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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2015年3月


 妻を失い故郷を追われた男。夢を失い東京に捨てられた女。交わるはずのない二人が出会ったとき、運命の輪が大きく軋み始めるーー。

「いざわコーポレーション」の社長であり、10歳年上の妻である章子が、64歳の誕生日の夜、交通事故にあった。意識不明のまま眠り続ける妻の他、社内に人脈を持たぬ亮介は、会社から、そして新潟から追われる。新たな職を得た記念に訪れた銀座のグランドキャバレーで、席についた紗希もまた、その日、19歳で上京してから10年目、タレント事務所からクビを宣告されたのだった。寄る辺ない心を抱えながら出会った二人は、微かに互いを意識しながら別れる。ひと夏に6戸の販売目標を与えられた北海道のリゾートマンションで亮介が目にしたのは、廃墟同然の新古物件だった。絶望感にかられる亮介を追って、東京から紗希がやってくるーー。実に1年半ぶり、直木賞受賞後初の長編は、まさに桜木ワールドの真骨頂! 誰もが懸命に生きているだけ。悪い人がいるわけではないのに、それぞれが報われない。切なさと、最初から流れているどうにも逃げられない不穏な空気……。そして最後に用意された、度肝を抜かれるラスト……! 緊迫感と圧倒的なドライブ感で駆け抜ける、最高傑作!

                      (幻冬舎HPより)




桜木さんの描く主人公たちって、どうして幸薄いんだろ?

でも、この重苦しい感じがたまらなくクセになる。

今回の主人公は伊澤亮介(54歳)なのかな?
10歳年上の妻が経営するホテルの店長として働き、結婚後は副社長の肩書で
会社経営を陰で支えていたけれど、妻が事故で意識不明の状態が続き
会社経営は、妻の実の息子に託され、会社から追われてしまう。

そして、あるキャバレーで知り合ったのが白川沙希。
彼女は高校生で「これが美少女だ」コンテストで準優勝し芸能界デビュー。
けれど30歳を目前にタレント業を廃業し、唯一の勤め先がキャバレー「ダイヤモンド」。

亮介と沙希の間に男女の関係はない。
けれど、間違いなくお互いが心の拠り所という時期があり、沙希の方が
それが強かったんじゃないかな~?


ラストの展開には、ちょっとビックリだったけど・・・・。
沙希にとっては、人は違うと言っても、それは愛と呼べるものだったのかも
しれないな~。


相変わらず、読後感は重たい^^;
けれど小説としては面白かった。


                           ★★★


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行年月:2013年1月


 寄せては返す波のような欲望に身を任せ、どうしようもない淋しさを
封じ込めようとする男と女。
安らぎを切望しながら寄るべなくさまよう孤独な魂のありようを、
北海道の風景に託して叙情豊かに謳いあげる。

(本書は2009年刊行の『恋肌』を改題のうえ大幅な加筆・修正を
ほどこし、新たに未発表作品「風の女」を加えて文庫化したものです/角川文庫HPより)




7編の短編集。
どの話も独特な閉塞感をはらんでいる。
主人公たちが置かれた環境は、その同じ立場にもし自分が立たされたら・・・と
想像するだけで鳥肌が立ちそう(^^;


「プリズム」が一番、嫌な話だったなあ~。
殺された大学生が気に毒過ぎるよ~(ノД`)・゜・。
他の話に出てくる女性たちには、がんばって!と言いたいけれど
「プリズム」の仁美には、違う感情を抱いた。



しかし、桜木さんの書く物語って、どうしてこんなに切ないんだろ?
北海道は行ったことないけれど、こういう雰囲気は北国が似合うんだろうな。


                             ★★★



発行年月:2007年11月


 北の大地の性を描く、オール讀物新人賞作家のデビュー作品集

北の農村を覆う閉塞感と、虚無的で乾いたセックス……。
現代に甦る『楢山節考』ともいうべきオール讀物新人賞作家のデビュー作品集

                     (文藝春秋HPより)





桜木さんの作品は幾つか読んでいますが・・・

デビュー作を読み忘れてました!!

