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読んだ本の感想あれこれ。
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d159b62d.jpg発行年月:2008年10月

「明日の話はしないと、わたしたちは決めていた」で始まる三つの別々の話が最終話で一つになるとき----。

第一話 「小児病棟」のわたし
第二話 「1998年の思い出」のわたし
第三話 「ル-ムメイト」のわたし
最終話 「供述調書」のわたし
(本の表紙裏の解説より)
 

三つの話は、それだけ読むと全く別の話です。
第一話は、小児病棟に難病で入院している子ども達の話。
彼らが「明日の話はしない」と決めているのには、明日の事をかんがえると辛いから。
明日は検査。明日から辛い治療。
「明日の検査の結果が良かったら退院できる」と言われたけど、結果が良くなくて延期とか。
「明日の話」なんて考えないでいた方がいいと思っている子ども達。
だから、「明日のはなしはしない」はル-ル。

でも、辛い入院生活でも子ども同士の楽しみを見つけ、最初は明るい雰囲気でした。
が・・・・後々のとんでもない事柄の前触れ的な出来事がこの第1話には込められています。


第二話は、ホ-ムレスの人たちの話が中心。
彼らが「明日のはなしはしない」と決めているのは、その方が気楽だから。暗い気持ちにならずに済むからというもの。
弱い立場なので、肩を寄せ合い、ある程度の集団で助け合いながら暮らしている彼ら。


第三話は、六畳一間のアパ-トに四人で暮らす若者たちの話。
「明日のはなしをしない」と決めていたのは、子どもの頃からのル-ルだから。


そして、最終話で、第一話から三話での出来事が、全て繋がっていることが明かされます。

読みながら、ある程度の事は途中で気づくのですが・・・・兎に角、どこにも救いがなくて読むのが辛くなる話です。
でも、読むのを止められない話でもありました。
最近、こういう救いのない話、多いような・・・^^;

退屈はしないけど、途中で繋がりが予め予測出来てしまうのが、少々、残念だったかな?
全然、気づかない話で最終話があったら、もっとビックリしたんだけど。


★★★
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4d8816d9.jpg発行年月:2009年1月


生まれた時から発育がよく13歳でピンナップガ-ルさながらの体つきだったアカリ。
性格は地味で平凡に生きたいアカリだが、出会う人々は、平凡じゃないひとばかり。

次第にアカリ自身が変わってゆく。



生まれた小さなまちでは、自分の体が人目を惹き、静かに暮らせないと大きなまちに引っ越し、一人暮らしを始めるアカリ。
小さなまちでは両親と祖母と暮らしていたが、祖母の言葉がヒドイ!
発育の良いアカリの体を「いやらしい」と言っちゃうんですから・・・。
可哀相すぎ。

一人暮らしをしてから最初、職を点々と変えるアカリですが、ヘアサロンの受付の仕事で落ち着くので一安心。
そこで出会う人たちが後々、アカリを追い詰めることになるのですが、途中までは楽しそう。
ヘアサロン上のエステテックサロンで働く、さくらちゃんとお友達になり、二人でお互いの家を行き来しながらの会話は笑えました。
両サロンのお得意様である通称ティナ(ティナタ-ナ-に似てるとか)を密かに研究する会も可笑しいし・・・・。
楽しくこのまま暮らしていけばいじゃない?なんて明るい気持ちで読んでいると・・・・
飛沢郁夫という怪しげな男が登場するあたりから、事態は急展開!
アカリが例えるには「白身魚の切り身みたいな男」・・・・・想像できません^^;

この郁夫が登場してからは、さくらちゃんとの楽しげな雰囲気が郁夫との怪しげな雰囲気に変わっちゃうのです。
いつか南の島に一緒に行きましょうみたいなノリで、その予行演習と称して二人で始めることも気持ち悪いです^^;

その後は、もっと気持ち悪い事(大変な事)が起こって・・・・どうなるのぉ~!?と思うと、これが案外ラストは
健全っぽい。


途中、嫌悪感を抱く文章があるのですが、ま、我慢して読むと・・・・なるほど!と少し納得出来る部分もあったりで、最後まで油断出来ない展開でした。


少し前に読んだ「田村はまだか」も変わった話でなかなか面白い本でしたが、これもなかなか面白かった。
わたしの中では次はどんな作品、書いてくれるのか?と期待したくなる作家さんです。


★★★

 

0f22389e.jpg 発行年月:2008年12月


四日間の夏季休暇を取った初日、カフェでくつろいでいた由香は偶然、通りかかった以前の恋人・拓に出会う。

二人が出会った高校生時代~大学時代の思い出を懐かしくふたりで思い出しながら、あの時、それぞれが相手に抱いていた想いが蘇る。



短めのお話です。
50歳半ばの男女が以前、恋人同士だった時代の出来事を思い出しながら、その時の想いも改めて吐き出しながら、別れた後、お互いの結婚のこと、近況などを報告し合う。

この物語は、設定がこの年代だから活きるのでしょうね。
大人の会話。
付き合っていたのは、まだ若い頃。
その時、お互いが抱いた感情や行動は今、振り返ってみれば、疑問に思うこともあり「どうして別れたんだろうね?」なんて共通の思いになり・・・・。

いいな。こういう話。
好き。

やっぱり小池さんの描く情景が好きなのかな?
お洒落なカフェの周りの風景も文章から容易に頭にイメ-ジが湧いて来ました。

読み方によっては、どこにでもある話だし、何の面白みもないじゃない!?と言われちゃそうだけど、わたしは好きです。

ラストもよかった。
なんとなく、このふたりにはまた違う季節も巡ってくるような予感がして・・・。
小池真理子さんのファンなら満足の1冊じゃないでしょうか?


