『朗読者』の深い感動をもう一度。
ベルンハルト・シュリンクが「愛のかたち」を
描いた最新傑作短編集
(本の帯文より)
7つの短編からなる本。
どれも深い物があり、さすがシュリンク!!
「もう一人の男」
最愛の妻が病死した。バイオリニストだった妻。
その妻に届く、ある男からの手紙。
そして、その手紙に妻に成りすまし返事を書き、どんな男なのかを探る
「脱線」
ベルリンの壁崩壊後、知り合った東西の男達。
友情を感じ、親交を深めるが段々とある疑惑が浮かび上がる。
「少女とトカゲ」
幼い頃から家の壁に飾られていた少女とトカゲが描かれた絵。
その絵を父親は、ある経緯で家に持ち帰った。
その絵のことは他の人には知られない方が良いと言っていた意味を知る僕。
「甘豌豆」
妻子ある身ながら、別の女性に恋をしその女性との間にも子どもを儲ける男。
それぞれの家を行き来することに疲れた男は、更に別の女性に安らぎを求める。
だけど、いつの間にか女性達が結託して・・・・
「割礼」
ドイツ人の男性がユダヤ人の恋人との関係に行き詰まりを感じ、悩んだ末の決断は
割礼を受けることだった。
「息子」
戦地で、あれこれかつての結婚生活、息子との関係に思いをめぐらす男。
「ガソリンスタンドの女」
以前から見る同じような夢。
ガソリンスタンドにいる女性の夢。
妻とは銀婚式を迎える準備をしていたが、祝うことなど何もないことに気づき
いつのまにか愛は消えて逃げていったと感じる。
どの作品もこうして振り返ると男性目線で書かれた物語だと気づいた。
そして、ドイツ人作家らしいドイツという国が歩んできた歴史のなかにある様々な問題も含まれている。
ユダヤ人とドイツ人。
東西ドイツだった時代を生きた者達。
逃げてゆく愛という表題どおり、あまりハッピ-な内容のものはないけど、何故か読んでいて安らぐという不思議な感覚。
シュリンクのワザなのか?訳者のワザなのか?
読んではずれのない作家さんには間違いないとまだ数冊しか読んでないけど思った!
まだ読んでない作品も読ませてもらおう。
★★★★★
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オタク青年オスカーの悲恋と、カリブ海の呪い。ピュリツァー賞・全米批評家協会賞W受賞!

心優しいオタク青年オスカーの最大の悩みは、女の子にまったくモテないこと。どうやら彼の恋の行く手を阻んでいるのは、かつて祖父や母を苦しめたのと同じ、ドミニカの呪いらしい――。英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。英米で100万部のベストセラー、日本上陸。
(新潮社HPより)
なかなか面白かった!
読むににすっごい時間がかかったけど・・・。
物語はドミニカ系アメリカ人のオスカ-・ワオの青春小説です。
140kgの巨漢でオタクのワオは、女の子に振られてばかり。
でもめげずに好きな子が出来ればアタックする、憎めないけど、ちょっと哀しい。
そんなワオは、母親と姉と住んでいて、ワオの行く末を心配した母親は、自身の故郷であるドミニカに送る。
姉のロラは母親と折り合いが悪かったので先にドミニカに渡っていた。
そこにはワオの母親・ベリを育てたラ・インカが住んでいてワオはラ・インカの元で暮らすようになる。
そして、自身のル-ツ、一族のル-ツを知る。
ドミニカは1930円から31年間、独裁者・トルヒ-ヨによって統治されていたそうで、トルヒ-ヨの残虐性に苦しんだ人々も多かったらしい。
そういう事実をしらなかったので、この書を読んで勉強させてもらった部分が多かった。
そして、ワオの出生に、この独裁者の存在が大きく関わっていたという設定。
女好きで残酷な独裁者・トルヒ-ヨの呪いのようなものを受け継いでしまったかのような、ワオの最期は哀しいけれど、それでもワオは、きっと幸せなときを過ごしたんじゃないかな?と想像できる事実が後からわかり、ちょっと救われた。
物語の途中、かなり膨大な注釈が度々出てくる。
その注釈を読むと、なるほど物語がよりよく判る!