これは短編集で表題作を含む6編。
どれも北海道が舞台。
桜木さんの物語はほとんど、舞台が北海道ですが、作風の持つ雰囲気が合ってるかんじ。


<雪虫>
自己破産の末、実家に戻った達郎。
家業の和牛農家を手伝う毎日。
田舎の酪農家に嫁いでくる嫁など居ないと思っていたが、父親が300万で嫁を買った。
女性は18歳のフィリピーナ。


<霧繭>
和裁師の真紀は、10年前に亡くなった母親の看板を引き継ぎ「島田和裁所」を営む。
師匠は、母とも良きライバルだった森千代野。
呉服問屋「かのこ屋」からの依頼も今では真紀が請け負うようになった。


<夏の稜線>
22歳で酪農家の嫁として東京から嫁いで来た京子。
娘が生まれた直後、「次は男の子を生んで貰わなければ」と言われた。
好きで嫁いできた夫・一也ともなんとなく心が通わず日々、悶々として過ごす。


<海に帰る>
25歳で理容師として独立した寺田圭介。
ある日、客として店を訪れた絹子。
夜の客商売をしているという。
顔そりのついでに首の後ろまで剃刀したのを気に入り、ちょくちょく通って来る
ようになる。


<水の棺>
歯科医師の関口良子。
かなりの給料を貰って雇われていた医院を辞め、過疎化が進む漁村で歯科医師を
募集していると知り、そちらに移る。
医院長の西出との別れでもあったが、西出が倒れたと知らせが入る。


<氷平線>
乱暴者の漁師の父親の元から逃げたくて、一生懸命勉強し、東大法学部に合格
した誠一郎。
卒業後は財務省に入省し、今度、北海道の税務署長として故郷に戻った。
少年時代、知り合った友江の事が忘れられず、訪ね、彼女を連れて出す。



男女の性絡みの話が多いなか、ちょっと異色の<霧繭>が良かった!
この話だけをもっと詳しく知りたいくらい。

閉塞感を抱えてどうしようもない状況に置かれる人たちの話を読んでいると
こちらまで気持ちが、ず~んと重たくなってしまうのですが、
読むのを止められない、筆の巧さは、デビュー当時から既にあったんですね~。


                             ★★★★




発行年月:2014年6月


 いびつでもかなしくても生きてゆく

『ラブレス』『ホテルローヤル』の桜木ワールドを凝縮。
直木賞作家による珠玉の作品集


奔放な実の母親とも、二度目の結婚でさずかった実の娘とも生き別れ、昭和から平成へと移りゆく時代に北の大地を彷徨った、塚本千春という女。その数奇な生と性、千春とかかわった人々の哀歓を、研ぎ澄まされた筆致で浮き彫りにする九つの物語。桜木紫乃の真骨頂がここにある!

                      (実業之日本社HPより)