★★★★

 

 

 


65d5d168.jpg発行年月2002年7月

 九州の小さな海岸の町。
贅沢な施設と高度な医療で知られるサンビ-チ病院。
不妊治療に福音をもたらし患者たちに「神の手」と慕われる院長の産婦人科医、岸川卓也のもう一つの顔。
男性の妊娠、人工子宮、胎児からの臓器移植・・・・・。
生殖医療の無法地帯に君臨する医師の狂気がひらくとき。
生命の尊厳と人間の未来を揺るがす書き下ろし長編小説。
(本の帯文より)
 

エンブリオとは・・・受精後8Wまでの赤ちゃん。それ以降は胎児と呼ばれる。

少し前に読んだ「風花病棟」(短編集)では、真摯な態度で医療に向き合う医師たちを描いていて感動しました。
この作品の主人公の医師・岸川は、ある意味では研究熱心で高度医療を行う素晴らしい医師ですが、違う側面から見たら悪魔とも言える非常にアクの強い人物という印象。
途中までは、不妊治療で思うような効果が得られず、悩む夫婦には神様的な存在で、倫理的には反発も多いだろうその治療方法もそれで救われる人たちがいるのなら・・・・・と受け入れながら読んでいました。
が・・・段々にエスカレ-トしてゆく医師の行動に怖くなりました。
ラストは、うぅ~凄いね!この医師。
そこまでやりますか!?という感想。
でも最後まで楽しませていただきました!
こういうちょっとワルい医師を描くのもなかなかいいな。
文章も上手いし!

物語の中には、今の生殖医療でも、そこまではやってないはずよね?という事が多々出てきます。
知らない人が読むとこの治療を受けたいと駆け込みたくなる人も居るかもなんて、余計な心配をしてしたりして・・・。

例えば、5歳の息子に重篤な心臓疾患があり予後不良で命の危険があるとの診断。
母親は妊娠中。
お腹の中の子どもの心臓を取り出し、5歳の子どもに移植するという治療。
または以前、不妊治療で体外受精させた卵の分割したスペアを使って再び妊娠させるという治療。

他にもいろいろ。


今は、体外受精も珍しい治療とは言えない時代。
代理母問題は、少し前にメディアでも取り上げられましたが、生殖医療の研究はどんどん進んで技術的には、もっといろいろな事が可能になってくるでしょう。
本の中に出てきた人工子宮も実際にも研究は進んでいるようですし。


兎に角、いろいろな問題提起がされている内容でした。


この物語主人公・岸川医師については、著者の新刊「インタ-セックス」でも登場するようなので、そちらも読むのが楽しみです。

★★★★


2851ec4d.jpg  発行年月:2008年12月


38歳で国家公務員エリ-トの道を捨てた男・鈴木正彦。
妻からは離婚を言い渡される。
そして、女性関係で人生をしくじった男・矢口とともに宗教を立ち上げた。
金儲けのために立ち上げた宗教だが、彼らの予想を越え、信者が集まり、やがて、二人の手を離れてそのなかの信者たちが暴走を始める。

 

上巻、469ペ-ジ。
下巻、445ペ-ジと、長いです。
が、長さを感じさせない、飽きさせない話の展開でした。

大学の法学部出の主人公・正彦が何故、エリ-トの道を約束されたも同然の人事内示を機に辞職するのかは、本を読めば、わかりますが、これでは、妻から離婚を言い渡されても当然でしょう。

そして、アメリカの貿易センタ-ビルに飛行機が2機突っ込む事件をみて「実業の象徴が宗教によって壊された」と呟き、事業としての宗教を営もうとする・・・・

頭の良い人の考える事はよくわからんわ~というイヤな印象からスタ-ト。

実際に「聖泉真法会」という似非宗教を立ち上げるのだが、予想を超えて、信者がどんどん集まって来ちゃう。
正彦は教祖様として、説法を述べ、それがまた人々の心に響き、世間の評価も上がってくる。
上巻はそんな、トントン拍子に良い方向に向かう教団の様を描いていました。

そして、上巻の最後あたりから、やや不穏な空気がジワジワ。
評判の良い宗教には、自然と名のある事業家、政治家などが絡んで来るのです。
正彦たちの知らないところで、知らないお金が動いたり・・・・
同じような宗教団体が、脱税疑惑で逮捕者を出す、その流れで正彦たちも容疑を掛けられたり・・・

世間にも宗教団体は星の数ほどあるでしょうけど、その中の教祖と呼ばれる人たちは、多かれ少なかれこういう苦労を抱えているんだなぁ~なんて読みながら勉強になりました。

信者が多くなれば、いろいろな人も居て・・・そのなかの信者が暴走。
彼らに罪の意識がないのは、自分たちは良いことをしているのだと信じているから。

正彦は、教祖と言っても、普通の人。一般の常識人。
最初は、詐欺まがいの事を始める変な人の印象が、段々と周りの信者たちが普通でない感覚で行動しようとするなかで自分の常識で、なんとか暴走する信者たちを抑えようとする姿は好感が持てました。
そして、ついに、自分が作った宗教に自身が追い込まれるのですが、その時も逃げずに立ち向かう姿は、なかなか格好良かった!

しかし、宗教に本当にのめり込んだ人たちって恐ろしい。
そうなってしまうまでの背景には同情するべきものが多いのですが、救いを宗教に求める現代社会の闇の部分も感じ、なかなか深い話でした。

篠田さんの作品、久しぶりでしたが、面白かった!

   ★★★★

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