発行年月:2021年3月
(角川書店HPより)
今回の語り手は3人。
聞き手は、三島屋の次男・富次郎(22歳)。
従姉のおちかから引き継いでの役目。
<第一話 火焔太鼓>
語り手は、武士の中村新之助(仮)。
10歳のときの体験を語る。
国元の伝わる火消の役目をする太鼓の話。
<第二話 一途の念>
語り手は屋台のだんごやのおみよ(16歳)、
おみよの両親の話。父親は料理やの息子。肺病を患い、店から離れて
一家は暮らすことに。母親の夏栄は、元は店の仲居だった。
病気は快方に向かうと再び料理やに戻るが、後妻をもらうことになり・・・
<魂手形>
語り手は粋な浴衣姿の富吉(70歳)。
15歳のときの不思議な体験話。
あの世にいけない水面をあの世に連れて行く手助けをする七之助との
出会い。
最後の話が、やはり表題作っぽく一番、百物語らしかったかな?
話は、怖いのに、挿絵が可愛らしいから夜寝る前に読んでも平気で
助かった(^^ゞ
おちかのお産が近いというおめでたい報せがあり、嬉しくなったけれど
最後に何やら不穏な空気。
無事にお産が済みますように・・・。
今回も楽しませてもらいました。
★★★★
発行年月:2019年12月
(毎日新聞出版HPより)
三島屋の百物語聞きの役目をしていた、おちかが嫁に行き、
生家に戻った次男坊の富次郎がその役目を引き継いでのお話。
おちかから、変わってどうなる?と思ったけれど、いいかんじで良かった。
語り手の気を楽にするような雰囲気があるようなかんじ。
自身は話を聞くことに専念し、変に深入りせず淡々と話が進んでいく様子も
好き。
お話は4つ。
表題の<黒部御神火御殿>がやはり一番、印象的かな?
話は長いけれど、ドラマになったときも面白そうだなと思いながら読んだ。
面白いけど、ちょっと怖い。
異形の屋敷に迷い込んだ6人が屋敷のなかにあった6枚の印半天を見つける。
そして6人は巨大な迷路のような屋敷を捜索し、みつけた大広間の火山の絵。
それは最初、絵と思ったら、今にも噴火しそうにグツグツと溶岩を煮えたぎ
らせる音が聞こえ、以前にもここで人が焼かれたのか?と思わせる形跡。
結局、屋敷をなんとか抜け出せたのは、最初に語りに来た甚三郎と
その後日、三島屋を訪れたお秋の二人。
途中、おちかも登場し、幸せな結婚生活を送っている様子にホッとした。
まだまだ続いて欲しいシリーズ。
★★★★
(PHP研究所HPより)
文庫屋として独立するまでの北一。
陰で支えてくれるのは、亡くなった千吉親分のおかみさん松葉。
目が不自由だけれど、勘がよく人の動作やちょっとした空気感でまるで
見えているような洞察力。
北一のよきアドバイザーの役割。
きたきた捕物帖というからには、も一人の『きたさん』はいつ登場?と
期待しつつ読んでいたので、湯屋で働く喜多次の登場に「おぉ~!」となった。
最初は「?」と思ったけれど、なかなかのやり手の様子。
これからの二人が楽しみな新シリーズ!
悪だくみをしているものが最後には、痛い目をみる話たちは
読んでいて小気味いいな。
喜多次の詳しい生い立ちも今後、わかってくるのかな?
