発行年月:2013年2月
誰もが、誰かの、かけがえのない大切な人。 失ったものは、家族の一員であると同時に、幸福を留めるための重要なねじだった――。 突飛で、愉快で、愚かで、たまらなく温かい家族が語りだす、愛惜のモノローグ。感涙の傑作長篇小説! 「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」 ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。二人の兄妹に父側の弟が加わり、さらにその後、次女が生まれる。それは、幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた長男の死をきっかけに、一家の姿は激変する。母がアルコール依存症になり、家族は散り散りに行き場を失ってしまう。やがて、それぞれは自分に似合った悲しみを選択し、自身と家族の再生を目差すのだが……。 かつて誰も言葉にしてくれなかった「人生のアイディア」がちりばめられた、著者渾身の新たなる代表作。
(幻冬舎HPより)
妻に先立たれた男・澄川誠と夫の女性関係が元で離婚した女・美加。
誠は4歳の創太を連れて、美加は長男・澄生と長女・真澄を連れての再婚。
そして、再婚後生まれた千恵。
物語は第一章から第四章まで、主に子どもたちが、それぞれ語る。
<第一章 私>
30歳を過ぎた真澄の語り。
両親が離婚して母親が親権を持ち、兄と3人で暮らしていたが、新しい父親が
できた時のこと。
兄の澄生は17歳のとき落雷に打たれて亡くなったこと。
それ以後、母がアルコ-ル依存症になり入退院を繰り返すことになったことなどを
家族の歴史を大まかに語る。
<第二章 おれ>
社会人になった創太の語り。
大学時代の食堂で働いていた50歳過ぎの女性・真知子と付き合っている。
自分の本当の母親は病死しているが、新しい母親に自分の存在を認めて欲しくて
必死だった子ども時代のことを語る。
<第三章 あたし>
澄川家になかで唯一、みなと血がつながっている千絵の語り。
家族のことを冷静な目でみている。
<第四章 皆>
現在の澄川家の話。
真澄は恋人のロバ-トと付き合っていて、かれには病気の妻がいたが・・・・
アルコ-ル依存症の美加をなんとか立ち直らせたいと思う子どもたちの気持ちが
美加に通じたようなラストは胸がジ~ンとした。
澄川家の家族は、澄生の死を抱えて、長く苦しい時期を過ごしたけれど、最後は
皆で良い方向に向かっていけそう。
澄生と真澄の曾祖母が遺したことば
「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」が冒頭に出てきたけれど
生きていれば、いろいろあるのは皆同じ。
だけど、最後にそんな風に思えるのって理想だな。
明日死ぬかもしれない・・・・こんな時代だからこそ、
このことばを胸に留めながら日々の暮らしを大切に送りたい。
なんて思った。
★★★★
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発行年月:2013年5月
この世界が素晴らしいのは動物たちがいるから──震えるような感動を呼び起こす連作小説。

たてがみはたっぷりとして瑞々しく、温かい──ディープインパクトの凱旋門賞への旅に帯同することになる一頭の馬、森の彼方此方に不思議な気配を残すビーバー、村のシンボルの兎、美しいティアーズラインを持つチーター、万華鏡のように発色する蝸牛……。人の孤独を包み込むかのような気高い動物たちの美しさ、優しさを、新鮮な物語に描く小説集。
(新潮社HPより)
・帯同馬
・ビ-バ-の小枝
・ハモニカ兎
・目隠しされた小鷺
・愛犬ベネディクト
・チ-タ-準備中
・断食蝸牛
・竜の子幼稚園
動物が出てくるお話8つ。
どのお話も少し不思議でおとぎ話のような雰囲気。
小川さんの文章は、いつも通り美しい。
どのお話もおかったけれど、特に気に入ったには・・・
後半の2つ。
<チ-タ-準備中>
動物園の売店で働く女性。
17年前にhを手放した。
hは・・・・?たぶん子ども?
仕事帰りにアイスクリム屋さんに寄るのが楽しみ。
24種のアイスクリ-ムは季節によって種類が変わるけれど、バニラだけは
いつもある。
けれど、バニラを注文する人は見ない。
女性はアイスクリ-ムをケ-スの端から順番に食べていくことにする。
細やかな日常を描きながら、その情景が目に浮かび楽しくなってくる。
そして・・・動物園である日、発見したh。
チ-タ-の檻の前でそれを見つけた。
チ-タ-は「cheetah」なんだぁ~
女性はそれから、別れたhを思うことを禁じていたが代わりにチ-タ-を日々
心のなかに思う。
<竜の子幼稚園>
遠い昔、5歳で亡くなった弟がいる。
弟の誕生日は3月3日。
私の仕事は、身代わりガラスをぶら下げて旅をする。
身代わりガラスは、何らかの理由で旅ができない人の代わりに、その人の身代わりの品を
ガラス瓶に入れたもの。
それを首からぶら下げて旅をする。
そして、同じように身代わりガラスを首から下げた男性と出会う。
男性が首から下げていたのは、タツノオトシゴ。
タツノオトシゴの輪郭は数字の3のよう。
そして二匹の姿は33・・・・3月3日。
最後の描写は、素敵だった!
