発行年月:2008年10月
パリに暮らす一人のおばあさん。
ユダヤ人のおばあさんが、過ぎ去った昔を思い出しながら現在の日常を静かに語る。
フランスで20年以上読み継がれている絵本を、長くパリで暮らしている女優の岸恵子さんが初めて翻訳。
大人のための上品な絵本。
表紙の絵は、少し暗い色調ですが、中の絵は可愛らしいです。
ユダヤ人の歴史をあまり知らないので、この主人公のおばあさんが若い頃、どれだけの苦労をしたのか想像するのは、難しいのですが、大変な想いをきっと沢山したことでしょう。
しかし、その悲惨だった頃に対して、誰かを恨むとか全くなく、老いて若い頃のようにいかない事も多いけど、それについても一切の愚痴を言わない。
すごく我慢しているのが見えたら、可哀相と思ってしまうのだけど、このおばあさんは、笑顔がとても素敵で幸せそうに見える。
老いるって、今の自分には、ちょっと怖いなという部分もあったけど、これを読んでいたら、なんだか、少し年を取っても別に幸せでなくなるわけではないのだし、明るく日々を過ごせたら、それで十分なんだなぁ~なんて感じました。
本の形もちょっと縦長で面白いです。
柔らかいタッチのイラストがまた本を一層、素敵にしてくれていて、でも、やはり岸さんの訳が素晴らしいからこそ、この本の良さが伝わってくるんでしょう。
最後の岸さんの あとがき の文も素晴らしい!!
女優さんとしてだけでなく、こんな素晴らしい才能もあったのですね。
今まで知らずにいました。
翻訳は過去にもお話があったそうですが、全て断っていたとか。
ただ、この絵本の訳は是非、やりたくて、OKしたのだそう。
岸さんは、他にもエッセイなど書かれているようなので、是非、岸さんの書かれた文章をもっと読んでみたい!と思いました。
この絵本はお薦めです!!
★★★★★
増加する若年齢層の自殺を防ぐため、
政府は青少年自殺抑制プロジェクト(YSC)を
立ち上げた。
しかし、そのYSCの実態は、実に恐ろしいもの。
小学生~中学生の子ども達には、人気の作家さんみたいですね。
我が家の娘たちもよく読んでいます。
何がいいのか?探りたくもあり、「お薦めがあったら教えて」と、この書を薦められ読みました。
が・・・・わたしには、正直、この作品は、得るものが無かった・・・苦笑。
子ども達が、面白いという意味は、なんとなくわかりましたが・・・。
話の題材は、なるほど、なかなか面白いと思います。
若年齢層の自殺を防止するための、プロジェクトYSC.
その実態は、実に残酷なものなのですが、まあ、そういうのも物語としては良しとしましょう。
しかし、なんとなく矛盾だらけなのです。
冒頭で、そのプロジェクトにより、自殺者減少の確かな効果が表れているとありますが、
この残酷なプロジェクトによって得られたものは、どう使われているのか?
そして、効果があると思われるのに、更にこのプロジェクトを続け、それにより新たな犠牲者を出すのは何のため?
どうも、その辺が、わたしには引っかかり、なんとか最後まで読み終えましたが、正直
「おもしろかった」とは思えませんでした。
しかし、この本の主人公たちと同年齢の子ども達が「おもしろかった」というには、やはり大人には解らない何か魅力があるのでしょうね~。
以前、読んだ「その時までサヨナラ」は、まあまあ楽しめるものだったので、あのような酷な部分もあるけど、何処かで救いのある物語なら、また読んでみたいな。
これは、あまりにも酷な部分ばかりで・・・・^^;
天明六年、江戸を襲った大雨の夜、甥の定次郎を何者かに殺された立原周乃介は、その原因を調べていくうちに、定次郎が米問屋柏木屋のことを探っていたことを知る。柏木屋の主人、仁三郎にはどうにも後ろ暗い過去がある。核心に迫る周乃介の周りで、不穏なことが多発するようになり--------。
鮮烈のデビュ-作、時代劇ミステリ-登場!
(本の帯文より)
北氏の書は、これで3冊目かな?
