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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2013年7月


知らないままでいられたら、気づかないままだったら、どんなに幸福だっただろう――。

革命児と称される若手図書館長、中途半端な才能に苦悩しながらも半身が不自由な母と同居する書道家と養護教諭の妻。悪意も邪気もない「子どものような」純香がこの街に来た瞬間から、大人たちが心の奥に隠していた「嫉妬」の芽が顔をのぞかせる──。いま最も注目される著者が満を持して放つ、繊細で強烈な本格長篇。

                     (新潮社HPより)


登場人物たちの心理描写が巧い!!

書道家の秋津龍生は、大きな章を今だ獲得せず、高校の養護教諭である妻・怜子に
経済的に頼る日々。
そして半身不随で痴呆が進む母親を自宅で介護する。


林原信輝は図書館館長。
祖母の元で生活していた妹の純香(25歳)を最近、引き取り一緒に暮らし始めた。
純香は知的障害があり物事の判断が一人では出来ないが
唯一の能力が書道。
どんな書でもそっくりに真似て書くことが出来る。
が・・そんな真似をしたときには×をそこに書くことを祖母から約束されていた。


そして、書道家である秋津の個展に出向いた純香が秋津と出会う。
秋津に対して物怖じせず、自分の書を見ての意見を述べる純香に興味を覚える秋津。

そして、養護教諭の怜子の学校に講演で訪れた信輝。


秋津夫妻と林原兄妹・・・・2組の男女が知り合い、接近していく。
そんななかで生まれていくそれぞれの感情。

嫉妬芯だったり猜疑心だったり、好奇心だったり・・・・

取り繕う顔の下に隠された人の本音や気持ちの葛藤が巧く表現されていて
巧い!!と思う。
そんななか、心身共に無垢な純香の言葉が新鮮でした!
無垢ゆえに他者を追い詰め自身が傷ついてしまったのは哀しかった・・・(/_;)

養護教諭の仕事上での関わる女子生徒・君島との話も衝撃的でした。


色々な要素が織り込まれているのに、巧くそれらが結びついて
驚きのラスト!

もう理想的な物語の展開です!!

すごい作家さんだと思います!!
今後の作品も期待します!!


                         ★★★★★


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41q9RekpLpL__SL500_AA300_.jpg 発行年月:2013年1月


ホテルだけが知っている、やわらかな孤独
湿原を背に建つ北国のラブホテル。訪れる客、経営者の家族、従業員はそれぞれに問題を抱えていた。閉塞感のある日常の中、男と女が心をも裸に互いを求める一瞬。そのかけがえなさを瑞々しく描く。


                   (集英社HPより)




ラブホテル「ホテルロ-ヤル」に関わる人々の話が短編7編で綴られます。
ラブホテルが舞台なので・・・そういう場面もありますが・・・・いやらしい感じは不思議とせず
そこには、なんとも言えない哀愁が漂っています。


最後の話「ギフト」は、ホテルの出来るまでの話。
ホテルを建てた田中大吉は、今は入院中。
娘の雅代がホテル経営を引き継いだ。
前の話、雅代が語る「えっち屋」と一緒に読むと、ホテル経営の家族の物語がはっきりわかる。

父・大吉は、母・るり子とは再婚。
娘の雅代は、両親が結婚するまえに出来た子ども。
しかし、雅代が高校卒業後すぐに母は家を出て行った。
噂では、ホテルに出入りしていた飲料水メ-カ-の男性と一緒とか。


最後の「ギフト」では、ホテル経営を始める前の大吉とるり子は仲睦まじかったんだと
知れたのは、ちょっとホッとしたところ。

全体を通して、切なくて暗いかんじが漂っていて・・・・決して読んでいて楽しくはないんだけれど
桜木さんの書く物語は、何か惹かれるものがある。


ホテル廃業後の雅代の生活が気になるなぁ~。
るり子のその後も気になるし・・・・。

続編はないのかな?


★★★★

a68eed85.jpeg発行年月:2012年4月

きて行きさえすれば、いいことがある。

笹野真理子が函館の神父・角田吾朗から「竹原基樹の納骨式に出席してほしい」という手紙を受け取ったのは、先月のことだった。十年前、国内最大手の化粧品会社華清堂で幹部を約束されていた竹原は、突然会社を辞め、東京を引き払った。当時深い仲だった真理子には、何の説明もなかった。竹原は、自分が亡くなったあとのために戸籍謄本を、三ヶ月ごとに取り直しながら暮らしていたという――(「かたちないもの」)。
 道報新聞釧路支社の新人記者・山岸里和は、釧路西港の防波堤で石崎という男と知り合う。石崎は六十歳の一人暮らし、現在失業中だという。「西港防波堤で釣り人転落死」の一報が入ったのは、九月初めのことだった。亡くなったのは和田博嗣、六十歳。住んでいたアパートのちゃぶ台には、里和の名刺が置かれていた――(海鳥の行方」)。


 雑誌「STORY BOX」掲載した全六話で構成しています。


                                          (小学館HPより)


6編の短編集。
「かたちないもの」
「海鳥の行方」
「起終点駅」
「スクラップ・ロ-ド」
「たたかいにやぶれて咲けよ」
「潮風の家」
それぞれ違う話だけれど、二番目の話「海鳥の行方」と「たたかいにやぶれて咲けよ」は
主人公は同じで新聞記者の山岸里和が取材先で出会った人との話。


どの話も重いものがあり、平穏な暮らしのなかに大きなものを抱えている人たちの話。
切ない気持ちにもなる。
でも残された者は、その人のことを生涯忘れずに前を向いて進む。
いろいろ考えてしまった。

特に印象的だったのは、「スクラップ・ロ-ド」かな?
早すぎた出世を妬まれ、嫌がらせに耐え切れず銀行を自主退社した男。
偶然、粗大ゴミをあさっている男女を目にする。
男は、幼い自分と母親を捨てた父親だった。
この話のラストは、なんとも切なかったなぁ~(/_;)
男の父親の最期が哀し過ぎる。
けれど、そんな父の最期を受け止めて男は奮起するのかな?・・・して欲しい!!