なので、必死に読んだ・・・・・ゆえに一生懸命、読んでもなかなかペ-ジが進まず読了までに時間がかかってしまった^^;
でも読み終えたときは、すごい充実感!
日本の文学にはない面白さがあった!
★★★★
かつてテロリストだった男が、二十年ぶりに出所した週末。

赤軍派テロを首謀した男が、恩赦を受けて出所した。旧友たちの胸に甦る、失われた恋、裏切り、自殺した家族の記憶。あのとき彼らが正しいと信じた闘争は、いくつもの人生を決定的に損なった。明らかになる苦い真実と、やがて静かに湧き上がる未来への祈り----。
世界的ベストセラー『朗読者』の著者が描く、「もう一つの戦争」の物語。
(新潮社HPより)
映画化された「朗読者」に続き読んだシュリンクの新作。
今度も時代は1940年代かな?
ドイツの赤軍派でテロ活動をしていた男・イェルクが恩赦により刑務所を出てきたところから物語は始まる。
イェルクに親代わりでもある姉のクリスティア-ネが郊外の自宅にイェルクを知る十数人を招いて週末(金曜日~日曜日)をともに過ごす企画をした。
招かれた者の職業はばらばら。
ジャ-ナリスト、牧師、実業家、教師、弁護士、翻訳家などなど。
それぞれの社会的立場からだったり、むかしのイェルクに抱いていた感情からだったり、イェルクにいろいろな意見を述べる。
イェルクのテロ行為自体を直接、言葉で攻める者は殆ど居ない中、
唯一、彼の息子・フェルナンディナンドが厳しく父親を批判する場面が終盤あり、それに対して何ら反論出来ないイェルクの姿が痛々しい。
自分なりの思想を正当化していた彼だったが、息子の言葉は胸に突き刺さるものがあったのか?
赤軍派の事件は日本にもあったけどよくわからない。
なんでそこまでのことをしようとしたのか?
週末の滞在期間を終え、イェルクの元を去って自分達の生活に戻る知人たちをどういう気持ちでイェルクが送ったか?
これから社会に出て生きていかなければならない元テロリスト。
でも最後、息子との関係に少し和解の兆しが見えた部分は希望かな?
シュリンクの書く物語は重たいものが題材だけど、読み応えあり!
まだ読んでない作品も近いうちに読もうと思う。
★★★★
「短篇小説の女王」による、国際ブッカー賞受賞後初の最新短篇集!

子連れの若い女に夫を奪われた過去をもつ音楽教師。新しい伴侶とともに恵まれた暮らしを送る彼女の前に、自分の過去を窺わせる小説が現れる(表題作「小説のように」)。ほか、ロシア史上初の女性数学者をモデルにした意欲作「あまりに幸せ」など、人生の苦さ、切なさを鮮やかに描いて、長篇を凌ぐ読後感をもたらす珠玉の十篇
(新潮社HPより)
読み応え充分の短編集でした!!
10篇の物語、どれも良かった!
1つ読み終えると、暫くは静かにその余韻に浸っていたくなるかんじ。
一つ一つの物語に登場する女性たちのいろいろな人生。
そのなかで感じる、喜び、絶望、驚きなどなど、いろいろな感情を読みながら共感。
一番最初の「次元」からやられた!
