東京でカメラマンとして活躍する弟。
実家に残り、家業と父親の世話に明け暮れる兄。
対照的な兄弟、だが二人じゃ互いを尊敬していた、あの事件が起きるまでは・・・。
著者、監督による同名映画『ゆれる』を自ら小説化した作品
(本の帯文より)
少し前に映画を先に観ています。
この本の表紙写真を観るだけで、映画でみたこの橋の上での情景が浮かんで来るよう。
小説は、映画とほぼ同じでしたが、真反対のような性格で、周囲にも子どもの頃の評価も
兄は細かい気遣いの出来る優しい人間。
弟はいたづらばかりしているヤンチャで乱暴者。
稼業のガソリンスタンドを継いだ兄とやりたい事を求めて東京に飛びだした弟。
何年も実家に戻らなかった弟だが、母親が亡くなり、法事で帰り、久しぶりに兄弟は顔を合わす。
兄弟それぞれに対する想いは昔と変わらず、お互いの今を、それぞれが認め尊敬もしている。
が・・・そこに第三者である幼なじみでもある智恵子が加わることにより、兄弟がそれぞれに抱く心の奥深くにあった物が動き出す。
兄がずっと自分の気持ちを押し殺して、いつも穏やかにいたのかと思うと、人って怖いな~なんて思ってしまう。
こういう人間に、気がある素振りの欠片でも見せるのは、危険だ。
そう思うと、美智子には気の毒だが、ちょっと非はあったのかも。
映画を見た時にも感じたけど、ラストは、一見明るいけど、なんとなく胸の奥がモヤモヤした読後感でした。
そういうラストもこの物語のラストとしては、ピッタリで、
映画もすごく良かったけど、小説も良いなと思わせてくれました。
★★★★
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山荘での退屈な時間を過ごすために発明(?)された、独創的な「遊び」の数々・・・・・ケイバ、顔、それはなんでしょう、軍人将棋。魅惑的な日々の「遊び」が、ひと夏の時間を彩ってゆく。小説家「コモロ-」一家の別荘に集う、個性的な(実在する!?)友人たちとの夏の出来事をつづる、大人の青春小説。第一回大江健三郎賞受賞作家による朝日新聞夕刊連載の単行本化。
(朝日新聞出版HPより)
著者の私小説でしょうか?
夏になると作家の「コロモ-」氏の別荘に集まる人たちの、可笑しな遊びの数々が披露されます。
とくにそこに珍しい出来事が起こるわけでなし、延々と大人同士が山荘の中で遊ぶ様子が書かれているのです。
最初は「なんじゃこりゃ?」なのですが、読んでいくと、なんだか、そんな世界に自分も浸かっているかんじ。
登場人物たちの普通の会話のやりとりが、妙に可笑しい。
遊びは、全部、家の中で出来る物。
麻雀パイを使った「ケイバ」という遊びやら、軍人将棋にも特別な役割の駒を増やした遊び。
物を全く使わない遊びも可笑しかった。
「それはなんでしょう」と「ダジャレしりとり」最高!
わたしも遊びたい!
一緒にやってくれる人、居るかが問題だけど・・・・^^;
こんな小説、初めて。
意外性のある小説。
読み始めて、暫くで「あ、つまんない」と思った人は、最後までつまんないかもしれないけど、読み始めて「へ~おもしろそう」と思ったら、最後まで、そのかんじは持続します(笑)
わたしは、後者だったので、最後まで面白く読めました。
そういえば、中学生の頃、軍人将棋、よく弟と二人でやったなぁ~。
すっかりル-ルは忘れたけど、また遊びたくなった!
★★★
有栖川有栖氏や山田正紀氏をはじめ、選考委員の圧倒的支持を得て、日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
巧妙な伏線に緊迫の展開、そして意外な真相。
ラストは切なく温かな想いが待ち受ける。
珠玉のミステリ-短編集
(双葉社HPより)
初めて読む作家さん。
読み終わったら、ファンになりました!!
4つの短編が収められています。
「迷い箱」・・・更正保護施設の所長、結子とそこで暮らしていた入所者の話
「899」・・・消防署勤務の諸上とそこで同じく仕事をする隊員と、ある火災事故での話
「傍聞き」・・・刑事課主任の啓子が関わる通り魔殺人事件と自宅近辺で起こった盗みに関わる話
「迷走」・・・救急隊員が要請で駆けつけた相手は隊長と、その娘の婚約者である隊員に関わりのある人物だった。
どの話も短かい話のなかに引き込まれるものを感じました。
それぞれ、人に密接に関わる職業のなかで、懸命に仕事に臨む人たち。
読んでいて、その真摯な姿には胸が熱くなりました。
「迷い箱」は、切なかったなぁ~。
更正保護施設:刑務所を出たあと、身寄りのない人に食事と住む場所を与え、社会復帰を手助けする施設。
そこで施設長として働く結子は60歳を迎え、そろそろこの仕事から引こうかとも考えている。
入所者のためにした事が徒労に過ぎないのでは?と思って。
しかし、一人の男の社会復帰に関わり、思い直す。
ラストは、泣けました。
「899」(要救助者)は、消防署のレスキュ-隊員の話。
ある火災現場で、目撃した事実を隠蔽する話なのですが・・・その理由が他人のことを思いやっての事。
この行為については、賛否が分かれそう。
幾ら考えても、これが正しかった行為か否か判断がつきませんでした。
「傍聞き」は、勉強になりました!
この言葉、初めての言葉。字から想像すると、傍らで聞く・・・聞き耳を立てて聞くことかな?なんて思ったら、違いました^^;
刑事さんではよく使うのかな?
漏れ聞き効果を狙って、どうしても信じさせたい情報を別の人に喋って、それを信じさせたい本人に聞かせることだとか。
これが物語のなかに活きている話。
最後になるほど!!と思いました。
さすが、表題作!傑作です!!
