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読んだ本の感想あれこれ。
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発行年月:2021年1月


不愛想で手際が悪い――。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。
目次
八月の銀の雪
海へ還る日
アルノーと檸檬レモン
玻璃はりを拾う
十万年の西風

                  (新潮社HPより)




どの話も良かった。

ちょっとしんどい状況に置かれている、それぞれの主人公たちが
偶然、出会った人によって救われる話。

表題作は最初。

理工学部の大学4年生の堀川は、よく寄るコンビニで働くベトナム人のバイト・グエン
から大事なものを紛失したのだが、堀川が座っていたイートインの席になかったか?と
尋ねる。
日ごろからグエンの働く様子を見ながら、半分バカにしてみていた自分だったが
グエンのことを知るうちに、自分がいかに愚かだったかに気づく。

堀川の状況が変わったわけではないけれど、きっと前とは違った物の見方が
出来るようになったんじゃないかな?
それはきっと今後の行動にも表れて、就活も良い結果が待っている・・・
と信じたい。


他の話もそれぞれ、科学の話が出てくる。
<海へ還る日>では自然史博物館で海の哺乳類のこと。

<アルノーと檸檬>では、伝書バトの話

<波璃を拾う>は、珪藻という生物について。
これは興味深かった。
珪藻土は、最近はよく知られているけれど、この生物のものだったとは。
そして、珪藻アート。調べてみると、すごく綺麗。
知り合った男女の関係も最初の最悪な出会いから、もしかしたら恋人同士になるのかな?
と思わせてくれる変化も楽しかった。


<十万年の西風>は原子力のはなし。
原発に関わる仕事をしてきた男性と、凧揚げをしていた元気象楽の研究者の男性との
出会い。
会話が自然なので、科学の話も自然と入ってきて勉強になった。
知らなかった風船爆弾の話も衝撃的だった。



お話はどれも素敵で、色々な科学の話も楽しめる1冊だった。



                      ★★★★★
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発行年月:2022年7月

彼女の愛が、 私の人生を狂わせた――。幻想怪奇小説の到達点。
怯え続けることが私の人生だった。
私は今も、彼女の亡霊から逃れることができないのだ。
1978年、悦子はアルバイト先のバーで、
舞台女優の夢を持つ若い女・千佳代と出会った。
特別な友人となった悦子に、彼女は強く心を寄せてくる。
しかし、千佳代は恋人のライター・飯沼と入籍して間もなく、
予兆もなく病に倒れ、そのまま他界してしまった。
千佳代亡きあと、悦子が飯沼への恋心を解き放つと、
彼女の亡霊が現れるようになり――。

                   (角川書店HPより)


悦子と千佳代は、26歳で同い年。
悦子のアルバイト先のバーの常連・フリーライターの飯沼の連れとして
店に来て、知り合い、その後、親しくなり家にも遊びに来るように。

飯沼と千佳代は結婚するが、間もなく、病死。

バーのママ・多恵子は、以前、飯沼と付き合っていたが今が他に恋人がいる。


千佳代が亡くなってから、悦子は千佳代の姿を時々、見る。
店で多恵子といるときも二人でそれらしき姿を見たことも。
千佳代は、ただ黙って座っているだけ。
不思議なのは、飯沼の元には姿を見せないこと。

やがて、多恵子も原因不明の体調不良から亡くなってしまう。

この頃が一番、悦子も千佳代に対して恐怖を感じていたのでは?
次は自分が同じように命を落とす番だと思ったり・・・
でも、悦子は飯沼との距離を縮め、二人は恋人同士になり結婚。
そのころから千佳代の姿をみなくなる。
もしかして許してくれたのか?とホッとしつつ生活して月日が流れ
悦子42歳。飯沼52歳の年、飯沼が不倫(相手も既婚者)。
その相手が運転する車に同乗していたとき、交通事故死する。

そして、再び、千佳代が姿を見せる。


ゾゾ~ッ(ノД`)・゜・。

千佳代は、悦子に執着して、この世に留まっているということか?
悦子は、ずっと千佳代と共にこの先も生きていくということ?

特に危害を与えるわけでないのなら、それも受けいれて静かに生活して
行けばいいだけなのかなぁ~?


不思議な話だけど、一気読みさせる面白さはあった。


                      ★★★



発行年月:2022年8月


ニヒルな同心・木暮信次郎×元刺客の商人・遠野屋清之介
消えた信次郎の謎。
火傷の痕をもつ死体。
泡銭を夢見る者たち。
因縁の二人の行きつく先は?

                (光文社HPより)



弥勒シリーズも、これで11作目になるんだぁ~。
毎回、読んでいて楽しい。
起きることは楽しいことばかりではないのだけど
登場人物たちのキャラクターがいい。それぞれの向き合い方もいい。


今回は、冒頭から大波乱の予感。

同心・小暮信次郎がどこかに消えて、岡っ引きの伊佐治親分は大番所に連れて
行かれたという。
えぇ~?どうなっちゃうのぉ~??と思っていたら・・・
大活躍の遠野屋新之助。
色々なところに手を廻して、伊佐治親分が無事、帰ってきて
小暮信次郎の居場所もあてる。


事の始まりは、贋金づくり。
作るのは、職人だけれど、それをいいように利用しているのは奉行所も動かす
ことが出来る大物。
いつの時代も悪いことに自分の権力を利用する者はいるんだな。
でも、その権力に屈せず、それを止めようとする者もちゃんといるのは救い。

