発行年月:2017年9月
ムスリムのタクシー運転手や厳格な父を持つユダヤ人作家との出会い,カンボジアの遺跡を「守る」異形の樹々,かつて正教会の建物だったトルコのモスク,アラビア語で語りかける富士山,南九州に息づく古語や大陸との交流の名残…….端正な作品で知られる作家と多文化を生きる類い稀なる文筆家との邂逅から生まれた,人間の原点に迫る対話.
(岩波書店HPより)
2人の往復書簡。
師岡さんはアラブ人ムスリム。
日本で暮らしていた期間より、海外での生活が多く、梨木さんも言っていたけれど
異文化経験値が凄く高い。
梨木さんは9・11後、イスラームのことを知りたいと知人を介して
師岡さんと出会った。
以後、往復書簡の形で二人の交流が続く。
2人の文章はとても高尚。
知らない事も沢山あって、ニュースで見聞きしているのとは
やはり違うことってあるんだなぁ~と感じた。
師岡さんが訳したという『危険な道』読んでみようかな?
難しいかな?
9.11から7か月後、アルカイダ幹部への単独インタビューの記録を
訳したものだそう。
今では悪者のアルカイダだけど、彼らには彼らなりの正義があるということか?
日本しか知らないわたし。
それでいいじゃんと思って居たけれど、ちょっと本当のところはどうなの?と
これを読んで思うことあり。
なかなか興味深かった。
★★★★
発行年月:2018年7月
最後まで彼女に嘘の笑顔を作らせたことを、僕はずっと後悔して生きている。
恋人と与那国島へ旅行に来た須藤周二は、問題を抱えた未成年のための「島留学」中の美しい少女・久遠花と出会う。何かを探しているという花の姿が、周二には遠い昔不幸な事件で亡くした従姉妹・美羽に重なって見えた。数日後、花が姿を消してしまい行方を追うが――。
(光文社HPより)
同い年だった従妹・美羽の死をずっと引きずって生きてきた周二(27歳)。
5つ年上の恋人・夏美と共に与那国島へ旅行。
泊まった民宿で手伝いをする17歳の久遠 花(17歳)。
東京から訳あって、民宿を営む榮門武司の元へ。
花に出会ってから、周二は花のことが気になって仕方ない。
何故なら従妹の美羽を思い出す何かがあるから・・・・。
亡くなった美羽の死の真相がわかり、その様子がなんとも辛い。
周二が自分の責任を感じてしまうのも無理はない気がした。
花との出会いは、偶然ではなく何か見えない力で引き合わされたとしか思えない。
亡くなった美羽の思いがそうさせたのかも・・・。
あまりスピリチュアル的なことは信じないんだけど、これは自然に
こういうこと実際、あるのかも?なんて思えた。
ラストは、気になっていた夏美との関係が大きく良い方向に向かいそうで
ホッとした。
良いお話でした!
★★★★
発行年月:2018年6月
この街の夜は、誰もが主役です。夜空色のタクシー、よつかどの食堂、倉庫番の元バーテンダー、月夜のびわ泥棒――都会の夜に魔法をかける、幸福な長編小説!
(角川春樹事務所HPより)
東京の深夜1時過ぎから始まる人間模様。
夜だけ走るタクシーを運転する松井。
子どもの頃読んだ<車のいろは空のいろ>のタクシー運転手・松井さんと
同じだという。
わたしもすぐにそう思った!