やはり時代小説の方がいいなぁ~。
話がわかりやすいので、容易に物語の世界に入り込めます。
最初から、何者かに殺される男の描写。
その殺された男の叔父にあたる男・周乃介が事件の真相と犯人を捜すミステリ-仕立て。
江戸の町の風景もすんなり頭に描写として浮かびます。
長屋暮らしの庶民。
歴史的背景としては田沼意次が罷免され、将軍・徳川家定が没する時。
そして、江戸の各地に起こった大水害。凶作による米価高騰。
そんな時代に庶民が受けた諸々も物語のなかで出てきます。
冒頭で殺された男・定次郎もそんな幕府の大きな変革に巻き込まれたよう。
定次郎と恋仲だった遊女の「沙羅」がなんとも不憫。
遊女になった経緯も、なんとも哀れ。
しかし、どこか落ち着いた品のある佇まい。
甥の定次郎と惹かれあった仲だが、甥の死の真相を追ううちに沙羅とも出会い、周乃介自身も沙羅に惹かれる。
そして、沙羅も。
最初は、定次郎の仇を討って欲しいと願っていたが、やがて周乃介が無事でいてくれる事を願うようになる。
そんな二人が、一時は幸せそうだったのが、少し救いだったかな?
沙羅もその瞬間はきっと幸せだったでしょう。
でも、切なかったなぁ~。
ラストはハラハラドキドキ。
この方の時代物は、やはり素敵!(まだ、これで時代物は2作目ですが・・・^^;)
これ、映像化しても十分、面白そう。
祗園祭宵山の一夜に繰り広げられる6つのお話。
お祭の賑わいのなか、読者も共に不思議な世界に迷い込む。
森見ワ-ルド全開の面白さ!
表紙の絵が、物語の雰囲気にピッタリ!
6つのお話は別々のようで、同じ祗園祭宵山という共通の時間に起こった話。
登場する人々も少なからず関係していて、繋がっている。
京都の祗園祭は、日本三大祭りにも数えられるものですが、実際に見たことはありません。
これを読むと、祭りの賑やかなかんじが目に浮かぶよう。
京都という土地柄もあり、森見氏の今までの物語にあった、どこか懐かしいような不思議な気分も味わえました。
先ず最初の話で、バレエ教室の帰り、幼い姉妹が迷い込む、別世界に連れ去られそうな不思議な体験。
その後も何やら不思議なものが登場。
超金魚だったり、宵山様など。
偽祗園祭りを作る計画の祗園祭司令部の仕業なのか?実際に起こっている出来事なのか?
グルグル時間も戻ったり、先に進んだり・・・・・
まるで、この物語自体が万華鏡のようでした。
楽しい!楽しい!
森見さんの今までの作品の中では、一番好きかも!
まだ森見作品は読んだ事ない方にもぜひぜひ、読んで欲しい!
ミステリ-、SF、ファンタジ-、ノンフィクション等々・・・・あらゆる小説の形式と恩田作品がもつ魅力のすべてを投入した「夢十夜」を思わせる全く新しい小説集。フランス文学者・杉本秀太郎による序詞(詩、俳句、短歌)に秘められた謎と、希代の新鋭画家による10のイメ-ジに誘われた摩訶不思議な10の作品世界。本好きであれば手許におかずにいられない恩田ファンには必携の奇書、ここに誕生
(朝日新聞出版HPより)
恩田さんの魅力が詰まった10のお話でした!
満足!満足!というかんじ。
10の話、どれもそれぞれ好きでしたが、幾つか特に好きなのを挙げると・・・・
「Y時路の事件」
大きな衝撃音を聞いたという複数の人の証言を辿るはなし。
その音を聞いたときの証言は、殆どの人が、おなじ描写なのになぜか、そこには大きな時間差がある。・・・・不思議。
「窯変・田久保順子」
比類なき、才能を持って生まれた女性。
だが、彼女の才能は見過ごされたまま、彼女はその短い命を終わらせてしまう。・・・異様で切ない。
「夜を遡る」
グレメが上がってくるから川には近づくな。大人に言われても好奇心に勝てず、川に近づく三人の子ども。・・・・人間界の話ではないみたい?ファンタジックな不思議な余韻。
以上3つの話が、わたしには印象深かった。
でも、他の話もそれぞれ良かった。
恩田さんファンなら、この良さを共感できると思います!
が・・・・不可解なものをそのまま置き去りにすることを理解できない(好きではない)方には、もしかしたら・・・・なんじゃこりゃ!?と思われちゃうかも。
けど、わたしは、好きです!この本!
ただ、コラボしてる序詞と絵画の良さはイマヒトツ、わたしには理解出来なかったのが残念。
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;