ひとりワルツ

つとめ先のスナックに時折現れる優男・ヤマさんに、咲子はひそかに思いを寄せている。
中学生になった娘の千春と再会を控えた咲子を、ヤマさんはデートに誘う。

渚のひと
医大に通う息子が帰省する。
久々に家族三人で囲む食卓の準備で内職を早めに切り上げた育子。
隣家の千春は、息子が卒業した高校の後輩にあたるのだが……

隠れ家
ススキノの踊り子・麗香は、兄が帰ってきたら舞台を去ると決めていた。
その夜、8年ぶりに兄が姿を現した。

月見坂
晴彦は高齢の母親と二人暮らしだ。
商品の苦情を述べた母への謝罪に訪れたスーパーの配達係の女性を見て、晴彦は……

トリコロール
小さな港町で所帯を持って25年。桐子は夫とふたり、理髪店を営んでいる。
ひとり息子は家業を継がずに街をはなれている。

逃げてきました
市役所勤務のかたわら、詩作をつづけてきた巴五郎。
彼が主宰する詩作教室に、塚本千春という30代の女が入会してきた。

冬向日葵
罪を犯し、逃げ続けて何年になるだろう――。
能登忠治が道北の小さな一杯飲み屋の女将、咲子と暮らして8年が過ぎた。

案山子
東京から北海道・十勝に移住、独りで野中の一軒家に暮らす
元編集者・河野保徳の前に現れたのは……

やや子
図書館司書の田上やや子は、交際半年の恋人に乞われ、彼の母親と会っている。
内心、彼と別れようと考えているやや子だったが……



短編連作集でした。
「塚本千春」がどの話にも関わって来ました。

最初の話<ひとりワルツ>では、千春の母親・咲子の語り。
千春中学1年生で、咲子から離れ祖母と暮らしてる。
次の<渚のひと>で千春は高校生。
その後、成人した千春は、次々に男の人と出会い、関係を持ち、結婚もするが
離婚もして再び、別の男と出会い、子どもは一人女の子を産む。
その子の名前は、やや子。
最後の話で、やや子が短大を卒業し、立派な社会人として働いている姿が
出てきて、なんだか嬉しかった。
それまでの千春の生き様は、なんだか暗くて重たい感じだったので。
やや子の父親のその後の人生も幸せだった様子で、最後には、なんとなく
ホッとできる情報が知れて良かった。


次はどうなる?と読ませる力は、やはり流石です!


                            ★★★★





発行年月:2013年10月


 「東京に逃げることにしたの」道立湿原高校卒業から二年、図書部の仲間だった順子から深夜に電話がかかってきた。二十も年上の職人と駆け落ちすると聞き、清美は言葉を失う。故郷を捨て、極貧の生活を“幸せ”と言う順子に、悩みや孤独を抱え、北の大地でもがきながら生きる元部員たちは、強烈に引き寄せられていく-----。

                       (双葉社HPより)


北海道の高校で同級生だった人やその関係者が1章ごとに語り手となり進む。
そして、それぞれの話のなかに度々登場するのが順子。
全体を通して、暗いかんじ。
これは前作の『ホテルローヤル』に似た雰囲気でした。
けれど、彼女たちの一生懸命に、それぞれの人生を生きている姿は力強いものを感じた。



<1984 清美>
高校を卒業して地元ホテルに就職。
営業社員として働くが、仕事は楽しくないことばかり。
ある日、高校時代の同級生・順子から、妻子持ちの男と東京に駆け落ちすることに
したと連絡を受け驚く。


<1990 桃子>
カーフェリー「シーラブ号」の乗務員として働く。
1年の2/3は海の上。
海の上だけの恋人・直樹は妻子持ちで同じ乗務員。
休みの日、東京の順子に会いに行く。
順子はラーメン屋を営む夫と幼い息子と暮らしていた。


<1993 弥生>
高校を卒業したばかりの若い従業員と夫に駆け落ちされた。
父から受け継いだ創業80年の老舗の和菓子屋を今は一人で営んでいる。
夫は東京にいるらしい。
離婚もせず、出奔したままの状況を変えるため、夫に会いに行く。


<2000 美菜子>
35歳で同じ職場の教師と結婚することに。
相手は高校時代の教師・谷川。
谷川は美菜子が高校生時代、同級生の順子から告白された経験がある。


<2005 静江>
東京に好きな人と出て行った娘の順子に会いに行く。
初めて会う孫の輝(あきら)は、国立大の工学部で学んでいるという。


<2009 直子>
看護師として働いている。
東京で暮らす同級生の順子が病で先が長くないと知り、会いにいく。



6人の女性たちの話をバラバラに読みながら、常にそこにある順子の存在が
気になってくる。
この物語の主人公は順子でしょうね。
高校を卒業して、和菓子屋に就職し、そこの菓子職人である男と東京に出て
二人で古い店舗を受け継ぎ、ラーメン屋を始める。
息子が生まれ、その息子も立派に成長し、最後は余命短い病に倒れてしまったけれど
幸せな時間は、きっと多かったんだろうな~。

駆け落ちされた側の和菓子屋の女主人・弥生が格好よかったなぁ~。
夫に会いに行き、どうなる?と思ったけれど・・・
「わたしも幸せになる。あなたも体に気をつけてね」と言葉をかけて去っていく。


ホテルローヤルよりもこちらの作品の方が、わたしは好きだな。


                          ★★★★★



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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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