利用されるだけされて、逃げたら殺されてしまう人たちは、本当に気の毒。
春次を探していたお房まで・・・(/_;)


しかし、気になるには遠野屋清之助。
なんだか、ただの商売人ではなくなりそうなかんじになってきた。
そばに置くようにした、まれ吉のことも気になるし・・・。

早く次の話が読みたいシリーズ。



                   ★★★★★




発行年月:2013年5月


ちっちゃい赤ん坊だった準子が嫁に行くんだぞ――男手一つで育てた娘を嫁がせる「結婚しようよ」。あの主人公が同年代の54歳と知って愕然とする「磯野波平を探して」。もはや見ないふりできない肥満解消のため家族でダイエットに励む「肉村さん一家176kg」他。短編の名手による、笑って泣ける7つの家族の物語。

                   (講談社HPより)



どれも面白い、色々な家族の物語。


特に良かったのは、
<しりとりの、り>と<家族写真>。

<しりとりのり>
折角、家族を乗せて遠出をしているのに、会話がないとお父さんが
「しりとりをしよう」と提案して、姉・弟がそれに仕方なく付き合い始めると
おかあさんも途中参加。
そして、17歳のお姉ちゃんの旦那さん?え?赤ちゃんまでいたの?
とどんどん、この家族構成が明かされていくのが面白かった。

しりとりも独特で笑えた・・・途中から言いたいことをしりとりで言い合っていたり・・
なんとも楽しい家族・・・^m^



<家族写真>
これがやはり一番、家族の物語としは、いいかな?

写真館を営む父親が倒れ、父の手伝いをしていた娘・葉月が兄と姉に連絡して
父が入院中の写真館をなんとか、運営していこうとする話。

父親と疎遠になっていた息子・春太も葉月の姉・夏乃も、協力して
最後は、家族写真。
ほのぼのした終わり方でした。


久しぶりに読んだ荻原さんの作品だけど、ササッと読めて楽しかった。



                     ★★★




発行年月:2022年7月


生と死の狭間で語られる、一度きりの百物語 ――三島屋シリーズ第八弾
江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、風変わりな百物語をしていることで知られている。
語り手一人に聞き手も一人、話はけっして外には漏らさず、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」これが三島屋の変わり百物語の趣向である。
従姉妹のおちかから聞き手を受け継いだ三島屋の「小旦那」こと富次郎は、おちかの出産を控える中で障りがあってはならないと、しばらく百物語をお休みすることに決める。
休止前の最後の語り手は、商人風の老人と目の見えない彼の妻だった。老人はかつて暮らした村でおきた「ひとでなし」にまつわる顛末を語りだす――。

                     (角川書店HPより)


このシリーズも8作目かぁ~。
ずっと読んでいるけど、やはり面白い。
今回は、ちょっとインパクト強めでしたが・・・。

<第一章 賽子と虻>

語り手・・・餅太郎

嫁いだ先で姉・おりんに虻がついたという。
虻がつくと、食べ物を全く受け付けなくなって体力が落ちてしまう。
餅太郎は姉の苦痛をなんとかしようと姉の代わりに湧いて来た虻を飲み込む。
神様の下僕である賽子に導かれて
神様たちが集まる賭場に連れてこられ、そこで餅太郎も働くことに。
他の下僕たちとの交流も楽しく、案外、神様って、自分勝手だなと思えたり。
そんな場所でも困った者が居ればなんとか助けようとする餅太郎はあるしあるし
優しいな。


餅太郎、この先は幸せになってくれるといいな。


<第二章 土鍋女房>

語り手・・・とび(25歳女性)

1年前に亡くなった兄の話。
家は代々、渡し船の船頭をしていて兄もその船頭で、とびも一緒に船に乗っていた。
その土地では、大切な仕事をする一家は一目置かれる存在で、真面目で優しい兄の
ところに縁談話がたくさん来た。
けれど、兄は全て拒否する。妻や子どもなどがいたら小心者の自分は命が惜しく
なり危険が伴う今の仕事が出来なくなると。
けれど、とびは、夜中、兄が女の人と話をしている?と思う場面を何度かみる。
昼間、その声の主を探すと、土鍋が、兄は自分のものだという。

土鍋の中から・・・ひぇ~!! でもお兄さんはそれで幸せだったのかな?
そう思っていた方が後に遺された者にはいいのかも。



<第三章 よって件のごとし>

語り手・・・浅川宗右衛門(真吾) 妻・花代

二つの村を束ねる当主だった真吾が関わった不思議な話。
夜見ノ池に土左衛門が浮かび、引き揚げようとしたが、それが襲ってくる。
噛まれた者は、みるみる人ではない者に変わり果て、また誰かを襲うという事態に。



これは、怖い。
別に悪いことをしたわけではない者が、こういう理不尽な目に遇って
それが連鎖していくのは、辛い話。
真吾も花代もそんな中で懸命に闘って来たのは、お疲れ様、よく頑張ったと
褒めてあげたい。



今回は、ちょっとホラー色強めだったな~(^^ゞ

最初の聞き手だった、おちかもいよいよ、お母さんになるんだな。
幸せそうでなにより。

三島屋には今の聞き手富次郎の兄が戻ってきたけど、この先の三島屋のことも
気になるところ。
変調百物語は一旦、置いといてもその辺の話だけ続けて欲しいな。




                    ★★★★


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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪

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