★★★★★
発行年月:2019年7月
親子の救済、老人の覚醒、30年前の自分との出会い、仲良しロボットとの別れ、無差別殺傷事件の真相、別の人生の模索……淡く美しい希望が灯る。宮部みゆきの新境地、心ふるえる作品集。
『さよならの儀式』刊行によせて
〈10年前、新しく始まるSFアンソロジー『NOVA』(大森望責任編集、河出文庫)に参加しませんか----と誘っていただいたとき、これまでのような「なんとなくSF」ではなく、「ちゃんとSF」を書こうと思いました。その積み重ねで出来上がったのが本書です。歳月のなかで私が変化したところと変化しないところが浮かび上がり、作家的血液検査の結果を見るようで、嬉しくもあり恐ろしくもある作品集になりました。〉----宮部みゆき
収録作品(全8編)
「母の法律」
虐待を受ける子供とその親を救済する奇蹟の法律「マザー法」。でも、救いきれないものはある。
「戦闘員」
孤独な老人の日常に迫る侵略者の影。覚醒の時が来た。
「わたしとワタシ」
45歳のわたしの前に、中学生のワタシが現れた。「やっぱり、タイムスリップしちゃってる!」
「さよならの儀式」
長年一緒に暮らしてきたロボットと若い娘の、最後の挨拶。
「星に願いを」
妹が体調を崩したのも、駅の無差別殺傷事件も、みんな「おともだち」のせい?
「聖痕」
調査事務所を訪れた依頼人の話によれば----ネット上で元〈少年A〉は、人間を超えた存在になっていた。
「海神の裔」
明治日本の小さな漁村に、海の向こうから「屍者」のトムさんがやってきた。
「保安官の明日」
パトロール中、保安官の無線が鳴った。「誘拐事件発生です」なぜいつも道を間違ってしまうのか……
(河出書房新社HPより)
8編の短編、どれもそれなりに面白かったけれど、やはり宮部さんは長編の方がいいなぁ~。
印象的だったのは、最初の「母の法律」。
虐待を受ける子どもの保護のため、国家が親権を管理する法律・・・マザー法。
実母が死刑囚の二葉は、保護施設のグランドホームで平穏に過ごし、さらに新しい両親の元でも
幸せに過ごした。
が・・・突然、知る事実。
実母と再会する最後の場面・・・・うわ~やりきれない。
二葉はこのあと、どういう風に生きていくんだろう?凄く気になる。
表題作{さよならの儀式」は、ずっと一緒に暮らしてきたロボット・ハーマンに不具合が度々、起こり
廃棄することになったのだが、なかなか決心がつかない女性とその女性に対応する
廃棄手続き窓口の技師のやり取り。
ロボットとはいえ、愛着沸いたら、別れは辛いよね~。
ちょっと哀愁漂う、近未来的なSFの話たち。
まあまあ楽しめた。
★★★
発行年月:2018年11月
『希望荘』以来2年ぶりの杉村三郎シリーズ第5弾となります。中篇3本を収録する本書のテーマは、「杉村vs.〝ちょっと困った〟女たち」。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザーを相手に、杉村が奮闘します。
収録作品――あらすじ――
「絶対零度」……杉村探偵事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの品のいいご婦人だった。一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院ししてしまい、1ヵ月以上も面会ができまいままで、メールも繋がらないのだという。杉村は、陰惨な事件が起きていたことを突き止めるが……。
「華燭」……杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。小崎さんは妹(姪の母親)と絶縁していて欠席するため、中学2年生の娘・加奈に付き添ってほしいというわけだ。会場で杉村は、思わぬ事態に遭遇する……。
「昨日がなければ明日もない」……事務所兼自宅の大家である竹中家の関係で、29歳の朽田美姫からの相談を受けることになった。「子供の命がかかっている」問題だという。美姫は16歳で最初の子(女の子)を産み、別の男性との間に6歳の男の子がいて、しかも今は、別の〝彼〟と一緒に暮らしているという奔放な女性であった……。
(文藝春秋HPより)
杉村三郎シリーズですね。
離婚して別れて住んでいる娘の桃子ちゃんは小学5年生になりましたかぁ~。
杉村の日常は、割合のほほんとしたもので、大家家族との関係も
微笑ましいのですが・・・・
関わる事案が、なんとも後味悪いものばかり。
最初の話は読んでいて、腹立たしく思えてきた。
こんな人間関係に巻き込まれたら、本当に不幸。
自殺した女性も自殺未遂したという女性も気の毒。
結婚相手の交友関係も自分に降りかかることがあるって
良い関係ならいいけれど、こんな関係は本当に迷惑。
これは殺害した者に大いに同情しちゃいました。
他ふたつも・・・ごちゃごちゃした人間関係に辟易。
だから、時々和む、杉村の日常はいい感じ。
★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;