「迷走」は、救急車の要請があり、駆け付けた先には、何者かに刺された男。
意識はあるが、早く処置をしなくては!
あれこれ会話するうちに、隊長と、その娘の婚約者である隊員に関わりがある人物でありことが判明。
どうするの?どうなるの?とハラハラドキドキしながら読みました。
そして、これも、最後は、なるほどそういう事ね!と納得。
でも少し冷静に考えると隊員たちに話さず事を進めようとする隊長・・・・格好良いけど、チ-ムで動く仕事なので全てナイショじゃこの場合、かえって危険です。
実際には、ありえない事でしょう。
ま、そうしないとこの話は面白くないので、それは考えちゃダメな事かもしれませんが・・・^^;
初めて読んだ作家さんでしたが、わたしの中ではかなり良かった!
次は長編を読みたいな。
他にも短編はあるみたいですが、これだけ面白い短編が書けるのなら・・・と期待しちゃいます。
★★★★
スポ-ツインストラクタ-の克己と弁護士の彩は、血の繋がりのない義理の姉弟。成人した今、克己の彩に対する感情は、姉以上のものになっていた。そんな中、彩の不倫相手が彼女の職場で急死する。助けを求められた克己は、彼女を守るため遺体の処理をするのだが・・・・・。
(本の帯文より)
最初にこの表紙から想像される(どんな?^^;)ような義理の姉と弟の関係は、なかった事に少しホッとしました。
もっと二人の濃厚な何かがあるのかと勝手に想像しちゃっいました。
彩の母親と克己の父親が再婚したのは、彩16歳。克己9歳の時。
その頃から彩は成績優秀でハイレベルの高校でも常に学年5番を下らない成績。
父親は度々、「彩に出来ておまえに出来ないはずはない」と克己に勉強しろと強いる。
なんとか、彩と同じ高校に合格したら、彩は弁護士を目指しているから、おまえは医者になれと。
なんていう身勝手な親でしょう・・・・・^^;
呆れちゃう。子どもの気持ちを全く考えず、自分の考えを押し通す親。
克己が抑圧されて、起こす行動もムリはないななんて思ってしまいました。
でもそれは、大事に至る前に偶然、実家に来た彩によって阻止されるのですが。
大人になった彩は、弁護士の道を歩み、テレビのコメンテ-タ-として出演するほど。
そして、彩の身にある不運が起こり(帯文に書いてあること)、それを助ける克己。
それから二人は同じ秘密(罪)を抱えながら、頻繁な連絡を取り合うように。
成績優秀で何も問題がないように見えた彩にも苦しい悩みを抱えていた。
だから、不倫相手に島岡のような男を選んだというのも哀しい。
怖かったのは、島岡の妻。
彩にとっては、会いたくない人。
でも、かつて、夫が法律相談で彩に世話になった事があるのを知っていて、訪ねて来る。
そして、夫が亡くなったことで心細い自分の助けになってほしいという態度で近づいてくる。
こういう女性、こわ~い。
登場してくる全部の人の考え方、行動には、全く共感出来るものはないけれど、物語としては結構おもしろかったかな?
ラストは、もうちょいその先を教えて欲しいなぁ~みたいな終わりでしたが、想像して楽しむのもいいか?
★★★
ある日、四姉妹の長女(艶子)が突然、家から出てしまい、東京で長女と一緒に暮らしていた次女が実家の末っ子に、電話でそれを知らせる。
長女は何処に行ってしまったのだろう?
長女:艶子(つやこ) 次女:菓子(かこ)
三女:虹 四女:棗(なつめ=ナメちゃん)
四姉妹の物語。
東京では長女と次女が暮らしていて、実家では両親、三女、四女が暮らしている。
ある日、次女から「長女が謎のメモを残して居なくなった」と電話で知らせが入る。
電話を受けたのは、四女。
そんな始まり方から、何処に行ったのかな?なんて姉妹であれこれ考えつつ、それぞれの抱えた恋の悩みやら家族との関わりでのことが綴られていきます。
居なくなっちゃった長女、艶子本人が語る部分もあるので、事件性はなく、ちょっと今ある場所から離れてみたかっただけかな?なんて思いながら読んでいました。
四姉妹が交代で一人称になるので、ちょっとわかり難い部分ありますが、ま、読み続けると頭の中で「あっ、これは四女のことね・・・」なんてわかってきて、それが意外とわたしには面白かった。
四姉妹それぞれの性格の違いみたいのもわかるし、居なくなっちゃった長女が抱えていたこともなんとなくわかって、はっきり何故いなくなったのか?は語られないけど、それはそれでよかった。
これは、兄弟姉妹の長女だったら、ある程度、理解できる感情かも?
わたしも長女なので、「うんうん・・・なんだかわかるわ~」という部分がありました。
最初に出てくる、長女が書いたと思われるメモは、ちょっとした詩のような作文のようなものなのですが、最初は「?」な内容で、でも最後まで読むとフムフムなるほど。。。なんてかんじになるから不思議。
そして表題の「蝶番」(ちょうつがい)の意味も。
はっきりこれも書いてないけど、家族を繋いでいるものの例えでしょうか?
長女の言葉で「蝶番をはずしていく。はずして捨てるのではなく横に置く」と後ろの方にあるので・・・。
この著者の名前、初めてみたな~本のプロフィ-ルを見たら舞台女優さんなんですね?
そして、演出もてがけられるとか。
さらに歌詞提供やクラブイベントの企画、ファッション・ショ-への出演などなど多様な活躍をされている方だそうです。
わたしのなかでは、この物語、かなり良かったので、今後も違う作品を読んでみたいな。
なんて思いました。
★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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