これは最後のお話。
やさしい気持ちで本を閉じることができたかんじ(^^)
素敵な短編集でした!!
表紙の絵も素敵♪
★★★★★
発行年月:2011年9月
瑞々しくも恐ろしい子どもの世界。
「倦怠を知ったのは、八歳のときだ」
感情のみなもとに視点を注いだ14編。
(筑摩書房HPより)
鈴
姉妹
ひよこにはならない
黒蜜
回る回る
九月の足音
黒い月曜日
雲雀
倦怠
砂のボ-ル
馬足街
どよどよ
壁
おはよう
子どもが主人公のお話たち。
既に大人になった者が子ども時代を思い出したものもあり。
自分の子ども時代のことを、ふと思い出すような話もあった。
ちょっとした描写が、ホラ-っぽい作品も幾つか。
「姉妹」「回る回る」「馬足街」は、ちょっと不思議で怖いかんじ。
ホラ-とまではいかないけれど・・・。
表題作の「黒蜜」は、暗い過去も抱えた主人公・海人だけど
出会った少女とのやり取りはちょっとほのぼのしていて好き。
あんみつにかける餡は、白蜜か?黒蜜か?
わたしも断然、黒蜜だなぁ~^m^
いろいろな雰囲気のお話が、集まった短編集でした。
初めて読む作家さんでしたが、詩人でもあるそうです。
他の作品も読んでみようかな?
★★★
日系2世の語学兵の苦悩を描く戦争長編。
日本人と同じ顔、同じ言葉を喋るがアメリカのために戦う二世の語学兵・ショ-ティの栄光なき孤独な戦い。アメリカ以上にアメリカ合衆国への忠誠を要求される日系人の苦悩を描く戦争長編。
(集英社HPより)
サイパン島での激戦。
アメリカは日本軍を追い詰めるが、玉砕を覚悟の日本兵や民間人は、なかなか降伏しない。
そんな日本人の心理をアメリカ人たちは理解できず、苛立つ。
日系二世のショ-ティは、語学兵として激戦地に就いている。
そして、そんな理解不能な日本人の心理を多少なりとも分かっているため、一人でも多くの日本人を
無傷のまま降伏させたいと奔走する。
戦争が始まる前、日本人の両親はアメリカに渡った。
ショ-ティはそんな日本語しか知らない両親の元、アメリカ人と関わっていくが、差別による理不尽な目に幾度も遭って来た。
戦争で日本を敵にしなければならないことは、両親には複雑な思いがあっただろう。
しかし、ここでアメリカのために仕事をすれば日本人でも認めて貰える。
そんな気持ちがあってか、両親はアメリカ兵として戦う息子を送り出す。
ああ、その気持ちを考えるだけで苦しくなる。
そして、語学兵として、ショ-ティは奔走。
アメリカ人では理解し難い日本人の心理を予測しながら、上官にもアドバイスを提言したり
自ら、危険を冒して日本兵と民間人が潜む場所に先頭をきって、降伏の説得に当たる。
自分の命を取られることより、生きて捕虜になることを恐れる日本人。
生きて捕虜になることは、恥であるという考えから、自分が捕虜になったことを祖国に知らされることを一番恐れる。
切羽詰まれば、自分の命をかけて敵に突進していくのが日本人だとアメリカ兵も恐れる。
日本人とショ-ティの関わる場面は、少し温かい気持ちの交流みたいなものも感じられ、一瞬、気持ちが和んだけれど
やはり、戦争は惨い。
命の危険にさらされるという恐怖のほかにも、いろいろな恐れがあって
こんな時代を生きなければならなかった人たちを本当に気の毒に思う。
日系のアメリカ人・ショ-ティみたいな人たちが実際に何人も居たんでしょうね。
その人たちのことは、今回の物語で初めて知り、その苦悩の様子も胸が痛くなった。
古処さんの書はいつもズ-ンと胸に残る物語だ。
★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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