その松井さんが人と人を結んでいく。
最初の話<びわ泥棒>で、映画会社の調達屋のミツキが監督から頼まれた
びわを求めて奮闘。
夜間タクシーの松井を呼んで、びわを売っていそうな場所を探し回るが・・・
少し前に旬を終えた果物はなかなか手に入らす、諦めかけたとき
びわの木の場所を知っているとメール。
その場所に行くと、木に登っている人物が。
毎年、そのびわでお酒を作るという・可奈子。
びわを1房手に入れたミツキ。
おまけに可奈子の手作り、びわ酒も貰う、ミツキと松井。
可奈子は『東京03相談室』の相談員。
ずっと前に家を出た弟を探している。
松井が知り合う人たちが別の場所で知り合って
最後は、その中にお互いの探している人がいたという奇跡が楽しい。
ミツキが探し物を求めて松井と夜中に走り廻る様子も楽しかったなぁ~、
松井の行きつけの食堂 よつかどのハムエッグ定食も何だか絵が頭に浮かぶ。
相変わらず、装丁はおしゃれで文句なしの1冊!
★★★★★
発行年月:2018年6月
ぼくは屋根裏部屋に住み、鉛筆工場で働いている。大きなことが書かれた小さな本を読み、遠い街に出かけて、友人とコーヒーを飲む。鉛筆を削って、雲を描き、姉に手紙を書いて、人生を考える。
第1章 遠い街から帰ってきた夜
第2章 バリカンとジュットク
第3章 名前のない画廊
(ちくまプリマー新書HPより)
ちくまプリマー新書300冊目の記念刊行。
創刊当初から関わっていたんですね~。
なんだか表紙の絵をながめるだけでも楽しそう♪
今度、本屋さんで見てみようかな?
この本も新書なので薄くて短時間でスラスラ読みました。
いや~楽しかった♪
お話の設定が好き。
主人公の暮らしが羨ましい。
働いている鉛筆工場の描写も、なんだかワクワクする。
17種類の鉛筆。
全部揃っている文具店も珍しいかも。
実際17種類もあるんだろうか?
主人公の男性は、最後、北の地に旅立つという。
どんな旅をするのかな?
そんな話もまたどこかで書いて欲しいな~。
★★★★★
発行年月:2018年2月
「もし、君が僕の葬式に来てくれるようなことになったら、そのときは祝福してくれ」
自分の死を暗示するような謎の言葉を遺し、37歳の若さで死んだ医師・土岐佑介。
代々信州を地盤とする医師家系に生まれた佑介は、生前に不思議なことを語っていた。
医師である自分たち一族には「早死にの呪い」がかけられているという――。
簡単に死ねなくなる時代につきつけられる、私たちの物語。
(講談社HPより)
5つの章から成る、短編連作。
早死にする家系の土岐一族。
職業は皆、医師。
最初の章は、37歳で亡くなる土岐祐介の話。
親友の手島が生前、祐介から聞かされていた言葉を思い出す。
その後の章では、土岐家の人々の話。
祐介の父・冬司は、49歳で胃がんで亡くなる。
祐介の祖父。伊織は52歳で登山中に滑落死。
祐介の曽祖父・騏一郎は55歳で肝硬変で亡くなる。
祐介の大叔父(祖父の弟)・長門は50歳入浴中に脳梗塞で溺死。
長門の息子・覚馬は52歳で肺がんで亡くなる。
そんな中、唯一長生きしたのは、祐介の兄・信介。
91歳で施設にいるということで、最終章で88歳になった手島が会いに行く。
その場面が、なんだか衝撃的。
時は2068年の設定。
癌はもはや怖くない病気。手術しなくても薬で治るようになっている。
80歳で亡くなるのは早死と言われる時代。
信介は114歳で同じ施設内にいる母親より先には逝けないと言う。
その姿は、なんだか狂気じみていて
長生きは幸せなことなのか??と疑問が沸く。
著者が問題提起のように書いた<希望の御旗>は、考えさせられた。
治療方法には色々あるけれど、何が何でも延命は、やめて欲しい。
こうなったら、もう自然のままにしてほしいとか、ちゃんと自分の最期を
子ども達に伝えておかなきゃ。
土岐冬司の最期は、なんだか皮肉。
自分が信じていた治療を体験して、間違っていたかもしれないと気づくとは・・・・。
医師の著者が書く物語は面白い!
次回作も期待します!
★★★★★
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;