夫の手によって3人のこどもを殺された女性・ド-リ-。
しかし、完全に夫を恨むことは出来ず、隔離されている夫の元に定期的に通う。
そしてそんなある日、バスに乗っているとき、そこに飛び出して来た少年を救助する。
その少年との出会いを機にド-リには今後、もっと明るい未来を歩んで欲しいと願った。
次のお話は表題作になっている「小説のように」。
これも面白かった。
学校で音楽を教えているジョイス。
大工の夫・ジョンと幸せに暮らしていたが、彼の元に見習いだという女性・エディが娘を連れて一緒に暮らすようになり生活が一変してしまう。
学校では、エディの娘はジョイスの教え子という環境。
やがて、ジョイスは家を出て、ほかの男性と幸せに暮らすようになるが・・・・
その後、エディの娘が小説家として書いたものを偶然、目にすると、自分がかつてジョイスとエディ母娘と暮らしていたことが書かれていて驚く。
自分のことを第三者が冷静に見つめていて、それを小説にされたら・・・・ちょっとイヤだな。
小説家が身内にいると、こういう事態もあり得るのか?なんて考えた。
ほかの作品も読むたびにいろいろ考えた。
ひとつひとつに思う感想がちゃんとあるので、全て書くとすごく長くなるので省略しちゃうけど
「深い穴」は、優秀だった息子が自分から離れたところに行ってしまい、どういう暮らしをしているのか心配していたら・・・・数人のわけのわからない貧しそうな人たちと貧しい共同生活をし、路上で施しを求める日々を過ごしていたという話は、母親の立場に立ったら、なんともやり切れない気がした。
こどもはそんな暮らしでも生きる意味を感じているのがせめてもの救いだったけど・・・。
最後の「あまりに幸せ」は、実在した数学者で小説家のソフィア・コワレフスカヤの人生を描いた物語だそうですが、実在した人物の話なのに、一番、フィクションぽかったという印象。
ロシア人ゆえに苦労したことが沢山あって、すごい人生だ。
この最後の話をもっと詳しく書いても1冊の小説になりそう。
そして、表題を「小説のように」でも通りそう。
あ~そうして考えると・・・・この表題は最後の話があるからそうしたのか?
なんて、あれこれ一人考えたりして・・・(笑)
さすが「短編小説の女王」と称されているだけある作品!!
ほかの作品も読んでみたくなった!
★★★★★
古い写真の中の、胸に黄色い星をつけた少女----いま彼女を探すこと、それは私自身を探すことだった。

パリで平穏に暮らすアメリカ人記者ジュリアは、60年前にこの街で起こったユダヤ人迫害事件を取材することになった。それが人生のすべてを変えてしまうとも知らず……。国家の恥と家族の傷に同時に触れてしまったひとりの女性が、真実を、そして自分自身の生きかたを見つけようともがく闘いの記録。全世界で300万部突破。
(新潮社HPより)
ナチス占領下のユダヤ人迫害の話は、過去にも幾つか読んだけど、正直、フランスにもこういう事実があったのは、知らなかった!
物語は1942年7月、パリでのフランス警察によるユダヤ人強制検挙から始まる。
当時10歳の少女・サラは、警官が家を訪ねてきたとき、とっさに当時4歳の弟・ミシェルを二人がいつも隠れて遊んでいた納戸に隠れているように言い鍵をかける。
弟を守るため。そして、すぐに戻って来て、出してあげればよいと思って・・・
しかし、それが弟との別れになってしまう。
そして、サラの物語と同時進行の形で、その60年後、2002年のパリ。
ジャ-ナリストのジュリアの物語が進む。
45歳のジュリアはアメリカ人だが、フランス人の夫・ベルトランと11歳の娘・ゾ-イと穏やかに暮らしている。
しかしあるときを機に、60年前のユダヤ人迫害の真実を追うことになる。
サラの体験の場面は、悲惨で胸が苦しくなる描写ばかり。辛い。
なんで、同じ人間なのに、何も個人的には非のない人間に酷い仕打ちが出来るのか!?
人間が人間にする事じゃないでしょ!?と怒りすら沸いてくる!
毎回、この類の物語を読むと感じることだけど、まだ知らないそういう事が世界中にあるんでしょうね。
2002年のジュリアの話に切り替わると、ホッとしながらも交互に出てくる二つの時代の話は、それぞれに惹き込まれる。
そして、段々とジュリア自身がサラと関わりがあることがわかる。
最後は、泣けました。
サラの人生は壮絶だったけど、それに関わったジュリアの平穏な暮らしも大きく変化して、でもジュリアの揺るがない真実を追い求める姿勢は感動的だった。
記憶せよ。決して忘れるな。
深い意味を含んだ言葉だと思いました。
★★★★★
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台所、居間、パソコン室、一日中、本を片手にあちこち移動しながら、読書しています♪
記事最後の★についての基準は
★★★★★ぜったい再読したい!!
★★★★すごく良かった!
★★★最後まで楽しめた
★★☆最後まで読んだが好みじゃなかった
★★飛ばしつつ一応最後まで目を通した
★途中放棄^^;
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