1982年5月(文庫本)
太平洋上に張られた哨戒線で捕虜となり、
アメリカ本土で転々と抑留生活を送った海の兵士の知られざる生。
小説太平洋戦争裏面史
(新潮社HPより)
次女が夏休みの読書感想文の課題図書のなかから選んで読んでいたので、
わたしも読んでみました。
太平洋戦争初期の昭和17年4月に太平洋上で敵艦を見つける使命で、漁船に乗り込みその任務中、捕らえられ捕虜生活を送ることになった中村末吉氏。
4年半に及んだ捕虜生活の全貌を著者が取材し、物語にしたという本書。
アメリカ艦隊を見つけるために乗り込み敵艦を探す中村氏たちは、敵艦をみつけ、無線で知らせるのですが、それは敵にも容易に傍受され、直ちに中村氏の船は攻撃により撃沈。
そうなることは予測済みであり、死を覚悟の上の任務でありそれで死ねるのなら名誉なことという考えが当時の最前線で戦うものたちには共通した考え方であった。
が、中村氏の予想に反し、捕らえられてしまった。
命のあることを喜ばす、死ねなかったことを悔やむ。
捕らえた側のアメリカ兵たちにはその考え方は理解不能だったというけれど、読んでいるわたし自身もアメリカ兵の考えと同じ。
当時の日本人の考え方が特異なものだった。
捕らえられてからも、なんとかして自決しようと食事を断ったり抵抗を示す。
捕虜に出される食事は栄養がありそうな豊かなもの。
そして、次第に考え方を変えていく。
必ず、助けが来る。そのとき、弱っていたはダメだ。体力はつけておこうと。
捕虜として背中にPW(prisoner of war)と記された服を着せられている。
アメリカ兵たちは、捕虜になったことは恥じるものではなく、懸命に戦った証であるから誇れるものだと中村たちに言う。
そのときは、アメリカ兵の言葉に共感できるはずもない中村たちだっただろうけど、
人間らしく敵国の日本人を扱い、本土に帰してくれた。
歳月が経ち、振り返ったときに、その言葉に共感出来る物があったのかな?
本書の表題の意味をあれこれ自分なりに考えてみた。
敵国アメリカ。鬼畜米兵。
最前線で懸命に戦う兵たちに捕虜になったら恥だ。自決せよとまでの教育をしていた軍の上層部。
日本の国全体が恐ろしい考え方で洗脳されていたことに驚く。
戦争の物語は沢山、読んできたけれど、淡々と描く捕虜生活のなかで
生活していた日本人の精神的苦悩がよくわかる本。
文章も分かりやすく、物語に没頭して読めた。
ほかの書も読んでみたくなった。
★★★★★
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記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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