桜木さんの物語は、ちょっと暗いかんじが多いけど、じ~んと来るものがあるな。


                                         ★★★★

 


51D9bT7ZnZL__SX230_.jpg   発行年月:2011年11月


   傷はいつかふさがり、ふたたび生まれ変わるだろう――



月明かりの晩、よるべなさだけを持ち寄って肌をあわせる男と女。死の淵の風景から立ちあがる、生の確かなきらめき。つまづいても傷ついても、人生は何度でもやり直せる、きっと――。今注目の著者による傑作小説!

                                          (角川書店HPより)



期待を裏切らない作家さんのひとり。
新刊を心待ちにしてました!!

今回のお話は、今までのとは、ちょっと雰囲気違って・・・でもとても素敵なお話でした♪

短編連作のかたちで、登場人物に関係ある人が、それぞれ主人公になってお話が進む。
そして、最後は、みんなが集う場面で・・・
心が温まるお話になっていました♪


最初の話に登場の柿崎美和。
その後の話にも出てくる、瀧澤鈴音と八木浩一。
おなじ高校で共に医学部進学を目指していた親友。
八木だけ、学力、経済面など考えて放射線技師の道に進んだけれど、親交は続いていた。

鈴音が癌に侵され、自身が営む病院を美和に託したいと願い、美和はそれを受ける。
けれど、鈴音を助けてみせる!と心に決めて・・・・

鈴音と元夫・志田拓郎。
病院看護師の浦田寿美子と元患者の赤沢。
本屋の店長・佐藤亮太と元店員の詩緒。

それぞれの恋バナもなかなかよかったなぁ~。

八木だけ、ちょっと切なかったけど・・・・

物語の冒頭は、なんだか暗く重たかったので、、どんな話の展開になるのか??と不安だったけど良い意味で予想を覆す温かい物語でした♪


しかし、いろいろな話を書ける作家さんだな~。

ますますファンになった!!


                                          ★★★★★

 

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発行年月:2011年8月

愛は要らない、と言える狡(ずる)さも愛が欲しい、と叫べる強さもその女にはなかった。それでも――。

父親の酒と暴力に支配される愛のない家――。北海道の開拓村から奉公に出された百合江(ゆりえ)は、旅の一座に飛び込む。「歌」が人生を変えてくれると信じて。押し寄せる波に翻弄されながら一切の打算なく子を守り生き抜いた女の、他人の価値観を寄せつけない「見事」な生が、息もつかせぬ圧倒的な筆力で描かれる。新感覚のストーリーテラー北に現る。


                                          (新潮社HPより)


すごい物語だった!
一気に読ませる力にも脱帽!

物語は、最初は現代の話。
それから・・・そこで出てきた女性二人・理恵と小夜子のル-ツを知らされるような物語へと移る。

理恵と小夜子は、母親同士が姉妹。
それぞれの母親である百合江と里実の幼いころからの話が始まるのだけど、百合江の話が中心かな?
二人の両親は北海道の開拓村に住み、一家の暮らしはとても貧しい。
父親は酒癖が悪く、母親に暴力を振るうことは毎日。
幼い弟たちの面倒を見たり、家事を手伝ったりの百合江が不憫。
進学したいと思っていたのに、奉公に出されることになる。
そして今度は自分が家のなかでしていた苦労を里実が引き継ぐ。

やがて成長した姉妹は、それぞれ家とは疎遠な状態になり、自分たちの働き場所で懸命に働き、それぞれ伴侶を得る。
里実は奉公先の理髪店での働きを認められ親方の息子と結婚。
店の経営は順調で里実の采配が一家を支えるまでになる。

一方の百合江は偶然、目にした旅芸人の歌や踊りに惹かれ、その一員になる。
そして知り合った女形役者の宗太郎との間に女の子・綾子を産むが宗太郎は姿を消してしまう。

その後、知り合った役所勤めの高樹春一と結婚。
姑との同居が始まるが、この姑がとんでもない意地悪!
おまけに春一には多額の借金があった!
二人の間の子を出産時、長女の綾子を姑に預けたのだが、とんでもないことになり・・・・
春一は外で遊びまわり家には帰らない日が続く。
全部、百合江のせいだと言う姑。ホントに鬼のような人だ~。

とまあいろいろと苦労の連続の百合江。
妹の里実が居なかったら、もっと大変なことになるところだったけど、姉妹っていいな。
心強い味方としていつも里実がそばに居てくれて、読みながら、姉妹はずっと離れないで~なんて思った。

時々、大人になった理恵と小夜子の話に変わるのだけど、この二人は従姉妹という関係だけど実質姉妹と変わらないかんじ。

終盤、理恵と小夜子が百合江の二番目の夫だった高樹から話しておきたいことがあると連絡を貰い、老人ホ-ムに入所中の高樹を訪ね、聞いた衝撃の事実には驚いた!



苦労続きで幸せを掴んだと思えば、またその幸せを逃がして・・・・という百合江の人生だったけど、高樹の告白から知った事実には、百合江が知ったら、驚くかもしれないけどホッとするようなこともあって、少し最後は救われた。


兎に角、すごくよく出来たスト-リ-で最初から最後まで頁をめくる手が止まらないかんじだった!

やはり、この作家さんは凄い!
まだ作家デビュ-してからそんなに年数立ってないけど、これからの作品も大いに期待したい!!

これは、また暫くしたら、絶対、再読したいと思う!!


★★★★★
 
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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