発行年月:2018年1月
この細長い器官が、海馬。~記憶を司る器官です。記憶を蓄積するのではなく情報を取捨選択し記憶すべきかどうかを決める、まぁ、新たな記憶を生み出す場所と言えるでしょうか。――本文より
二度目の原発事故で恐怖と不安が蔓延する社会――
良心がないとまで言われる男が、医療機関を訪ねた……。
(光文社HPより)
主人公の及川頼也が、読んでいると段々、好きになっていく。
極悪非道なヤクザ。人の痛みがわからず、共感することもない。
反社会性パーソナリティ障害の診断。
アルコール依存症を治す目的で訪れた大学病院。
けれど、桐嶋ドクターの研究対象として、隔離された病棟での生活を強いられる
日々が待っていた。
同室の堂上、根本、辻野たちも個性豊か。
そして、小児病棟にいる藍沢梨帆との出会い。
梨帆は、他者への恐怖心が希薄で、及川に最初に会ったときから
笑顔で接する。
治療を受けるうち、この病院は異常だと気づき、脱走を図ることにしたラストは
ハラハラドキドキの緊迫感。
梨帆も一緒に助け出そうと必死の及川は、治療の成果なのか、元々持っていた
ものなのか、人を想う気持ちにあふれていた。
が・・・・ラストの場面は、色々想像できるもので、
もしかしたら、及川はジ・エンド?
もしかしたら、逃げられた?
しかし、逃げられたとしても、そのあとが、大変そう。
出来たら、梨帆と新しい生活のなかでも関係性が続くといいなと思って
読んでいたけれど・・・・
これはこれでお終いがいいのかも。
なかなか面白かった。
★★★
発行年月:2018年2月
遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は寂しい境遇にあっても、周囲の人々の優しさに支えられて子ども時代を生き抜いてきた。18歳になった耀子は、誰にも告げずに常夏荘をあとにした。バスの中、4年前のあの夏を思い出す。久しぶりに常夏荘を訪れた立海と過ごした日々―。
(BOOKデータベース/ポプラ社)
『なでしこ物語』、『地の星』に続く第三弾。
でも時系列から言えば、真ん中の時代。
燿子が高校を卒業したあと、どうするか?
常夏荘での暮らしから、母親を頼って上京する話。
その道中で、思う4年前の常夏荘でのこと。子どもだったころの思い出。
常夏荘のある場所が地元なので、なんだか不思議な気持ち。
「行かまいか」・・・「行こうよ」の言葉が、燿子や立海が言うと可愛い。
子ども時代の燿子と立海は、本当に仲良しで、二人はずっと離れないで欲しいな
なんて思っていたので、『地の星』で燿子と立海は離れてしまったんだと
知って凄くショックだった。
でも、この『天の花』で、燿子が龍治と生きることになった経緯が
わかった。
なるほど・・・こういうことがあったのか・・・・。
しかし、立海は、寂しかっただろうな。
燿子が常夏荘を離れてから、どんな風に成長していったんだろう?
もう一度『地の星』読み返したくなってきた。
そして、この先の話も、また続けて読みたい。
★★★★
発行年月:2017年11月
忘れなければ、生きていけなかった。
浅田文学の新たなる傑作、誕生――。定年の日に倒れた男の〈幸福〉とは。
心揺さぶる、愛と真実の物語。
商社マンとして定年を迎えた竹脇正一は、送別会の帰りに地下鉄の車内で倒れ、集中治療室に運びこまれた。
今や社長となった同期の嘆き、妻や娘婿の心配、幼なじみらの思いをよそに、竹脇の意識は戻らない。
一方で、竹脇本人はベッドに横たわる自分の体を横目に、奇妙な体験を重ねていた。
やがて、自らの過去を彷徨う竹脇の目に映ったものは――。
「同じ教室に、同じアルバイトの中に、同じ職場に、同じ地下鉄で通勤していた人の中に、彼はいたのだと思う」(浅田次郎)
(毎日新聞出版HPより)
集中治療室で意識が戻らないまま過ごす竹脇正一。
両親に棄てられ、施設で育つ。
懸命に勉強し、国立大学入学、有名企業就職。
結婚し、子どもも授かる。
正一の元に見舞いに訪れる家族、妻、娘の夫。
そして同じ施設で育った幼なじみの氷山。
会社の同期入社で今は社長の堀田憲雄。
意識はなくても、見舞いに来た者の声は聞こえていて、それに心のなかで
応える正一。
意識はなくても耳は聞こえるって、ある程度、事実かも。
病院勤務時代もそれは感じていた。
だから正一の家族たちが話しかける様子は、なんだか温かい場面だった。
体はベットの上でも、ほかの所に出かける正一。
正一の隣のベッドで同じく意識が戻らない榊原勝男とのお出かけは
正一の忘れていた感覚を呼び起こす元になる。
親に棄てられたと思って居た正一だけど、そうではなかった。
ちゃんと母親の愛情を受けていた。
それに気づけて良かった!
この後、きっと意識が戻って、家族に自分の体験した話を聞かせるんだろうな~
と想像すると、ほっこりする。
温かい物語だった!
★★★★★
発行年月:2017年1月
2017年 第15回
『このミステリーがすごい! 』大賞
大賞受賞作
治るはずのないがんは、
なぜ消滅したのか――
余命半年の宣告を受けたがん患者が、
生命保険の生前給付金を受け取ると、その直後、
病巣がきれいに消え去ってしまう――。
連続して起きるがん消失事件は奇跡か、陰謀か。
医師・夏目とがん研究者・羽島が謎に挑む!
(宝島社HPより)
一気読みでした!
凄い話だなぁ~。
著者の経歴を見たら・・・なるほど・・・と思った。
国立がん研究センター、放射線医学総合研究所で研究に従事。
現在、医療系出版社に勤務。
主な人物は・・・
がんセンター医師・夏目と親友であり、同じ医師だが臨床経験なしで
研究室勤務の羽鳥。
夏目の恩師である西條。
その下で働く優秀な女性医師・宇垣。
治るはずのない末期がんが治った例が幾つか続き、その真相を追う話は
なるほど・・・そういうのは可能かも。と思えるリアリティさ。
医学用語が多いので、医療従事者じゃないとちょっと難解かも?
でも面白かった!
そういう発想が出来るのはやはり、元研究社の著者だからでしょうね。
自分の娘を奪った犯人を捜すと言っていた西條。
大学病院を去ったあと、彼がやりたかったことを進めていく。
恨みを果たすのだけど、そのやり方が医者ならでは。
そして、そんななか知る真実。
やっていることは犯罪っぽいけど、なんだか同情する。
辛い。
でも最後の最後に、この後の西條の生き方を変えそうな展開にビックリ
したけど、ちょっとホッとした。
ああ、面白かった!
これ、ドラマ化したのを本をまだ読んでなかったのでスルーしちゃったけど
録画しておけば良かったな~。
しかし、二作目、これを超えるもの書くのは大変そう。
でも次回作出たら、絶対、読みたい!!
★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;