困惑と不安を
ユーモアと活力あふれる文章で描く四つの日常奇譚集。
妻は売れっ子イラストレーター、夫は音楽家。30代の夫婦が不動産屋の仲介で移り住んだ理想の家。しかし夫が出張中のある夜、天井から異様な物音が……。気のせい? 事故物件? それとも……。
そしてある日、夫婦は隣家の秘密を知ることになる。
(「屋根裏の散歩者」)
酔い潰れ、夜更けの電車内でヴァイオリンを抱いて眠る老人。慌てて下りていった彼の忘れ物は、なんと遺骨。「才女好き」と噂された男の、四十年に及ぶ家庭生活に、秘められたものはいったい何だったのか。
(「妻をめとらば才たけて」)
亡き父の後を継いだレストラン経営がコロナ禍で破綻に瀕している。家庭がきしみ始め、しっかり者の母が倒れ、妻は子供を連れて出て行く。負の連鎖の中でどん底の男が、はまったのは、因縁付きの謎の植物。完璧なフォルム、葉の緑のグラデーション。マニアの世界は地獄より深かった。
(「多肉」)
認知症の義母が亡くなった。ようやく見つけた葬儀用の遺影。しかしその肩先には人の手が写っている。そして切り取られた半分には見知らぬ男が。
背景からすると、近くの動物園で撮影されたようだ。
慎ましく物静かで、実の娘息子にも本音を語ることのなかった人の心の内にあったものは?
(「遺影」)
現実と非現実の裂け目から見えた、普通の人々の暮らしと日常の裏側。
『鏡の背面』(集英社文庫、吉川英治文学賞受賞作)や『冬の光』(文春文庫)
の流れにつながる、人の心の不思議と腑に落ちる人生のリアリティにあふれる力作


                  (朝日新聞出版HPより)


4つの話、どれも惹き込まれるように読んだ。

ちょっと不思議で哀しいような切ないような・・・・

最初の
<屋根裏の散歩者>は、いったい屋根裏の物音は誰が出している音なのか?と
真相がわかるまで、ドキドキした。

まさか・・・リクガメとは・・・・(^^ゞ
でも、そんな飼っていると違法なもの、しかも大きくなって何十年もまだまだ
生きるものがいるとしたら、わたしなら他へ引っ越したいな。
貴之、のんきすぎないか?(笑)



<妻をめとらば才たけて>
72歳のバイオリンが趣味の男が電車内に忘れたものは紙袋に入った骨壺だった。
最初から「えぇ~!」という衝撃だった。
でも、物語を読み進めるうちに彼がどれだけ妻を愛していたのかがわかり
切なくなった。
コロナさえなければ・・・



<多肉>
これはちょっとホラーっぽかったな~。
人から貰ったアカべ(和名ではリュウゼツランとか)を繁殖させることに
のめり込んでいく男のはなし。
男の異常さに呆れ、家を出てその後、離婚を果たした妻は逃れられてよかった。
男の切羽詰まった心理が読んでいて苦しかった。
でも最期は、そんなに苦痛そうじゃなかったから、ちょっと救われた。



<遺影>
亡くなった義母の遺影になりそうな写真を探していて
1枚の自然な笑顔の写真を見つける。
自分が撮った義母らしいけれど、その肩に手をかけている男に覚えがない。
よく一緒に行った森林公園内にある、ふれあい動物園で撮ったものだけれど。。
義母が楽しそうに接していた猿山の人格者というコーヘー?
写真は確かに人間だけれど・・・

これは少し不思議な話だったけれど、そういう不思議もあっていいかもと
心が温かくなる話だった。


篠田さんの長編も好きで読むけれど、この短編集もよかった!



                   ★★★★
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